デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

●第2回入賞発表(10月1日~15日)

2007-10-19 10:01:13 | Weblog
■高橋信之選

【最優秀】
★新米の袋ずしりと胸に抱く/甲斐ひさこ
「ずしりと胸に抱く」は、素直な表現なので、その嬉しさが無理なく読み手にも伝わってきて、その感動は強い。(高橋信之)

【特選/7句】
★包丁研ぐ肩軽やかに鵙日和/柳 あき
肩肘張っていないのがよい。軽やかな開放感があって、いい生活句だ。(高橋信之)

★大豆干すいま太陽は真上から/あみもとひろこ
「大豆干す」作業に「いま太陽は真上から」日を注ぐ。自然の恵みが溢れ、喜びのある生活だ。(高橋信之)

★光る江を挟み花野の広がれり/澤井 渥
「光る江」、「花野」の広がり、どこもが明るい。秋の空気が澄んでいて、遠くまで明るい。大空が何よりも明るく、地上を優しく包んでいる。私の好きな句。(高橋信之)

★金色に続く銀色すすき道/黒谷光子
自然の贈り物は、豪華だ。与えられるものであって、私たちの生活を彩り、楽しませてくれる。読み手も晴ればれとした気分にさせてくれる。嬉しい句だ。(高橋信之)

★青空に揺らぎ軽やか秋桜/國武光雄
「揺らぎ軽やか」に、コスモスの優しさはもちろんのこと、作者の気持の軽いやさしさが良く出ていて、読後さわやかな句だ。(高橋正子)

★窓枠を溢れゆっくり秋の雲/大山 凉
入院生活中の窓枠の中に見た雲に比べ、枠を溢れゆるり流れる秋の雲の自由さに今の晴れやかなお気持を汲取りました。(志賀たいじ)

★空稲架に道草の児の鬼ごっこ/まえかわをとじ
下校の子ども達であろうか。明るい田園の風景を読めば、古き良き時代を懐かしみ、子ども達の未来も良き時代であることを願う。明るい句は、いい句だ。(高橋信之)


■高橋正子選

【最優秀】
★光る江を挟み花野の広がれり/澤井 渥
「光る江」がおだやかで、その江を挟んで花野が広がるという静かで透明感のある景色が詠まれた。(高橋正子)

【特選/7句】
★花梨の実青光りしていびつなり/大山 凉
まだ熟れきらない花梨の実がつやつやと青く光って、形はと言えば、いびつ。感覚が鋭く、絵画的な面白味がある。(高橋正子)

★間引菜の白き根も水くぐらせる/あみもとひろこ
間引菜は、青い葉だけでなく、白い根もみずみずしくて葉の青さと対比されて、印象に残る。その根も水にくぐらせて、すっきりと洗われる清冽さ。それがいい。(高橋正子)

★金色に続く銀色すすき道/黒谷光子
すすきは、陽のひかり、風の具合によって、あるところでは、金色になり、あるところでは、銀色になる。すすきの道を歩くと、金銀のすすきに出会える夢のような世界がある。(高橋正子)

★新米の袋ずしりと胸に抱く/甲斐ひさこ
現実生活の実感がある句。新米の一袋は、意外にも重く、子どもを抱くように、ずしりと胸に抱くことになった。新米を受け取る喜びが「胸に抱く」に読める。(高橋正子)

★若狭への道しるべなり大き稲架/まえかわをとじ
旅の道、大きな稲架が立っているところに差し掛かった。そういった稲架の様子を見ると、若狭街道となるのであろうか。北陸、山陰への要路が、豊の秋を象徴する稲架を道標とされるのが面白い(高橋正子)

★青空に揺らぎ軽やか秋桜/國武光雄
「揺らぎ軽やか」に、コスモスの優しさはもちろんのこと、作者の気持の軽いやさしさが良く出ていて、読後さわやかな句だ。(高橋正子)

★山を割り白の極まる秋の滝/柳 あき
夏には夏のよさがある滝だが、秋にはまた違った山が紅葉して違った印象になる。静かな秋の山を真っ白に落ちる滝が潔い。(高橋正子)

【入選/11句】
★松虫や今朝の浅間の彫り深し/小口泰與
きれいな松虫の声に浅間の山襞がくっきり見えるすがすがしさがいいです。(高橋正子)

★芒野の高原は風あふれおり/高瀬哲朗
高原は一面の芒野、風があふれ芒がひろびろと波打っていることでしょう。伊吹山の三合目辺りの光景を思い出しました。(黒谷光子)

★炊きたてに目立つ零余子は丸々と/平田 弘
「零余子/むかご」は、自然薯や 長芋などの芋が地上にできたもので、玉芽という。「零余子飯/むかご飯」は、私の大好物。野趣があって、懐かしい味。「丸々と」であれば、なお懐かしく思う。(高橋信之)

★西空に集まり流る鱗雲/滑川けい子
鱗雲が集まったり流れたり、刻々と変化する秋らしい空を詠まれて、のどかで楽しい感じがいたします。(臼井愛代)

★野の池についと団栗投げてみる/河野啓一
「ついと」団栗を投げられた行為に、作者が、団栗を手にして、ふっと童心にかえられた様子を思いました。(臼井愛代)

★叉止んでそして降り出す秋しぐれ/下地 鉄
ひとしきり降ってはすぐに止む秋時雨の特徴が、作者に印象深く残った様子が伝わってまいります。(臼井愛代)

★新米の残る糠の香里の荷に/志賀たいじ
糠の香の残る新米は、収穫後いち早く、作者のもとに届けられたものなのでしょう。それがふるさとからのものであれば、より一層のうれしさがあります。(臼井愛代)

★秋の闇分けて流るる利根の川/おくだみのる
秋の闇を分けて流れる利根川の悠々とした佇まいに、その流域にある虫の音や、風にそよぐ野の草の音などと共にある豊かさを感じます。(臼井愛代)

★ポンスとは愉快な響き焼秋刀魚/宮本和美
ポンスという、どことなく愉快な響きのものが、新鮮な旬の食材をいただく食卓の楽しさをいっそう増してくれているようです。(臼井愛代)

★風過ぎぬ蕎麦の畑の白きこと/笠間淳子
蕎麦畑を風が過ぎるときに、畑一面の花の白さが際立った瞬間を見られた作者の感動を思います。(臼井愛代)

★とうとつに月日知らせし曼珠沙華/松本千恵子
唐突な感じで、野に赤い色を置いた曼珠沙華に、秋(特に、お彼岸かもしれません)が来たことを知らされたような思いになられた作者の様子が伝わってきました。(臼井愛代)

●第2回互選(好きな句)/10月1日~15日

2007-10-16 15:29:23 | Weblog
互選高点句(第2回合同句会/10月1日~10月15日)最終結果

19名の方々から93句の投句があり、互選締め切りまでに17名が互選に参加されました。以下は、<第2回合同句会/10月1日~10月15日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。

【最高点/8点】
◎退院の踏み出す一歩天高し/大山 凉

【次点/6点】
○新米の袋ずしりと胸に抱く/甲斐ひさこ

(集計/臼井愛代)

■好きな句(互選)5句を下の<コメント>にお書き込みください。
①下記の<清記/19名93句>の中から選んでください。
②好きな句(互選)を5句選び、それらの番号をお書きください。もっとも好きな句1句は、コメントを付けて書き込んでください。
③互選集計の対象は、10月19日(金)午後6時までの選句です。早めに互選を済ませてください。
④投句者以外の選句は、ご遠慮ください。

■清記/19名93句(高橋信之抽出)

[國武光雄]
01.青空に揺らぎ軽やか秋桜
02.病棟に手を振る母や秋日和
03.コスモスの揺れる小径を車椅子
04.一泊の母に栗飯炊く夕餉
05.母の部屋開け放ちけり秋の晴

[甲斐ひさこ]
06.花野風今朝は山越え吹き来たる
07.挿し換えて地蔵の小菊黄で満たす
08.晴れ渡り穂草ほぐるる明るさよ
09.新米の袋ずしりと胸に抱く
10.秋薔薇の好きな色へと車椅子

[あみもとひろこ]
11.大豆干すいま太陽は真上から
12.菜を間引き土寄せているとき楽し
13.間引菜の白き根も水くぐらせる
14.拾いきしどんぐりばかりの紙小箱
15.稲田原一直線に奈良に入る

[小口泰與]
16.秋澄むや諏訪湖のみ空なつかしき
17.浅間より恵みの日なり蕎麦の花
18.松虫や今朝の浅間の彫り深し
19.田の中に直列に生ゆ曼珠沙華
20.稲の秀や畦に吾が影あるがまま

[柳 あき]
21.包丁研ぐ肩軽やかに鵙日和
22.骨董のからくり時計小鳥来る
23.山を割り白の極まる秋の滝
24.水の香のあふる境内花芒
25.一房の葡萄の重さ手のひらに

[滑川けい子]
26.山霧の流れまにまに紅葉見ゆ
27.飛ぶ鳥の腹を光らせ秋麗
28.西空に集まり流る鱗雲
29.黄落やおにぎり片手話し先
30.秋の鳥空の高さに声澄めり

[高瀬哲朗]
31.芒野の高原は風あふれおり
32.開け放つ窓を突き抜け百舌鳥の声
33.実むらさき朝日静かに照らしおり
34.声かけて一鉢ごとの冬支度
35.紅葉散る池の緋鯉の上に降る

[河野啓一]
36.団栗の艶やかなれば秋深し
37.野の池についと団栗投げてみる
38.松手入れ終わりて庭の朝静か
39.木犀の香り溢れて空広げ
40.吾が陰の伸び行く先に木犀花

[大山 凉]
41.ICU空は今頃月満ちて
42.退院の踏み出す一歩天高し
43.晴天の秋空光る飛行船
44.窓枠を溢れゆっくり秋の雲
45.花梨の実青光りしていびつなり

[黒谷光子]
46.金色に続く銀色すすき道
47.貴船菊開こうとする膨らみに
48.ひつじ田のひろびろ青き穂を抱き
49.藤袴ばかりをどさと篭に活け
50.コスモスを手桶にたっぷり和菓子店

[澤井 渥]
51.光る江を挟み花野の広がれり
52.太き枝細き枝見せ松手入れ
53.猫じゃらし種を落せば真直ぐに
54.紫に熟れし槇の実小鳥来る
55.垣根刈る庭師の帽の赤い羽根

[下地 鉄]
56.秋雲や波間をゆれる帆掛け舟
57.波音の時をながして秋の暮
58.叉止んでそして降り出す秋しぐれ
59.空青く刷かれし雲に秋日かな
60.ひぐらしや母に負われし帰りみち

[平田 弘]
61.炊きたてに目立つ零余子は丸々と
62.一面の綿摘む先にうろこ雲
63.黄を放ち実る榠樝の枝強き
64.毬割れて転びし栗の艶つやし
65.喜びを包む輝き今年米

[志賀たいじ]
66.萩刈られそこから新た風立ちぬ
67.新米の残る糠の香里の荷に
68.枯尾花風になびくも抗うも
69.薯を掘る児らも稔りの喜びに
70.山門に新たな掃き目萩こぼる

[おくだみのる]
71.灯がひとつ大利根わたる秋の闇
72.秋の闇分けて流るる利根の川
73.身構える古蟷螂に目をそらす
74.わが影に病葉の落つひそやかに
75.秋風に動ぜぬ花となびく花

[まえかわをとじ]
76.空稲架に道草の児の鬼ごっこ
77.若狭への道しるべなり大き稲架
78.背のザックいっぱいの秋詰めにけり
79.体育の日なり新しき帽で立つ
80.青深きみそらに匂う金木犀

[宮本和美]
81.ポンスとは愉快な響き焼秋刀魚
82.一雨を秋の深まる音と聞く
83.誰踏まぬ白線白き運動会
84.湖の中にもありぬ紅葉山
85.軽四で商う八百屋小鳥来る

[笠間淳子]
86.コスモスの一畝ありて農婦行く
87.風過ぎぬ蕎麦の畑の白きこと
88.鈴虫の光の音色の闇にある
89.星月夜深く吸い込む空気かな

[松本千恵子]
90.父母慕い墓地に供えし曼珠沙華
91.とうとつに月日知らせし曼珠沙華
92.隣犬の下向いている秋の雨
93.秋澄めり問題残し民営化

▼好きな句(互選)を下の<コメント>の数字をクリックし、お書き込みください。

●第1回入賞発表(9月19日~30日)

2007-10-03 22:22:03 | Weblog
■高橋信之選

【最優秀】
★秋耕や田の一枚を高畝に/まえかわをとじ
稲を刈った後の田を鋤き返したのは、「高畝」なので、おそらく裏作のためであろうと思う。それが麦であろうが、菜種やそら豆であろうが、「高畝」には、明日への楽しみがある。前向きの生活の楽しみがある。(高橋信之)

【特選/5句】
★あきつ飛ぶそれぞれの平面の中/黒沼風鈴子
蜻蛉がそれぞれの自分が飛ぶ水平平面を守るかのように、飛んでいる姿に空気の層が見えるようです。(高橋正子)

★冬瓜もごろりと載せて引越せり/甲斐ひさこ
★命継ぐ遡上の鮭に水澄める/志賀たいじ
★研ぎ上げし鎌の切れ味天高し/宮本和美
★赤とんぼここより先は真田郷/大山 凉


■高橋正子選

【最優秀】
★あきつ飛ぶそれぞれの平面の中/黒沼風鈴子
蜻蛉がそれぞれの自分が飛ぶ水平平面を守るかのように、飛んでいる姿に空気の層が見えるようです。(高橋正子)

【特選/5句】
★子の描くコスモス紙をはみ出せり/柳 あき
子どものコスモスへの気持があふあれて、紙をはみ出すようにたくさんのコスモスが描かれているのでしょう。子供の無邪気さと清純なコスモスがよく似合っています。(高橋正子)

★赤とんぼここより先は真田郷/大山 凉
★田を囲む尺余の水路澄みにけり/まえかわをとじ
★門口を開け満月の真正面/黒谷光子
★花に穂を持ちし野の草風を呼ぶ/澤井 渥


【入選/11句】
★筑後路は山裾までの稲の秋/國武光雄
筑後平野は山裾に至るまでずっと稔田が続いて、稲の秋を実感させてくれます。無駄がないすっきりとした句です。(高橋正子)

★深き森ただ啄木鳥の聞こえくる/笠間淳子
森の奥から啄木鳥が木を叩く音が聞こえてくる。ただそれを聞いているだけですが、しんとした秋の深まりを感じます。(高橋正子)

★行く秋の岩風呂に背をもたせおり/松本千恵子
いいお湯につかり、しみじみと秋が行くのを感じるひとときですね。(高橋正子)

★大空にただ月という秋の夜/平田 弘
夜空には、星も在り、雲も在るのでしょうが、ただ月だけがあるかのように感じられた作者。その夜の月の印象を強く抱かれたのでしょう。作者の感動が伝わってくるようです。(臼井愛代)

★遠花火終幕らしき音となり/高瀬哲朗
遠くで鳴る微かな音にもかかわらず、終幕らしく派手に打ち上げられる花火の音を聞き分けておられる作者の心の動きを感じます。(臼井愛代)

★水際の弁財天の秋麗/滑川けい子
澄んだ水のほとりに祀られた弁財天の清らかな姿が、秋らしい日の清々しさと呼応して爽やかです。(臼井愛代)

★旅の荷の一つを背負い帰路の月/甲斐ひさこ
旅を終えた我が身と、背負った一つの荷物を照らす月とともにある帰路のほっとした感じが伝わってきます。(臼井愛代)

★往合の一面の早稲空青し/小口泰與
澄んだ青空と、一面の早稲の広がりに、爽やかな秋の田園風景を思います。(臼井愛代)

★渡り来て水面に騒ぐ鳥の影/河野渓太
飛来してきた鳥たちがしばし棲むことになる場所が活気付くさまに触れて、渡り鳥へ作者の温かいまなざしが感じられる御句と思います。(臼井愛代)

★真夜の月村を沈めて声もなし/下地 鉄
夜の村を見守るかのように、静かに明るく下界を照らし続ける月の存在の大きさを思います。(臼井愛代)

★わが窓をたたきし火蛾の落ちてあり/おくだみのる
その性質の通り、窓の灯に向かってガラス戸をたたいた火蛾の、力尽きた姿に心を動かされた作者の様子が伝わってきます。(臼井愛代)