はがきのおくりもの

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失敗から学ぶ

2014年07月25日 | 昔話や童話などを用いた校長講話

 カメを見習えと話しても、まったく乗ってこない生徒たちがいる。カメのような「できすぎ君」に拒絶反応する生徒たちである。
 彼らは教訓をうさん臭いものと感じるすばらしい感性を持っている。
 そんな彼らにも、校長は講話をしなければならない。校長はどうしたものかと考える。教訓臭を消し去った講話にできないかと頭をひねる。
 そこで、すばらしい感性を持った彼らのために、競争に負けてしょぼくれているウサギのその後の話をでっち上げてみた。
 この講話にもテーマはある。テーマがなくては講話を作る際に困るからである。しかし、講話ではテーマを明らかにしない。そんなことをしたら、教訓臭を感じさせてしまう。細心の注意を払い、淡々と語る。
 講話には必ず何らかの意図があることを、彼らは知っている。そして、校長の意図には乗るまいと固く心に決めている。そういう彼らに敬意を表する校長は、「意図はあるけれども強制はしないよ。、だから、教訓めいた話にしないよ」という姿勢で接する。そうすると、彼らも「それなら、聞くだけは聞いてあげるよ」という姿勢を見せてくれる。
 では、「失敗から学ぶ」をテーマとした「ウサギとカメ」をお楽しみあれ。

 

 

 ところで、競争に負けたウサギはその後、どうしたでしょうか。
 「カメに負けたウサギ」というレッテルを貼られたウサギは、みんなからバカにされました。
 そこで、ウサギは「失敗から学んで、見返してやる」と決心し、目標と目的を持たなかった自分を反省します。
 しかし、そう簡単には目標と目的を持てるようにはなりません。カメのようにコツコツと努力することもできません。といって、もう一度カメとかけっこをして勝っても、「カメに負けたウサギ」というレッテルは消えません。
 ウサギは悩み苦しみました。けれども、ウサギはウサギのままでした。
 学校の試験勉強は、前の晩だけの一夜漬けです。仕事に就いた後も、明日やれる仕事は明日に回して、今日は遊んでしまいます。今を楽しむことをやめられませんでした。
 そういうウサギでしたが、明日に回すと間に合わない仕事は、徹夜してでも終わらせました。集中力と瞬発力だけは、ウサギの取り柄でした。
 やがてウサギは年をとっていきました。だんだん体力がなくなり、徹夜ができなくなりました。明日やれる仕事でも、今日からやり始めないと終わらなくなってしまいました。
 困ったウサギは、少しだけ生き方を変えることにしました。明日のことを考えないで、今日しか考えないことにしました。
 明日のことを考えないのですから、明日やれることは何かと考えるのをやめました。そして、すべてを今日やることにしました。今を楽しむという生き方は変えられないので、今日やることを楽しむことにしました。
 すると、ウサギは悩まなくなりました。今までは明日に回していた仕事のことが気になって、今日を十分に楽しめませんでしたが、今はもう心おきなく今日を楽しめます。明日のことを悩まなくなったら、昨日のことも思い煩うことがなくなりました。
 ウサギは今、会社でそれなりの役職に就いています。若手社員にはウサギもカメもいます。どちらのよさもわかる上司となって、活躍しているようです。
 さて、ウサギは失敗から学んだのでしょうか。皆さんはどう思いますか。

 

 

 教訓めいたことを話すと、反抗精神旺盛な生徒たちは警戒心を抱く。ならば、どう考えるかと生徒に判断を委ねよう。ボールを投げたよ。受け取るかどうかも含めて任せるよ。どんなボールを返してくれるか、楽しみにしているよ。そんな思いを込めて講話する。
 こうした想像上の生徒とのやりとりは、見える者にしか見えず、聞こえる者にしか聞こえない。だから、愉快なのである。声なき声を聞き、声なき声を発する。互いに相手がこちらの声なき声を聞いたかどうかで、相手を値踏みする。
 生徒から軽く見透かされてしまうようでは負け。校長としては、生徒に負けるわけにはいかない。
 校長講話という勝負に絶対に勝つ。それが校長に課せられた使命の一つなのである。


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