デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

2005年10月最優秀

2005-10-21 15:32:52 | 2005年
【最優秀/10月1日】
★秋の菜を洗いてあまる岩清水/竹内よよぎ
秋菜を畑から抜いてきて、それほど多くない菜なのだろう、ふんだんな岩清水に浮かして洗う。「あまる」に、清水のきよらかさ、手に触れるうれしさがよく詠まれている。(正子評)

【最優秀/10月2日】
★稲架解かれ海の青さの広がりぬ/池田多津子
稲架が解かれると、それまで隠れていた海が見えるようになった。広々とした刈田の一線の上に広がる海の青さが、はればれとしている。(正子評)

【最優秀/10月3日】
★未だ稲刈らぬ郡へ電車入る/碇英一
電車で旅をすると、未だに稲刈の済んでいない郡に入った。ここに来て、再び稔田を目にできた郷郡の風景が懐かしくさえ思える。(正子評)

【最優秀/10月4日】
★秋の海一湾の灯の弓なりに/篠木 睦
「灯の弓なりに」が新しい。秋の湾を巡って人家の灯が灯っているのであろう。ゆるやかな曲線を描き連なる弓なりの灯が、抒情ゆたかに詠まれた。(正子評)

【最優秀/10月4日】
★秋の海一湾の灯の弓なりに/篠木 睦
「灯の弓なりに」が新しい。秋の湾を巡って人家の灯が灯っているのであろう。ゆるやかな曲線を描き連なる弓なりの灯が、抒情ゆたかに詠まれた。(正子評)

【最優秀/10月5日】
★湧水を汲む列に沿い曼珠沙華/瀧口文夫(信之添削)
おいしい湧き水が出るというので、その水を汲む列に並んだ。その列に沿って曼珠沙華が咲いている。湧き水と曼珠沙華は、対比されているようだが、その源では繋がっている。(正子評)

【最優秀/10月6日】
★秋燕のいつか消えいて広き空/瀧口文夫
「秋燕」として今ここに目に見えているのではない。たくさんいた秋燕は、いつきえてしまったのだろうと、ふと思う気持ち。いなくなった空が広く、秋のさびしさが感じられる。愁思の句。(正子評)

【最優秀/10月7日】
★山栗に母の手紙の添えられし/臼井虹玉(正子添削)
ふるさとの山で取れた栗であろう。母の白い手紙が添えられていて、その一言に心が温かくなる。栗も母の手紙も深まる秋をなつかしく、あたたかい気持ちにさせてくれるもの。(正子評)

【最優秀/10月8日】
★走る者に青き壁なす砂糖黍/山中啓輔
砂糖黍畑を走りぬけているのだろう。両側に青々とした砂糖黍が壁をなしている。「青」の中を走り抜けるという感覚的快感がある。(正子評)

【最優秀/10月9日】
★湾内を揺るがす浜の運動会/池田多津子
学校の運動会は、小さな町なら町民こぞっての行事ともなる。海辺の町の運動会は、湾内をどよめかせるほどの熱気である。(正子評)

【最優秀/10月10日】
★明るくてコスモス一輪ありて足る/飯島治蝶
コスモスは明るい。それだけでなくにこやかな印象もある。だからコスモスが一輪あれば、あたりは明るくなごやかになるので、それで足りるのである。(正子評)

【最優秀/10月11日】
★朝雲とますほの薄映す水/今村七栄
「ますほ」は、「真赭」。朝の雲と解けたばかりの赤い色の薄が水に映っている光景。今日がはじまったばかりの空の雲、赤いろの薄の穂、それを映す水が、曇りない目で詠まれている。(正子評)

【最優秀/10月12日】
★青蜜柑空より青き藍の葉に/渋谷洋介(正子添削)
蜜柑は今木に青い。その青い蜜柑が、空の色よりも濃い藍色の葉に埋もれて生っている。蜜柑の葉は空に触れるだけに、「空より青き」が効いた。写生が深くなっている。(正子評)

【最優秀/10月13日】
★木犀の樹下金色に日を返す/池田加代子
作者の視線は、「木犀の樹下」に絞られた。「金色に日を返す」ところであって、木犀の金と太陽の金が一つになった。 (信之評)

※14日~16日は不明

【最優秀/10月17日】
★満月のたった一つの明るさに/池田多津子
満月の照らす明かりに、この世は広く照らされる。満月のあかるさに、それが、たった一つの明かりであることを忘れていた。それを思い出させてくれた。(正子評)

【最優秀/10月18日】
★秋深し硝子戸越しの山の色/小口泰與
「硝子戸越し」にの表現に、秋が深み、そぞろ寒くなったことが窺える。朝などは、もう硝子戸を閉め切っておかなければならないほど。その硝子越しに見える山の色は秋深む晩秋の色。それがいい。(正子評)

【最優秀/10月19日】
★星近く寺の甍の露しとど/大給圭泉
寺の大屋根は、星空に聳えて、露をしとどに置いている感じだ。星の夜の冷気に身が引き締まるほど。「星近く」に、作者のいい感覚がある。(正子評)

【最優秀/10月20日】
★黄落や眠る子を乗せ乳母車/能作靖雄(正子添削)
黄落の季節の心地よさを一身にして、乳母車で眠る子。すやすやと眠りながら、母親に押されてゆく乳母車。母も嬰も黄落の季節がまどやかに、感じられる。(正子評)

※21日~24日不明

【最優秀/10月25日】
★酢に浸し芋茎ほんのり紅色に/甲斐ひさこ
「芋茎」は、「ずいき」と読み、いもがらともいう。里芋の茎で、干したものもあるが、生を酢の物や酢漬け、汁の実にして食べたりする。惣菜の食材として用途は広い。酢にあたると、ほんのり紅色を帯び、いい色になる。無理のない素直さに好感がもてる。(正子評)

【最優秀/10月26日】
★山空も頭上もまさお鴨渡る/甲斐ひさこ
遠い山の上の空も、自分の頭上の空も、まさお。そのまさおな空を鴨が渡っている。着眼の視点がはっきりとしてまさおな空のように雑念がなく、すっきりとして「鴨渡る」を見届けている。(正子評)

※27日~31日不明