デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/7月6日(日)~7月12日(土)

2008-07-13 01:45:21 | 入賞発表
■7月6日(日)~7月12日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★緑陰や風がとんぼう連れてくる/丸山美知子(正子添削)
涼しい木陰に憩っておれば、とんぼかスイッと飛んできた。涼しい風がとんぼを連れてきてくれたのだ。透明感のある涼しげな句。(高橋正子)

【特選/5句】
★庭の紫蘇摘み来て妻の冷奴/古田敬二
庭に紫蘇など薬味になるものがあれば、便利。摘んだばかりの紫蘇の葉は、一層涼感がある。「妻の冷奴」であるから、慎ましい、いい家庭生活が覗える。(高橋正子)

★わたすげや梢ひそかに揺れており/小口泰與
高原に揺れる一面のわたすげ。木々の梢の、揺れるともなきひそやかな揺れ。ひそやかな高原の風のある風景が夢見るようだ。(高橋正子)

★背丈こすグラジオラスを切り束ね/祝恵子(正子添削)
グラジオラスは、筒状の花を花序正しく咲かせ、油絵にもしばしば描かれる。意外にも丈夫な茎で丈が高い。華やかながら、逞しい。出荷のためだろうか、切り束ねられる。グラジオラスの現実の一面。(高橋正子)

★青空の色鮮やかに夏木立/高橋秀之
青空の色を、ことさらに「色鮮やか」と言われれば、そうだと頷く。真青な空と緑深い夏木立。この二つで、夏がさっぱりとなるのだ。(高橋正子)

★どこよりも青き梅雨晴れ骨納む/藤田荘二
「どこよりも青き」に作者の思いがある。親しい人の骨を納める日、その人に、どこよりも素晴らしい空であってほしい。どこよりも青い空であってほしいとの思い。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★白シャツのぱりっと干さる学生寮/池田多津子
梅雨の晴れ間に干された白いシャツ。学生寮の窓か洗濯物干し場か。若い学生たちの生活の一こまが見えて清清しい。学生寮時代を思い出します。(古田敬二)

★朝顔の今日に一花の青ひらく/小川和子
早朝に花を咲かせる朝顔のさわやかさ、青い朝顔は一層涼しげに、気持ちを和らげてくれます。(大山正子)

★かき氷食ぶ日焼けせし少年ら/多田有花
夏休みに海山で遊び回って日焼けをしたランニングシャツ姿の子供たちが駄菓子屋にたむろしてかき氷をむさぼり食べている景が目に浮かぶようです。(國武光雄)

★莢豌豆朝餉の汁の香ぐわしく/大給圭江子
採りたての香りゆたかに莢豌豆が朝餉の汁の具となった。爽やか夏の朝の始まりを感じます。句の飾りのない素直さが心地よく響きます、好きな句です。(志賀泰次)

★校庭に映画を見し夜天の川/宮本和美
そうですね!今の若い人には信じられないかも知れませんが、夏休みになると学校の体育館、あるいは校庭に白幕を立てて映画を見ました。校庭では風が吹くと画面が揺れ、鞍馬天狗の顔がゆがんで困りました。幕の合間にアイスキャンデー売りの鐘が鳴らされ、10円玉を握って走りました。遠くて懐かしい田舎の夏の風物をご紹介頂き、有難うございます。(桑本栄太郎)

★烏賊釣りの灯し煌めき船帰る/河野啓一
夜の暗闇の海に眩しく光る烏賊釣の灯。大漁だったのであろうかわからないが、ともかく無事に船が帰って来る。夏盛んな烏賊釣り漁の景の一コマを見た思いです。(飯島治朗)

★夏の夜児の百までの数風呂に/飯島治朗
夏は特に、子供は湯船に浸かりたがらないようです。それをなんとか宥めて百まで数をかぞえさせる。ほほえましい家族風呂の風景です。(小西 宏)

★夕立やさしかけらるる傘の音/吉川豊子
にわかに起こる夕立の雨にも、さしかけられる傘の優しさにふれて、どこか嬉しい、夏の夕立の明るい情感を感じさせてくれます。 (藤田洋子)

★塩もみの胡瓜一本の朝餉かな/篠木 睦
塩もみの胡瓜が、鮮やかに朝の食卓を彩ってくれます。一本なれば、ことさら清々しく涼やかな夏の朝餉を感じます。 (藤田洋子)

★朝採れの野菜の籠に露草も/竹内小代美
朝採れの野菜のみずみずしさに加えて、露草の清涼感。籠の中に、季節の朝の嬉しさがあふれているようです。(藤田洋子)

★西日差す稲のみどりの隙間なき/桑本栄太郎
田植えあと、著しい稲の伸びに、一面に緑の繁茂する田。強い西日の中で、「隙間なきみどり」が、逞しい稲の生長を見る喜びです。(藤田洋子)

★石垣に朱(あけ)登らすや凌霄花/小河原宏子
石垣と凌霄花の朱色の鮮やかな対比も美しく、石垣をも咲き登る姿に、盛夏の花らしい力強さを感じます。(藤田洋子)

★すらすらと風入る麻のワンピース/川名ますみ
爽やかな風を存分に迎え入れる麻のワンピースの着心地のよさを思います。暑い日だからこそ実感できるうれしい感覚ですね。(臼井愛代)

★射干(ひおうぎ)の赤に風ある切なき日/矢野文彦
作者の胸に宿った切なさが、風に揺れる射干の赤い色と重なって、印象深く、読者に伝わってきます。(臼井愛代)

★瀬戸の海磯の香どっと梅雨明ける/藤田裕子
濃く匂いたつ潮の香に、作者が梅雨明けの日を強く実感された様子を思います。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/15句】
★明かり消し昔語りの星祭/國武光雄
明かり消しに星をみる、昔語りを楽しむ行為が集約され、共感しました。(奥田 稔)

★それぞれに向きを違えてトマト咲く/上島祥子
我関せずといった風に咲くトマトの花を思い、その奔放さと逞しさに顔が緩んでしまいます。(小西 宏)

★戦争のなき国ダリア四千本/奥田 稔
ダリア園へゆかれたときの嘱目と思います。この六十年戦争のない国に感謝し、併せてさらなる平和を願っておられる作者のお気持ちがよくわかります。(河野啓一)

★毬栗の生れて小鳥の声頻り/渋谷洋介
小さくももう、青栗の毬が生まれているのですね。頻りに鳴きあう小鳥たちの声が、清新な夏を盛り立てています。(小西 宏)

★草むしる墓に明るさ午前四時/志賀泰次
朝早く墓の草むしりをする。網走は夏の四時ともなれば、ずいぶん明るさを増しているのでしょう。すっきりと刈られたご先祖さまのお墓にも明るさが広がります
(小西 宏)

★初咲きの梔子一輪大きかり/黒谷光子
濃い緑に、透き通るような白を広げて、おおきな梔子の花が一輪咲き初めました。「初咲きの」に清らかさが強調されて感じられます。(小西 宏)

★おおらかな夏日に明けし花木槿/大西 博
素朴な美しさの木槿の花を映し出しながら、ゆったりとのぼる夏の朝日の広がりが印象的です。(小西 宏)

★信貴連山隠し夏霧横走る/網本紘子
信貴山は奈良県と大阪府の境に位置し、奈良県側の中腹に朝護孫子寺があります。信貴山縁起絵巻でも知られ、こうした長い歴史の背景が、夏霧の流れる景色を荘厳なものに感じさせます。地名の持つ力ですね。(多田有花)

★茜差す空へよしきり啼き立てて/甲斐ひさこ
ヨシキリは夏鳥として日本に飛来し、葦原に巣をかけます。早朝、葦原の近くでヨシキリがギョギョシ、ギョギョシと鳴き続けます。明けていく空とヨシキリのさえずり、それを楽しんでおられる作者がいます。(多田有花)

★アパートの床踏み鳴らす梅雨の子よ/小西 宏
梅雨の長雨で外へ出られないのは子どもにとって残念なこと。思いきり走り回りたいというエネルギーの現れが「床踏み鳴らす」になっています。梅雨明けを待つ心境をうまく詠んでいらっしゃいます。(多田有花)

★目の前に青柿すとんと地に落つる/大山正子
道路に張り出していた柿の枝から、何の拍子かころりと柿が落ちてきました。思いがけず目の前に転がった青い柿を手にとってみられたのでしょうか。生活のなかの軽いハプニングを詠っておられます。 (多田有花)

★蒸し暑き午後の昼寝に雨を待つ/友田 修
蒸し暑い午後には一雨欲しいと思います。ほんのわずかな間の夕立でも地表を冷やし、心地よいものです。空が少しその気配を漂わせているのでしょうか。(多田有花)

★野菜採る朝の畑の露涼し/井上治代
まだ露を残した早朝の畑の、ひんやりとした空気が伝わってくるようです。その日の食卓に上るいろいろな野菜を収穫するよろこびがあります。(臼井愛代)

★北の空南の空に雲の峰/尾 弦
北にも南にも雄大な雲が湧いている空が詠まれ、その情景に、作者が夏を実感されている様子が伝わってきます。(臼井愛代)

★初蝉の声落ち泉澄みゆけり/柳原美知子
初蝉の声が泉のある静かな水辺に降ってきて、泉の水も、辺りの空気も澄ませていくようです。(臼井愛代)

最新の画像もっと見る

33 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (飯島治朗)
2008-07-13 06:06:08
正子先生、「夏の夜児の百までの数風呂に」の句を入選Ⅰに御選頂き、誠にありがとうございました。また、小西宏様には、同句に素敵なコメントを頂き、誠にありがとうございました。
返信する
お礼 (河野啓一)
2008-07-13 06:47:05
正子先生
「烏賊釣りの灯し煌めき船帰る」を入選1にお選びいただき誠に有り難うございました。
飯島治郎さまには同句に素晴らしいコメントを頂戴し、厚くお礼申し上げます。
返信する
選お礼 (古田敬二)
2008-07-13 08:35:00
正子先生、紫蘇の句に選をいただきありがとうございます。
狭い花壇いっぱいの紫蘇で、毎朝のサラダ代わりです。
返信する
お礼 (志賀泰次)
2008-07-13 09:45:43
正子先生、”草むしる”の句に入選Ⅱの選を戴き有難うございます。また、宏様、素敵なコメント添えて戴き有難うございます。新暦で迎える当地のお盆は今日が入りです、先日墓掃除にいった時の句です。まだ4時前に明けますが、これから次第に夜明けが遅くなってゆく北国です。
返信する
お礼 (宮本和美)
2008-07-13 10:01:38
正子先生
「天の川」を入選Ⅰに選を頂き、有難う御座いました。
桑本栄太郎様
同句に素晴らしいコメント頂き、誠に有難く、嬉しく拝読致しました。感激です。
返信する
選のお礼 (藤田荘二)
2008-07-13 10:42:34
特選にお選びいただきありがとうございます。
ほぼ同じ歳の友人を送る機会が増えてきました。皆、若いころの無理が今になってこたえている歳なのでしょう。
返信する
お礼 (小河原宏子)
2008-07-13 11:17:39
正子先生
 「凌霄花」の句を入選Ⅰにお選び頂きありがとうございました。又同句に素晴らしいコメントをお書き入れ下さった藤田洋子様、感謝申し上げます。臼井様にも、いつもお世話になり有難うございました。
返信する
お礼 (矢野文彦)
2008-07-13 12:47:19
高橋正子先生。
「射干」の句、入選Ⅰにお選び頂ありがとうございます。
臼井愛代様、コメントを頂きお礼申し上げます。
返信する
お礼 (大給圭江子)
2008-07-13 13:53:14
正子先生
[莢豌豆]の句を入選Ⅰにお選びいただきありがとうございました。香りよく美味しいです。
志賀様嬉しいコメントを添えてくださり有難うございました。
返信する
お礼 (上島祥子)
2008-07-13 14:24:00
高橋正子先生
「トマト」の句入選Ⅱにお選び頂ありがとうございます。
小西宏様 丁寧なコメントを頂きありがとうございます。
返信する