デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

2005年4月最優秀

2005-04-21 15:09:30 | 2005年
●今週の秀句/4月11日~17日
○高橋正子選

【金賞】
★巨き樹の大き囀り降らしけり/山中啓輔
大きな樹は、たくさんの小鳥を止まらせて、その小鳥たちは思い思いに鳴いて、一かたまりの囀りとなって降ってくる。樹と鳥の共生が童話風。(正子評)

【銀賞/2句】
★雪失せて麦の青のみ映えにけり/志賀たいじ
雪が消えると、急に麦の青が目だってくる。眩しいほどの麦の青に、雪が消え、待ちに待った春が来た喜びが感じられる。(正子評)

★湾内を汽笛の引けり花の雨/臼井虹玉
雨に煙る湾内を汽笛が長く引いて鳴る。それだけでも港の雰囲気がよく出ているが、雨は、花の雨なので、抒情ゆたかな句になった。(正子評)

【銅賞/2句】
★青空の光とじこめ新茶摘む/おおにしひろし
青空の光を受けて輝いている茶畑に新茶を摘むときは、光を新芽に残したまま摘み取ることになる。摘まれた新芽も籠のなかで輝いている。さわやかな茶摘の季節が詠まれた。(正子評)

★烈風にかすむ榛名や桜咲く/小口泰與
春といえどもいつもそよ風とは限らない。桜の咲く季節、榛名山は烈風でかすむこともある。榛名颪(あるいは赤城颪か)の局地風の吹くところだけに烈風に現実感がある。(正子評)

●今週の秀句/4月18日~30日
○高橋正子選

【金賞】
★山桜捧ぐ神楽を我も見ぬ/池田加代子
山里の神楽であろうか。山桜を捧げる神楽というのも美しい。能に近い雰囲気であるが、その神楽を「我も見ぬ」と締めくくり、神楽に観客として参加した感激をうまく表現して、いい句だ。もとの句「見ゆ」は、「見える」の意味なので添削した。(正子評)

【銀賞】
★蒲公英の数本は吾が影へあり/祝 恵子
なんとやさしい句だろう。自分の座っている影のなかに蒲公英の数本が入っている。日向にある蒲公英に比べて、自分の影の中の蒲公英は日陰っている。この明暗の差にある違いに作者の思いがある。(正子評)

【銅賞/2句】
★桜蘂降りくるまでを葉に添えり/臼井虹玉
桜蘂の細いあか色が、桜の葉の緑を伝って、つつっと降ってくる。その様子の丁寧な観察があって一句の色合いが美しい。(正子評)

★山匂う早蕨の束届きおり/大給圭泉
早蕨は、芽を出したばかりの蕨。まだ萌え出たばかりのしなやかな蕨が届けられた。蕨狩りにいった人のお土産だろうが、その濃緑の早蕨には、山の匂いがある。早蕨と言えば、すぐに、「石走るたるみの上のさわらびのもえいづる春になりにけるかも」の歌を思い出すから、この歌と重ねて味わうことのできる句だ。(正子評)