デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

▼ 青樹句会第2回句会(7月29日)

2007-07-29 11:52:34 | Weblog
■高橋信之選

【金賞】
★一棹でぐいっと近づく花菖蒲/まえかわをとじ
情景が明らかである。上五の「一棹で」、に続く中七の「ぐいっと近づく」、そして下五の「花菖蒲」、それぞれのイメージは独立して鮮明だが、575のリズムがあって、「花菖蒲」がいい主題となった。言葉に無駄がなく、句に勢いがあるのもいい。(高橋信之)

【銀賞】
★手花火の匂い纏いて家に入る/志賀たいじ
手花火を楽しまれたひとときの、余韻が伝わってきました。懐かしい花火の匂いが思い起こされます。夏らしい匂いですね。(臼井虹玉)

【銅賞】
★風鈴売り風を引きつれ路地を行く/宮本和美
風鈴売りに出合った事はありませんが、この句を読んでイメージできます。中7が上手くまとめられていると思います。(古田けいじ)

【入選/5句】
★槿挿す花器引き締めし今日の花/平田 弘
槿はただ淡々とその日を咲くのでしょうが、一日のみの花の命を支える花器には、見ようによっては緊張感が漂うかもしれません。与えられた時間を凛と咲く花槿の佇まいを思います。(臼井虹玉)

★梅雨晴れ間はや咲き出し紅芙蓉/河野渓太
まだ梅雨の時期のいま、芙蓉の花がもう咲き始めたのかという作者の小さな驚きが伝わってきます。梅雨の晴れ間の青空を背景に、咲き初めた芙蓉の紅がうつくしく映えている様子を目に浮かべました。(臼井虹玉)

★畳みたる翅濡れており糸とんぼ/澤井 渥
雨に濡れた翅を畳んで休んでいる糸とんぼを優しく見つめられています。薄く透き通るような美しい翅で、懸命に生きている糸とんぼが愛おしくなります。(藤田裕子)

★銀河鉄道行く先知らず天の川/おくだみのる
★渓流の岩を身軽に鮎を釣る/高瀬哲朗
★浮世絵のうちわの風を貰いけり/大山由紀


■高橋正子選

【金賞】
★一棹でぐいっと近づく花菖蒲/まえかわをとじ
水郷の花菖蒲であろう船頭が一棹、ぐいっと押せば、舟は花菖蒲にぐっと近づく。眺めていたものが、急に鮮明に大きく見えたときのおどろきに、花菖蒲の見事さが覗える。(高橋正子)

【銀賞】
★噴水の時折ゆがむ風のあり/大山由紀
広場に吹き上がっている噴水。風が吹くと噴水の水は風の方向にゆがむ。夏の風が時折自在に吹いてくる場所の心地よさが知れる。対象をよく観察した句。(高橋正子)

【銅賞】
★手花火の匂い纏いて家に入る/志賀たいじ
手花火の硝煙の匂いが、懐かしさを呼ぶ。手花火をして家に入ると気づく、「匂い」。花火のあとのうらさびしさに真実味がある。(高橋正子)

【入選/5句】
★銀河鉄道行く先知らず天の川/おくだみのる
『銀河鉄道』は、宮沢賢治の童話の題であることは、ほどんどの方がご存知のこと。天の川を見上げると、作者はすっかり『銀河鉄道』の世界に入り、宇宙のかぎりない世界の旅を思う。(高橋正子)

★片影を左右に置いて坂上る/平田 弘
道の左右に、影をくっきりと置いている、夏の日盛りの坂道が目に浮かびました。道の左右どちらにもある日陰に、少しほっとするような思いが伝わってきます。(臼井虹玉)

★風鈴売り風を引きつれ路地を行く/宮本和美
★原生の栂くろぐろと夏つばめ/澤井 渥
★梅雨晴れ間はや咲き出し紅芙蓉/河野渓太
★渓流の岩を身軽に鮎を釣る/高瀬哲朗


■第2回句会互選結果発表
□管理/臼井虹玉

9名の方々から27句の投句があり、8名が互選に参加されました。以下は、<第2回句会/7月26日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。同点は投句者名五十音順となっています。

【最高点/7点】
◎手花火の匂い纏いて家に入る/志賀たいじ

【次点/6点】
○一棹でぐいっと近づく花菖蒲/まえかわをとじ

【4点】
○風鈴売り風を引きつれ路地を行く/宮本和美

【3点】
○銀河鉄道行く先知らず天の川/おくだみのる
○通し土間風吹き抜ける青田風/宮本和美

【2点】
○浮世絵のうちわの風を貰いけり/大山由紀
○噴水の時折ゆがむ風のあり/大山由紀
○畳みたる翅濡れており糸とんぼ/澤井 渥
○飯盛山(いいもり)を洗い流して虹立てり/高瀬哲朗


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▼ 青樹句会第1回句会(7月11日)

2007-07-17 19:36:50 | Weblog
■高橋信之選

【金賞】
★赫々と空引き寄せる淩霄花/渋谷洋介
六月の終わりごろとなれば、淩霄花(のうぜんかずら)がオレンジ色やピンクの花を咲かす。中国原産の花で、花期は長く、八月も咲き続く。夏の花だ。「空引き寄せる」がいい。作者の主情で、「赫々」の漢字も効いた。(高橋信之)

【銀賞】
★真っ直ぐに葵の紅の咲き登る/平田弘
確かに葵の花は枝分かれが少ない。上へ上へと咲き上って行く。青いの特性を上手く捕らえている。(古田けいじ)

【銅賞】
★海霧はれて原生の野は花園に/志賀たいじ
立ち込めていた海霧が晴れて、目の前にぱーと原生花園が現われてきました。あまりの美しさに、しばし立ち尽くされた時の感動が伝わってきます。(藤田裕子)

【入選/5句】
★夏帽子海の匂いを持ち帰り/大山由紀
自分のものか、家族のものか、海へ被って行った帽子から、ふっと潮の香りがした。その時の作者の小さな驚きと感動が伝わってきます。夏の海の思い出が甦るうれしさがあります。(臼井虹玉)

★手を上げて近づき来るサングラス/宮本和美
サングラスって顔の表情がよく判らない処があり、それだけに一層物語が描けるように思います。手を上げて来る人だから親しい間柄なのでしょう。含みのあるいい句だと思います。(澤井 渥)

★報道と同じ日に見るあきあかね/澤井 渥
あきあかねが見られるようになったとの報道を見た同じ日に、実際にあきあかねを目にした作者の、楽しい驚きが伝わってきました。(臼井虹玉)

★薫風や達治の詩集めくりけり/おくだみのる
詩集を読んでいる人だけではなく、青葉を渡ってきたであろう心地よい風までもが、いっしょにページをめくっているような明るくさわやかなイメージを持ちました。(臼井虹玉)

★そよ風の過ぎゆく窓辺アマリリス/河野渓太
心地よいそよ風の吹く窓辺と、花茎をすっと伸ばして咲くアマリリスの爽やかな感じがよく似合っていると思います。(臼井虹玉)


■高橋正子選

【金賞】
★赫々と空引き寄せる淩霄花/渋谷洋介
淩霄花は、6月ごろから咲き始め、周りの緑のなかで、ひときわ印象的な花の色である。空さえもぐっと近くへ引き寄せるほどの花のあかるさが「赫々と」いう言葉になった。(高橋正子)

【銀賞】
★手を上げて近づき来るサングラス/宮本和美
待ち合わせでもしたのだろう。親しげに、手を上げて、サングラスの友人が、近づいてきた。「やあやあ」と言う声が聞こえそう。(高橋正子)

【銅賞】
★羊蹄は裾より暮れて薯の花/大山由紀
北海道の広々とした夕暮れの風景がおおらかな花園の風を感じます。(平田 弘)

【入選/5句】
★真っ直ぐに葵の紅の咲き登る/平田弘
夏の空に向かうかのように、すっくと伸びた茎を咲き登る紅色の葵の花の勢い、清々しい佇まいが目に浮かぶようです。(臼井虹玉)

★まっさおな夏空に鳴らしランドセル/志賀たいじ
広やかな夏空の下、通学の子どもたちの生き生きとした姿に心も明るく、からりと澄んだ夏空の美しさをも感じます。(藤田洋子)

★水滴の光る紫陽花母逝けり/おくだみのる
紫陽花には水滴がよく似合います。紫陽花の花の好きだったお母様への思いが伝わります。(大山由紀)

★よく動く穴の大きい寺の蟻/澤井渥
何の目的があるのか、蟻と言う動物はよく動きます。穴が大きいところへ目をつけたのが面白いと思います。(古田けいじ)

★皿のびわ色も形もまろやかに/河野渓太
ほんとうに、びわの実は、色も形もまろやかですね。作者の素直な実感が詠まれていて、読者の共感を呼ぶ御句と存じます。(臼井虹玉)


■互選高点句最終結果
□集計/臼井虹玉
□8名の方々から24句の投句があり、互選締め切りまでに全員の8名が互選に参加されました。
以下は、<第1回句会/7月11日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。同点は投句者名五十音順となっています。

【最高点/6点/同点2句】
◎炎天の反核署名は太き字に /志賀たいじ
◎赫々と空引き寄せる淩霄花/渋谷洋介

【次点/5点/同点2句】
○羊蹄は裾より暮れて薯の花/大山由紀
○真っ直ぐに葵の紅の咲き登る/平田 弘

【2点/同点5句】
○夏帽子海の匂いを持ち帰り/大山由紀
○薫風や達治の詩集めくりけり/おくだみのる
○白砂にしかと根付きし浜万年青/河野渓太
○万緑をかすめ爆音基地の町/渋谷洋介
○手を上げて近づき来るサングラス/宮本和美


■ご挨拶
□臼井虹玉

青樹句会の皆様
ご挨拶が遅れましたが、集計など、青樹句会のお世話役を仰せつかりました臼井虹玉です。皆様の御句を読ませていただき、わたくしも楽しみながら勉強させていただいております。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

▼ 沙羅句会第1回句会(7月23日)

2007-07-16 11:50:13 | Weblog
■高橋信之選

【金賞】
★風光り今日は馬上の人となる/笠間淳子
一読すれば、誰もが同じ風景を思い浮かべるであろう。読みにずれは無い。将に風光る季節であり、「馬上の人」である。(高橋信之)

【銀賞】
★ほととぎす谺の向こう道は無し/滑川けい子
「道は無し」と言い切ったところが「ほととぎす」らしさを捉えて充分だ。「谺の向こう」が効いた。ほととぎすは、昼夜の別なく「テッペンカケタカ」と鳴くと言われるが、私にとって懐かしい鳥だ。松山の郊外に住んでいた頃は、朝方に鳴く声をよく聞いた。幼い二人の子供たちがいた。その家は、辺りの山林が鳥獣保護区なので、雉の鳴く声も珍しいものではなかった。青葉木菟も懐かしい。(高橋信之)

【銅賞2句】
★楢の木に小鳥飛び来て独歩の忌/高橋正道
「楢の木に小鳥」は、嘱目であるか、想像であるか、を問わなくても、忌日を詠んで、この句に無理が無い。自然の風景を描いて一句に、作者の思いが込められ、独自な良さがある。「楢の類いの落葉林の美」を描いた国木田独歩の小説『武蔵野』を思う。(高橋信之)

★セザンヌの庭に水打つ荒き音/中山重孝
「荒き音」がいい。作者の強い実感であり、「セザンヌの庭」に寄せる作者の強い思いでもあろう。(高橋信之)

【入選/5句】
★夕闇に白さの浮かぶ沙羅の花/かつらたろう
★良く咲いてくれた紫陽花おおぶりに/松本千恵子
★夏雲や大往生の叔母送る/黒沼風鈴子
★冷麦や音立ち過ぎる今日の風/小河原銑二
★紫陽花の向こうは雨のノルマンディー/友田 修


■高橋正子選

【金賞】
★夕景の噴水白を極めたり/滑川けい子
噴水の水は風や、日の光によって、いろいろな姿を見せてくれる。暮れなずむころは、光も弱まり、噴きあがる水が、「白を極めたり」となる。よい発見に水の本質が読める。(高橋正子)

【銀賞】
★さるすべり天近きより咲き始む/黒沼風鈴子
さるすべりは、よく見るとフリルのような小さい花が咲き集まっている。炎天にも負けず、天に近いところから、天に触れて咲き始めるのが、ことに美しい。(高橋正子)

【銅賞】
★穏やかな桜と父の七回忌/友田 修
七回忌ともなると、故人への思いや、その他のことも一通りは整理がついて、落ち着いて、むしろ懐かしい部分が増える。その穏やかな気持が「穏やかな桜」となった。しみじみして、通り抜けた明るさがある。(高橋正子)

【入選/6句】
★うみやまと囲まれてあり星涼し/高橋正道
★セザンヌの庭に水打つ荒き音/中山重孝
★夕闇に白さの浮かぶ沙羅の花/かつらたろう
★かろやかに自転車に乗る子供の日/松本千恵子
★冷麦や音立ち過ぎる今日の風/小河原銑二
★馬鈴薯の花広がれば青き空/笠間淳子


■互選高点句最終結果
□9名の方から27句の投句があり、8名が互選に参加されました。
以下は、<第1回句会/7月23日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。

【最高点/6点】
★さるすべり天近きより咲き始む/黒沼風鈴子

【次点/4点】
★馬鈴薯の花広がれば青き空/笠間淳子


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●6月24日(日)~6月30日(土)

2007-07-01 21:01:08 | Weblog
■橘句会(俳句教室)入賞作品
□高橋正子選
□6月24日(日)~6月30日(土)

【金賞】
★峰雲や岬の先に岬また/石田高志
峰雲が湧き、青い岬のまた向こうにも岬があるという大景に夏らしい涼しさを感じます。(高橋正子)

【銀賞】
★丈高きアガパンサスの潔し/いなゆきの
アガパンサスの花は、すっきりとしていていいですね。(高橋正子)

【銅賞】
★滝の音間じかに握り頬ばりぬ/宮本和美
滝の音を間近に聞きながら頬張るおにぎりの美味しさ。山道を歩いて、やっと滝まで辿り着いた心地よい疲れと爽快感が伝わってきました。(臼井虹玉)

【優秀7句】
★ほととぎす谺の向こう道は無し/滑川けい子
「道は無し」と言い切ったところが「ほととぎす」らしさを捉えて充分だ。「谺の向こう」が効いた。ほととぎすは、昼夜の別なく「テッペンカケタカ」と鳴くと言われるが、私にとって懐かしい鳥だ。松山の郊外に住んでいた頃は、朝方に鳴く声をよく聞いた。幼い二人の子供たちがいた。その家は、辺りの山林が鳥獣保護区なので、雉の鳴く声も珍しいものではなかった。青葉木菟も懐かしい。(高橋信之)

★夕焼けるザリガニを手に家路の子/いなゆきの
楽しい句だ。喜びがある。いい情景を読み手に伝えてくれた。「家路の子」も、作者も、読者も、誰もに喜びのある句だ。「夕焼ける」という季語が生きいきとしている。(高橋信之)

★水滴の光る紫陽花母逝けり/おくだみのる
紫陽花にお母様のイメージが重なります。さまざまな出来事、思い出、それらもすべて今目の前に咲いている紫陽花の上に重なるのです。(多田有花)

★つぎつぎと異なる香り南風の森/しまづやすひろ
森を歩いていると、いろいろな香りが漂ってきます。人工的な香りではなく、微妙なものですが、それが心地よく、自然の中を歩く楽しみのひとつですね。(多田有花)

★新しき風に出会いし更衣/大山由紀
夏服へと衣更えをしたばかりの時に敏感に感じる風の温度や心地よさを、「新しき風」と詠まれたところに、作者の発見や実感が込められていると思いました。(臼井虹玉)

★夏雲や大往生の叔母送る/黒沼風鈴子
なくなられた方にさまざまな思い出があると推察しますが「大往生の」とだけいってすべてを読者にゆだねることで、かえって深い関係を想像させます。「夏雲や」と言う語、今の時期の夏雲の豊かな趣が作者の深い思いの象徴なのだと思いました。 (藤田荘二)

★夏椿咲き里山の道しるべ/中山重孝
沙羅の白い花、この時期では目立つ色ですね。それを「道しるべ 」とされるというのは、とても素敵な感性ですね。深い緑の中の白という取り合わせへの着目に感心しました。あらためて夏椿の魅力を自分なりに探したいと思いました。(藤田荘二)