環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

PRTR法改正へ、中環審・産構審合同会合中間取りまとめを読む ②仕組みの見直し

2007-07-13 05:56:13 | 化学物質・有害物質
2007年7月13日
 PRTR法改正へ、中環審・産構審合同会合中間取りまとめを読む、第2回は、施行後7年の経験等を踏まえた仕組みの見直しについてです。
 
【PRTR制度に関する課題と方向性】
1.施行後7年の経験等を踏まえた仕組みの見直し
(1)PRTR法の対象となる指定化学物質について
 PRTR法では、有害性と暴露性の双方の観点を考慮して、対象となる化学物質を指定しています。 具体的には、政令において、PRTR制度及びMSDS制度の対象となる第一種指定化学物質として354物質、そのうち人に対する発がん性があると判断された特定第一種指定化学物質として12物質、MSDS制度のみ対象となる第二種指定化学物質として81物質が指定されています。
 本中間取りまとめでは、①化学物質の製造、輸入、使用の実態は常に変動していること、②有害性等に関する新たな知見も得られてきていること、から、これらの指定化学物質については、『法施行後の化学物質の製造、輸入又は使用の動向や一般環境中での検出状況、新たな有害性情報の蓄積等を勘案し、現行の指定化学物質の選定基準を踏まえて物質指定の見直しを実施すべきである』としています。
 その際の基準は、『化学物質管理を巡る国際的な状況を踏まえつつ、化学品の分類及び表示に関する世界表示システム(GHS)との整合化を目指すべき』とし、特に、人に対する発がん性があると判断された物質を指定している特定第一種指定化学物質については、『GHSとの整合性を踏まえ、新たなエンドポイントの追加(例えば、ヒト生殖細胞に対する変異原性や人に対する生殖毒性)を検討すべき』と指摘しています。

(2)対象事業者の要件について
①対象業種
 PRTR制度では、その業種に属する事業者が第一種指定化学物質を環境中に排出すると見込まれる業種の中から、排出量の把握・届出に伴う効果と事業者の負担を勘案して、PRTRの届出義務が課せられる対象業種を政令で指定することとしており、製造業をはじめとして23業種が対象業種に指定されています。
 また、①定点における排出量の把握自体が困難である場合、②業の特性として個々の事業者による取扱量が少ない場合、には、対象業種としては指定せず、国が推計することとされています。そして、この国が実施している届出外排出量の推計結果のうち、対象業種以外の業種からの排出に関しては、建設業や農業からの排出量が大きな割合を占めているのが現状です。
 本中間取りまとめでは、建設業については、『施工現場が比較的短期間で移動したり、施工期間が長期に亘る場合でも、実際に化学物質を使用する期間は限られていることから、定点からの定常的な排出量の把握が難しい』ことから、『建設業を対象業種に指定すべきかどうかについては、今後一層の検討が必要である』としています。一方、農業については、『通常はPRTR法の届出要件を満たさない小規模事業者であることに加え、PRTRの届出対象となる農薬については、その使用が農薬取締法の規制により適切に管理されていることもあ』ることから、『PRTR法に基づく届出の対象業種に指定して排出量の届出を義務付ける必要性は低いと考えられる』としています。
 また、現行のPRTR制度において、対象業種に指定されていない医療業(大学病院は高等教育機関の付属施設として対象とされている)についても、『化学物質の使用実態の調査も含め今後さらに検討が必要である』とし、深く言及はされていません。

②従業員数要件及び取扱量要件
 PRTR法では、対象事業者の要件を定めるに当たり、PRTR制度による届出に伴う事業者の負担を勘案して、対象業種を政令で指定した上で、第一種指定化学物質の排出の可能性が低い事業者や、法が目的とする効果に比して届出義務が過重になるおそれがある事業者を除くため、従業員数が21人未満の事業者及び事業所における第一種指定化学物質の取扱量が年間1トン未満(特定第一種指定化学物質については、年間0.5トン未満)の事業者は、PRTR制度の対象事業者から除外されています。
 この要件の厳格化に関し、本中間取りまとめでは、『従業員数21人未満の事業者に対してPRTR法における排出量等の届出を求めたとしても、これら事業者からの排出量は、我が国全体の総排出量の1割程度にすぎないとみられる』こと、及び『PRTR法における届出事業者の従業員数要件を引き下げることによる届出とその処理に必要とされる事業者や行政のコスト増を、社会的に負担することの意義は小さいと考えられる』ことから、現行法の内容で妥当であるとの評価をしています。
 また、第一種指定化学物質の取扱量が年間1トン未満の事業所からの排出量等の届出についても、『取扱量が年間1トン未満の事業所からの排出量の全体に対する割合は小さいと推定され』ることから、『現行の年間1トン(特定第一種指定化学物質については年間0.5トン)が妥当であると考えられる』としています。

(3)届出事項について
①取扱量等
 PRTR制度では、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的に、第一種指定化学物質等を取り扱う一定要件を満たす事業者に、第一種指定化学物質の環境中への排出量及び廃棄物に含まれての移動量を自ら把握し国に届け出ることを義務付けています。
 この取扱量を新たに届出事項に含めるべきかどうか、については、『現在得られているPRTRデータを環境リスク評価や自主管理等に十分に活用するべきであり、PRTR法の届出事項に取扱量を追加して国レベルでその情報の収集に社会的なコストをかける意義は、現時点では小さいと考えられる』としています。
 また、事故時や災害時における対応等の観点から化学物質の貯蔵量を届出事項に含めるべきかどうか、については、『事故対応は現行のPRTR法の目的外であることから、貯蔵量をPRTR法の届出事項に追加する必要はないと考えられる』としています。

②廃棄物の処理方法及び放流先の下水道終末処理施設名の記載
 PRTR制度では、移動量に関しては、下水道への移動量及び廃棄物としての移動量をそれぞれ届け出ることを義務付けています。
 本中間取りまとめでは、『化学物質の環境リスクをより一層把握するためには、移動した先の下水道終末処理施設及び廃棄物処理施設からの化学物質の排出量についても推計等により把握することが重要であ』ることから、『これらの施設からの排出量を推計するには、現在得られているデータの他に移動先の下水道終末処理施設名、廃棄物の移動先での処理方法が必要であるので、届出書の記載事項に加えるべきである』との指摘がなされています。

(4)普及・啓発のあり方(未届出事業者に対する対応)
 PRTR法が制定されて以降、一部に未届出事業者が存在することが明らかになっています。本中間取りまとめでは、『PRTR制度に基づく適切な届出の励行を促すため、引き続き制度の周知・啓発に努めるとともに、悪質な未届事業者に対しては、厳正に対処することが必要である』と指摘がなされています。

(5)届出排出量等の把握手法及び届出外排出量の推計手法の継続的改善
 事業者がPRTRの届出に必要な第一種指定化学物質の排出量等を自ら把握する方法として、物質収支による方法、実測による方法、排出係数による方法など5つの排出把握方法が定められており、事業者はいずれかの方法を用いて排出量を把握すれば良いこととなっています。これに対し、排出量等の正確な把握を促す観点から、国では全般的な排出量等算出マニュアルを作成しているほか、業界団体では国の排出量等算出マニュアルの考え方を踏まえつつ、各業種の個別の工程や物質等に対応した業種別の算出マニュアルの整備がなされています。
 本中間取りまとめでは、国の算出マニュアルに対し、『それぞれの排出把握手法の特徴を整理することなどにより、個別のケースに応じてそれぞれの手法の中からより精度の高いものを事業者が選択できるよう、必要なガイダンスの追加を検討すべきである』とし、さらに『排出係数を利用する排出把握手法については、国の算出マニュアルにおいて適切な排出係数が示されているかにつき、検討を行う必要がある』と注文をつけています。
 一方、業界団体が整備している業種別の算出マニュアルについては、『新しい技術の導入に伴う化学物質の自主管理の進展等を踏まえ、必要に応じて複数の排出係数を設定するなど、業種別の算出マニュアルを適宜見直していくことが必要である』としています。
 また、PRTR届出外排出量の推計については、『リスク評価を実施する上でも重要であることから、経年変化が把握できるようになることにも配慮しつつ、引き続き推計精度の向上に努めるとともに、現在、推計の対象になっていない排出源についても排出量の推計対象の範囲の拡充を検討する必要がある』とし、特に『廃棄物処理その他のプロセスにおける低含有量物質を含む排出量の推計等につき、有害性や暴露量の高い物質等に重点を置きつつ、検討すべきである』との指摘がなされています。

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
環境省
第9回ヒートアイランド対策関係府省連絡会議の開催について
中央環境審議会環境保健部会化学物質環境対策小委員会、産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質政策基本問題小委員会化学物質管理制度検討ワーキンググループ合同会合(中間取りまとめ)に対する意見募集
平成19年度第4回薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質調査会 化学物質審議会第66回審査部会 第70回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会の合同開催について
中央環境審議会自然環境部会(第10回)の開催について
平成19年度第4回生物多様性影響評価検討会総合検討会の開催及び傍聴について
遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律に基づく第一種使用規程の承認申請案件に対する意見の募集(パブリックコメント)について
第1回光化学オキシダント・対流圏オゾン検討会の開催について
海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律第9条の6第3項の規定に基づく未査定液体物質の査定結果及び意見募集(パブリックコメント)の実施結果について
漂流・漂着ゴミに係る国内削減方策モデル調査第1回総括検討会の開催について
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令案に対する意見の募集について

経済産業省
商業販売統計確報(平成19年5月分)
鉱工業生産・出荷・在庫指数確報(平成19年5月分)
資源・エネルギー統計確報(平成19年5月分)
機械統計確報(平成19年5月分)
化学工業統計確報(平成19年5月分)
窯業・建材統計確報(平成19年5月分)
繊維・生活用品統計確報(平成19年5月分)
紙・印刷・プラスチック製品・ゴム製品統計確報(平成19年5月分)
鉄鋼・非鉄金属製品・金属製品統計確報(平成19年5月分)
需給統計確報(平成19年5月分)

国土交通省
第9回ヒートアイランド対策関係府省連絡会議の開催について

資源エネルギー庁
レアメタル生産動態統計
非鉄金属等需給動態統計
我が国の主要非鉄金属の国別・形態別輸入状況

【判例情報ウオッチング】
新しい情報はありません。

ISO14001
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