OKESAN 公的年金保険情報

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社保庁コンピューターシステム刷新先送り

2005-07-10 10:06:48 | Weblog
○複雑になった年金制度に対応しきれず、未払い・過払いなどミスの温床として問題になっていたコンピューターシステムについて社会保険庁は、抜本的な刷新を先送りすることを決めた。07年4月から導入される「離婚時の年金分割」など制度改正に必要なプログラム修正が膨大で、全面的にシステムを作り直す作業と同時にはできないというのがその理由。

 社保庁のシステムは、年金加入者と受給者を合わせた計約1億人の記録を管理する部分と、年間37兆円の給付を管理する部分に分かれている。いずれも旧式のうえ、度重なる制度改正で複雑化。年間維持費が1100億円もかかることなどから、抜本的な見直しが求められていた。


<解説>
 実をいうと、雑誌やインターネット上に溢れている年金の計算の仕方、100解説があったらほぼ100とも正確ではありません。社会保険庁自身のだって正確じゃない。

 例えば(ここは先は読まなくて結構)厚生年金法43条に老齢厚生年金の計算方法がありますが、それは平成12年附則20条、21条により修正され、それがまた平成16年附則27条により修正され、さらに平成16年政令298号で読み替え規定がなされ。。。。

 こんなことをやっていたら、一般の素人のみならず、プロの社労士、FP、金融機関、社会保険事務所職員などが全く何もできなくなるので、不要なところを端折ったり、わかりやすくしたりして、HPや本、雑誌に掲載しているのが普通なのです。だから細かくあら捜ししたら間違いだらけ。

 正確に書くと、逆に何が何だかわからない(とにかくとてつもなく面倒になります)。

 そんな複雑な年金計算ですけれど、社会保険庁のメインコンピューターはそんななあなあでは済まされないのは当然。

 しかも、年金はとても長期にわたるもの(たった1人の人間でも20歳から死ぬまでお世話になる)、さらに法律改正があっても古いものを削除できない(例えば死亡事故が20年前にあってその死亡事故に関する遺族年金の貰い忘れが今手続きされたらその当時の法律が適用される。普通はありえないけど、日本にそういう人が1人でもいる限り、それに対応しなければならない)

 昭和30年代の年金法なんて誰も知らないけれど、それを消すわけにはいかないから、何かコンピューターを改変した場合には、その部分のデータチェックをかける必要があります。そうしないとまたミスがおきる。

 マスコミは、年金の支払いミスがおきると大喜びして報道しますが、実はそのミスが何処の部分でどう起こったかがとても重要です。
 普段我々が接していて対象件数が多い部分でミスが起これば、そのミスは叩かれてしかるべきミスですけれど、めったに対象者が居ない超マイナーなところでのミスを責め立てるべきではないと思います。それは、物理的に無理です。

 民間の保険会社でも、管理は大変で、コンピューターの黎明期(30年、40年前)からのプログラムとかは全部保存してあります。
 それで、死亡率を計算し、保険料率を計算し、保険を販売したから当然です。
 
 しかも一旦何かあるとプログラムだけではなく、実際に使える人(解析出来る人)がいないとダメ。古いプログラムを開発当時の20-30代かつ今定年後(あるいは管理職)の人を尋ねて頭を下げるしかないのでしょうか。それだけでも途方にくれそう。
 ただ、「民間の保険は契約した時点のものが契約終了まで続くのでまだマシ」なのに対し、公的年金の場合は「法律が変われば、中身が変わる」
 
 想像すらつかないメインテナンスの大変さです。
 そして考えて欲しいのは、原点は我々と政治家がこんなに制度複雑にしてしまったということ。
 
 法律では物価が上がれば年金があがり、物価が下がれば年金が下がる と決められていた。まさか下落はないと思っていたら、現実に西暦2000年後の数年間は物価が下がった。
 普通に年金を下げればいいのに、なぜか3年分は凍結された。その凍結は結局一般の国民である年金受給者が、「年金を下げてもらっては困る」と反発し、選挙が怖くて(特にお年寄りは選挙に行きますから)その意を汲んだ政治家が厚生労働省に圧力を掛けた(真偽の程走りませんが)というところから出発したりしているとも言われているのです。この場合は、法律に特例につぐ特例を作って対応しなければならない。で年金が複雑と叩かれる。 本当に悪循環ですね。