惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

J・G・バラード

2009-04-20 21:03:44 | 本と雑誌
 19日(日)に逝去されたとか。享年78。

 たぶん短篇「溺れた巨人」1作でも、忘れることの出来ない作家になったはず。しかし『ヴァーミリオン・サンズ』という輝かしいオムニバス集があるので、1作だけといわれればこちらを挙げることになるでしょう。

 初期の破滅長篇群では『燃える世界』が好き。
 中期(?)の『クラッシュ』も強烈でした。
 後期では『太陽の帝国』と『女たちのやさしさ』でしょうか。

 SFそのものを考える上でも、常に刺激的な作家でした。彼が唱えた「インナー・スペース」や「コンデンスト・ノヴェル」という概念は、想像力と現実と芸術とを考える際の貴重な手がかりとなります。

 描き出す世界の異様な美しさと、登場人物たちを衝き動かす無意識の力の組み合わせはバラードだけのもの。比類なき世界を築きました。
 ハインライン、アシモフ、クラークは自分たちを「世界3大SF作家」と呼びましたが、私としては、バラード、ディック、レムという3人の取り合わせもあるのではないかと思っています。

 素晴らしい作品を読ませてくださってありがとうございました。