デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/6月15日(日)~6月21日(土)

2008-06-22 03:43:37 | Weblog
■6月15日(日)~6月21日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★青々と杉てっぺんを指し涼し/黒谷光子
すっきりとして、涼しさが直に伝わってくる。青々とした鉾杉の指すものは、「てっぺん」。ほかのものが無く、それが良い。(高橋正子)

【特選/5句】
★新緑の向こうに寄せる波の音/高橋秀之
新緑と波の音の取り合わせが、きれいだ。明るさと静かな快い音に満たされる。(高橋正子)

★立葵透かせて遠き青峯みる/大西 博
真っすぐに立った立葵とそのひらひらとした花びら。可憐な花の間から、遠い青峯を望む夏ならではのすがすがしさ。遠近のある色彩さわやかな俳句。(高橋正子)

★紫陽花に空の明るみ始発待つ/甲斐ひさこ(正子添削)
始発ですから朝五時前後でしょう。その電車を待つ間の紫陽花の空が明るみ初めています。朝暁けの紫陽花の色の変化に作者は目を凝らしている様子がよく伝わります。(大西 博)

★浜木綿の咲けば海風雲を生み/河野啓一
「海風雲を生み」のフレーズが季語にぴったり,自然の移り変わりが楽しく映り、梅雨時の浜辺が眩しいほど伝わってきます。(前川音次)

★降り足りてあつけらかんと梅雨の月/宮本和美
水害をふくめペーソスと皮肉があつけらかんと月に表現され、感心しました。(奥田 稔)

【入選Ⅰ/16句】
★紫陽花の限りなく雨を置きにけり/竹内小代美
梅雨の雨を「限りなく雨を置き」と詩的に詠んだ。作者の主体的な思いに無理がない。「紫陽花」であれば、「限りなく雨を置き」が効いた。季語の「紫陽花」も一句の中にあって、詩的だ。(高橋信之)

★酢を振れば鮓飯透けて香を放つ/柳原美知子
生活の中に詩がある。いい感覚だ。鮓(すし)は夏の季語。(高橋信之)

★頂は雲湧くところ夏の山/篠木 睦
夏を描いて開放的だ。「頂」、「雲」、「山」、どれもが当に「夏来たれり」の大きな風景だ。(高橋信之)

★大き葉にまだ守られて青葡萄/網本紘子
まだ熟していない固くて青い葡萄。葡萄畑や葡萄棚などで、葡萄の様子を見ると今年の若葉はまだ小さい。つけた青葡萄の実は、大きな葉に守られ、育まれて来ているんだということがよく分かります。共感した一句です。(飯島治朗)

★むらさきの雨の明るさ花菖蒲/大給圭江子
うっとうしい梅雨ですが、花菖蒲に降る雨もしっとりと花の色を濃くしいいなと思います。その情感が句によく滲み出ていて好きな句です。(大西 博)

★熟れて落つ杏に土のバネ軽く/藤田荘二
杏の実が熟れて地上に落ちる様子がまるでボールが跳ねるように詠まれている素敵な句と思い選びました。(小河原宏子)

★活けてより紫陽花大輪青深む/藤田裕子
紫陽花は色の変化が楽しめる花です。大輪の紫陽花を大きな壺に活けられたのでしょう。しばらくして花を見るとさらにその青さが深みを増している、花を育て花を活け花を愛でるその喜びが感じられ、明るい気持ちになります。(多田有花)

★駄菓子屋の台に背伸びの夏帽子/尾崎 弦
いよいよ夏、子供達が特に元気いっぱいになる季節です。現代ほど飽食の時代になっても、やはり自分で選んで自分でお金を払う「買い食い」は、大人は嫌がるかも知れませんが、子供にとっては大変魅力のある社会勉強ですね。もちろん夏帽子をかぶった手には、虫取りの手網もしっかり握っています。(桑本栄太郎)

★万緑の中に水路の音澄めり/小川和子
満目ことごとく緑の中にあって、流れる水路がとても爽やかな風景です。そしてその澄んだ水音が、いかにも明るくみずみずしい季節を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★野仏に青々揺れる額の花/小河原宏子
野仏を優しく慰めてくれるような、額の花の清らな青さと揺れようです。野仏へ向けられる、慈愛の眼差しがあればこその光景なのでしょう。(藤田洋子)

★向日葵のたくさん咲ける我が狭庭/堀佐夜子
早やも庭に開いた、たくさんの向日葵の花。梅雨どきにこそ、身近に咲いた向日葵の彩りに励まされ、心明るく、日々を過ごせそうです。(藤田洋子)

★はまなすの蕾膨らむオホーツク/大山正子
オホーツクの海を背に開花前のはまなすの群落 、雄大な自然美です。夏の到来の北海道に、心膨らむような明るさを感じます。(藤田洋子)

★山際へ広ぐ植田の青青と/飯島治朗
植えられたばかりの、みずみずしい稲苗。その植田がずっと遠く、山の際まで広がっているという。田園の風景を大きく捉えた清涼感のある句です。(小西宏)

★葉叢から陽光まぶし梅をもぐ/古田敬二
早春を代表する花である梅は、梅雨の時期に実梅の収穫期を迎えます。日差しがもっとも強いころであり、青々と茂った葉の中に手を差し伸べて丸い梅をもいでいく、収穫の楽しさ喜びがあふれています。(多田有花)

★空に鳥地に蝶が舞い夏至暮るる/矢野文彦
空に鳥が舞い、地には蝶が舞う。地球は、そういった小さな、健気な生きものを自由に舞わせて夏至という日が暮れる。(高橋正子)

★流鏑馬の馬を鎮める清水かな/村井紀久子
流鏑馬で走り抜けた馬は、その後、清水を飲んで、息を鎮める。清水の清らかさと、何事もなかったような馬の静かな姿の相関して捉えられている。(高橋正子)

【入選Ⅱ/17句】
★平らかに雨を受け止め額紫陽花/池田多津子
その地に咲いている額紫陽花の雨を受けとめている風景が「ありのまま」ということを感じさせてくれますね。好きな句です。(丸山美知子)

★海鳥の吹かれ流れて夏の暮れ/志賀泰次
海鳥が風に吹かれ流れにまかせて遊んでいる夏の夕暮れの様子が目に見えてきます。(小河原宏子)

★青鷺のしんと立ちたる用水路/多田有花
水のほとりに片脚で音もなく立っている青鷺。ちょっと田舎に行くとよく見かける風情ですが、「しんと立ちたる」というさりげなく、それでいてぴったりの表現に共感しました。たいへん勉強になりました。(河野啓一)

★ふくらみし夏日まぶしくビルに落ち/奥田 稔
梅雨の最中にこそ感じられた夏日のまぶしさなのでしょう。辺りの空もおのずと色付いて、明るく美しい街の夏の落日です。 (藤田洋子)

★鳥海の滴り落つる飛沫かな/丸山美知子
鳥海山は秋田県と山形県の県境にある標高2,236メートルの活火山です。出羽富士とも呼ばれ、東北地方を代表する名山です。今の時期であれば多くの高山植物が咲き始めているでしょう。その山からの流れの清冽さを思います。(多田有花)

★昼顔の垣根に纏う狭庭かな/渋谷洋介
ご自宅で昼顔を栽培していらっしゃるのでしょう。淡いピンクのろうと形の花が昼間の庭を彩ります。それを眺めることも梅雨の時期の楽しみのひとつでしょう。(多田有花)

★ベランダに朝顔の苗つる太く/小西 宏
朝顔は初夏に種を撒きます。ベランダで、あるいは日よけも兼ねて朝顔を育てていらっしゃるのでしょうか。真夏の朝に開く花を思いながら、育っていく朝顔にむけておられる優しいまなざしが感じられます。(多田有花)

★むつごろう跳ねる干潟や梅雨晴間/國武光雄
日本では有明海と八代海に棲むムツゴロウ。胸びれではったりジャンプしたりして移動します。なんとなく、ユーモラスですね。食材としてもやわらかくおいしいとか。一度食べてみたいものです。(多田有花)

★玉葱の白く網透き軒の下/桑本栄太郎
収穫した玉葱を風干する風景がまだ見られるのでしょうか。つるされた網を透して、真っ白な玉葱が軒下に並んでいるのでしょう。(小西宏)

★友と会う湖畔の宿や黴におう/前川音次
古くからのお友達と宿を共にし、旧交を温められたのでしょう。「湖畔の宿」や「黴におう」といった措辞に、しずやかな懐旧の念が広がり伝わってきます。
(小西宏)

★往来に負けじと飛び交う親ツバメ/上島祥子
人も車も激しく行き交う街中、その空を縦横に、「負けじと」交錯する親ツバメの姿に、夏の大きなエネルギーの兆しを感じます。(小西宏)

★浴衣裁つ母の鋏の音軽し/上島祥子
喜びがある。「浴衣裁つ」季節は、子への喜びであり、孫への喜びである。(高橋信之)

★ふくらみし夏日まぶしくビルに落ち/奥田 稔
夏の日がビルに落ちる都会の風景。それが無機質にならず、「ふくらみし夏日」と捉えられて、せつなさも感じられる抒情が加わった。(高橋正子)

★ランドセルしょう車椅子枇杷は黄に/川名ますみ
車椅子に乗った子がランドセルをしょっていることに、心を動かされる。見れば枇杷は黄色に色づき、季節はやさしく子を見守るようだ。(高橋正子)

★朝顔苗子との約束鉢へ取る/祝 恵子
朝顔の苗が育ったら、分けてちょうだいという子のとの約束。植え替えにちょうどいいころになったので、鉢に分け取った。ささやかな行為の楽しさ。たくさんの朝顔が咲いて夏の朝を彩ってくれることだろう。(高橋正子)

★郭公や浅間に向かい深呼吸/小口泰與
郭公の声を聞き、夏がきたことを確かに知る。緑の深まる浅間に向って、深く息を吸う。しんとした夏の朝の空気が流れる気分はいいものだ。(高橋正子)

★どの家も窓開け放つ梅雨晴れ間/吉川豊子
束の間かもしれない梅雨の晴れ間。それを待っていたように、どの家も窓を開け放って、風を通す。きらきらと耀く太陽、通り抜ける風。梅雨の晴れ間の開放的な気分が気持ちよく伝わる。(高橋正子)

入賞発表/6月8日(日)~6月14日(土)

2008-06-15 00:12:03 | Weblog
■6月8日(日)~6月14日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★咲きのぼる空の青さよ立葵/大山 正子
「咲きのぼる」が上五にあるが、初め、その主語は示されない。咲きのぼる場所が続いて示され、それが青い空であると解る。そこまでで、読者は、青空をバックに下から咲いてゆく花を想像する。それが立葵であることに納得するわけである。、(高橋正子)

【特選/5句】
★色足らぬ梅雨夕焼けや湖の道/前川音次
厚い雲に覆われた梅雨時の夕焼け。湖の見える道を辿りつつ何かもの足らぬ思いの詠者に共感を覚えます。やはり夕焼けはぎんぎんぎらぎらと真っ赤なのが良いですね。(河野啓一)

★棹突きて蛍の川へすべり出す/渋谷洋介
蛍狩とか蛍舟とかの季語もありますが、「蛍の川」と一語で言ってのけた辺りがとても良いとおもいます。(前川音次)

★夏蒲団ふしぎな夢を見て目覚む/多田有花
不思議な句、楽しい句、夢が広がります。色んな夢を想像させます。(前川音次)

★青笹の粽一皿届けらる/丸山美知子
ご近所から届けられたのだろう。皿にのった青笹の粽に思わず爽やかな笑みがこぼれる。日常生活をリフレッシュしてくれるのも、こういったことからと思える。(高橋正子)

★河鹿鳴くせせらぎの水汲み帰る/河野啓一
河鹿は、清流で鳴く。河鹿の声にますます清らかに思えるせせらぎ。そんなせせらぎがある嬉しさ。その水を汲む楽しさが伝わる。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★梅雨の海遠き処にまず一灯/竹内小代美
海の広がりを感じる句です。遠くに灯った灯は漁火なのか、それとも灯台か、
あるいは内海であれば対岸の人家か、さまざまなことが想像できます。(多田有花)

★山影を映す植田のうすみどり/桑本栄太郎
「植田のうすみどり」、山影を映して、のどかな田園風景を想像します。絵画をみるようで、好きな句です。(吉川豊子)

★黒南風といふも明るき吉備平野/宮本和美
使い慣れない"黒南風"という言葉に魅力を感じる私です。梅雨時期に見せる風だそうですが、梅雨のない北国では文字と解説の文章からのイメ-ジしかありません。黒南風が吹いても吉備平野の広がりに明るさを感じ取った処に豊な田園風景を想像します。(志賀泰次)

★朝顔の双葉へ児ら水たっぷりと/飯島治朗
自分の、或いは子や孫の小学生のころの思いにいっぺんに引き戻されてしまいます。どこにでもありそうな景ですが今朝のこの句は何処か新鮮に感じる。(前川音次)

★活けてより紫陽花大輪青深む/藤田裕子
活けてからも色を変える紫陽花。大輪の青が日ごとに深まるのを見るのはうれしいですね。部屋の印象も違ってくるようです。(池田多津子)

★熊除けの鈴と歩めり岩清水/小口泰與
熊除けの鈴が必要なほど深い山中の岩清水。さぞ清冽なことでしょう。鈴の澄んだ音色が、いっそう涼しさを深めます。(川名 ますみ)

★羊歯青し飛沫絶えざる滝の下/川名ますみ
良く見かけます、滝の飛沫が絶え間なくあたり青く水々しく光ってる。涼しそうな、ひんやりとした空気を感じます。(大給圭江子)

★早苗田の陽を燦々と散りばめり/大給圭江子
苗が整然と植えられた田、田水が夏の日差しに輝いています。大都会の中心部以外ならまだどこでも水田の風景は身近に見られることでしょう。この時期の風光を詠われたさわやかな句です。(多田有花)

★荒梅雨に張らる地縄の弛みなし/尾崎 弦
間もなくそこに新しい家が建てられます。更地に張られた地縄、地縄を張ると、改めてその土地の様子が建築関係者の方にははっきり見えるそうです。とても大事な建築工程のひとつなのですね。激しい雨の中ぴんとはられた地縄にいろいろなものが見えてきます。(多田有花)

★風の来て若葉を白く吉田山/古田敬二
若葉のみずみずしい初夏の季節、折から一陣の風が来て葉裏を返す。「吉田山」には、よき日々の、高邁な理想を想起させるところがあります。(小西宏)

★梅雨晴れ間鳥飛び交いて影落とす/井上治代
飛び交う鳥たちも、梅雨の晴れ間を喜び、楽しんでいるようです。明るい晴天の
日差しがあればこその、鳥の動きとその影です。(藤田洋子)

★境内に咲けばみな供花濃紫陽花/黒谷光子
境内に咲く濃紫陽花が一際鮮やかな美しさです。供花となる一花一花の紫陽花に、心静まるような浄らかな空気を感じます。(藤田洋子)

★山影を映す植田のうすみどり/桑本栄太郎
田水に映る山影も美しく、田植えが終わったばかりの植田の「うすみどり」も清々しく、心澄み渡るような状景です。(藤田洋子)

★枇杷熟れて色の揃いし今朝の晴/柳原美知子
朝空に、熟れた枇杷の実の一つ一つが見えてくるようです。梅雨どきに、枇杷の実りの揃う彩りが、嬉しく明るい朝の晴です。(藤田洋子)

★しぶき上げ三連水車田水張る/國武光雄
水しぶき上る三連水車ならではの勢いに、清涼感あふれる日本の美しい水田の風景を感じます。(藤田洋子)

【入選Ⅱ/15句】
★明易のアマリリス咲き目覚めけり/大西 博
明け易くなり、眠気のさめやらぬ身を、アマリリスの鮮やかな大輪の赤は、覚醒させてくれそうです。白々と明け始めた庭の美しさも目に浮かびます。(柳原美知子)

★朝もぎの露おく茄子の色の冴え/篠木睦
朝早く切り取った茄子には露がかかっていて、色も紺色というか、茄子の瑞々しい色で輝いていたことでしょう。朝採りの茄子を上手く表現した素敵な句と思いました。(小河原宏子)

★クローバー足元にしてバーベキュー/吉川豊子
バーベキューを楽しそうになさっている足元にクローバーが咲いてる爽やかな光景が伝わります、美味しそうですね。(大給圭江子)

★梅雨深し校舎抜ける風は青/池田多津子
本格的な梅雨の時期、校舎を吹き抜ける風は新緑の匂いを残す青葉風である。簡潔に景を詠まれていて下五の"風は青"と言い切った潔さが梅雨を払拭した心地よいものに感じさせている好きな一句です。(志賀泰次)

★即売の野菜にしばし夏の蝶/奥田 稔
取りたて野菜の売り場の光景でしょうか。「しばし野菜に蝶」新鮮さがわかりますね。(祝恵子)

★郭公の鳴けば豆蒔く頃合と/志賀泰次
農作業の目安は地域によってもさまざまだと思います。豆を蒔くのに待っていた郭公の声が聞こえました。広々とした畑に郭公の澄んだ声が響きます。(池田多津子)

★陽だまりのめだかの学校ビオトープ/高橋秀之
学校にビオトープが作られているのですね。その中ではめだかたちが群れをなして泳いでいるのでしょう。日だまりのほっとする空間です。(池田多津子)

★梅雨晴れの水色スカート女学生/小河原宏子
梅雨の時期は少しの晴れ間もうれしいものです。女学生の溌剌とした姿がうれしく、水色のスカートも軽やかで涼しさを感じます。(池田多津子)

★リビングに藺草の匂い衣更/小西 宏
リビングルームに藺草の敷物が敷かれました。その新鮮な香りが夏本番の到来を知らせてくれます。服装も半袖で夏の装いになるように、家具調度も衣替えですね。(多田有花)

★待画面一面溢るる菖蒲かな/堀佐夜子
デスクトップの待機画面をハナショウブにされたのでしょう。画面いっぱい濃淡さまざまな花々が咲きそろっています。パソコンの上でも季節感を大事にしたいと思われている作者の姿勢がよくわかります。(多田有花)

★一面のクローバー青し梅雨夕焼/甲斐ひさこ
広々とした場所一面にクローバーが茂っているというのは、開放感に満ちています。梅雨の晴間、夕焼けがその上空を覆っています。夕暮れが遅いこの時期、壮大な光景です。(多田有花)

★静けさや若葉の奥の能楽堂/上島祥子
能楽堂からは地謡の声が漏れ聞こえてきたりして、必ずしも音がないというわけではありません。しかし、しっとりとした若葉の庭の佇まいには、濃厚な「静けさ」が漂っているように思えます。(小西宏)

★山門をくぐる紫陽花寺は雨/矢野文彦
奥深い古刹の山門をくぐる。それだけで、えに言われぬ、きっぱりとした思いに満たされます。その門をくぐれば、紫陽花の庭がしっとりと雨に濡れているのでした。(小西宏)

★並び居るわらべ地蔵は木下闇/祝恵子
ふだん何気なく通り過ぎるわらべ地蔵のすがたも、いつの間にか深い木陰に見るようになりました。わらべ地蔵はその暗みの中に、静かにこちらを向いて並び立っています。(小西宏)

★馬鈴薯の花に朝風とおり過ぐ/小川和子
ジャガイモ畑は広々とした景観を想起させます。その花の列を涼やかな朝風が吹き通り、彼方へと去っていきます。彼方にはまた、遠大ななにものかを見る思いです。(小西宏)

入賞発表/6月1日(日)~6月7日(土)

2008-06-07 23:51:35 | Weblog
■6月1日(日)~6月7日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★水色の増える教室六月に/池田多津子
六月になると、教室には水色が増える。教室に貼られた絵には、海や魚、あじさい、水色の洋服を着た子などが描かれているのだろう。教卓の花も涼しそうだし、さっと見回しても水色が増えて、梅雨の季節も涼しそうで明るい教室になった。(高橋正子)

【特選/5句】
★麦刈られ火の見櫓の高きかな/國武光雄
晴れた日の里山で一刈りごとに香ばしい麦の香りが立ちこめる麦刈りがいっせいに行なわれ、広々とした麦畑の彼方に、今まで、余り関心がなかった火の見櫓が堂々と立っている姿に感激した作者を見ることが出来ます。(小口泰與)

★飛び散りて上る噴水星の夜/竹内小代美
素敵な星空の下噴水が高く上り飛び散ってる水に星の明るさが見えてて綺麗な様子も想像します。(大給圭江子)

★板の間も畳も今朝の素足に触れ/多田有花
素足に触れるひんやりとした感触の心地の良いこと、夏の到来ですね。(大山正子)

★渓水の匂う山蕗届けられ/黒谷光子
届けられた山蕗に渓流のささやきが伝わるような瑞々しさを感じます。(志賀泰次)

★星涼し父の土産の匂袋/川名ますみ
星の涼しさに、ほのかに匂う匂袋。優美で涼やかな世界が広がるが、匂袋が父の土産と言うことで、温かみのある現実の世界が持ち込まれた。それが、この句を支えているのがよい。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★青葉風かくれんぼの声運びおり/大給圭江子
爽やかな季感を感じさせる句でその情景がよく出ています。(篠木 睦)

★夏蝶に逃げられし児の一途/大西 博
逃がしてしまった蝶を必死に追う子どもの真剣な顔が目に浮かびます。健康的で愛らしい姿ですね。(大山正子)

★仏事終え山を離れる梅雨の雲/藤田洋子
仏事を無事終えられ、ふっと安堵なさった気持のあらわれが深みのある素敵な詠みになった一句と思いました。(志賀泰次)

★墨を磨る欅青葉の風入れて/柳原美知子
外は明るい五月の晴天。ゆっくりと墨を磨るのも書に向かわれるひとつのプロセスです。穏かな風が茂った欅の葉を揺らしていきます。美しい時間です。(多田有花)

★青葉闇通り抜ければ空真青/堀佐夜子
ほの暗い木々の下を通り抜けて出会う、空の明るい青がまっさらに感じられる。陰から明へ移り変わりる眩しさが新鮮です。自分もまた同じ世界にいるようです。(網本紘子)

★僧の列すたすた来る京薄暑/甲斐ひさこ
私も数回見かけた事がありますが、大きな笠を頭に載せ、若い托鉢僧が5~6人一列に並んで移動する様は、あっけないほど「すたすた」との感じがあります。この時季の京都近辺ならではの風物ですね。(桑本栄太郎)

★入梅や墨痕太き古代文字/尾崎 弦
「入梅」にも「古代文字」にも黎明の響きがあり、「墨痕太き」の韻律が奥深いイメージを喚起してくれます。(小西宏)

★最北の平野に動き田の植わる/志賀泰次
広々とした北海道の地に人や車両の動きを見る。それはようやく始まった最北の平野の田植えだったのだ。人と季節と自然の姿をおおらかに伝えてくれる句です。(小西宏)

★自転車の弾む母子の夏帽子/大山正子
明るい初夏の、軽やかな親子連れの自転車姿が、いきいきと描かれていて素敵です。(小西宏)

★次郎吉の墓つきとめぬ木下闇/奥田 稔
権力に立ち向かう義賊を待ち望む庶民の思いから生まれた次郎吉の墓を、ほの暗い茂みの下に突き止めたという。その思いは、なにとはなしに、清涼感と安らぎを伝えてくれます。(小西宏)

★梔子の花に明るき西の空/小西 宏
香気ある梔子の浮き立つばかりの白さ を感じます。その際やかな純白に広がる西方の空が、一際明るく梅雨の最中の嬉しさです。(藤田洋子)

★樹々涼し森の中ゆく往き帰り/小川和子
下五の「往き帰り」がいい表現だ。「森の中」を詠んで、そのどこもがいつも、「樹々涼し」なのだ。(高橋信之)

★筆太の字を染め上げて夏暖簾/宮本和美(信之添削)
夏の元気を「筆太の字」にいただく嬉しさ。暖簾が涼しく揺れている。(高橋信之)

★田植終え透き通る風吹き抜ける/小河原宏子
田植が終ったあとの安堵感のある田の風景。植えられたばかりの苗は、水に浮いているようだが、これからしっかりと根付く。風も透き通るとは実感。(高橋正子)

★土の香や子ら一同に甘藷植う/飯島治朗
子どもたちが一同に揃って、甘藷の苗を植えつける。おぼつかない手つきながら作物を植える喜び、土に触れる楽しさがある。(高橋正子)

【入選Ⅱ/18句】
★紫陽花やジグザグに行く裏小路/上島祥子
6月はどこへ行っても紫陽花のオンパレード。「ジグザグに行く」が裏小路の様子を的確に表している。(古田敬二)

★からり咲く南瓜の花や野の真昼/網本紘子
南瓜の花、オレンジ色がかった黄色い花だったな?美しい花だったな?とそんな記憶があります。間違っていたらごめんなさい。「からり咲く南瓜の花」沢山の収穫が期待できそう、、楽しみです。下語が効果的で好きな句です。(吉川豊子)

★窓明かり青田をすべる終電車/丸山美知子
静かな夜の田園風景がすっと浮かびました。心地よい句と思いました。(竹内小代美)

★梅雨入りや生命あるものみな色に/桑本栄太郎
梅雨の頃には、しばしば「鬱蒼」という言葉が浮かびます。鬱陶しい気分を思いがちですが、命の盛んな様を云うのですね。草木の茂りを初め「生命あるもの」が、こぞって色を深めるために、梅雨時は仄暗いほど彩りが濃いのだと、御句にお教え頂きました。(川名ますみ)

★さよならの声聞く公園夕涼み/高橋秀之
何かほっとする一日の終わりを感じ、幸せな満ち足りた気持ちになりました。子供たちがお家に帰ったのでしょうね。(丸山美知子)

★夏めきて鈴鹿稜線真青なり/篠木睦
鈴鹿の山々の稜線の青葉が滴る美しい情景を思います。(大山正子)

★過ぎさりし昭和かたりつ豆ご飯/吉川豊子
平成も20年になり、長かった昭和もすでに遠くなりました。あまりにもいろいろなことがあった昭和という時代、それも遠くなれば懐かしく、あのころに思いをはせて話が弾みます。「豆ご飯」が昭和にぴったりです。(多田有花)

★髪切るや鏡のおくの五月闇/前川音次
髪を切ってもらっている間は、自然と自分の姿、および背景としばらく向き合うことになります。その鏡の中に広がる闇は自分の背後に広がるものです。ふとした日常の中に垣間見る別次元を思わせます。(多田有花)

★今年竹揺れて耀く梅雨晴れ間/河野啓一
生長した若竹がすがすがしい青さをみせて空へ立ち上がっています。そのすっきりとした姿が梅雨晴間にうれしく、新鮮な思いで見つめておられる作者がいます。(多田有花)

★五月雨や稽古に励み賑やかに/松本千恵子
何のお稽古なんでしょう? 子どもたちか、あるいは大人? 外は雨ですが、部屋の中は明るい活気に満ちています。その対比がいいですね。(多田有花)

★ぶらんこを空まで漕げよ夏の陽に/志賀泰次
梅雨季とはいえ、晴天の陽差しは眩しいほどの輝きです。夏の陽差しのもと、広がる空へ「ぶらんこを 漕げよ」の呼びかけに共感しつつ、心明るく広やかな気持ちにさせていただきました。(藤田洋子)

★衿元へ初夏の風入れ遊歩道/渋谷洋介
日常生活を詠んで、気負ったところがない。「初夏の風」が快い。(高橋信之)

★純白の紫陽花多し疎水道/古田敬二
疎水に沿う道に、偶然であろうけれど、純白の紫陽花が多い。哲学の道などを思い浮かべるが、そうそうとした感じが残る。(高橋正子)

★風にのる重さありけり梅雨の蝶/矢野文彦
晴れた日などは、蝶は、ひらひらと飛んで重さを感じさせないが、梅雨の蝶となれば、梅雨を含んだような羽の重さを感じる。その重さも、「風にのる重さ」なのでまことに梅雨の蝶らしい。(高橋正子)

★葉丈こえ菖蒲の蕾伸びあがる/祝 恵子
緑色の艶やかな葉の中から 高い花茎を立てる菖蒲。「伸びあがる」蕾に、これから優美な花を開こうとする勢いを感じ、とても清々しく目に映ります。(藤田洋子)

★白樺の梢揺れおり夏の霧/小口泰與
高山や高原に発生する夏の霧。立ち込める夏霧の山中に、白樺の揺れも美しく、しっとりと心落ち着く静かな状景を感じます。 (藤田洋子)

★山里に植田広がり空深し/井上治代
山里にも田が植えられて、あの田この田とつながって広がりをもつ。水面を渡る風にそよぐ早苗目にすずしい。山里の植田の静かさに対して、空はと言えば深い。静かさと深さが体に沁みるようだ。(高橋正子)

★夏料理すっきり盛られ宴に入る/藤田裕子
これから宴が始まろうとして並んだ夏料理。夏料理は目にすっきりと、涼しそうなのがいい。たのしい宴への期待感があわせて感じられる句。(高橋正子)

入賞発表/5月25日(日)~5月31日(土)

2008-06-01 00:04:10 | Weblog
■5月25日(日)~5月31日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★虹立ちてアイリスすっくと揃い咲く/丸山美知子
虹とアイリスの取り合わせが、欧米の抒情詩のようであって、新鮮である。虹の色を一つもらったようなアイリスの花の色。すっくと立つ姿が毅然として、それらが触れ合うことなく己を保ちながら揃い咲く様がすっきりとしている。(高橋正子)

【特選/5句】
★新緑の水突っ走る伊予の山/大西 博
新緑の中を走る水の勢い。伊予の豊かな植生が多量の水をはぐくんでいる結果でもあろう。風土を詠って、潔い。(高橋正子)

★茅葺きの山門入れば栃の花/渋谷洋介
茅葺の山門にも風情があるが、さらに印象的なのは、大樹であろう、大きな葉に咲く栃の白い花である。梅雨前のこの季節の情緒がよく表されている。(高橋正子)

★子らの声朝はや響く柿若葉/小河原宏子
日が昇るのが早くなった。まだ朝早いというのに、子どもたの元気な声が響いている。柿若葉はてらてらと耀き、天気もよく、なにもが元気に満ちるときである。(高橋正子)、

★帰り路はいつしか晴れて風青し/甲斐ひさこ
家を出られる時は雨が降っていたのでしょう。用事を済ませて戻られるころには雨もやみ、青空が広がってきました。今頃の季節の雨上がりは気持ちがいいですね。(多田有花)

★葉桜や風吹き抜けて吹き抜けて/矢野文彦
「吹き抜けて」を重ねて使ったところ感心しました。葉桜を揺らしながら爽やかな風が吹き抜けていく感じが読み手にはっきり伝わってきます。(小河原宏子)

【入選Ⅰ/15句】
★手向けられし百合水切りし又挿しぬ/柳原美知子
手向けられた百合の花が永持ちし永く香りたつように水切りをして水揚げを良くしてあげた。詠み手のあらゆる面での優しさがそのまま伝わってきます。好きな句。(前川音次)

★若竹の力みなぎるふとき節/吉川豊子
通勤のバスの中から若竹の姿を毎日眺めていますが、節ごとに白い粉を噴き青く真っ直ぐ伸びた姿は、全く力みなぎる若さそのものです。(桑本栄太郎)

★しゃぼん玉歪みのとれて風にのる/志賀泰次
ご近所の子供達が遊んでいるところを見ておられたのでしょうか。吹き出しはじめと玉になって飛んでいく様が判り、一緒に喜んでる詠者が見えてきます。(祝 恵子)

★空きベンチ座りましょうよバラの香と/祝 恵子
バラの花を前にお友だちとでしょうか、座ってゆっくりながめましょうと。何か不思議な位、私も月曜日のことですが、このように友とベンチに座りました。さわやかさと、やさしさを感じる好きな句です。(小川和子)

★春雨や遠野の谷戸の古水車/奥田 稔
春雨、遠野、谷戸、古水車と、美しい連想を誘う日本語四語が音符のように句の中に散りばめられて、独特のリズムと心地よさが感じられました。いろいろな御句に良き人生と旅を読ませていただいて有難うございます。(竹内小代美)

★梅雨に入る雨の匂いの新しき/池田多津子
昨日、四国管区梅雨宣言が発表されました。そういえば、梅雨の雨だという実感に句の細やかさを感じました。(大西 博)

★代田澄む雲と夕陽と山の影/桑本栄太郎
この時期、さまざまのものを映して静まっている代田は風景を一変させます。広々とした水田地帯ではにわかに大きな湖ができたような雰囲気になります。棚田はまた異なる趣があります。その情景を見事にとらえられています。(多田有花)

★白百合の活けられるより香の立ちぬ/藤田洋子
厳密に言えば、白百合は、活けられる前からも匂っているわけであるが、活けられると、本来の清楚な姿となって、香りがいっそう感じられるというのだ。(高橋正子)

★朝日射す御堂へ今日は豆御飯/黒谷光子
毎朝の仏飯に、今日は季節の香りいっぱいの豆御飯をお供えした。御堂には、すがすがしい朝日が差して、まことに気持のよいことである。(高橋正子)

★蒲公英の絮半球となり夕日/小西 宏
蒲公英がまん丸い絮となって、一日を過ごすうちに、風に吹かれて、半分はどこかへ飛んでいった。残りの半球を夕日がやさしく包んでいる。今日の終わり野の光景である。(高橋正子)

★万緑や半身で生きて七年に/河野啓一
半身で生きては、ご病気で半身不随になられたということであろうが、それも七年になる。万緑の健やかさに励まされることであろう。(高橋正子)

★薔薇の園香りもろとも撮りにけり/國武光雄
薔薇園の数え切れない薔薇の花。香りが漂い、写真に撮れば、その香りごと写真に収められる気がする。芳しい薔薇の写真となって出来上がることだろう。(高橋正子)

★夏めくや藻の立ち上がる湖の底に/宮本和美
水辺が慕わしいころになってきました。水底に揺れている藻、そこでいっしょに揺れている日の光と波、明るく気持ちのいい湖の情景と、穏かに水を見つめられている作者の姿が浮かびます。(多田有花)

★時鳥鳴く追分の夜明けかな/大山正子
百人一首にある「ほととぎす鳴きつる方をながむれば」の歌を思い起こしました。追分は、中山道の追分宿でしょうか。この朝、月は残っていたのでしょうか? 夏の朝のさわやかさが匂うようです。(多田有花)

★紫陽花や葉脈しかと張りをもち/藤田裕子
紫陽花の花ではなく、葉に目を向けた句。あの大きな毬のような花を浮かばせ、支えているかに見えるのが、しっかりとした葉である。葉脈がしかりと通り、大きな葉に力がある。(高橋正子)

【入選Ⅱ/15句】
★おのが場所おのが風受け青葉揺る/多田有花
それぞれの場所でそれぞれの風を受けて揺れる青葉が清々しいです。青葉の葉擦れの音、揺れる木漏れ日まで想像し、心地よくなります。(池田多津子)

★緑陰の乳母車子ら駆け寄り来し/古田敬二(信之添削)
ここしばらく暑い日が続いております。乳母車の親子連れも木陰で一休みしたいところでしょう。若葉の季節の親子連れの姿を上手く表現していると思います。(小河原宏子)

★五月闇海から半里遠汽笛/吉田 晃
五月闇を縫って半里向こうの海から汽笛が聞こえる。一日の生活が終わり明日へ繋がるひと時の風景。どっしり感が好き。(古田敬二)

★ミニトマト口いっぱいに陽の恵み/高橋秀之
トマトは自家栽培されてあるのでしょう。収穫の素直な喜びが伝わってくる気持ちのい い句です。他の2句も生き生きとしたいい句だと感じました。(國武光雄)

★豆腐屋のラツパの音色や夏の夕/飯島冶朗
ラツパの音色をひさしく聞いていないので懐かしく思うとともに夏の雰囲気を感じました。(奥田 稔)

★五月晴今日の一日の始まりに/堀佐夜子
梅雨に入り、五月晴が待たれる昨今、今朝は五月晴で、さあ、今日は頑張って仕事を始めようという気持ちの表れた句。共感を覚えます。(宮本和美)

★植田今水に馴染みてみどり濃く/小川和子
植えられた直後の早苗は水面にやっと顔を出しているおぼつかない姿です。それも数日たてば、はやしっかりと根をはり、背を伸ばしています。その苗の姿を的確にとらえられています。(多田有花)

★この埃この匂ひして麦の秋/前川音次
麦刈をされた経験をお持ちの方なればこその句と思います。嗅覚は五感のうちでも 最も原始的なもので、本能に訴え、記憶を呼び覚ます効果を強くもっています。匂いの記憶を生かされた佳句です。(多田有花)

★庭のばら雨滴をふくみ父の手に/川名ますみ
自宅のお庭に薔薇を作っていらっしゃるとは素敵ですね。薔薇は姿も香りも高貴で凛としたものを感じる花です。華麗な女性のイメージもあり、お父様のがっしりとした手との対比が見事。(多田有花)

★十薬を束ね明るさ活けにけり/竹内小代美
十薬の花が束ねられて活けられる。はっきりした白い花苞と中の小花が明るさを感じさせます。活けた場所がぱっと明るくなるようです。(池田多津子)

★えごの花明るさそのまま抱き落つ/網本紘子
小さな白い花をいっぱいにつけるえごの木です。落ちてもなおその明るさと香りを残しています。えごの花を見つめる作者の優しい眼差しを感じます。(池田多津子)

★山風に鮎の匂いの風の来る/篠木 睦
鮎釣りのシーズン到来ですね。初夏を待ちかねている人も多いのでしょう。そんなわくわくする思いを強く感じます。山からの風もすっかり夏の風です。(池田多津子)

★山清水そば屋の暖簾縹(はなだ)いろ/小口泰與
暑い日が増えてくると涼しさを求めるようになります。清らかに流れる山清水とそば屋の暖簾の縹色(うすい藍色)に涼しさを感じ、ほっとします。(池田多津子)

★長距離バス郷愁誘う初夏の風/大給圭江子
「長距離バス」の旅にあれば、日常とは違った思いだ。「郷愁誘う」こともある。「初夏の風」に吹かれていれば、過去の風景が蘇ってきて、現実となる。(高橋信之)

★梅雨前の一と日の青空仰ぎたり/岩本康子
梅雨に入ると、青空がめったに望めなくなる。入梅前のまぶしい青空を仰ぐのも人情というものだろう。(高橋正子)

※入賞発表は本名ですので、不都合な方は、ご連絡ください。入賞発表から削除します。

入賞発表/5月18日(日)~5月24日(土)

2008-05-25 00:16:04 | Weblog
■5月18日(日)~5月24日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★駅までの道は一本麦の秋/黒谷光子
駅までゆく道は、ただ一本。日陰も木立もないだろう。太陽の光りが道を白くし、麦秋の風が通り抜ける道。麦秋の気分が深く伝わってくる。(高橋正子)

【特選/5句】
★白バラに夕陽のまじる時となり/祝恵子
白バラに夕陽が傾き、あかあかと差してくる時刻。「夕陽のまじる」が的確。夕陽に染まる花びら、奥深く染まらぬところ。これを「まじる」と言った。「まじる」がリアルで、夕陽を受ける白バラの美しさが出た。(高橋正子)

★睡蓮の葉の三つ四つと伸び出し/河野啓一
睡蓮の葉は、はじめ巻葉である。あちらに三つ、こちらに四つと艶やかな巻き葉が池水から伸び出る。水面に一度にすずしい季節の到来を知らされる。(高橋正子)

★柿の花ときにこぼるる石の上/大給圭泉
柿の木のあるところは、石垣の上だったり、なんの用か石が置かれていたりする。土の上にも落ちるが、石の上にもときには、落ちる。石の灰色と浅緑の柿の花の取り合わせに、奥ゆかしい美しさがある。(高橋正子)

★さいはてのたんぽぽの野を一輌車/おくだみのる
さいはての野をゆく一輌車。時は一面にたんぽぽの咲くころ。一人旅であろうか。「さいはて」の寂寥感を慰めてくれるたんぽぽに感銘を覚える。(高橋正子)

★一面の花たんぽぽや牛放つ/志賀たいじ
一面にたんぽぽの花が咲いている牧場。牧場に春がやってきたのだ。自由に草を食べ、遊べよと牛を放つ。生活のなかにある牧歌的風景への賛歌。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★海に向く灯台跡や麦の秋/宮本和美
長い歴史のある灯台が、その役目を全うして廃墟になった寂しさと、初夏に黄色に熟した麦との対比が素晴らしいです。(小口泰與)

★夕映えの海に傾れる植田かな/國武光雄
夕映えの海を臨む高低さのある傾いた植田。その植田には、青々とした早苗が田水の上から見える。オレンジと緑、そして海と田水の水の色。海を臨む田圃の景色とともに色彩の変化がこの句に彩りを添えている。日本の原風景を感じさせる一句です。(飯島治蝶)

★園児らの水色リボン夏帽子/小河原宏子
爽やかな夏帽子に水色の爽やかなリボンが元気そうな園児たちによく似合いますね。(大給圭泉)

★青葉雨けさより赤き車椅子/かわな ますみ
車椅子が新しくなりました。「赤」い色は安全でいいですね、{青葉雨}が効果的で好きな一句です。(吉川豊子)

★ゆったりとバラ園巡る車椅子/渋谷洋介
先日、同じような景を見て誠に微笑ましく思いました。上五の「ゆつたりと」が抜群な咲作品と存じます。共感の一句です。(宮本和美)

★観覧車青葉見下ろす空といる/竹内よよぎ
景がよく見えます。ゆっくりと回る観覧車。特に、観覧車が最高到達点にまで来たときは、至福のとき。今のこの時期はまさに、「青葉見下ろし空といる」です。共感した一句です。(飯島治蝶)

★母の忌や空飛びたがる夏帽子/篠木 睦
「空飛びたがる」が実に面白い見方だと思う。青嵐でしょうか緑の風に帽子が飛びそうだ。帽子を飛ばしそうなそんな「薫風」までが見えてくるようだ。(まえかわをとじ)

★夏大根葉を青々と買われゆく/臼井愛代
メニューは大根おろしでしょう。葉つきのままのものを求めるのは、スーパーでは難しいですが、これは産地直売のものでしょうか。新鮮な大根の葉は食欲も涼味もそそります。(多田有花)

★岩魚釣る御岳からの水澄めり/古田けいじ
岩魚のすむ渓流を成す御岳の水の清冽なさまを思います。岩魚が姿を現す澄んだ水を見つめる釣り人の、わくわくとした気持ちが伝わってきます。(臼井愛代)

★白つめ草丘の起伏をたんぽぽと/あみもとひろこ
一面に広がる白つめ草とたんぽぽが、そのまま丘の起伏の形となっているうつくしさに触れた作者の感動があります。(臼井愛代)

★蕗を剥く水張りボ-ルにたっぷりと/小川美和
「たっぷりと」に、初夏の野山からのゆたかな恵みをいただくうれしさがあります。蕗が剥かれるときの、野趣に溢れた香りも漂ってきそうです。(臼井愛代)

★武蔵野の台地一面昇り藤/小口泰與
昇り藤が台地一面に咲き乱れる見事な情景に触れたときの、作者の強い印象や感動が、武蔵野の地名を入れられたことで、よりはっきりと表現されていると感じました。(臼井愛代)

★かくれんぼ若葉青葉の隠す子ら/飯島治蝶
こんもりと茂った若葉青葉が、かくれんぼの子らの格好の隠れ場となっている楽しさがあります。自然の中で遊ぶ子供たちの元気な様子を、読者は明るい気持ちで思い浮かべます。(臼井愛代)

★はんにちは日輪白く竹の皮脱ぐ/甲斐ひさこ
「竹の皮脱ぐ」は7音の季語。半日は、太陽は白く耀いている。午後からはうす曇とでもなったのであろうか。竹が皮を脱ぐ季節は、こういった天気の日もある。そうして次第に五月も終るのだが、皮を脱いだ竹の生長が目に見えるようだ。(高橋正子)

★葉桜の先の薄紅初々し/井上治代
葉桜といっても、すぐに青々と茂るのではなく、はじめは薄紅色が葉先に残って、その薄紅色が初々しい。その初々しさにはっとさせられる。(高橋正子)

【入選Ⅱ/14句】
★自家用にじゃが芋の花咲かせける/堀佐夜子
 ずいぶん前、大阪吟行の時に佐夜子さんのお宅をお尋ねしましたが、よく手を加えられたお住まいで、充実した日々を送っておられる様子を拝見しました。家庭菜園でしょうか。清楚な花が咲いているのでしょう。(吉田 晃)

★麦秋を街へ真っ直ぐ通学路/吉田晃
 山麓から街へと広がる麦畑が黄色い絨毯を敷いたように広がる。その中を通学路が一直線に白々と舗装され、登下校の児童達が往き来します。麦の大きな農村風景と通学路という取り合わせによって、初夏の若々しさを感じさせてくれました。「まっすぐ」がいいですね。(おおにし ひろし)

★朝採りの枇杷を選りたる道の駅/柳原美知子
初夏の味覚、枇杷は保存が利かず、産地直売に限ります。「道の駅」を下五に据えた巧みな句作に教えられました。美味しそうな枇杷の形が目に浮びます。(河野啓一)

★家中を煮立てて香る苺ジャム/小西 宏
苺ジャムの甘い香りが家中に。暖かい家族の温もりが見えますね。(祝恵子)

★若竹の丸き切り口新しき/多田有花
若竹の新鮮さ,瑞々しさが切り口にまで表れている初夏の清々しさの表れた句と思いました。(小河原宏子)

★万緑やスウィッチ運転飛騨特急/かつらたろう
緑あふれる山を電車がスピードを落としジグザグに登ってゆくのでしょう。先人の知恵が万緑を更に味わい深くしてくれているようでいいですね。(吉田 晃)

★郭公の遠くに聞こゆ朝厨/丸山草子
郭公の声が遠くに聞こえる、静かな清々しい朝です。きもちよく一日が始まります。(池田多津子)

★万緑や乳母車の児眠らせり/藤田裕子
児を眠らせるのは、万緑である。万緑の季節は、風もそよそよと心地よい。少し汗ばむほどの陽気が眠気をさそう。乳母車の児をすやすやと眠らせるのもいい季節だから。(高橋正子)

★麦熟れて日ごと明るく陽を返す/池田多津子
麦が熟れはじめ、刈り取られるまでは、日ごとに明るい陽射しを返す。風に陽に、熟れた麦は揺れて、健康的な明るさを見せてくれる。(高橋正子)

★ふくいくと粒の揃いしさくらんぼ/吉川豊子
★早朝の目覚め爽やか新樹光/大山 凉
★百合の木の弾けるような青葉照り/おおにし ひろし
★夕凪や真っ直ぐ伸びる陽の光/高橋秀之
★御座船やみどりみどりの中進む/まえかわをとじ

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/9点】
★仔馬蹴るうしろの海は初夏の青/志賀たいじ
(啓一・有花・宏・美知子・愛代・治蝶・凉・ひろし・ひさこ選)

緑の草を食みながら子馬も軽快に跳ね廻っている、海の見える牧場。広々とした爽快な景を満喫させられました。「仔馬蹴る」が簡にして要を得た表現かと存じます。(河野啓一)
海はオホーツクでしょうか。海の見える牧場に放たれた仔馬、まだ母馬のすぐそばに寄り添っているのでしょう。広々とした北の大地の風を感じます。(多田有花)
牧場の背後はすぐに海だという。子馬の跳ねる姿や海の青さ。初夏の季節とともに北海道という広やかさを読者にも伝えてくれます。(小西 宏)
愛らしい仔馬が元気いっぱい跳ねる広々とした草の原。その向こうに更に広がる海の青さが夏の訪れを感じさせます。喜びに満ちた牧場の夏が始まります。(柳原美知子)
すくすくと育っている仔馬の足元には大きな大地、後ろの海は、初夏の色を見せて広がっています。元気な仔馬の躍動感が、明るい初夏の自然に相応しく思います。(臼井愛代)
長閑な中に、元気な仔馬の動き。中七からの展開が巧妙。動的で、しかも広がりのある初夏の句に仕立てられいます。仔馬の動きが、大自然の中に生き生きと伝わって来ます。(飯島治蝶)
蒼い牧草と青い海、初夏の大きな自然の営みの中での子馬の生き生きと、愛くるしい動きが伝わってきます。(大山 凉)
青々とそして、茫洋とした北の海は夏の青さ、大きさに、仔馬の愛苦しい生命が息づいて見えます。(おおにしひろし)
伸び伸びと仔馬が駆けている牧場の遥に夏の海が眩しく広がっている。憧れる風景です。(甲斐ひさこ)

【次点/5点/2句】(作者名五十音順)
★芍薬のふっくらと咲き今日の供花/黒谷光子
(たいじ・晃・睦・ひさこ・有花選)

★富士山を大きく置きて葱坊主/大給圭泉
(みのる・ひろこ・けいじ・治蝶・よよぎ選)

入賞発表/5月11日(日)~5月17日(土)

2008-05-18 00:09:03 | Weblog
■5月11日(日)~5月17日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★空っぽの缶を蹴る音初夏の雲/藤田荘二
子どものころ、缶けりという遊びをした。「空っぽ」は、大人の見方。空き缶を蹴るカーンという響きが、初夏の明るさを感じさせてくれる。(高橋正子)

【特選/5句】
★土佐路ゆく茅花流しに吹かれつつ/柳原美知子
「茅花流し」は、茅の花が穂になり、その絮が吹かれるようになる頃吹く風のこと。夏の季語。やさしく、詩情のある季語である。その風に吹かれて外光豊かな土佐路の、青い山や川そして海を見つつ行く旅の、安らかな楽しさが思える。(高橋正子)

★幾百の海鳥岬に五月来る/志賀たいじ(正子添削)
元の句は、「岬の五月」となっていたので、リアルさを重んじて添削した。岬に幾百もの海鳥の姿を見ると、まさに五月が来た印象を持った。沖へ開かれる爽やかな心。(高橋正子)

★夕暮れの青き植田に日の名残/大山 凉
「日の名残」にこの句の深さが読める。植田のさみどりと水面にある日の名残の風景に、爽やかな初夏の中にもある、じんと心の底に温もりをくれる寂しさがある。(高橋正子)

★青嵐命もらいて野を行けば/おおにしひろし
風の強い日に新緑の中をウォーキングされた時の景と思いますが、小一時間も歩けば吐く意気まで緑色になるように感じ、自分も自然の中に生きる一員であると実感しますね。緑に染まる情景が良く窺えて素敵な句です。(かつらたろう)

★行き交へる舞妓の髪や風青し/まえかわをとじ
京都ならではの風景ですね。初夏の京都の町を行く舞妓さん、その髪に吹く風は若葉も揺らしていきます。 (多田有花)

【入選Ⅰ/15句】
★背に負いし達治の詩集若葉旅/おくだみのる
三好達治の詩集を「背に負い」、旅にあるのだ。作者の思いが伝わってくる。若葉の季節に達治の詩がいい。現代詩と俳句を両立させた詩人に広島福山の木下夕爾と松山高校俳句会出身の西垣脩がいて、三好達治もその一人だ。東大仏文科在学中に辰野隆教授に絶賛された俳句「柿熟るる夜は夜もすがら水車」がある。句集に『柿の花』があり、『俳句鑑賞』を筑摩書房から出した。(高橋信之)

★逆上がり出来た笑顔や大欅/大給圭泉
子どもの「笑顔」と「大欅」は、楽しい取り合わせだ。広々として明るい風景だ。切れ字の「や」による取り合わせの多用は好まないがこの句は別だ。「大欅」は、季語ではないが、この句には若葉の頃の季感がある。(高橋信之)

★千貫の神輿の声や日本橋/小西 宏
「千貫」が効いた。「神輿」や「日本橋」に籠められた日本の歴史・文化を思えば、なおのことであるが、この句を軽く読んでも「千貫」が効いた。(高橋信之)

★晴れて来て土手の夏草絶えず揺る/甲斐ひさこ
上五の「晴れて来て」に作者の力量を見た。句を大きくしたのだ。時間的にも、空間的にも大きくしたのだ。(高橋信之)

★駆けて来し園児ら噴水囲みけり/黒谷光子(信之添削)
季節のいい風景だ。「噴水の園児ら」をテーマとし、初夏の風景を捉えたのだ。園児らの「駆けて来し」動作と噴水を「囲みけり」という動作が読み手にも見えてくる。(高橋信之)

★葉桜の影に児を追い母も入る/あみもとひろこ
青々と茂る葉桜の影へと走る幼子と若き母の笑い声が聞こえ、青葉風が吹きわたります。生命力に満ち溢れ、ほのぼのとした親子の情景です。(柳原美知子)

★野沢菜の花の明りや千曲川/小口泰與
野沢菜が黄色い菜の花を咲かせる信濃、千曲川の美しく輝く、おおらかな流れとともに、信濃ののどやかな情景を思います。冬にはおいしい野沢菜を食べることが出来るのでしょうね。(大山 凉)

★娘を送る始発電車や夏燕/篠木 睦
始発電車で帰られるお子様を送られたのですね。夏燕は今年の子燕でしょうか、親燕と一緒に飛んでいるのをよく見かけます。朝が薄明るくなる頃から、もう飛びまわっています。そんな早朝の見送りの御気持ちも、燕のように爽やかだったのかもしれません。句を拝見してからの推量ですが・・。 (おおにし ひろし)

★一服の新茶に朝の職員室/池田多津子
どう言う句意だろうと考える事もなく一読で自分も新茶で朝のひと時を過ごしたいと思いました。(堀佐夜子)

★スープにも粥にも紫蘇の香の蒼し/かわな ますみ
日本人の体力の源泉である粥と郷愁を覚える紫蘇、加えて舌と目からの季節感が溢れ、とても好きな句です。さぞ美味しく頂かれた事でしょう。(まえかわをとじ)

★空澄みて若葉耀く朝嬉し/河野啓一
気分よく迎えれた朝、しかも、若葉が輝いている。今日も一日頑張らうという気持ちの満ち溢れた佳き句と存じます。下五の「朝嬉し」に詠者の思いのこもった作品。共感を覚えます。(宮本和美)

★影踏みに子ら駆け回る若葉晴/飯島治蝶
日差しが強くなり、晴れるとくっきりと影が出ます。若葉が繁る広場で子どもたちが影踏みに歓声を上げています。もう一度そうやって遊んでみたいなという気持ちを呼び起こしていただきました。(多田有花)
  
★柿若葉朝日を透いてさみどりに/丸山草子
柿のつやつやとした若葉には独特の美しさがあります。畑や庭の一画に植えられ、人間の生活の最も身近にある若葉かもしれません。「さみどり」に若葉の美への感嘆が感じられます。(多田有花)

★闘病のきざし好転目に若葉/宮本和美
病んでいらっしゃるのは作者自身か、あるいはご家族か、闘病というのは、心身ともに消耗するものです。ようやく病に好転のきざしが見えたとき、その安堵の思いとともにみずみずしい若葉が目に飛び込んできた、その感動を詠われています。(多田有花)

★茎立の果てのすっくと風にあり/臼井愛代
茎立って、その花も終わり近づいているが、しかし、風の中にもすっくと立っている。ひとりすっくと立つ「果て」姿に共感する。(高橋正子)

【入選Ⅱ/17句】
★音の無き矢車まわる五月空/吉川豊子
よく晴れた空に鯉幟の竿が立てられています。鯉幟はまだあがっていないのかもしれません。風はやさしく、音もなく矢車をまわしています。矢車を見上げられる作者の穏やかな心境がうかがわれます。(多田有花)

★若竹や今朝も伸びたり節の白/かつらたろう
若竹の”力”を強く感じます、{節の白}で充分に表現がされていて、好きな一句です。(吉川豊子)

★平らかに枝伸ばしたり若楓/多田有花
楓の枝は「平らかに」ですね。御句からのびのびと枝を広げ、陽に耀く若楓を想像いたします。(黒谷光子)

★穂波立つ風の軽さや麦の秋/吉田 晃
最近はあまり麦畑を見かけなくなりましたが、子供の頃は田舎でもよく作っておりました。秋の稲の穂と違い、麦の穂はまっすぐ伸びていて風も軽やかですね。平明な詠みの中にも、爽やかな調べがとても素敵で、麦秋の喜びまで感じます。(かつらたろう)

★葉を透かし朝日眩き若楓/小河原宏子
一日の始まりに、目覚めるばかりに美しい若楓です。その鮮やかな緑を通す日の光も爽やかな季節そのものの明るさです。(藤田洋子)

★靴音を運ぶ風あり若葉風/堀佐夜子
青葉の梢を吹き通る風とともに、軽やかな靴音が聞こえてくるようです。新鮮で瑞々しい季節感を作者ならではの感覚で明るく捉えられていると思います。(藤田洋子)

★エコ袋サラサラ鳴らす若葉風/井上治代
日常生活の一齣が清々しく詠われていて、とても爽やかになります。「若葉風」の季語がとても合っていると思います。(藤田裕子)

★夕暮れてヨシキリ啼くよほしいまま/古田けいじ
渡って来たヨシキリが得た心地よい場所なのでしょう。「ほしいまま」に、ヨシキリのいきいきと生息する様子が窺えます。(臼井愛代)

★花みかん海へ香零る空真青/藤田裕子
花みかんが零す豊かな香りに、溢れんばかりに咲くあまたの白い花も見えるようです。その上に広がる真っ青な空とあいまって、爽やかな初夏の情景となっています。(臼井愛代)

★鳥のいて代掻くあとを付きまわる/祝 恵子
代掻きの人を追うように付いてまわる鳥がいて、田んぼに活発な動きが生まれした。これからお米が育まれる場所が整うよろこびを感じます。(臼井愛代)

★若葉風駅の待合吹き抜ける/高橋秀之
爽やかに待ち時間を過ごせそうで、若葉風に安らぎを感じます。(甲斐ひさこ)

★芍薬の落花直前巨大なり/竹内よよぎ
言われてみれば、芍薬の落花に注目したことがありませんでした。どんな落花の模様かは別として、落花前は命の最後を示すように、かがやくのでしょう。そんな一瞬を切り取ったような緊張感を感じました。(藤田荘二)

★夏蝶の消えては現る木立かな/上島笑子
夏に入り、木立の枝葉が青々と生気をみなぎらせる中、軽やかに飛び交う夏蝶の動きが鮮明に見えてきます。明るく心地よい季節の到来を感じます。 (藤田洋子)

★水ひかる植田の苗のかそけしや/小川美和
田植え直後の稲は見た目、心もとなく、色淡く、「幽けく」がぴったりの様子です。それも、日月とともに地に根を下ろしやがて、強靭な稲へと育ちます。現在を見詰め、未来に託する気持ちがよく表現された深い句です。(おおにしひろし)

★紺碧の五月の空へいざ発たん/渋谷洋介
紺碧の五月の空が明るく広やかで美しいかぎりです。出立の日の清々しく晴れやかな心情が伝わります。(藤田洋子)

★つやつやとさくらんぼある雨の中/岩本康子
萌葱色の芽、うっすら黄や紅に染まる花、ほのかな色を見慣れた晩春、今年も雨が続きました。よく見ると、芽は青葉、花は朱い実に、それぞれ色を濃くしているよう。樹々の彩りが鮮やかに変化する瞬間をつややかな「さくらんぼ」に見る、美しい場をご一緒させて頂きました。(かわな ますみ)

★筑後川雲に溶けゆく揚雲雀/國武光雄
空に向かって垂直に舞い上がる雲雀を、「雲に溶けゆく」と表現されたところに、作者の実感、感動があります。滔々と流れる筑後川の豊かさもあり、大きく気持ちの良い情景を思いました。(臼井愛代)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/5点】
★神前の箒目揃い牡丹咲く/大山 凉
(宏子・晃・たろう・治蝶・泰與選)

神前の庭がきれいに掃き清められているところに美しい牡丹が咲いている、そんな庭の前に立つと心まで清められそうな清々しい句と思います。(小河原宏子)
地が清められると空気が澄み、落ち着いたたたずまいになります。そこに咲く牡丹は気高く感じられ、作者はしばらく見入っていたのでしょう。(吉田 晃)
いずこの神社の境内でしょうか?すっかり掃き清められた社の庭に咲く牡丹の、上品な花の姿が目に浮かぶようです。牡丹の花は、日本的な環境に良く映えるようですね。「箒目揃い」の語句に、とても爽やかな情景を思い浮かべました。(かつらたろう)
箒の目が整然とそろった神聖な神前の庭。その庭に咲く牡丹。厳かな中に、華麗さのある一句です。(飯島治蝶)
芳香のある径十数センチほどの大輪の花が咲き、花の姿の豊麗なことは花王の名にそむかない牡丹。神前の綺麗に掃きあがった境内に見事に咲いている牡丹を素敵に詠っていると思います。(小口泰與)

【次点/4点/2句】(作者名五十音順)
★白目高孵化して小さき目の泳ぐ/小河原宏子
(宏・たろう・和美・けいじ選)

★逆上がり出来た笑顔や大欅/大給圭泉
(けいじ・凉・光子・秀之選)

入賞発表/5月1日(木)~5月10日(土)

2008-05-10 23:56:14 | Weblog
■5月1日(木)~5月10日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★身ほとりも八十八夜の青一色/おおにし ひろし
八十八夜は、ご存知のように、立春から数えて八十八日目。唱歌「茶摘」にも歌われて新茶の季節、若葉の季節である。身辺が青一色に染まる。感覚が捉えた世界がすがすがしい。(高橋正子)

【特選/5句】
★げんげ田の踏みあと二手に分かれおり/祝恵子(信之添削)
こういった場面こそが、俳句に詠まれて然るべき。誰も踏み込んでいない花が咲き満ちるふわふわの「げんげ田」に、踏みあとが、はっきりと二手に分かれてある。二人の子どもだろうが、それぞれに好きな方に歩いて行って花を摘んだのだろう。踏むには惜しいほどの「げんげ田」である。「蓮華」は、蓮の花のことで、夏の季語だが、「蓮華草」は、紫雲英(げんげ)のことで、春の季語。俳句では、多くが「蓮華草」とは言わずに「紫雲英(げんげ)」という。(高橋正子)

★代田はや何かいきものいる気配/宮本和美
田に水が張られ、そろそろ田植えの時期ですね。田に水が入れられた矢先、うごめく物が居る、何だろう想像する楽しみもある句です。(祝恵子)

★卯波立つ島に一村軒低く/あみもとひろこ
数多くの台風や強い海風に絶えている孤島の一にも卯の花が風になびくさまから卯波と呼ばれ、晩春から初夏にかけて海に白波が起つほど荒れている様子を素敵に描写していると思います。(小口泰與)

★花売りにほどほどの照り夏兆す/甲斐ひさこ
切花も花苗も天気の良い日はとくに綺麗に見え買いたくなるもの。夏兆す今日この頃「ほどほどの照り」とは言いえて妙な表現と感じ入りました。(河野啓一)

★折り紙兜棚に飾れば子供の日/堀佐夜子
特別なものを買わなくても、折り紙で兜を作って飾れば十分子供の日となる。いつも工夫をし、生活にメリハリをつけて楽しんでおられる作者の心意気が感じられます。(柳原美知子)

【入選Ⅰ/15句】
★湯気立てて朝日地を這う春の畑/小西 宏
「生きている畑」が目の前に浮かびます。春の大地は夜が明けるごと大きく呼吸するのでしょう。心を打つ景色です。(かわな ますみ)

★遠近の土塊(つちくれ)光り鳧(けり)が鳴く/かつらたろう
明るい日差しの中に響くケリの声。キリリ、ケリッと甲高い声でなくことからケリと名前がついたとか。のどかな田園風景を思います。 (多田有花)

★うまい水若葉深くに生まれおり/竹内よよぎ
「うまい水」という言葉が、とても新鮮で、若葉を重ねる森の奥の、湧き水を思いました。澄んで冷たい水を、手に掬い飲む感触を覚えました。(あみもとひろこ)

★夏に入る酸素の音の逞しき/かわな ますみ
透明な酸素吸入からの音にも夏を感じられた景がうかびました。酸素は命の源ですね。(小川美和)

★山羊の仔の膝折りすわる草の青/志賀たいじ
「山羊の仔の膝折る」と詠まれて、仔山羊を愛されているのが伝わってきます。背景の草の青も鮮やかで、句の中に自然の中の豊かなひと時が流れているように感じます。(竹内よよぎ)

★おちこちの田を打つ音の響きくる/丸山草子(正子添削)
農作業が忙しくなる時期にはいってきました。農家には大変なときですが、田畑に人の姿が増え、活気あふれるころです。ことに雪に閉ざされる北国では一斉に農作業という風景が見られますね。(多田有花)

★風颯々と森の若葉を磨きけり/おざきゆづる
森の若葉が風に吹かれて青さが益す如く見える心地よい季節ですね。(大給圭泉)

★山藤の短き房の瑞々し/井上治代
新鮮で力強い句。「短き房の瑞々し」と作者は見たのだ。「山藤」の深いところを見たのだ。(高橋信之)

★教会に果実実らせ聖母月/臼井愛代
聖母マリアの月とされる五月の教会。みずみずしい果実の実りに、聖母マリアへの信心が込められているようで、明るく心豊かな季節の始まりを感じさせてくれます。(藤田洋子)

★火の山の斑雪なりけり桐の花/小口泰與
火の山、まだらになった残雪、大木の桐の花、豊かな色彩に季節の推移を感じつつ、爽やかな季節を迎えた自然を大らかに捉えて詠まれていると思います。 (藤田洋子)

★田水張り水の匂いの夜を歩く/安藤かじか
田植えに備え、田水張りが盛んに行われています。その日の夜、水の匂いで満ち満ちている田園界隈をゆく作者が見えるような五月雨の日らしい光景です。(おおにし ひろし)

★屋内の鏡にさせる新樹光/多田有花
新樹の薄緑の光が部屋の鏡に差し込んで居る。如何にも初夏の風景。中七の「鏡ににもさす」が素晴らしい作品で、共感を覚えました。(宮本和美)

★軽装の男の子の列に夏近し/高橋秀之(正子添削)
幼稚園児か保育園児の列でしょう。明るい日差しの中、半袖半ズボンで歩いているのかもしれません。一足速い夏の景色を敏感に感じ取っていらっしゃる様子がうかがえます。(多田有花)

★藤房に零るる空の青さかな/柳原美知子
青空の下に咲く藤の花のたっぷりとした豊かさ。空と藤房が作者の心に繋がってみずみずしく零れるような青です。(池田加代子)

★日向田のさざなみさわと蝌蚪黒く/大給圭泉
田に水が張られ、しばらくすると蝌蚪(おたまじゃくし)が見られます。小さな動きでも小さな波となって見えます。小さな命の誕生、そして成長が感じられます。(池田多津子)

【入選Ⅱ/21句】
★玻璃を透く朝日大きく夏に入る/黒谷光子
季節の節目となる日の、玻璃越しの朝日の大きな輝きが、とりわけ希望に満ちて力強く感じます。明るい夏の到来を喜ぶお気持ちが、句に溢れているようです。 (藤田洋子)

★潮香する若葉の風の芭蕉像/池田多津子
深川の芭蕉記念館の若葉のなか、微かに川風に乗って漂う潮の香り。当日拝した芭蕉像を想起させて頂きました。(飯島治蝶)

★山に向く薫風に充つ道の駅/小川美和
薫風吹き抜けて行く中にある道の駅が上手に表現されて居り、共感を覚えます。絵画を見ている様に感じました。(宮本和美)

★踏み入りて若葉の匂い鮮やかに/大山凉
若葉燃え立つ樹林に踏み入ったのでしょうか、明らかに噎せるような若葉の匂いが、初夏の到来を思わせてくれます。(おおにし ひろし)

★紫蘭咲く風待つ形に傾いて/古田けいじ
「風待つ形」がいいですね。いい風が吹いて来そうな感じがして、気持が軽くなります。(吉田晃)

★ナイターの芝生輝き夏立ちぬ/河野啓一
ドーム球場が増え、外野の芝生もほとんど人工芝になってきましたが、ここで輝いている芝生は天然のものでしょう。人工照明の下で見る芝生の輝きにナイターシーズン到来を待った野球ファンのうれしさが混じっています。(多田有花)

★黒々と濡れて新樹のうねる幹/安藤かじか
落葉樹が芽吹き日ごとに葉を広げていくこの時期は、木々の生命が姿全体にみなぎっています。それを黒々とした幹のうねりに見ていらっしゃることがよくわかります。(多田有花)

★日時計の目盛に濃き影夏隣/飯島治蝶
太陽光線の指針の影に時刻を知る日時計。その濃き影に、おのずと戸外の明るい陽光や強い日差し、そして間近な夏の訪れを 感じることができます。(藤田洋子)

★どろんこの父子駆けまわる子供の日/藤田裕子
家族が元気なのは、嬉しいことだが、「どろんこの父子」は、「子供の日」のいい季節なので、家族の喜びだ。(高橋信之)

★くっきりと天守と空の五月来る/藤田洋子
松山城の「天守」は、小高い城山の頂にあって、街のどこからでも見える。「五月来る」季節となれば、なお「くっきりと」見える。懐かしい風景だ。(高橋信之)

★粽解く笹の葉ずれの音清か/小河原 宏子
粽と柏餅は、5月5日の端午の節句に食べるものだが、誰もが自分の育った家族との懐かしい思い出がある。それを作者は「音清か(音さやか)」と言った。季節がいいのだ。思い出がいいのだ。(高橋信之)

★五尺の身総身緑に染まりけり/まえかわをとじ(正子添削)
「五尺の身」は、身長を言うより、「五尺(いつさか)の身・・」と特攻隊員が詠んだ歌もあるように、父母よりもらった肉体やその心をも感じされる表現であろう。わが体ごと、全身が緑に染まるこの季節のさわやかさが詠まれている。(高橋正子)

★ため池や一歩下がってメダカ群れ/上島笑子
ため池にメダカの群れを見つけた。「一歩下って」は、岸から少し離れたところにメダカが群れていると解釈した。岸の間際ではなく、少し離れた距離に泳ぐメダカに面白みがある。(高橋正子)

★古道行く茂りの力に背を押され/藤田荘二
稀にしか人の通らない古道は、昼間も木下の暗がりが続く。ひとり行く道は孤独ではあるが、木々の茂る勢いに、背を押されるかのように前進できる。茂るものから力をもらった一句。(高橋正子)

★上げ潮の水面(みなも)にゆれる葉桜よ/迫田和代
「上げ潮」がいいですね。満ちてくる潮の匂いまでしそうですね。潮と葉桜の色あいがとても新鮮です。(高橋正子)

★咲き初めしあやめ一叢遊歩道/吉川豊子
遊歩道にアヤメの青さを見つけたうれしさ。一叢の中に、青く咲き始めた花と蕾がいくつか残るころの控えめな美しさがいいですね。(池田加代子)

★どこまでも広がる青空子どもの日/岩本康子
子どもの日が青空であるのはうれしいですね。どこまでも広がる青空に、子どもたちの明るい希望がひろがるようです。(池田加代子)

★母の日や富士の墓標へ白き花/おくだみのる
富士の墓標へ供える白き花の清らかさが印象的です。母の日に、亡きお母様を思っておだやかな心境がうかがえます。(池田加代子)

★ハンカチの花きらきらとゆらゆらと/渋谷洋介
ハンカチの花を先日初めて見ました。大きな白いハンカチのようなものは苞(ほう)で、花は中にあるのですが、葉陰に白く見える様子が「きらきらとゆらゆらと」の言葉にぴったりです。(池田多津子)

★さつさつと雨後の堤防蟹が散る/篠木睦
暖かくなると生き物がさまざまに動き始めます。「さつさつと」に作者の感じ方が伝わり、蟹が素早く散らばっていく様子が目に浮かびます。水の中も次第ににぎやかになっていくことでしょう。(池田多津子)

★裏木戸に潮の香初夏の芭蕉庵/吉田晃
芭蕉記念館での俳句ですね。芭蕉記念館のすぐ裏に隅田川があって潮の香りがしていました。庭の木々も辺りの木々も新緑がきれいですっかり初夏の色。落ち着いたたたずまいを思い出します。(池田多津子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★吊り橋の揺れて緑の風わたる/河野啓一
(美知子・凉・ますみ・光子・和美・恵子選)

深山の蔓でつくられた橋でしょうか。橋の下の渓流の音、全山の新緑をわたる風の音が聞こえるようです。(柳原美知子)
みどりさわやかな山に囲まれ、若葉を映して流れる緑の川。つり橋を揺らしながら「みどりの風が渡る」、素敵な表現ですね。さわやかな初夏の山峡の光景が浮かびます。(大山 凉)
いつもは吊り橋が揺れると、少し恐怖を覚えます。けれど新緑の季節には、葉の色をたずさえた風が心地好く、その揺れさえも初夏の目覚めのごとく感じられるのでしょう。山中をご一緒させて頂いたような、爽快な気分を頂きました。(かわなますみ)
つり橋の下は渓流、新緑を渡る風、素晴らしい光景を見せていただきました。(黒谷光子)
初夏の頃、吊橋を渡る景が見える様な気分になります。人も風も揺られながら渡っているのでしょう。中七の「揺られて緑」が抜群に素晴らしく、共感を覚えます。(宮本和美)
下を覗いても、山並みも新緑。吊り橋を緑の風が揺らし渡っていきます。爽やかな風です。(祝 恵子)

【次点/5点/3句】 (作者五十音順)
★夏に入る酸素の音の逞しき/かわなますみ
(よよぎ・和美・泰與・美和・凉選)

★山羊の仔の膝折りすわる草の青/志賀たいじ
(草子・ひろし・豊子・よよぎ・和美選)

★かすみ草泳がす程の風が吹き /宮本和美
(圭泉・秀之・宏・裕子・宏子選)

入賞発表/4月27日(日)~4月30日(水)

2008-05-01 12:28:56 | Weblog
■4月27日(日)~4月30日(水)
□高橋正子選

【最優秀】
★蒲公英の花せめぎあい光りあい/小西 宏
蒲公英が明るい日差しの中に、びっしりの咲いている様子。一つ一つの花は可憐でありながら、せめぎあうほどの花の力。せめぐだけでなく、また、互いに光りあっている。確かな目である。(高橋正子)

【特選/5句】
★雛罌粟の茎の長きを風が責む/宮本和美
雛罌粟のすっと細く長く伸びて、風にそよぎやすい。しなやかで折れそうな茎を風がいくらでも吹いて、雛罌粟をゆらす。風が責めているようだ。その光景に風と明るい日差しを感じる。(高橋正子)

★行く春の田圃余さず土起す/甲斐ひさこ
春が行くと初夏。田圃はどこも余さず土が起こされて、はやも田植えの準備が始まったのだろう。「余さず」に作者の驚きがあって、「行く春」をそのことで深く感じとっている。(高橋正子)

★一村を包み信濃の花りんご/大山 凉
林檎といえば、信濃が思い浮かぶ。一村を包んでしまうほどの林檎の花。その光景だけだが、その光景がすっきりと抽出されて、詩になっている。(高橋正子)

★子が描きしげんげ田山の麓まで/池田多津子
子どもが描いた絵のげんげ田は、山の麓までげんげ田。故郷の原風景となって、子どもの心に沁みてゆくことだろう。子どもの心をよく汲んだ句。(高橋正子)

★蛙鳴く水新しき峡の田に/吉田 晃
蛙の鳴く峡の田は、あたらしい水が引かれて、田植えの準備が始まったのだろう。新しい水を喜ぶ蛙の声に、季節の新鮮さが伝わってくる。「水新しき」でこの句が生きた。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★若葉風路地にあおあお生まれいづ/藤田裕子
露地は風の通り道。吹き抜ける薫風の有様を上手く読まれており、共感の一句です。(宮本和美)

★芦伸びるまっすぐという美しさ/古田けいじ
水辺にまっすぐに伸びる芦の美しさにとても感動されたお気持ちが伝わってまいります。名詞止めにされていることで、とても美しさが強調されていると思います。(藤田裕子)

★鉄橋を駆けるSL風薫る/國武光雄
昔よく見かけた風景、懐かしく感じました。風薫る春のロマン溢れる作品と存じます。(宮本和美)

★ポヒー咲く飛行機雲斜めに曳れゆく/祝恵子
咲くポヒーに目をむけ、見上げると飛行機雲が飛行機の跡に曳かれて行くように流れいいく有様が浮かび上がって参ります。ポヒーと飛行機雲との取り合わせ抜群。(宮本和美)

★新しき風の道あり若楓/小河原宏子
今日の夕方散歩に出かけ、新緑の爽やかな風の通る道を歩いてきましたので本当に実感として共感する句です。「新しき風」と「若楓」の季語が絶妙で、胸の中を爽やかな風が吹き抜けるようです。(かつらたろう)

★囲いたる水位監視所若葉かな/まえかわをとじ
琵琶湖でしょうか。晴天で水位監視所には人影もなく、周囲を明るい若葉が彩っています。無骨な監視所とそれを取り囲む若葉のやわらかさとの取り合わせの妙を感じます。(多田有花)

★浚渫船底よりさらう春の河/志賀たいじ
浚渫船によって、水底の土砂や岩石をさらい水深を増す春の河。豊かに水の満ちた、ゆったりとした明るい風景の中、すべてが活気付く新たな季節の躍動感も感じます。(藤田洋子)

★沖待ちの船も長閑に日が暮れる/高橋秀之
遠くに少し霞んでみえる「沖待ちの船」と作者のいる陸地とを大きく包んで日が暮れていきます。のどかな時間と大きな景に春らしさがあります。(池田加代子)

★植え替えて蓮鉢に水満々と/黒谷光子
蓮は春に植え替えるのですね。泥の中のすっきりと根を整理したあと、鉢を満々と満たす水の新しさにうれしさを感じます。(池田加代子)

★夏近く帰路の車の窓を開け放ち/堀佐夜子
肌寒さの残るころは車の窓を開けるなんて思いもよらぬことでした。走る車の窓から入る風が心地よく感じるころとなり、体も心も軽く感じられます。もう初夏を感じる風です。(池田多津子)

【入選Ⅱ/19句】
★野薊と昼一本のバスを待つ/甲斐ひさこ
ローカルな味わいのある句です。季語と中七に、春の長閑さを感じます。(飯島治蝶)

★重ね厚く咲きて嬉しき牡丹かな/河野啓一
八重咲きの牡丹がぽってりと美しく咲いたことでしょう。丹精の喜びが初夏を思わせる光とともに伝わってきます。(小西 宏)

★眩しさの木々に溢れて四月尽/あみもとひろこ
一気に木々には緑が溢れ、夏が近づいたような日差しとなりました。木々の新しい葉が眩しく光る、この季節の躍動を感じました。(高橋秀之)

★シャガ咲いて無傷の一日(ひとひ)始まれり/井上治代
朝に見つけたしゃがの花だと思いますが、清々しさを感じる花で「無傷の一日の始まり」に共感しました。(池田多津子)

★”採らないで下さい”もっこうばら黄の垣に/かつらたろう 
29日の日お天気が良いので須磨離宮公園へ行くと柔らかいなんとも言えない黄色のもっこうばらを見ました。句に詠まれているように手折りて持って帰りたいくらいに可愛い薔薇の花でした。(小河原 宏子)

★夕映えの日のあわあわと紫雲英かな/小口康與
薄紫色の紫雲英が夕日に映えて広がり、一枚の絵のような美しい光景だったと思います。(井上治代)

★自転車の少年口笛つつじ咲く/大給圭泉
道沿いに躑躅が美しく咲いている中を口笛を吹きながら少年は何処へいくのでしょう。爽やかな気持になれる好きな句です。(甲斐ひさこ)

★陽と風をまるごと呑める鯉幟/かわなますみ
初夏の明るい光とさわやかな若葉風を思う存分吸い込んで、生あるごとく勢いよく大空を泳ぐ鯉幟。作者も童心にかえって、この季節を楽しんでおられるようで、元気をいただきました。(柳原美知子)

★サクソフォン若葉の下に吹く人も/多田有花
木々の芽も伸び、さわやかな若葉のころとなっています。心地よくサクソフォンを吹くことができそうです。(池田多津子)

★メーデーに風船配る平和かな/竹内よよぎ
風船の季語がよく効いて、昨今の子供連れ、家族ぐるみのメーデーの雰囲気がよく表現されていると思いました。(志賀たいじ)

★日が差して柿の若葉の玻璃に透く/藤田洋子
平明な表現ながら何ともいえない柿若葉の美しさ活写された御句かと存じます。大変勉強になりました。(河野啓一)

★春検診幼児元気に泣きさけぶ/おくだみのる
花鳥風月もよいが、この様な日常俳句が大好きです。 若き母親と元気な幼児の姿がありありと表現された佳き句と存じます。(宮本和美)

★実桜の仰ぐ高さに光りおり/臼井愛代
ふと見上げると、みどり濃く茂り始めた葉桜の間に見え隠れして、さみどりの瑞々しい実が輝いている。初夏へと移りかわる季節を実感し、生命力を感じます。(柳原美知子)

★すかんぽに祭太鼓の音流れ/柳原美知子
すかんぽと祭太鼓のどちらにも通じる飾らない素朴さが、読者に、親しみと、何処か懐かしい感じを与える御句と思います。(臼井愛代)

★蟇の声宅地に残る田一反/上島笑子
一反だけ残った田んぼの蟇の声が、すっかり宅地となった地域にも、昔ながらの自然を思い起こさせて長閑です。(臼井愛代)

★一年生花のアーチを潜りゆく/飯島治蝶
入学式のひとこまでしょうか。満開の桜並木の下を新入生が歩いていきます。桜は門出にふさわしい花ですね。(多田有花)

★矢車やたつた四人の分校に/宮本和美
幟竿の先端に軽快な音を立て、日に輝いて回る矢車。その明るさも嬉しく、五月幟が四人の成長を見守っているようで、季節の爽やかな明るさのあふれる分校です。
(藤田洋子)

★存分に風と戯れ片栗の花/篠木 睦
山地や林間に群落を作る片栗の花。豊かな自然の中で、心地よい風とともにある可憐な片栗の花の姿が、実に清々しく美しく感じます。(藤田洋子)

★風に揺れ都わすれの五、六本/吉川豊子
順徳院が承久の乱に荷担したとして佐渡に流されたときに、この花を見て都への思いを忘れたところから「都わすれ」の名前がついたとか。風に揺れる紫の花は心慰めるものなのでしょう。「五、六本」ゆえにいっそう心に残ります。(池田多津子)


■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★一村を包み信濃の花りんご/大山 凉
(光子・たいじ・治蝶・圭泉・泰與・啓一選)

りんごの花は写真で見るだけですが、信濃のひろびろと続く林檎園が薄紅に染まる光景を想像させていただきました。(黒谷光子)
信濃のりんごの咲く里の園、延々と続く薄紅色に染まる景を想像する丈で心が和みます。好きな句です。(志賀たいじ)
一読して、信濃の花咲くりんご畑の景を想起しました。白い可憐な林檎の花が咲き、よい香りに包まれた広々とした畑の広がり。一村を包みという表現がぴったりです。秋の収穫が楽しみです。(飯島治蝶)
良い香りの満ちて信濃の村を花りんごが覆ってる、想像しても気持ちよい景色ですね。(大給圭泉)
今の長野県の里山は桃の花と白い林檎の花とが咲き乱れて、心温まる風景をかもし出しておりますね。(小口泰與)
信州りんごの里、いいですね。山あいが遠く白く霞んで、陶然とした晩春の風情を想像しました。(河野啓一)

【次点/5点】
★野薊と昼一本のバスを待つ/甲斐ひさこ
(ひろこ・たろう・治蝶・佐夜子・泰與選)

入賞発表/4月20日(日)~4月26日(土)

2008-04-27 18:53:09 | Weblog
■4月20日(日)~4月26日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
桜の咲く峡の旅。風景に詩があって、それだけでよい句となる。旅鞄に作者の思いが詰められて、ふっくらと抒情のある句になった。(高橋正子)

【特選5句】
★遠足の列伸びきつて帰校せり/宮本和美
 行くときは意気揚々とまっすぐに並んでいる子どもたちですが、帰り道は途中で花を摘んだり、疲れて歩く速さが遅れたりと、まさに「列伸びきって」です。春の遠足はいいものです。(池田多津子)

★病みし身の路地に七色シャボン玉/大給圭泉
病の身に、夢に満ちた七色に輝くシャボン玉は明日へ生きる希望を与えてくれます。作者の思いと七色シャボン玉とが重なって、伝わってきます。(飯島治蝶)

★青麦の丈不揃いに風起こす/柳原美知子
青麦は本当に不揃いに伸びて、不揃いの風を起こしますね。緑のそよそよとした風がうまく表現されて好きです。(竹内よよぎ)

★春筍掘られて遺す穴ひとつ/多田有花
筍が掘られた場所に遺された穴は、その筍が、春の大地からのうれしい恵みであることを物語っています。(臼井愛代)

★なだらかに水の辺までを草若葉/臼井愛代
川の岸辺か池の辺か、春の水際ぎりぎりまでを被う若草の緑が、斜面のなだらかさと相まって、なおさらやさしい景色を見せてくれます。(池田加代子)

【入選Ⅰ/10句】
★紋白蝶吹かれて高き棕櫚を越ゆ/甲斐ひさこ
棕櫚の高ささえも越えるほどの勢いで空に舞い上がった紋白蝶の、いきいきとした姿に触れた作者の驚き、感動が伝わってきます。(臼井愛代)

★風が鳴るげんげ田に吾一人居る/祝恵子
なんと静かな田園風景でしょう。風の音が聞こえて来そうな心地がしています。(甲斐ひさこ)

★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)

★遅日かなかくれんぼうの声きけば/かつらたろう
日暮れがおそくなり、子ども達にはうれしい季節。かくれんぼうをする子らの声を聞きながら改めて遅日を実感されている作者です。(小川美和)

★大壺に山つつじ入れ陶器市/黒谷光子
この大壺も売り物なのでしょうか。青空の下での陶器市、つつじの花も鮮やかに楽しそうな活気に満ちた陶器市の様子が浮かんできます。(多田有花)

★日が差して柿の若葉の玻璃に透く/藤田洋子
外光が眩しく、若葉の照り返しが室内にも明るさをもたらす季節です。そんな季節の様子を的確にとらえられた句です。(多田有花)

★境内に三角ベース柿若葉/國武光雄
子どもの野球でも近頃は立派な用具とユニフォームをそろえるのが当たり前になっています。しかし、これは近所の社寺の境内に作られた三角ベース、その素朴さが柿若葉のみずみずしさとマッチして印象に残ります。(多田有花)

★朝風と共に香れるフリージア/迫田和代
朝風にフリージアの香る 、爽やかな明るい春の朝です。一日の始まりに、フリージアの嬉しい芳しさです。(藤田洋子)

★花水木まぶしき街に苗木売/かわなますみ
街を華やかに彩り、目を楽しませてくれる花水木。見かける苗木売も心楽しく、明るさとみずみずしい季節感が溢れます。(藤田洋子)

★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之
青空にも大きく開くチューリップにも、明るさと開放感があり、読者が元気をいただくような御句と思います。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/20句】
★ルオ-展外は明るき春の空/おくだみのる
ルオ-の絵画を楽しまれて美術館の外にでれば、そこには春の空がまぶしいほど。照明をおとしている館内で絵画を鑑賞されたあとの満足感が明るく伝わってきます。(小川美和)

★善峰に茜の雲や茄子の苗/まえかわをとじ
善峰山あたりはまだ畑が見られる静かな所でしょう。ずい分前にてくてくと歩いたことがあります。道沿いの畑に茄子苗の植えられている景が思い浮かびます。(甲斐ひさこ)

★春風に触る懐かしき潮の香よ/志賀たいじ
ご退院、心からおめでとうございます。北海道はここの所、本州と変わらぬ暖かさだったそうですが、退院して春風に触れ、潮の香を聞けば「ああ生きている・・」との心からの実感であったと思います。ご無理にならないよう充分ご静養下さいませ。(かつらたろう)

★デザートの皿は白磁や春いちご/小河原 宏子
ご馳走の後のデザートでしょうか。そっと出されたお皿は、雲のように優しい白磁、そこへ、夏はもうすぐと声を掛けるような、瑞々しい苺が載っています。幸せな瞬間です。(かわな ますみ )

★月おぼろ遠き記憶に立ち止る/藤田裕子
詩の情緒に魅せられます。(おくだみのる)

★春の雨繰り返し読む絵本かな/上島笑子
暖かいのに外で遊べない、春の雨の日、子ども達の愉しみは、やはり絵本なのでしょう。お母さまに読んで貰い、時には、自分でめくってみたり。幾度も繰られ、くたくたになってゆく絵本が、微笑ましく浮かびます。(かわな ますみ)

★ハリハリの音に甘みの木の芽和え/吉田 晃
耳と舌の感覚を上手く調和させた心地よい調子の句。好きな句。(まえかわをとじ)

★やわらかき豌豆の花莢成して/小川美和
近所でも豆の花が盛りです。句全体に豆の花をいとうしむのが出ていて好きな句です。(上島笑子)

★窓越しに歌聞こえ来る鯉幟/河野啓一
鯉幟が目を引く今日この頃です。窓越しに歌声を聞いている鯉幟も人も幸せですね。(竹内よよぎ)

★長堤を越し行く蝶の九十九折/飯島治蝶
風に流されるように蝶が堤を越えていこうとしています。ひらひらと行きかけてはまた戻り、その姿をまるで空間に曲がりくねった道があるように九十九折と表現されました。(多田有花)

★出揃いし麦の穂穀雨に波立てり/おおにしひろし
穂をはらんですくすくと伸び揃う青麦が清々しいかぎりです。穀雨に潤された麦の穂波に、いっそうみずみずしい麦の生長を感じます。(藤田洋子)

★朝よりの雨はげしかりけり葱の花/堀佐夜子
朝から降り続く雨の激しさの中、真っ直ぐに立つ葱の花茎。生長した葱の逞しさと細かく白い葱の花に向けられた優しさも感じます。(藤田洋子)

★菜の花や水面ゆつたり信濃川/小口泰與
川の近くに咲き続く菜の花の黄色がやさしく揺れます。信濃川の大きな流れにも映っているのかもしれません。 暖かい日差しも感じ、気持ちのいい春の一日です。(池田多津子)

★海の色明け暮れ変えて夏近し/篠木 睦
海の色は本当に不思議です。四季を通じて周りの変化とともにさまざまな表情を見せます。海とともに暮らしている作者ゆえ、そのわずかな変化を感じることができるのだと思います。 (池田多津子)

★囀りと坂を登れば海開け/竹内よよぎ
囀りを聞きながら坂を登ると眼下には真っ青な海が広がります。囀りがあれば坂道も軽やかに登れそうです。海を見下ろす爽快感もあり、心が広がります。(池田多津子)

★落日へメタセコイアの芽吹く色/古田けいじ
高々とそびえるメタセコイアの芽吹きの緑が、落日の輝きに、いっそう鮮やかに映えています。(臼井愛代)

★ふくらめる紫雲英田までの一本道/池田多津子
「ふくらめる」から、たくさんの紫雲英の花がのびのびと咲いている田んぼであることがわかります。その田んぼまで続く一本道を置いた田園風景が、春らしく、のどかです。(臼井愛代)

★図書館の窓にけやきの若葉映え/吉川豊子
図書館の窓には、木々の緑がよく似合いますね。枝を広げる欅の若葉が、読書の目を生き返られてくれるようです。(池田加代子)

★対岸の山頂上の躑躅かな/井上治代
対岸、山、頂上のツツジへと、しぼられていく視点のリズムが楽しいですね。赤いツツジにアクセントがあって、水の向こうの緑の遠景が引き締まります。(池田加代子)

★楓の芽ほどけて赤味増し揺れる/丸山草子
楓の芽はまさにほどけるように開きますね。赤い芽がほどけて楓の葉形になり、はじめて風に触れて揺れる様子に、繊細な魅力があります。(池田加代子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/5点/3句】 (作者名五十音順)
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
(宏子・恵子・凉・有花・豊子選)

旅の途中にあって電車を待つ間に鞄を横に置き、ふと見ると峡谷には美しい桜が咲いていて感激している作者、また早く皆に会いたい気持ちをも伝わってくる句と思いました。(小河原宏子)
この駅は無人なのかなと思ったりしています。静かで旅人を見守っている桜なのでしょうね。いい旅をなさったことでしょう。(祝 恵子)
長旅を終えて降り立った駅、重い鞄を置いてふと辺りを見回すと、渓谷には桜が満開の春爛漫の景色にほっと安らぎを感じられた気持ちが伝わってきます。(大山 凉)
小さな単線の駅という印象を受けます。満開の桜か、花吹雪か、いずれにせよこの時期の旅の楽しさがあふれています。(多田有花)
渓谷に桜が満開、駅はその美しい風景の中にある。{桜の駅に置く}列車を待つひととき、旅鞄を置いて桜に見入っている、作者も又、その美しい風景に溶け込んでいる。この上ない旅をなさいました。(吉川豊子)

★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
(ひろこ・光子・泰與・ひさこ・裕子選)

それぞれの穂先をしっかり空にむけて、麦畑の青一色が、美しく捉えられていると思います。(あみもとひろこ)
穂先をまっすぐ空に向け、青々とした麦畑の情景が素敵に詠まれています。(黒谷光子)
春暖と共に大きく伸びた麦の若葉が、青々と畑を覆っている様子が、リズムよく詠われています。特に畑一枚が良いですね。(小口泰與)
青々と育った麦に一斉に穂が出て触れればちくちくと鋭い穂先ですね。麦の生き生きとした景がよく伝わる好きな句です。(甲斐ひさこ)
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)

★風吹けば風に色あり若楓/宮本和美
(光子・光雄・啓一・よよぎ・治蝶選)

お天気のよい日の若楓の美しさ、風が吹けば風も若楓の色に染まって空を覆うようです。(黒谷光子)
緑と赤の若々しい楓を見かける季節となりました。若楓には生命の息吹を感じます。「風に色あり」が素敵です。(國武光雄)
風にその色がうつるかと思わせるような、若楓の透き通った色。格調の高い大好きな句です。(河野啓一)
若楓が日を透かし透き通った緑の風になった光景が目に浮かびます。きれいな句ですね。(竹内よよぎ)
吹く風が変わり行く季節をやさしく教えてくれます。透明感のあるさわやかな句です。(飯島治蝶)

入賞発表/4月13日(日)~4月19日(土)

2008-04-20 18:40:11 | Weblog
■4月13日(日)~4月19日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★桜咲く島へと長き水脈を曳き/柳原美知子
島に桜が咲くこと自体に抒情がある。その島まで船が長い水脈を曳いて、穏やかなみどり深き海が想像できる。島へゆくのは生活の船であろう。一景の画だ。(高橋正子)

【特選5句】
★起こされし田に次々と水の音/池田多津子
素人目にはごつごつと掘り返された田んぼに水が通され、行きわたる。その背後には堰からの力強い水音が聞こえてくるのでしょう。晩春の広々とした田園の風景が目に浮かびます。(小西 宏)

★春愁や紅茶のレモン厚く切り/宮本和美
 春愁を感じる夜は、レモンを厚く切って少しすっぱい紅茶をいただきたくなる心境ですね。多くの人に身近な共感を呼びそうな句と思いました。(竹内よよぎ)

★花筏組み直しては橋くぐる/黒谷光子
「組み直しては」がいいですね。花びらが寄ったり離れたりししながら流れていくさまを見事に表現されています。(多田有花)

★野遊びをする子一日すぐ暮れる/高橋秀之
元気なこどもたちの遊ぶ時間は短く感じもっと遊びたいのにすぐ一日は暮れるのでしょうね。(大給圭泉)

★影もたず白蝶光のみを撒く/かわな ますみ
美しく可憐な白蝶でありながらも、自ら発する光のありように、力強い生命力を感じます。鮮やかで眩しいほどの存在感です。(藤田洋子)

【入選Ⅰ/10句】
★囀りの影行き交いて朝眩し/丸山草子
すばやく往き来する鳥の影と、その高らかな囀り、眼に耳にまばゆい朝ですね。明るい春の一日が始まりそうです。(かわな ますみ)

★土筆ん坊ヨーヨーつく子ら草原に/飯島治蝶
 土筆が出てきて、蒲公英も,ヨーヨーも等々春の野原で楽しく遊ぶ子供達の姿が目に見えるようです。絵本の一ぺージのようにも思えます。「つくしん坊」とするところ素晴らしいです。(小河原 宏子)

★園児らの青いベレーに花の舞う/小河原宏子
桜の花も終わりかけ、いよいよ入園式が始まり新しい生活が始まりますね、男の子も女の子も青いベレー帽の制服に、桜の花びらが舞い散り祝っているようです。(かつらたろう)

★蓬摘み話のとどくほどにいて/大給圭泉
うららかな野の光と風の中で、蓬の香をまといながらの楽しいひと時。話相手との良き関係もしのばれて、心温まる句です。(柳原美知子)

★蓮華咲く一行詩書く明け暮れに/おおにしひろし
蓮華畑を見かけることも少なくなりました。しかし、一面の蓮華畑は詩情を誘うものです。野にある花の代表である蓮華草だからでしょうか。「一行詩」との呼応が見事です。(多田有花)

★抜きん出て茎立揺れを大きくす/臼井愛代
何の菜でしょうか。家の近所では葉牡丹が立ち上がっています。野菜では味が落ちてしまうため食べられなくなりますが、菜自身としては強い生命力の現れです。抜きん出るその力強さを愛でられているさまが浮かびます。(多田有花)

★校庭に太き影ある八重桜/小西 宏
八重桜は桜と名がついても、ソメイヨシノや山桜とは全く異なる印象の花です。「太き影」はまさにその印象を伝えられる言葉で、少し暑ささえ感じるようになったころにぼってりと重そうな花をつける八重桜の雰囲気を的確にとらえられています。(多田有花)

★永き日をお疲れさまと声交わす/藤田裕子
お互いに掛け合う一日のねぎらいの言葉。あたたかな心の交流に、永き日のほのぼのとした情感が漂っているようです。 (藤田洋子)

★山吹の黄金色まで坂登る/多田有花
坂登るほどに、山吹の華やかな色彩が目に入ってくるようです。鮮やかな黄金色が春まっ盛りの明るさです。(藤田洋子)

★馬酔木咲き日本庭園日のひかり/堀佐夜子
ひっそりとしていた日本庭園にも馬酔木が咲き、光を集めている様子に春らしいおだやかさがあります。(池田加代子)

【入選Ⅱ/17句】
★ふうわりと暮らし和ませ花みずき/大山涼
やさしいいろの花みずきと日々の暮らしを大切に楽しまれておられる作者の気持ちが伝わって優しい気持ちになりました。(丸山草子)

★たんぽぽや牧を揺るがす牛の声/小口泰與
たんぽぽの咲く草原に、放牧された牛。静かな牧場に、牛の声が牧場を揺るがすかのような大きな鳴き声。昼前の静かな春の牧場の様子を想像します。(飯島治蝶)

★お絵かきはチューリップから始まるよ/竹内よよぎ
「始まるよ」と、誰かに話しかけたいような嬉しさ・・・子供の国にいるような無邪気さが、楽しく感じられます。 (おおにしひろし)

★花の風来ているホーム深呼吸/吉田晃
のどかな駅のホームに立ち、自然の空気で胸いっぱいにしたくなる。そんな雰囲気がよく伝わってきます。(高橋秀之)

★棘かくしカラタチの花咲き誇る/古田けいじ
刺を隠して可憐な花を見せているからたちの花の姿を、うまく表現してると思います。(小河原宏子)

★げんげ田の一枚なれど天を突く/あみもとひろこ
周りに広がる田畑のなかに、げんげ(蓮華草)田はたった一枚だけ。たが、紅紫色の蝶の形の花をつけたげんげ(蓮華草)が咲いている田は、ひと際目立って存在する。下五の強調が、作者の感動の様を伝えています。(飯島治蝶)

★ひこばえや身に余りたるランドセル/かつらたろう
ランドセルが歩いているような一年生の颯爽とした、少しユーモアのある姿を見かけると声をかけたくなります。季語がとても似合います。(大山 凉)

★春の海揺れ桟橋に船を待つ/岩本康子
船が着く先に何か楽しいことが待っている予感をさせる句。 (古田けいじ)

★ランドセル背中隠れる一年生/國武光雄
我が家にも1年生がいますが、ランドセルを背中に余らせています。かわわいい盛りをうまく映し出しています。(高橋秀之)

★久しぶりミットを手にし花菜晴れ/祝恵子
お孫さんとキャッチボールをされたのでしょうか。すてきですね。 気持ちのいい春の日のひととき、楽しそうな様子が目に浮かび、読み手まで心うきうきしてきます。(池田多津子)

★こいのぼり自由に泳ぐ風となり/篠木 睦
桜の花から葉桜となり、早いもので山々にも新緑が見え始めるころとなりました。風の変化を「こいのぼりが自由に泳ぐ風」ととらえられたことに心惹かれます。 (池田多津子)

★花冷の筑波の旅籠(やど)に泊まりけり/おくだみのる
「旅籠」から風情のある建物と部屋を想像し、きっとゆったりとすてきな時間を過ごされたのだろうと思いました。筑波でのしっとりとした夜を思わせる「花冷」の季語が生きていると感じました。 (池田多津子)

★真っ直ぐに伸び筍の若さかな/河野啓一
すくすくと真直ぐに伸び続ける筍に、若さのもつ力、清々しさを実感された作者の感動が伝わってきます。(臼井愛代)

★この町を忘れず戻り燕鳴く/甲斐ひさこ
今年も姿を見かけるようになった燕の声を、この町を忘れずに戻って来てくれたのかと、親しい思いで聞いておられる作者のうれしさ、燕への温かい眼差しがあります。(臼井愛代)

★奥揖斐や桜吹雪の中に立つ/吉川豊子
うつくしい桜吹雪の中に立つという感動に、奥揖斐という土地への感慨も重ねられて、思い出深い春の一日を得られた作者の印象が強く伝わってきます。(臼井愛代)

★どっと揺れ菜の花一面黄の世界/小川美和
風が吹いて、群れ咲く菜の花がどっと揺れたとき、個々の花が渾然となってみせてくれる一面の黄の世界。花の香と相まって圧倒されるようです。(池田加代子)

★ひらひらと都の真中蚊喰鳥/まえかわをとじ
コウモリは一日に何百匹も蚊を食べてくれるそうですね。ひらひらと都の真中にあらわれた蚊喰鳥に物語性があって、興味がそそられます。(池田加代子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★蓬摘み話のとどくほどにいて/大給圭泉
(をとじ・ひろこ・光子・たろう・美知子・和美選)

お天気の良い日中の楽しい蓬を摘む情景がよく伝わってきます。「話のとどくほど」の表現が面白く楽しい句。(まえかわをとじ)
おしゃべりも楽しい、野に出ての蓬摘みに、春のあたたかい日ざしを感じました。(あみもとひろこ)
二三人での蓬摘みでしょうか、つかず離れずに話しながらの蓬摘み、春の野の長閑な懐かしい情景です。(黒谷光子)
小さい頃春休みに田の畦に、蓬摘みやせり摘みに行った懐かしい想い出があります。大人になってからでもやはり話相手がいて、世間話をしながらなのでしょうね。「話のとどくほど」との距離感に長閑さを感じて素敵です。(かつらたろう)
うららかな野の光と風の中で、蓬の香をまといながらの楽しいひと時。話相手との良き関係もしのばれて、心温まる句です。(柳原美知子)
余り距離が離れるとお喋りが出来ず、又、近いと窮屈、いずれにしても、ほどほどがよい。春の野の長閑な情景です。「ほどにいて」が抜群。(宮本和美)

【次点/4点2句】 (作者名五十音順)
★花筏組み直しては橋くぐる/黒谷光子
(康子・宏子・有花・草子選)

★球体の海ある空に春の虹/篠木 睦
(有花・宏・治蝶・凉選)

※「好きな句のコメントは1日1句」」という、デイリー句会のルールに則っていない選は割愛しました。

入賞発表/4月6日(日)~4月12日(土)

2008-04-13 11:23:29 | Weblog
■4月6日(日)~4月12日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★穏やかに潮の満ちきて入学式/池田多津子
入学式の句としては、めずらしい。海辺の学校の入学式。穏やかに潮が満ちてきて、いよいよに入学式が始まる。入学をする子らを迎えるゆたかな高揚感と緊張が伝わる。多津子さんは、今年度より校長となられた。(高橋正子)

【特選5句】
★花冷えの青梅ここより単線に/大給圭泉
複線から単線に変わりますと、景色も鄙びて、豊かな自然の景色が楽しめます、{ここより単線に}花冷えのひの旅の楽しさがよく伝わってきて好きな句です。(吉川豊子)

★茣蓙の上いろんな摘み草並べられ/祝恵子
子供達が積み草をして遊んでいるのでしょうか。小さな花を付けた草を摘んでは茣蓙の上に並べている可愛らしい様子、その子供達を見ている優しい眼差しの作者をも思います。(小河原 宏子)

★春の田の傍に積まれしもの多し/かわな ますみ
私の最近見た田んぼは、まだ何も植えられず、荒れた風情でした。しかし、所によっては、もう、少しずつ田植えの準備にかかっているところもあるのかもしれませんね。 そんなところでは田を整え、水を張り、あるいは田植えのために必要な機材や道具が傍に積まれているのかもしれません。(小西 宏)

★チューリップひとつ開いて今朝の色/臼井愛代
ひとつ・今朝・色と焦点化、限定化することで季語が、十分に効いています。春らしい夢のある句です。(飯島治蝶)

★春泥のバケツを覗く子見知らぬ子/飯島治蝶
掬い上げた泥の中に何がいるのかな、と見知らぬ子どもたちが寄ってくる。自然と子どもとの触れ合いが感じられて好きな句です。小さいころはごく当たり前のようににあった光景ですが、最近の都会では見かけなくなりました。(高橋秀之)

【入選Ⅰ/10句】
★落ちてくる雲雀にひろき野のみどり/おおにしひろし
鳴くのを止め、雲雀が降りてくる。そこは緑溢れる広い野原。なんという春の自然でしようか。牧歌的雰囲気が好きです。(宮本和美)

★三日月は桜の中に沈みけり/多田有花
見上げた桜の花の中に見え隠れする三日月が花の中に沈んでいる様にみえてきます。夜桜の景が美しく思い浮かびます。(甲斐ひさこ)

★花吹雪両手でうける子らの声/おくだみのる
柔らかな風に誘われて飛び散る花びらに歓声を上げて両手で花びらを追いかける子等の姿を見事に捉えていると思います。(小口泰與)

★囀りの日ごと膨らむ大樹より/小西 宏
大樹なれば集まってくる鳥も多いことでしょう。日ごとに増える鳥の声がにぎやかに聞こえてくるようです。(池田多津子)

★花韮のうすむらさきや庭に立つ/河野啓一
庭の片隅に咲くひそやかな花でありがら、際立つ六枚の花弁に、はっとするような「うすむらさき」の色。さりげない描写に花韮の魅力を言い切った、すてきな御句と感じます。(かわなますみ)

★正直に咲いて明るきチューリップ/大山 凉
チューリップの、見る人の心を和ませる佇まい、雰囲気が、「正直に咲いて明るき」に的確に表現されていると感じました。かわいらしく、皆に愛される明るさをまとった花ですね。(臼井愛代)

★花冷えの朝のこーひー香り立つ/吉川豊子
花冷えの朝の凛とした空気が、コーヒーの香をよりいっそう豊かなものとして伝えているようです。(臼井愛代)

★榛名湖へ道真っ直ぐやつくつくし/小口泰與
風光明媚な榛名湖へと続く真っ直ぐな道が清々しい限りです。その道々に見つけたつくつくし、湖畔の春の到来を告げてくれる嬉しい明るさです。 (藤田洋子)

★青麦を添えて花束子に作る/柳原美知子
青麦の添えられた花束、豊かな春の色彩と明るい季節感が溢れています。素敵な花束を貰った子どもたちの明るい笑顔も目に浮かぶようです。 (藤田洋子)

★届かぬと知りつつ草矢を打ちにけり/宮本和美(信之添削)
「届かぬと知りつつ」も飛ばす草矢の軽さ。子どもの心を持ちつつも、大人の余裕のようなものを感じさせてくれます。(池田加代子)

【入選Ⅱ/14句】
★鈴鹿嶺の風切って来るつばくらめ/古田けいじ
鈴鹿嶺の風が、この句を大きく清々しい想いに、句のリズムが好きです。(篠木 睦)

★紙風船空へ撞く子の声弾む/藤田裕子
春の日の中で紙風船をポンポンと撞いて遊ぶ子ども達の景が、楽しそうに軽やかに伝わってくる好きな句です。(小川美和)

★一村はダム湖の底や山つつじ/まえかわをとじ
ダム建設により水没の憂き目にあつたのは何年前か。今年も山つつじが咲く季節になつた。詠者の思いがこもった佳き作品。(宮本和美)

★紅椿ときおり見ては玻璃を拭く/黒谷光子
毎年咲くお庭の椿を愛でながら玻璃を拭かれる作者の生活の中に季節を楽しまれる様子がみえ好きな句です。(丸山草子)

★花吹雪遊ぶ子供らは風になる/篠木 睦
子供たちの元気に走り回る様子と花吹雪が幸せな気持ちにしてくれます。(丸山草子)

★鋤洗う川にひとひら桜ゆく/竹内よよぎ
農作業の仕舞いに流れてゆく花びらが目にとまった。良い景であり、農作業の喜びの伝わる句。(まえかわをとじ)

★青空を舞い来て川瀬の花筏/甲斐ひさこ
青空を舞い降りてきて集まった花筏、川瀬の花々に触れそうな身近さにかんじます。(祝恵子)

★花の香を包みて風の走りゆく/小河原宏子
花の中を吹いて来る風も花の香を包んでいるようで、お花見の豊かな気持ちが伝わります。(黒谷光子)

★横切りし潮目の白き瀬戸の春/吉田 晃
季節の変わり目にはよく潮流が行き会うのでしょうか。内海を白く横切る広い潮目に、春のゆったりとした気分が伝わってきます。(小西 宏)

★花びらをつれて落ち行く春の雨/上島笑子
春の雨のなかを花びらが散る様子を、雨がつれて落ちて行くと詠まれたところに、作者の感動があります。(臼井愛代)

★街路樹の芽吹き確かに浅みどり/小川美和
目に映る街路樹の生命感溢れる芽吹きです。木の芽立ちの美しさ、確かな春の到来の喜びを「浅みどり」に込められているようです。(藤田洋子)

★一本の桜見上げる人多く/高橋秀之
一本の桜は、特に見事なのだろう。通る人はみな見上げ、感嘆して通る。花の時季の桜の堂々とした存在感とそれを楽しむ多くの人の心。(高橋正子)

★れんぎょうの眩しき朝の厨かな/丸山草子
厨に生けられているのか、窓の外に咲いているのか。連翹が眩しい厨には、朝の活力が生まれてくるようです。(池田加代子)

★雨ふりて車窓目で追う散る桜/堀佐夜子
車窓のガラスを斜めに流れる雨の水玉と、薄紅色に散る桜とが重なり合って、雨の日の美しい景を成しています。車内に深く座り、窓から目で追う作者の心の静かけさが感じられます。(池田加代子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点2句】 (作者名五十音順)
★穏やかに潮の満ちきて入学式/池田多津子
(けいじ・宏子・ますみ・有花・啓一・豊子選)

感情が満ちてきたのは、子供の心へ、それを見守る親の心へ、子供たちを迎える先生たちの心へであろう。この穏やかさがいつまでも続いて欲しいと思う。(古田けいじ)
穏やかに潮が満ちて来るとゆう自然現象を上手く句に取り入れ、素晴らしい式が行われた事が良く表現されている句と思い選びました。(小河原宏子)
海辺の大らかな学校が浮かびます。自然からも祝福され、希望に満ちた入学の日。これから海とともに学んでゆくのでしょう。心強いですね。(かわなますみ)
海のそばにある学校なのでしょうね。すぐそこに海が見え、潮騒の音も聞こえるのでしょう。満ちくる潮が新入生の明日を象徴しているようでもあり、気持ちのよいおおらかな句です。(多田有花)
上5中7が健やかに成長してきた子供たちを思わせ、入学式との取り合わせが素晴らしいと感じました。(河野啓一)
海が近い学校でしょうか、{穏やかに潮の満ちきて}素晴らしい入学式、おめでとうございます。健やかに成長されますように、明るい明日を連想しまして、好きな一句です。(吉川豊子)

★花冷えの青梅ここより単線に/大給圭泉
(秀之・宏・よよぎ・凉・裕子・豊子選)

複線から単線への明快な分岐点が花冷えと春の暖かさの境目と重なって、スッキリとした感じがしました。(高橋秀之)
青梅とは、古い宿場町が少しずつ山間へと移り変わっていく、といった響きを感じさせるところです。そんな響きに「花冷え」と「単線に」がゆったりとした取り合わせを与えています。(小西 宏)
複線から単線への風景と青梅という地名が一体になって、花冷えを特別な花冷えにして、多くの人が心惹かれる句となっていると思います。(竹内よよぎ)
複線から単線に変わると周りの景色の鄙びた、豊かな自然の景色はさわやかですね。花冷えの小さな旅の楽しさを思います。(大山 凉)
地名の青梅が、花冷えの頃によく合っています。そして「ここより単線に」で素朴な趣きが深まっていくように感じました。(藤田裕子)
複線から単線に変わりますと、景色も鄙びて、豊かな自然の景色が楽しめます、{ここより単線に}花冷えの日の旅の楽しさがよく伝わってきて好きな句です。(吉川豊子)

入賞発表/4月1日(火)~4月5日(土)

2008-04-06 03:13:01 | Weblog
■4月1日(火)~4月5日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★堰落ちるまで一枚の花筏/大給圭泉
堰を落ちるまで桜の花びらを浮かせた水は平らに流れる。花びらがつながり、組み合ったのを花筏というが、堰を落ちるとたん、崩れる。美しく、はなかく、かわいらしさがある日本の美のひとつ。(高橋正子)

【特選5句】
★菜種梅雨夜はどこかで水響き/おおにしひろし
菜の花が咲く頃には、しとしとと雨が降り続く。それを菜種梅雨というが、昼間は、物音に紛れる水音も、静かな夜になると、溝川や樋など、どこかに小さな水音が響いて聞こえる。菜種梅雨の雨の降りようと、それに心を向ける作者との一つのものがある。(高橋正子)

★はくれんの日を恐れざる白さかな/小口泰與
辛夷とはちがう、はくれんのはっきりと空へ向って咲く白さを「日を恐れざる白さ」と言った。はくれんから見ると、日をも恐れないのであるが、作者の目は、白さに眩まんばかりで、恐れないものへの恐れがある。(高橋正子)

★青き踏む昨日と同じ影連れて/宮本和美
影はいつもと変わらずにあるけれど、作者の気持ちには春の喜びが満ちていると感じます。(池田多津子)

★たんぽぽの前通るたび光りけり/小河原宏子
春の日ざしを受けて明るく咲くたんぽぽ、通るたびに目を楽しませてくれますね。好きな句です。(小川美和)

★山荘の玻璃戸全面藪椿/柳原美知子
山荘の中から外を見ると、玻璃戸の全面を埋めるような勢いで咲く数多の藪椿。そんなうつくしい情景に触れた作者の感動があります。(臼井愛代)

【入選Ⅰ/10句】
★万博の太陽の塔春空に/堀佐夜子
太陽の塔は、大阪万博のときに作られた。岡本太郎独特のスタイルの表情、形があって、今も万博当時を思い出す方も多いだろう。のどかな春の空と結びついて、そんな思い出と重なっているのかもしれない。(高橋正子)

★対岸もふくらむ花の列をなす/池田多津子
作者のいる岸も対岸も全開の桜並木という壮観が、挟まれる冷たい川水の流れを通して見えます。両岸の花と水の対比に惹かれました。(おおにしひろし)

★磨崖仏多数おわして花の雨/祝恵子
景がよく見えます。普段は殺風景で、そこから離れなれない磨崖仏にも春が来ました。季語が効いて、やさしい温かみのある句になりました。4月8日の灌仏会を連想しました。作者の心根が伝わる一句です。(飯島治蝶)

★枝揺らし吹くとき激し花吹雪/臼井愛代
満開の桜も美しいが、花の散る様に桜の本質を感じるこの頃です。中七の「吹く時激しい」が素晴らしいと存じます。共感を覚えます。私も桜といえば、散る桜ばかり読んで居ます。(宮本和美)

★幾万の楓の芽ぶき水音に/黒谷光子
「幾万」と形容された楓の芽ぶきに、あふれるような生命感があります。そこに水音も聞こえ、春らしい明るさがあります。(臼井愛代)

★道ひろく春山絶えず正面に/かわな ますみ
中七り「春山絶えず」がよく効いた佳き句と存じます。共感を覚えます。(宮本和美)

★散る花に各駅停車ゆるやかに/小西 宏
古き日本映画の一場面を見るようです。散る花には各駅停車が似合いますね。 (竹内よよぎ)

★囀りがいずこも先にいる山路/多田有花
いろいろな鳥の囀りを聞きながらの楽しい山歩きが想像できます。(黒谷光子)

★花の下砂山高くつくる子ら/飯島治蝶
「花の下」に優しさがあって、「子ら」を見守る視線がいい。「砂山高く」に作者の主情を読んだ。(高橋信之)

★前籠に菜の花ゆらし橋渡る/甲斐ひさこ
自転車の前籠に菜の花をいっぱい入れて、橋を渡るときのたのしさ。川風や春川の流れが作者をさらに喜ばせるだろう。明るく開放的な句。(高橋正子)

【入選Ⅱ/14句】
★花冷えの部屋に立ちたる置時計/吉田 晃
庭に面したしずやかな畳の部屋でしょう。花の色と外気が直接伝わってくる。そこに据えられた置時計は、古式を守りながらも季節のうつろいを見守る時の流れでしょうか。(小西 宏)

★髪に背に花に降られて山下りる/小川美和
桜の散るなか山を下りられた様子に、花を降らせるうつくしい春の日を思い描きました。散ってしまう桜の花を惜しむ気持ちも伝わってきます。(臼井愛代)

★鳥あまた容れし桜の巨木かな/おくだみのる
巨木という言葉に、その樹の樹齢の長さを思いました。長い年月をそこに立つ、まるで魂を持つかのような桜の樹が、見る人にも鳥たちにも与えている安らぎがあります。「鳥あまた容れし」が温かく、好きな句です。(臼井愛代)

★旅立ちの空は桜の色に染む/大山 凉
お子さんかお孫さんの旅立ちの景でしょうか。門出を祝うかのように、満開の桜が空一面を薄ピンクに染めている景が目に浮かびます。(國武光雄)

★善峰へ抜ける道なり竹の秋/まえかわをとじ
善峰寺の辺りは竹林の多いところ、少し黄ばみはじめた竹林のそよぎを思います。(黒谷光子)

★花曇くもりて満つる花のいろ/かつらたろう
青天の下で見る花はよく映えていますが、花曇りは、かすんで見えるのでしょう。今日も、花曇の中、花の下を車で通ってきました。「くもりて満つる花のいろ」は、よく表現がされていると思いました。好きな句です。(吉川豊子)

★チューリップ花の数だけ喜びを/竹内よよぎ
かわいいチューリップの花を見ておりますと、花の数ほどたくさん喜びをいただいたようにとても幸せな気持ちになります。(藤田裕子)

★風光る子羊生まる昼餉時/丸山草子
昼餉時という日常の生活リズムの中に、子羊が生まれる感動が織り込まれて、新鮮な驚きがあります。風光るの季語がよくあっていますね。(池田加代子)

★花見かな空より青き茣蓙を敷き/吉川豊子
満開の花の下に、空より青い敷物が色鮮やかで、楽しげな雰囲気ですね。お花見を満喫されたことでしょう。(池田加代子)

★さくら咲くその満開の花の下/河野啓一
ひとつひとつの桜の花が咲いて、満開の花となる感動。花の下から見上げる感動は、年を追うごとにしみじみと深まるように思います。(池田加代子)

★池の面影ふくらませ花静か/藤田裕子
水辺に爛漫と咲き盛った花の美しさ、池に映る花影も豊かに心落ち着く情景です。しばし佇んでいたいような花の静けさです。(藤田洋子)

★黄水仙陽の差す方へ同じ向き/古田けいじ
春の陽光降り注ぐ中、向きを同じに咲き揃う黄水仙が一際鮮やかです。おのずと心明るくなれる春らしさです。(藤田洋子)

★さくらももあんずの花咲く田舎道/岩本康子
さくらにももにあんず、心に喜色をもたらすような花々の華やかな色彩です。田舎道なれば、より嬉しい春爛漫の明るさです。(藤田洋子)

★爛漫の桜並木を初登庁/國武光雄
4月は、入社、転勤、転任などによって、気持も新たに出発という方も多い。爛漫の桜並木に祝福されて、さっそうと登庁されたに違いない。初登庁に気持が籠められている。(高橋正子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/4点】
★降るよ降る飛鳥の山は花吹雪/小川美和
(宏子・光子・恵子・治蝶選)

飛鳥の山々が桜の吹雪に包まれてその中にいるのか、又は眺めているのか・とにかく幸せいっぱいの作者が思われます。(小河原宏子)
飛鳥の山は花吹雪のまっさかり、風に舞う桜の情景が見事に詠まれています。(黒谷光子)
飛鳥山での花吹雪の体験、至福のときでしょう。(祝 恵子)
古くからの歴史を持つ飛鳥の山の花吹雪。歴史ロマンを感じさせてくるような一句です。 (飯島治蝶)

【次点/3点5句】 (作者名五十音順)
★磨崖仏多数おわして花の雨/祝 恵子
(治蝶・凉・ひさこ選)
★枝揺らし吹くとき激し花吹雪/臼井愛代
(をとじ・治蝶・和美選)
★大根の花の冷たさ手折りけり/おおにしひろし
(ひさこ・よよぎ・泰與選)
★鳥あまた容れし桜の巨木かな/おくだみのる
(愛代・ますみ・凉選)
★堰落ちるまで一枚の花筏/大給圭泉
(宏子・宏・恵子選)

※「好きな句のコメントは1日1句」」という、この句会のルールに則っていない選は割愛しました。

入賞発表/3月23日(日)~3月31日(月)

2008-04-01 00:11:25 | Weblog
■3月23日(日)~3月31日(月)
□高橋正子選

【最優秀】
★山水に浮かせて洗う蕗の薹/松本和代
作為ない句。山水と蕗の薹の早春の出会いそのままが、そっくり作者の気持となっている。濁りない、すずやかな気持。(高橋正子)

【特選5句】
★咲きみちて花は電車を弾ませり/大給圭泉
「電車を弾ませり」は、作者の心の弾みでもあって、妙。咲き満ちた桜を見ながら電車で行過ぎる。その美しさに電車も作者の心も弾むのである。(高橋正子)

★さえずりや和紙に包まる五色豆/小口泰與
「さえずり」「和紙」「五色豆」と重なると、春のうららかさに、「みやび」な雰囲気が重なって、気持が優しくなる句。(高橋正子)

★草萌えを白き靴履き軽々と/竹内よよぎ
萌える草と、白い靴の取り合わせがさわやかで、「軽々と」の気持がすっと読み手に伝わる。(高橋正子)

★放たれし水に蕨の青深き/池田多津子
蕨は、芽生えでありながらも深い緑。水に放つとそれが「青深く」と静謐な色となる。(高橋正子)

★横浜に汽笛の曳ける花の昼/臼井愛代
横浜の港には、時折汽笛が響く。桜が咲く昼に、「ぼおー」っと曳き鳴る汽笛に、長閑な、横浜らしい花の昼がある。「曳ける」が的確で、この句を生かしている。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★白木蓮大き青空受け止めて/黒谷光子
大きい木蓮の木を見上げると青空に張り付いているような錯覚をすることがあります。澄んだ空と白い木蓮の美しい色取りが上手く表現されていて、好きな句です。(甲斐ひさこ)

★初音聞くひょうたん池の森の方/祝恵子
ひょうたん池の向こうの森から聞こえてくる鶯の声。初めて聴くのどかな声に春を実感しておられる喜びが伝わってきます。(大山 凉)

★活けてより少女の笑みを桃の花/藤田裕子
素直な句で共感を感じます。梅の花を上手に活けることが出来たと、にんまり微笑む少女の姿が見えるようです。(宮本和美)

★便りには雲の白さと初桜/かわな ますみ
お便りに記された春の喜びと明るさが伝わってきます。好きな句。(まえかわをとじ)

★たんぽぽの花の内より満ちて咲く/安藤かじか
たくさんの花びらが重なり合っているたんぽぽの花。よく見ていると、花の中心よりゆっくり開いて咲いていくことに気づき、その感動を一句にされたのだと思いました。「満ちて咲く」という表現により、命の豊かさを賞賛している作者の心情が伝わってきました。(井上治代)

★初音聞く朝の冷気のその中に/河野啓一
浅春の頃は、朝はまだ冷たく、空気も澄み切っています。そのような空気の中の初音は、作者の心の奥底まで清々しく沁みていったことと思います。(井上治代)

★紫の花ほつほつと山つつじ/小河原宏子
山つつじの素朴な美しさ。その花の咲いている様子を「ほつほつと」と表現されたことが、山つつじの花の姿によく合っていると思いました。また、のどかな春の山の風景が印象的に詠まれた句だと思いました。(井上治代)

★茎立てるもの共々に鋤きにけり/まえかわをとじ
思い思いに伸びていた茎立ちも、土といっしょに鋤きこんで、いよいよ畑仕事も本始動の勢いにあります。(池田加代子)

★わつと来てわつと散り去るげんげ摘み/宮本和美
レンゲ畑を見つけた子ども達でしょうか。わっと輝く笑顔で来て、手に手にレンゲの束を握りしめて畑から引き揚げてゆく、にぎやかで楽しい経過が見て取れるようです。(池田加代子)

★日を浴びて湖畔に若木の桜咲く/飯島治蝶
若木の桜が、湖畔の澄んだ光の中に、みずみずしく花をつけました。日を浴びた桜の若さが凛々しく感じられます。(池田加代子)

【入選Ⅱ/13句】
★花辛夷少年どつと駆けてくる/あみもとひろこ
ある日を境に一気に花開く辛夷の花の勢いと純白の花の清清しさが、どっと駆けてくる少年の勢いや元気な様子と重なり、読者を何か明るい気持ちにさせる御句と存じます。(臼井愛代)

★降り立てば春満月の終着駅/尾崎 弦
終着駅を照らす春満月が、駅に降り立った人々をあたたかく迎えているようです。疲れた人をもほっとさせるような優しさがあります。(臼井愛代)

★祖母植えし椿の赤の満開に/丸山草子
お祖母様が植えられた椿の満開を眼にされ、植えた方を想う作者の心に宿った、しみじみとした温かさを思います。(臼井愛代)

★春蘭は撮る時昼の陽を抱けり/古田けいじ
カメラのファインダーを覗き、春蘭に焦点を絞り込んだとき、春のやさしい陽光に包まれた命ある春蘭を作者が発見した。蘭にある上品な品格が浮き彫りにされた一句です。季語が効いた春らしい句です。(飯島治蝶)

★富士山に一本桜毅然たり/おくだみのる
大きく美しい富士山に、一本桜が強く美しく咲く姿を見つめられました。命あふれる一本桜への温かさを感じます。(藤田裕子)

★初桜最後の式辞開きけり/吉田 晃
初桜が咲いた喜びと共に、退職される日に開かれた式辞、たくさんの思い出が過ぎり淋しさがこみ上げてきて万感の思いだったことと存じます。(藤田裕子)

★爛漫と桃の咲きいる鉄工所/おおにし ひろし
眩いばかりに咲き満ちた桃の花、索漠とした鉄工所と対照的な花の明るさがいっそう鮮やかで、心和む愛らしさと優しさです。(藤田洋子)

★澄み渡る田舎の空よ連翹忌/井上治代
光太郎の忌日、仰ぐ空の美しさにおのずと心も澄んでくるようです。「田舎の空よ」の詠嘆に、自然に向き合う作者の真っ直ぐな心も感じます。(藤田洋子)

★晴れ渡る陽射しを浴びて卒園式/高橋秀之
降り注ぐ明るい春日が、慶事に相応しい晴れやかさを感じさせてくれます。健やかなお子さまの成長を見る喜びがあふれているようです。(藤田洋子)

★花豌豆莢膨らませ空に伸び/大山 凉
 野山も里も花盛りです。畑では豌豆の紫色の花が目だちます。蝶も飛び交い、明るい空へ豌豆が伸びていきます。(多田有花)

★舞う花の全きままに地に届く/小川美和
 美しいまま花びらとなって散っていくのが桜の魅力のひとつです。「散ればこそいとど桜はめでたけれ」、桜を見ていると本当にそう思います。(多田有花)

★連翹の枝垂る明かりや白き塀/かつらたろう
 連翹の黄色が白い塀に映え、春らしい色彩です。柔らかな風が連翹を揺らせば、その影もまた揺れるのでしょう。(多田有花)

★花の昼はないちもんめ子らが遊ぶ/堀佐夜子
桜の花が咲き、辺りは明るく華やいでいます。子どもたちがはないちもんめをして遊んでいる姿が楽しそうで、桜の開花を心から喜んでいるようです。読み手の心もうきうきしてきます。(池田多津子)

★蒼天の青竹匂う春日傘/篠木 睦
暖かい日が続くようになり、日差しも少しずつ強くなってきました。日傘の人が竹林を歩いているのでしょう。真っ青な空に真っ青な竹がすがすがしく、日傘をさして歩くのもうれしくなります。(池田多津子)

★一斉に桜満開にしひがし/岩本康子
ちょっと遠くから幾本もの桜を遠望しているのでしょう。多くの桜が同時に咲き誇ることへの感動を感じました。「にしひがし」で景色の広がりを感じることができます。(藤田荘二)

★遊歩道タンポポ路肩に日の溢れ/吉川豊子
タンポポの花は、太陽のようでもあり、太陽の光をタンポポの色に変えて反射します。「路肩に日の溢れ」が素敵な表現ですね。春のあたたかみを感じました。(藤田荘二)

★行く雲も大空の中桜咲く/甲斐ひさこ
桜が見ごろの時期、大きくて明るい景色の中を、春の風にのって白く雄大に流れる雲が目に浮かびます。同時にそんな大空へ、桜がのびのびと大きく咲いている景色でしょう。雲と桜の対比が大空を背景に生きていると思いました。(藤田荘二)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/5点】
★咲きみちて花は電車を弾ませり/大給圭泉
(秀之・和美・凉・ひろし・よよぎ選)

電車の行く野原が花に満ちている様子に春の明るい雰囲気が感じられます。(高橋秀之)
下五の「弾ませり」に詠者の心情の表現された佳き作品と存じます。夢を感じさせる好きな句です。(宮本和美)
桜が咲き満ちる中を走る電車の弾みは、圭泉様の嬉しい弾む心そのままですね。(大山 凉)
作者自身の気持ちが大胆に表現され素晴らしい色彩感と動感のある句になりました。(おおにしひろし)
満開の桜の下を電車が通り過ぎてゆく。作者の心の弾みそのままの電車ですね。咲き満ちた桜の喜びが動く電車でいっそうふさわしく詠まれていると思いました。(竹内よよぎ)

【次点/4点2句】
★光曳き翔びたつ鳥や初桜/大山 凉
(ひろこ・光子・よよぎ・睦選)

★ぶらんこを鳴らし続ける六年生/池田多津子
(泰與・睦・光子・ますみ選)

入賞発表/3月16日(日)~3月22日(土)

2008-03-23 00:12:45 | Weblog
■3月16日(日)~3月22日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★白木蓮花よりほかは空ばかり/宮本和美
白木蓮と空のほかはない。葉もない。白と蒼のすっきりとした対比に、白木蓮の花がみずみずしさを増した。(高橋正子)

【特選5句】
★つくづくし話は旅のこととなり/祝恵子
「つくづくし」は、もちろん土筆のこと。おそらく二人が土筆の袴を取りながら、あれこれと話しているうちに、旅にでも行こうかというような話になったのだろう。普段の生活の楽しさが伝わってくる。(高橋正子)

★副都心公園諸芽こぞりたつ/大給圭泉
副都心は、高層ビルが建ち並んでいるのだが、意外と公園が多い。デザインの良い高層ビルの間にも公園があり、いろんな樹が植えられている。「諸芽こぞりたつ」は、ビルと競うように空に伸びようとする小さな芽の勢いがある。ビルと諸芽に現代の美がある。(高橋正子)

★菜の花の風がこぼれて町中へ/藤田荘二
作者は、菜の花の咲いているところを、そよ風に吹かれながら通って来たのだろう。町中へ入ってもその風が身を吹き、今見た菜の花が残像となっている。「こぼれて」の言葉は、そういった様子。(高橋正子)

★雪解田の空を映して光りたり/丸山草子
事物の状態や性質などを強く断定する意を表す下五の「たり」。積もった雪が解けた田水に映る春の空がまぶしく光り輝いている春の景に対する作者の感動が伝わって来ます。(飯島治蝶)

★戦争のなき国なれば梅満開/古田けいじ
花の美しさを満喫できるのは平和だからこそ。争いのない世界、皆が満開の花を愛でることができる世界になるよう願います。(池田多津子)

【入選Ⅰ/10句】
★井戸掘りや下萌えに打つ一の杭/まえかわをとじ
春になると大地の息吹が感じられます。井戸を掘るために打つ一本の杭が、冬の間静かに春を待っていた大地に息を吹き込むようです。 やがて水が湧き、大地も人も潤されることでしょう。(池田多津子)

★春草の土手を一気に駆け上る/大山 凉
春うららのいい季節ですね、句のリズムが好きです。(篠木 睦)

★帰り来て子ら田楽を焼く夕べ/吉川豊子
微笑ましく、共感を覚える句。 一家団欒の景が浮かび上がって来ます。微笑ましい佳き句と存じます。(宮本和美)

★鍬の音の清かに弾み花菜咲く/かつらたろう
音の形容に、澄んだ音色、弾むリズム、は何気なく使っておりましたが、土の声を、清かに弾む、と表わされた御句からは、これまでにない確かな春を実感いたしました。鍬の響きとともに、菜の花の色が広がる、美しい景色が浮かびます。(かわな ますみ)

★段畑の膨らみ明るき花菜咲く/池田多津子
花菜が咲き、その明るい黄の色の広がりで、段畑が、膨らんだように華やいでいます。「膨らみ」に春らしい優しさがあります。(臼井愛代)

★奔放に風に黄を撒き花ミモザ/あみもとひろこ
鮮やかな黄の花ミモザが風に揺れている光景を充分に詠まれていると思います。(黒谷光子)

★真青なる空の一点揚げひばり/祝恵子
青空に囀りながらまっすぐに舞い上がる雲雀を見かけた喜びが溢れています。あの瞬間は嬉しいものですね。(大山 凉)

★蓋取れば白と緑の菜飯かな/小河原宏子
蓋付きの器を開けるときめきは、新しい季節を歓ぶ心に通じるように思います。ご飯の白さがうれしく、菜の緑がうれしく、その対比の鮮やかさにも春そのものの明るさがあります。季節ををおいしく美しくいただく心を大切にしたいですね。(池田加代子)

★月光へ彼岸会の時告げる鐘/黒谷光子
清らかな月の光りのもと、これから始まる彼岸の仏事を前に、響く鐘の音がとても神聖に聞こえ印象的です。(藤田洋子)

★一群の絵馬揺れていて春の風/篠木 睦
合格祈願の絵馬でしょうか。願いが叶うも叶わないも、それもまた神の御心。春の風が穏やかですね。(多田有花)

【入選Ⅱ/13句】
★菜の花や一湾の青真っ平ら/竹内よよぎ
真っ青な穏やかな湾をぐるりと囲む山々に花菜が咲いている、今わたしが見ている情景と重なりました。うららかな春の一日です。(池田多津子)

★春麗ら旅人多き渡し船/岩本康子
うららかな季節になってまいりました。旅にでたくなります。渡し船に乗るのも気持ちがいいでしょうね。(祝恵子)

★青麦やごうごうと吹く里嵐/小口泰與
ごうごうと吹く嵐に立つ青々とした麦の広がりを目に浮かべます。なぎ倒されそうになってもしっかりと大地に根付いている麦の力強さを思います。(臼井愛代)

★なずな草空き地をうめて風鳴らす/堀佐夜子
なずなは、小さな白い花をいっぱい咲かせ、たくましくどんどん増えていきます。空き地がふんわりと白く盛り上がり、心地よい風が吹き渡ります。(池田多津子)

★ラジオより流れくる歌春よこい/藤田裕子
春が近づくと、知らず知らず歌を口ずさんでいることがあります。ラジオから流れてくる歌も春の歌。うれしくて心が弾んできます。(池田多津子)

★筍や土押し上げて陽を求む/おくだみのる
筍が春の陽を求めて、土を押し上げる力は強く、上へ真っ直ぐです。筍が地表を突き破ろうとする瞬間には、紛うことのない真理が見えるように思います。(池田加代子)

★旅立ちや送る駅舎の白木蓮/國武光雄(信之添削)
白木蓮咲く清楚な趣の駅舎。まるで旅立ちを祝福するかのように咲く木蓮の純白さが、ことに眩しく明るく感じられます。 (藤田洋子)

★薄茶の枝に水路あるらし芽吹く木よ/小川美和
枯れたように見えていた枝も冬の間に着実に先へ進む準備を整えていました。高い枝の先までも確実に芽吹き、それを可能にしている木々の命の力を感じます。(多田有花)

★梅東風を浴び御礼の絵馬掛けむ/かわな ますみ
梅の香と春を運ぶ風の中、お礼の絵馬をかける参拝の人、時期的には合格祈願がかなったのでしょう、それを一緒になって心を和ませている作者。日常のほほえましい一瞬を、うまく切り取られたと思います。梅東風と絵馬を結ぶ「浴び」が素敵だと思いました。(藤田荘二)
 
★初蝶の文学碑より舞い出ずる/飯島治蝶
碑にじっと見入る作者と不規則に明るく飛ぶ初蝶の動きの対比が、蝶の動きを際立たせていると思いました。碑に記された先人の思いが作者にうまく伝わったのかもしれません。(藤田荘二)

★芍薬の夕影つれて芽を伸ばす/古田けいじ
芍薬の芽の伸びに重なるように夕影が長く曳き、芽吹くものの生長の勢いよりいっそう実感されるようです。(臼井愛代)

★金盞花日を返しては耀けリ/河野啓一
金盞花のオレンジ色は独特で、彼岸のころの日に、その日の色と同じように耀く。「耀く」という字が相応しい花であろう。(高橋正子)

★真夜中に黄色が浮かぶフリージア/高橋秀之
家族が寝静まった真夜中、食卓などに活けてあるフリージアにふと目がいく。その黄色い花が浮かんでいるように思える。潤んだような春の夜の質感がでいる。(高橋正子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点2句】
★春の草一気に土手を駆け上る/大山 凉
(秀之・荘二・みのる・睦・光子・佐夜子選)

暖かくなって土手が一気には一気に草が生え始めた、そんな様子が駆け上るという表現に感じられます。(高橋秀之)
春の風になびく若草の様子ですね。気持ちの良い川風と陽光を感じました。(藤田荘二)
春になりたちまち草が土手に伸びる、春の勢いを”一気”に感じました。(おくだみのる)
春うららのいい季節ですね、句のリズムが好きです。(篠木 睦)
ここ2・3日急に春らしくなりました。土手草も一気に伸びる、勢いを感じます。(黒谷光子)
私も病院の行き帰りに実感して来ました。(堀佐夜子)

★戦争のなき国なれば梅満開/古田けいじ
(多津子・和美・凉・宏子・草子・睦選)

争いのない国で梅を見ることのできる喜びと感謝が伝わってきます。(丸山草子)
戦争のない平和な日本なればこそ梅見も楽しめるのですよね。共感できる素敵な句とおもいます。(小河原宏子)
満開の梅の花を愛でることのできる幸せは平和があればこそ、争いの無い平和な世界がきますようにと願うばかりです。(大山 凉)
共感を覚えます。平和な国だからこそ梅も満喫出来ると思います。(宮本和美)
季語の配合に巧さがあり、共感できる句です。(篠木 睦)
花の美しさを満喫できるのは平和だからこそ。争いのない世界、皆が満開の花を愛でることができる世界になるよう願います。(池田多津子)

入賞発表/3月9日(日)~3月15日(土)

2008-03-16 01:13:50 | Weblog
■3月9日(日)~3月15日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★一山の湧き水清し蝶の昼/小口泰與
俗世を離れた静かで明るい世界が「蝶の昼」として詠まれた。一山から湧いて流れる水は清く、蝶が飽きることなく舞っている。(高橋正子)

【特選5句】
★風光る沖で入港待ちの船/高橋秀之
きらきらと耀く沖で、入港を沖で待っている船。船の待つ沖は、心地よい風が吹いているであろう。急がない春の時間がここにある。(高橋正子)

★下萌の川原ひろびろ橋渡す/かわな ますみ
ようやく草が萌え出した川原。そこに長い橋がかかっている。川原がひろびろしていることはもちろん、橋ものびやかである。下萌の川原であるからこそ、このような広さが見える。(高橋正子)

★春塵の窓拭き透かす空の青/小河原宏子
塵とはいっても、「春塵」となれば、その言葉も美しくなる。うっすらと塵に汚れた窓を拭くと、空の青がすっきりと見える。こういった嬉しさが主婦の日常にはある。(高橋正子)

★芝焼くや火の波うごき広がれり/丸山草子
芝を焼く。地を這う火が時に勢いづいて波打って広がる。枯芝に広がる火の原初の姿が見える。(高橋正子)

★いっせいに花かず増やし白木蓮/岩本康子
一雨ごとに気温があがってくるころ、白木蓮が咲き始める。ある日、いっせいに白い花が枝々に咲いて、その見事さに驚かされる。「花かず増やす」は、的確な把握。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★しゃくし菜の花菜となりても茎白し/かつらたろう
自然をよく見つめられて作られた句だなと思いました。「花菜となりても茎白し」と詠まれたことが、新鮮な野菜の命の輝きを感じさせてくれます。(井上治代)

★春日浴び駆け行く子らの影短し/飯島治蝶
日が長くなり、太陽も空の高い位置を通るようになりました。強くなっていく日差しと、同じように短くなっていく影、春が進んでいくのを見つめておられる様子が伝わってきます。(多田有花)

★浜風に揺るる目刺の背ナ青し/篠木 睦
海辺の風景が浮かびます。美味しい目刺が出来る事でしょう。(堀佐夜子)

★自転車を置いて子ら寄る蝌蚪の池/小川美和
一人が蝌蚪を見つけてわっと自転車降りて皆で見入ってる様子良く見かけたこと思い出します。春ですね。(大給圭泉)

★菜の花やトロッコ電車の止まる駅/大山 凉
菜の花の咲くローカルな風景が見えます。トロッコ電車が味わい深い句に仕立てています。(飯島治蝶)

★花菜畑に見えかくれする肩車/大給圭泉
うららかな春の一日を家族で楽しんでいる様子がよく伝わりなんとなく心温まる句ですね。(篠木 睦)

★青麦の風さらさらと鳴り渡る/池田多津子
麦の揺れる様と風の音が活き活きとした感じを与えてくれます。(笠間淳子)

★里山の上り下りに芽木親し/臼井愛代
目に触れる、とりどりの木々の芽立ちが春めく嬉しさです。一段と季節の明るさの増す里山に入り、道行く心楽しさが快く伝わってきます。 (藤田洋子)

★春泥を飛んで見せたるランドセル/宮本和美
ランドセルを背負った子が元気よく飛んで見せたのでしょう。生き生きとした子どもの姿が大好きです。(池田多津子)

★雪吸いて黒き土より草萌える/竹内よよぎ
冷たい雪をしっかり吸い込んで、それを命の水として芽生えた草の力強さを感じま
す。黒い土の上に見え始めたさみどり色に春の勢いがあります。 (池田多津子)

【入選Ⅱ/11句】
★湿り気の森の小道よ春の香よ/祝恵子
芽吹きのころの森は独特の香りに満たされます。しっとりとした森の小道を歩きながら、胸に吸うその香りはまぎれもない春の息吹です。(多田有花)

★空の青濃くして雲雀落ちにけり/まえかわをとじ
青く晴れ渡る空と雲雀の晴ればれと清々しい光景です。空色の濃さに、一層急降下する落雲雀の鮮明さを感じます。 (藤田洋子)

★まんまるの竹の切り口風光る/あみもとひろこ
うらうらと晴れた春の日に、春風が吹き、蝶が飛び交い、菜の花は咲き乱れている。のどかな日に、切ったばかりの青々とした竹の切り口に感銘をしている作者は素敵だと思います。(小口泰與)

★馬酔木咲き吾が身ほとりを浮立たす/甲斐ひさこ
びっしりと花をつけた馬酔木の近くに立てば、数多の花のいきおいに、その辺りが浮き立っているかのようです。つい近寄って眺め、香をきき、触れてしまう、鈴なりの馬酔木の花の存在感があります。(臼井愛代)

★み仏の座の春塵を拭いけり/黒谷光子
静かな心で、み仏の春塵を払わせていただくことにより、自分の心身も清らかになるようなすがすがしさがあります。(臼井愛代)

★三輪車春の泥付け幾度も/堀佐夜子
暖かい日が続くようになって、外で遊ぶことの多くなった子どもたち。まだ柔らかい泥がついてもなんのその。三輪車で元気よく走ります。それを見ている作者のまなざしも春の喜びに満ちています。 (池田多津子)

★過ぎし日の話などして雛の夜/吉川豊子
子どもの幼い頃の思い出話をしながら白酒を酌み交わしている情景が浮かびました。春の夜のほのぼのとした温かさが心に沁みてきます。(井上治代)

★春光の一直線に野山越え/河野啓一
春の麗しい光を、「一直線」「野山越え」と大きな心で捉えられました。春の野山を越えて「一直線」に作者に届いた光に、清々しさがあります。(池田加代子)

★つばくろのはげしき風に向かいけり/おくだみのる
空をスイスイ自在に飛び巡るイメージのツバメが、激しい風に翻弄されながら向かっていく姿。それだけで胸がいっぱいになります。(池田加代子)

★遥かなる円弧の海も風光る/松本千恵子
丸みを帯びた水平線のかなたまで、春の日にきらきらと輝いています。光に溢れた、穏やかな春の海が目に浮かびます。(臼井愛代)

★桃の花咲きて季節の確かなる/笠間淳子
枝に沿ってびっしりと花を咲かせた桃の木に、確かな季節を感じます。桃の花の周りは時間の流れがゆったりとしていて、濃厚な春を纏っているようです。(池田加代子)


■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★浜風に揺るる目刺の背ナ青し/篠木睦
(和美・泰與・ひさこ・光子・凉・佐夜子選)

浜の当節の風物詩、下五の「背な青し」が抜群です。さらりと詠い成功している。好きな句です。(宮本和美)
「春の穏やかな日差しの中、波もゆったりとして、やわらかな浜風の中に小魚数匹を連ねて、串を通して干されている目刺の青い背中に春を感じた作者の素敵な句だと思います。(小口泰與)
浜辺に干されている目刺の青が新鮮で、潮の香を感じる好きな句です。(甲斐ひさこ)
串にさした目刺しが風に揺れている漁場の風景なのでしょう。「背ナ青し」にいきいきとした景を思います。(黒谷光子)
浜辺に干されている目刺が青い背が浜風に揺れている潮の匂いが漂う、のどかな海辺の素朴な光景が目に浮かびます。(大山 凉)
海辺の風景が浮かびます。美味しい目刺が出来る事でしょう。(堀佐夜子)

【次点/5点2句】
★菜の花の泳ぐスープに匙かざす/かわなますみ
(よよぎ・宏子・凉・啓一・ひさこ選)

★自転車の子は春泥を避けもせず/黒谷光子
(をとじ・睦・美和・治蝶・たろう選)