Regulation と Autonomy

2011-06-29 21:56:56 | 医療用語(看護、医学)
  professional regulation の訳は、「専門職規制」だが、これは、制度管理のことだ。訳は「規制」でよいが、専門職者を管理する規則のことなので、資格試験や免許、登録、免許更新といった制度管理のことを指している。訳す場合、状況に合わせ、「規制」、「制度管理」、「規則」など、使い分ける。

 国によって、また、同じ国でも州によって、こうした制度管理が異なることは、知られている。ただ、海外の話を聞くときに、「それは国や地域によって制度が異なるから」と片付けてしまうのではなく、ベースにある考え方の違いを理解して、制度の違いを考えることは大変重要だ。

 看護師や医師など、医療職者の制度管理で日本独特の特徴は、政府が管理していることだ。看護師では、保健師助産師看護師法が統括法で、国家試験と資格認定は厚生労働省が行う。

 他方、世界の基準的な制度管理は、専門職者の自主団体が資格試験を行い、資格認定をして、その資格を国に国家資格として認めさせるという制度を採っている。これは、専門職者のautonomyに基づくものだとされている。autonomyは、「自律」、「自治」と訳していることが多いようだが、「自己決定」「自己裁量」のことだ。

 専門職規制機関のことを、council、board、credential center などと言っている。資格認定機関のことだ。(英国の看護助産審議会:Nursing & Midwifery Council(NMC)、タイ看護審議会:Thailand Nursing and Midwifery Councilなど)
 こうした規制機関は大体が、当該国の看護師協会の関連団体なのだが、監査を入れて透明性を高めて、統治されている。

 各国で、政府の関与のレベルは異なるようだが、とにかく、世界的なレベルで言われる制度管理は自主規制なのだ。その背後にあるのは、専門職は自分たちで制度を管理していくという考え方である。

 政治的な思惑に左右されないということなのだが、これには経済が関わる。一例を挙げると、現在、世界各国ではコストカットの嵐が吹き荒れ、それが医療にも向かっている。特に看護は、病院の中ではともすればコストセンターだと見なされる。ナースよりも教育年限が短く賃金が安いけれども、ナースと同じ仕事をする、例えばphysician assistant(医師アシスタント)といった新しい職種がいつの間にかできて、ナースではなくてそうした人が雇用される。現実に、先進国、途上国の両方に生じていることだ。その結果、患者の安全が脅かされている。

 専門職として歴史もあり、制度として確立されていても、それは決して安泰ではなく、常に、そのような政治経済的な要素に影響される。そのために、政府の関与は極力減らして自主管理をするが、政府には、それを国家資格と認めさせる力を専門職は持たなければならないという考え方が、世界の方向であるようだ。現在、看護法すらない途上国が regulation を整備しようと努力をしている。彼らが目指し、そして国際団体がその実現を支援している制度管理のモデルは、その流れに沿ったものである。



 
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