建築やデザインが好きである。
そもそもこっちに引っ越してくる前は10年ほど住宅の設計に携わっていた。
前川國男や吉村順三(いずれも故人)といった昔の巨匠の作品が好きである。
古いものや、懐かしいものが好きだからだと思う。
ちょうど今から一年前の今頃、前川氏の作品が多く残る、青森県の弘前市へ
いわゆる「前川詣」に行ってきました。
バイクを北へ走らせること450キロ、同じ東北でも青森はずいぶん遠い。
弘前は城下町。
お濠の内側の弘前公園を囲むように、美しい街並みが広がる。
コミュニティセンターでレンタルサイクルに乗り換え、いざ建築探訪。
さて、まずは一番みたかった 弘前市民会館(1964年)へ
ここは音楽ホールだ。
天井高をぐっと抑えたアプローチから吹き抜けのエントランスホールへ。
感動的な演出だ。
写真は2階ホール前のホワイエ
あぁ、やはり前川建築はいいなぁ。ナンパなところが一切ない。
結構派手な色を使っているにも関わらずエレガント、そしてどこか親しみのもてる雰囲気。
シャンデリアが美しい、こちらもオリジナル。
細かなディティールに至るまで、デザインに込めた思いが塊となって迫ってくるようだ。
音楽ホールは地元高校の発表会のため入ることができず、残念。
東京文化会館もそうだけど、ハレの場を作らせたら一級品です。
皆さん見たことありませんか。上野の美術館、博物館の並びにあるあれです。
建築に興味のない方も、一度中を見てみてください。
感動的な空間ですよ。
次は木村産業研究所(1932)へ。
地図を頼りに探していると、住宅地の中に古いけど何やらタダならぬ雰囲気の建物が。
こちらは前川氏の記念すべき第一作目。
大学卒業後フランスに渡りコルビジェに従事していた彼が帰国後手がけたものである。
東側ピロティ。
ちょうどサヴォア邸と同じころの作品だが、近代建築5原則が盛り込まれているんですね。
写真だけ見ても、「独立柱」「ピロティ」「連続水平窓」が見えますね。
エントランス天井
なかなか斬新な色を使ってます。80年前ですよ、しかも弘前で。
かのブルーノタウトが
「何故、こんな極東の辺境にコルビジェ風の白亜の建築があるんだ!」と驚愕したそうです。
このあたりの80年前の街並みを考えると、相当浮いてたはずです。
建築家としては周囲との調和は絶対押さえるべきですが
若きフランス帰りの彼は、さぞかしとんがりまくっていたのでしょう。
「弘前市庁舎(1958)」、「緑の相談所(1980)」 などを見たあと
最後に「弘前中央高校講堂(1954)」へ
ここは普通の県立高校なので、外から電話を入れると先生が「どうぞ」と正門まで迎えに来てくれた。
以前取り壊しの話もあったらしいが、文化財としての価値から存続が決まったらしい。
この建物は弘前で2作目だが、庇が付いている。
木村研究所ではフラットルーフだったが、弘前の気候風土に合わなかったらしい。
やはり日本の建築には庇が欠かせない。
そういえば東京文化会館あたりは、大きく張り出した庇がデザインのアクセントにもなっているし。
軒裏が赤く塗られ、前川テイストが感じられる。
でも親しげな印象の建物だ、ここの学生は幸せだなぁ。
ざっと駆け足で半日の建築探訪。
青森ってえらい田舎だろうと思っていたら、なんとも洗練された美しい場所なのです。
建築好きならぜひ一度来るべし!
次回もっと腰を据えて、「前川詣」にきたいと思います。