はがきのおくりもの

 思い出したくなったら、ここに帰っておいで!!!
 元気を補給したら、顔を上げて、歩いて行くんだよ!

第20話 暑中見舞い(H16.7.27発送) <17通 通算605通>

2006年09月16日 | だいこん高物語 2004

 ○○○○ 様
 暑中御見舞い申し上げます。
 熱い季節をどう過ごしていますか。先人たちはこんな風に言っています。

 「若者には過ちを犯す特権があります。」 開高 健

 「青春の時期は、いつの時代でも恥多く悩ましいものだ。もう一度やれといわれてもお断りしたい。」  吉行淳之介

 若いうちに、失敗したり、困難に出会うことです。恥は多いけれど、成長の糧となります。失敗や困難に正面から立ち向かって、熱い季節を乗り切り、魅力ある人になってください。
  平成16年7月27日
  県立だいこん高等学校長 奥井太郎



 これは、1学期中に奥井が指導した生徒たちへ送ったはがきです。
 指導したとき、最後に「卒業するまで、見てるぞ」と伝えたので、送ることにしたらしいですよ。

 はがき表彰状ではなくて、励ますはがきですな、これは!

 前向きに取り組んで成果を上げている生徒もかわいいけれど、失敗したり、心にバリアを張って突っ張ってる生徒たちもかわいい、と奥井は言います。


 朝、「おはよう」と声をかけてもいつも無視をしていく生徒が、うなずいたり、小さな声で「おはようございます」と言って通り過ぎることがある。次にあったときには、また無視していく。そんな繰り返しの生徒。
 でも、それでいいんじゃないか。
 人間、大きく変わるときもあるし、ちょっとずつしか変われないときもある。そんな生徒たちへ、何かのきっかけになればいい、ならなくてもいい、そんな気持ちで暑中見舞いを書いてみたよ。
 大人になると忘れてしまう人が多いけど、高校生ぐらいのときって、外見は明るくても、心はいつも傷ついていて、自信なんて持てなくて、孤独で苦しかった。そうじゃなかった?
 自分が何者かわからなくて、ひとりぼっちの気がしてさ。
 だから、不愉快そうな顔をしている生徒を見ると、ああ、自分もそうだったなあって思うんだよ。
 そんな生徒に何か声をかけてあげられないかなっと思っていて、それを、はがきでできるかもって、勝手に思ったのさ。


 そんな風に、奥井は言ってました。
 夏の間、奥井はいろいろと考えたようですよ。これからどうしようって。

 そういえば、この夏、奥井からこんなはがきをもらいました。奥井らしくもなく、悩んでたんでしょうか。ちなみに、奥井は身長181cmの大男です。



 東京の連続真夏日は史上1位の40日を記録。残酷暑のため、私のやる気は夏眠中。充電期間と言い訳して、役立たずの本でも読んで実りの秋に備えようか。
 山本夏彦「男女の区別は、決心ひとつできまる。子供のころから、男は男らしく、女は女らしくと教えられ、長じてその決心をすれば男らしい男、または女らしい女になるのである。
 今は絶えて見ないけれど、昔それらしい男女があったのは、肝心要のときに、男は女々しい部分を切りすて、進んで男になったからである。女は男の部分を去って、女になりすましたのである。(中略)
 盗みはすれど非道はせずと、以前は泥棒も決心した。素人を相手に喧嘩するのは、やくざ者の恥だときまっていた。
 きまっていたのは、きめたからである。泥棒ややくざ者さえ、以前はすこしは決心した。今日ほど人が決心しなくなった時代は稀だろう。」(『茶の間の正義』)
 辞令を受けても私は何も変わらない。だから、妻も娘も私が校長であると信じていない。ただ、私が校長であろうと決心したため、生徒や教職員、保護者は信じてくれたようである。
 男も決心してなるものらしい。取り急ぎ、男になるぞと決心することにした。今ごろ大女になっても、モデルもできやしないから。
 城山三郎「陣頭指揮も結構だが、司令官が将校斥候の報告を信用せず、一々斥候に出かけていたら、戦争はどうなるんだね。司令官には司令官として、なすべきこと、してはならぬことがある。あることをしないということで、かえって一つの役割を果たしているんだ」(『黄金峡』) 
 校長としてなすべきこと、してはならぬことは何か。校長でなければできないことは何か。アテネ・オリンピックが終わり、秋になったら、考えることにしよう。
 暑さは苦手だが、輝く夏の光は浴びていたい。「光ある中に光の中を歩め」。トルストイの言葉に思う。光や夢のない人は、一番上にいてはならない気がする。校長らしくない気がする。


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