環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

東京大気汚染訴訟、和解成立へ

2007-07-02 05:56:59 | 健康被害
2007年7月2日 
 東京高等裁判所から和解勧告が出されていた東京大気汚染訴訟で、6月30日、原告団が和解案を受け入れることを表明した、とのニュースがありました。本日、その旨、東京高裁に報告されるとのことです。被告側である国、都、首都高速道路会社は既に和解案受入を表明しており、残る自動車メーカー7社も今週中に受諾を伝えるとみられることから、訴訟提起以来11年を経過し、和解が成立する見通しとなりました。
 大気汚染に関する訴訟には、過去に西淀川、川崎、尼崎などの例があります。今回の和解では、東京都が提唱した新たな医療費助成制度の導入をめぐり、当初、国が異論を唱えましたが、安倍首相の政治判断により、一気に解決へ向けて舵が切られました。この医療費助成制度は、東京都内のぜん息患者ほとんどすべてを対象とするもので、これまでにない内容であると評価できると思います。

【参考】
1.東京大気汚染訴訟第一次判決(平成14年10月29日東京地裁)の概要
(1)訴訟内容
 自動車排ガスで健康被害を受けたとして、平成8年年5月の第1次提訴にはじまり、平成12年11月の第4次提訴までの原告計505名(東京都内のぜんそく患者や遺族等)が国・東京都・自動車メーカー7社等に対して総額約22億3,800万円の損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めたもの。原告には184人の未認定患者(公害健康被害の補償等に関する法律による認定を受けていない人)が含まれていました。

(2)判決内容 
 道路端から約50mまでに居住するなどにより気管支ぜんそくを発症、悪化した公害病未認定患者1人を含む計7人について排ガスと被害の因果関係を認め、「国などは住民の健康被害を防止する有効な策をとらなかった」と判断。国、都、首都高速道路公団に総額7,920万円の賠償が命じられました。
 最大の争点になった自動車メーカーの責任については「できる限り環境への負荷を低減するよう努める社会的責務がある」とされましたが、「過失は認め難い」と賠償責任を否定しています。また、差し止め請求も棄却されました。

(3)東京都医療費助成制度提案の具体的内容
□対象地域:都内全域
□対象疾病:気管支ぜん息(一審判決で因果関係が認められた「気管支ぜん息」を対象)
□対象者(都の大気汚染健康障害者医療費助成条例に準拠)
□現に上記疾病にかかっている者
□東京都の区域内に引き続き一年以上住所を有する者
□医療保険各法により医療に関する給付が行われる者
□公健法・都条例等による認定者を除く
□喫煙者を除く
□助成範囲:入院時食事療養費を除く本人負担分を全額助成
 □助成総額:約40億円/年
 □助成に対する負担割合:都(3分の1)、国(3分の1)、首都高・メーカー(各6分の1)
 □別に制度運営経費が発生
□所得制限:所得制限なし
□期間:本制度の枠組みは5年間維持し、5年後に検証のうえ、見直しを実施
□認定審査:認定審査を実施(審査方法、支給方式等詳細は今後検討)

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【判例情報ウオッチング】
新しい情報はありません。

ISO14001
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「6月25日から7月1日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2007.7.1
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「6月25日から7月1日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2007.7.1