【最優秀/11月1日】
★銀漢や溶岩遅々と海に落つ/池田加代子
壮大な光景だ。流れ出る溶岩と銀漢とがあって、地球草創の素晴らしいイメージが湧く。(正子評)
【最優秀/11月2日】
★冬青空影踏みごつこ楽しからむ/小川美和
暦の上では、まだ冬となっていないが、冬を思わせる日もある。青く晴れた日、影もくっきりとできるので、少女のころのように影踏みごっこをしてみたら、どんなに楽しいだろうか、という思い。(正子評)
【最優秀/11月3日】
★新聞に明るさ目立つ文化の日/安丸てつじ
明るいニュースの少ない昨今だが、文化の日に、ゆっくりと朝刊を広げてみると、明るい話題が目立つ。晴れやかな叙勲者の氏名もあれば、文化について語る記事もある。文化は平和であれば、その意義が発揮される。(正子評)
※4日~6日不明
【最優秀/11月7日】
★霧濃くて朝日まったき紅に/多田有花
濃い霧の中で、朝日はまんまるの紅。まったき紅の美しさ、そして厳かさに驚嘆せずにはおれない。端的に無駄なく捉えた目がいい。(正子評)
【最優秀/11月8日】
★子ら窓に白き富士見る今朝の冬/飯島治蝶(正子添削)
すっかり寒くなった朝、窓に雪を冠った富士山が見えた。子供たちは富士山の姿を見て、たしかに冬が来たことを知ったのである。教室の窓からはればれと望める富士山の姿を、子どもたちは、大人になっても、懐かしいふるさとの山のように思うのだろう。(正子評)
【最優秀/11月9日】
★切り分けて白菜明かりの厨かな/今村七栄(正子添削)
白菜の玉を切り分けると、中の淡いきみどりが現れて、ぱっと明るさが広がる。厨に溢れる白菜は、「白菜明かり」と表現されて、厨を明るく、いっそう清潔にしてくれる。(正子評)
【最優秀/11月10日】
★風吹けば風に従う吾亦紅/松本豊香
野にある吾亦紅だろう。草に風が吹くと、風の通りにしなやかになびく。風の力に従いながらも、かれんで自由さがある。(正子評)
※11日~13日不明
【最優秀/11月14日】
★雪吊や新縄の空引締る/篠木 睦
雪の季節に備え、雪吊をする。放射状に張られた縄が空の青に映えて、造形の美しさを見せてくれる。新縄であるので、藁綱の匂いもかぐわしく、雪吊の縄で空引き締められるようなのだ。(正子評)
※15日不明
【最優秀/11月16日】
★冬雲の幾層煙突真直ぐに/今村七栄
厚く幾層にも重なる冬の雲に、真っ直ぐな煙突が立っている。水平な雲と垂直な煙突の絵画的構成、やわらかな雲と固い煙突という相反するものの出会いが実感をもって、詠まれている。(正子評)
【最優秀/11月19日-20日】
★海までの雲の連なり冬始/多田有花
冬らしい景色。海まで雲が連なって、寒々としているが、「海まで」の言葉に、広さを思い起こす。海まで連なる雲に冬の始めの寒さの感覚がいい。(正子評)
【最優秀/11月21日】
★雲天の零せし雪の野をつつむ/志賀たいじ
雲が空を覆っていると思うと、いつのまにか雪がはらはらと降り出して、それもいつの間にか野を包むようにうっすらと積んだ。本格的な冬が始まる前の雪の降る様子に、冬を迎える作者の気持ちが重なっている。(正子評)
【最優秀/11月22日】
★水仙の葉のみ青々揃いけり/臼井虹玉
花をつける前の水仙は、丈が揃って、あおあおとして、いつ花が咲いてもいい姿になっている。花をつけた水仙もよいが、あおあおとした葉ばかりの水仙も見所がある。「青々揃いけり」で句が生き、そこに作者の感動がある。(正子評)
【最優秀/11月23日】
★風除や海見て暮らす能登の村/門石雅彌
冬、風の強いところでは、風除をして家屋敷を守る。風除に囲まれた家からは海が見える。さびしい能登の村からは、さまざま変化する冬の海が望める。時化や雪の海も、晴れた日の海も、大漁の海も。能登の暮らしに海がかかわっているのも、日本の風景。(正子評)
【最優秀/11月24日】
★さりげないくらしの中の水仙花/大山 凉
「さりげないくらし」は、大仰に構えたところもなく、落ち着いていて、何事もなく、それでいて、日々どこか楽しく、小さな喜びを持ちながら過ごせるくらしのことだろう。水仙もさりげなく生けられて、きれいな日常生活がしのばれる。(正子評)
【最優秀/11月25-27日】
★枇杷の花香る森への往き帰り/ふるたけいじ
森への往き帰りには、必ず通るところにある枇杷の花。ふるさとにあるような枇杷の花の匂いは、文人好みの気高い匂いだ。(正子評)
※28日不明
【最優秀/11月29日】
★初霜や生みたて卵手のひらに/小口泰與
初霜の降りる冷たく寒い朝。生み落とされたばかりの卵がてのひらにほのかな温みを残してくれる。命あるもののほのかな温みが実感できる。うっすらと降りた初霜と生みたての卵のイメージがきよらかだ。わざとらしい技巧がないので好感が持てる句だ。(正子評)
【最優秀/11月30日】
★葉の太りほどの力の大根引/池田多津子
葉の太りは、葉の茂り。葉の茂っている力は土の中にある大根の力にも相当する。大根を土から抜くには、葉の太り具合と同じだけの力がいるというのだ。普段から感じていることだろうが、今日の実感として句になった。(正子評)
★銀漢や溶岩遅々と海に落つ/池田加代子
壮大な光景だ。流れ出る溶岩と銀漢とがあって、地球草創の素晴らしいイメージが湧く。(正子評)
【最優秀/11月2日】
★冬青空影踏みごつこ楽しからむ/小川美和
暦の上では、まだ冬となっていないが、冬を思わせる日もある。青く晴れた日、影もくっきりとできるので、少女のころのように影踏みごっこをしてみたら、どんなに楽しいだろうか、という思い。(正子評)
【最優秀/11月3日】
★新聞に明るさ目立つ文化の日/安丸てつじ
明るいニュースの少ない昨今だが、文化の日に、ゆっくりと朝刊を広げてみると、明るい話題が目立つ。晴れやかな叙勲者の氏名もあれば、文化について語る記事もある。文化は平和であれば、その意義が発揮される。(正子評)
※4日~6日不明
【最優秀/11月7日】
★霧濃くて朝日まったき紅に/多田有花
濃い霧の中で、朝日はまんまるの紅。まったき紅の美しさ、そして厳かさに驚嘆せずにはおれない。端的に無駄なく捉えた目がいい。(正子評)
【最優秀/11月8日】
★子ら窓に白き富士見る今朝の冬/飯島治蝶(正子添削)
すっかり寒くなった朝、窓に雪を冠った富士山が見えた。子供たちは富士山の姿を見て、たしかに冬が来たことを知ったのである。教室の窓からはればれと望める富士山の姿を、子どもたちは、大人になっても、懐かしいふるさとの山のように思うのだろう。(正子評)
【最優秀/11月9日】
★切り分けて白菜明かりの厨かな/今村七栄(正子添削)
白菜の玉を切り分けると、中の淡いきみどりが現れて、ぱっと明るさが広がる。厨に溢れる白菜は、「白菜明かり」と表現されて、厨を明るく、いっそう清潔にしてくれる。(正子評)
【最優秀/11月10日】
★風吹けば風に従う吾亦紅/松本豊香
野にある吾亦紅だろう。草に風が吹くと、風の通りにしなやかになびく。風の力に従いながらも、かれんで自由さがある。(正子評)
※11日~13日不明
【最優秀/11月14日】
★雪吊や新縄の空引締る/篠木 睦
雪の季節に備え、雪吊をする。放射状に張られた縄が空の青に映えて、造形の美しさを見せてくれる。新縄であるので、藁綱の匂いもかぐわしく、雪吊の縄で空引き締められるようなのだ。(正子評)
※15日不明
【最優秀/11月16日】
★冬雲の幾層煙突真直ぐに/今村七栄
厚く幾層にも重なる冬の雲に、真っ直ぐな煙突が立っている。水平な雲と垂直な煙突の絵画的構成、やわらかな雲と固い煙突という相反するものの出会いが実感をもって、詠まれている。(正子評)
【最優秀/11月19日-20日】
★海までの雲の連なり冬始/多田有花
冬らしい景色。海まで雲が連なって、寒々としているが、「海まで」の言葉に、広さを思い起こす。海まで連なる雲に冬の始めの寒さの感覚がいい。(正子評)
【最優秀/11月21日】
★雲天の零せし雪の野をつつむ/志賀たいじ
雲が空を覆っていると思うと、いつのまにか雪がはらはらと降り出して、それもいつの間にか野を包むようにうっすらと積んだ。本格的な冬が始まる前の雪の降る様子に、冬を迎える作者の気持ちが重なっている。(正子評)
【最優秀/11月22日】
★水仙の葉のみ青々揃いけり/臼井虹玉
花をつける前の水仙は、丈が揃って、あおあおとして、いつ花が咲いてもいい姿になっている。花をつけた水仙もよいが、あおあおとした葉ばかりの水仙も見所がある。「青々揃いけり」で句が生き、そこに作者の感動がある。(正子評)
【最優秀/11月23日】
★風除や海見て暮らす能登の村/門石雅彌
冬、風の強いところでは、風除をして家屋敷を守る。風除に囲まれた家からは海が見える。さびしい能登の村からは、さまざま変化する冬の海が望める。時化や雪の海も、晴れた日の海も、大漁の海も。能登の暮らしに海がかかわっているのも、日本の風景。(正子評)
【最優秀/11月24日】
★さりげないくらしの中の水仙花/大山 凉
「さりげないくらし」は、大仰に構えたところもなく、落ち着いていて、何事もなく、それでいて、日々どこか楽しく、小さな喜びを持ちながら過ごせるくらしのことだろう。水仙もさりげなく生けられて、きれいな日常生活がしのばれる。(正子評)
【最優秀/11月25-27日】
★枇杷の花香る森への往き帰り/ふるたけいじ
森への往き帰りには、必ず通るところにある枇杷の花。ふるさとにあるような枇杷の花の匂いは、文人好みの気高い匂いだ。(正子評)
※28日不明
【最優秀/11月29日】
★初霜や生みたて卵手のひらに/小口泰與
初霜の降りる冷たく寒い朝。生み落とされたばかりの卵がてのひらにほのかな温みを残してくれる。命あるもののほのかな温みが実感できる。うっすらと降りた初霜と生みたての卵のイメージがきよらかだ。わざとらしい技巧がないので好感が持てる句だ。(正子評)
【最優秀/11月30日】
★葉の太りほどの力の大根引/池田多津子
葉の太りは、葉の茂り。葉の茂っている力は土の中にある大根の力にも相当する。大根を土から抜くには、葉の太り具合と同じだけの力がいるというのだ。普段から感じていることだろうが、今日の実感として句になった。(正子評)