※1日~4日不明
【最優秀/12月5日】
★散り切って木立の冬の始まりぬ/ふるたけいじ(信之添削)
いつから冬木立となるのか、それを言った句を知らないが、冬木立となるのは、葉が散り切ってからと見た。葉を落としてしまい、すっきりと立つ木々姿は、冬に真向かう姿といえる。(正子評)
【最優秀/12月6日】
★手袋の中や十指の和みける/山中啓輔
寒さが厳しくなると、手袋がほしい。凍るように冷た指は、手袋の中では、一本一本が温まって自由に動く。十指が互いに和みあっている。手袋に温まった手指のほどよい温さに、生きていることを静かに実感できた句だ。(正子評)
【最優秀/12月7日】
★ひそひそと大樹の声よ落葉する/祝恵子
大樹が葉を落とすとき、静かで、ひそやかで、大樹の風格を感じさせて落葉する。ひそひそと葉を落とす老大樹に、その話を聴こうではないか。(正子評)
【最優秀/12月8日】
★石塔に新雪まるく明けにけり/志賀たいじ
一夜明けると、石塔に新雪が積んでいる。「まるく」やわらかに積んでいる。これから長い雪の季節を迎える北海道でも、新雪は、ふんわりと石塔を丸く包むほど。新雪には、はじめの雪として、人間の若々しさのようなものを感じる。「明けにけり」はすがすがしい。(正子評)
※9日~11日不明
【最優秀/12月12日】
★張られいる鉄鎖にありし霜の花/多田有花(正子添削)
駐車場などでもよい。鉄の鎖が張られていて、それに霜が全く壊れ、崩れるところなく、びっしりと付いている。厳しい寒さが緊張感をもって詠まれて快いほどである。(正子評)
【最優秀/12月13日】
★朝の鐘撞く境内の雪明り/黒谷光子
朝の鐘を撞くために境内に出ると、一夜のうちに積もった雪で、一面の雪明り。人ひとりいない世界だが、清浄で静かに明るい世界にいるうれしさは、人間が自然につつまれている実感に裏打ちされて生まれるものなのだろう。(正子評)
【最優秀/12月14日】
★月上げて田毎田毎の冬ざるる/河野一志(信之添削)
空を見上げれば、きれいな月があがっている。目を田に移せば、秋の豊穣な田の気配は消えて、どの田も荒れてさびさびとしている。「寂び」の美しさを詠んだ句。(正子評)
【最優秀/12月15日】
★雪重く載せて客車の動き出す/長岡芳樹
雪がひどく降った日、客車は屋根に重く積もった雪を載せたまま、雪国に生活する人々や、旅人たちを乗せて、力いっぱい走り出そうとしている。雪を走る客車の頼もしさが、雪国の生活を助けているのである。作者は秋田在住。(正子評)
【最優秀/12月16日-18日】
★ものの音みな鋭角に霜の朝/多田有花
厳しい寒さが押しよせた霜の朝。霜を踏む音、車の走る音、風の音など、反射して鋭く響く音となる。音が「鋭い」という単純な表現ではなく、さらに吟味して「鋭角に」としたところに、句が成立した状況を明らかにしてくれている。(正子評)
【最優秀/12月19日】
★黒々と乗り込む人が雪の駅/長岡芳樹(信之添削)
白く深く積む雪の駅で外套や防寒着に身をつつんだ人々が、黙って塊のように、列車に乗り込んでいる。「黒々と」には、雪国でなければ感じ取れない真実味がある。雪国の厳しさにもいい抒情がある。(正子評)
【最優秀/12月20日】
★白樺の鬱々として小雪舞う/小西 宏
日本にいて白樺をイメージすると、ロマンティックな風景が目に浮かぶが、この句では、白樺が鬱々としている。冬の陰鬱な空をもつ北ドイツか、北欧か、ロシアか、といったような国が想像できる。鬱々とした白樺に白い小雪が舞い、寂しさと孤独が強まるような風景だ。(正子評)
【最優秀/12月21日】
★山麓のゆるき起伏に麦をまく/おおにしひろし
「ゆるき起伏」にのどかな山村風景がしのべる。今は色のない畑に麦をまいているが、やがて芽がでると、麦の芽は美しくすじをなし、さらに育つと、あおあおとしたさわやかな麦となる。そんな先のことまで思わせてくれる句。(正子評)
【最優秀/12月22日】
★子らの声道に弾むよ雪降れば/堀佐夜子
雪が降ると、子どもたちは大喜び。道に出てきて、声を弾ませて、元気いっぱいに遊んでいる。いつもと違う雪の世界に、子どもは命を弾ませている。(正子評)
【最優秀/12月23日】
★列車来る前に飛び舞う風花は/除門喜柊
駅のホームで列車を待っているのは、寒いせいもあって、長く感じる。。列車がまだ来ないかと線路のはるか向こうの方を見たりしていると、架線や線路ばかりが目立つ空間に風花は、いっそう飛び舞うのである。(正子評)
【最優秀/12月24日】
★いっそうに岩荒々し渓涸るる/大給圭泉
渓流の水が涸れてくると、岩が水から現れるところが多くなる。水がゆたかなときに見た渓流の岩と違って、ごつごつと、岩肌も荒々しく、乾いてきている。涸れの、すざましいところである。(正子評)
【最優秀/12月25日】
★柚子の香の朝の窓から青空へ/渋谷洋介
柚子の香は、ある場所を満たすほど、よく香る。柚子湯などすると、浴室は柚子の匂いに満たされる。朝、換気のために窓をあけ、柚子の香を青空へ逃がしてやる、といった状景が浮かぶ。夕べのいい柚子湯の余韻も残って、朝の青空と柚子の香りがすがすがしい。(正子評)
【最優秀/12月26日-28日】
★一湾に藍の潮すじ注連飾る/篠木睦
作者は、湾を詠んで、佳句を残しているが、この句もいい。焦点が絞られていて、風景に拡がりがある。(高橋信之)
【最優秀/12月29日-31日】
★麦の芽の黒き土割り青々と/大山 凉
くろぐろとした土に麦の芽があおあおとして、そのコントラストが美しい。ただそれだけでなく、寒さのなか、土を割り芽をだすものの勢いに、心が広く、伸びやかになるような気がする。(高橋正子)
【最優秀/12月5日】
★散り切って木立の冬の始まりぬ/ふるたけいじ(信之添削)
いつから冬木立となるのか、それを言った句を知らないが、冬木立となるのは、葉が散り切ってからと見た。葉を落としてしまい、すっきりと立つ木々姿は、冬に真向かう姿といえる。(正子評)
【最優秀/12月6日】
★手袋の中や十指の和みける/山中啓輔
寒さが厳しくなると、手袋がほしい。凍るように冷た指は、手袋の中では、一本一本が温まって自由に動く。十指が互いに和みあっている。手袋に温まった手指のほどよい温さに、生きていることを静かに実感できた句だ。(正子評)
【最優秀/12月7日】
★ひそひそと大樹の声よ落葉する/祝恵子
大樹が葉を落とすとき、静かで、ひそやかで、大樹の風格を感じさせて落葉する。ひそひそと葉を落とす老大樹に、その話を聴こうではないか。(正子評)
【最優秀/12月8日】
★石塔に新雪まるく明けにけり/志賀たいじ
一夜明けると、石塔に新雪が積んでいる。「まるく」やわらかに積んでいる。これから長い雪の季節を迎える北海道でも、新雪は、ふんわりと石塔を丸く包むほど。新雪には、はじめの雪として、人間の若々しさのようなものを感じる。「明けにけり」はすがすがしい。(正子評)
※9日~11日不明
【最優秀/12月12日】
★張られいる鉄鎖にありし霜の花/多田有花(正子添削)
駐車場などでもよい。鉄の鎖が張られていて、それに霜が全く壊れ、崩れるところなく、びっしりと付いている。厳しい寒さが緊張感をもって詠まれて快いほどである。(正子評)
【最優秀/12月13日】
★朝の鐘撞く境内の雪明り/黒谷光子
朝の鐘を撞くために境内に出ると、一夜のうちに積もった雪で、一面の雪明り。人ひとりいない世界だが、清浄で静かに明るい世界にいるうれしさは、人間が自然につつまれている実感に裏打ちされて生まれるものなのだろう。(正子評)
【最優秀/12月14日】
★月上げて田毎田毎の冬ざるる/河野一志(信之添削)
空を見上げれば、きれいな月があがっている。目を田に移せば、秋の豊穣な田の気配は消えて、どの田も荒れてさびさびとしている。「寂び」の美しさを詠んだ句。(正子評)
【最優秀/12月15日】
★雪重く載せて客車の動き出す/長岡芳樹
雪がひどく降った日、客車は屋根に重く積もった雪を載せたまま、雪国に生活する人々や、旅人たちを乗せて、力いっぱい走り出そうとしている。雪を走る客車の頼もしさが、雪国の生活を助けているのである。作者は秋田在住。(正子評)
【最優秀/12月16日-18日】
★ものの音みな鋭角に霜の朝/多田有花
厳しい寒さが押しよせた霜の朝。霜を踏む音、車の走る音、風の音など、反射して鋭く響く音となる。音が「鋭い」という単純な表現ではなく、さらに吟味して「鋭角に」としたところに、句が成立した状況を明らかにしてくれている。(正子評)
【最優秀/12月19日】
★黒々と乗り込む人が雪の駅/長岡芳樹(信之添削)
白く深く積む雪の駅で外套や防寒着に身をつつんだ人々が、黙って塊のように、列車に乗り込んでいる。「黒々と」には、雪国でなければ感じ取れない真実味がある。雪国の厳しさにもいい抒情がある。(正子評)
【最優秀/12月20日】
★白樺の鬱々として小雪舞う/小西 宏
日本にいて白樺をイメージすると、ロマンティックな風景が目に浮かぶが、この句では、白樺が鬱々としている。冬の陰鬱な空をもつ北ドイツか、北欧か、ロシアか、といったような国が想像できる。鬱々とした白樺に白い小雪が舞い、寂しさと孤独が強まるような風景だ。(正子評)
【最優秀/12月21日】
★山麓のゆるき起伏に麦をまく/おおにしひろし
「ゆるき起伏」にのどかな山村風景がしのべる。今は色のない畑に麦をまいているが、やがて芽がでると、麦の芽は美しくすじをなし、さらに育つと、あおあおとしたさわやかな麦となる。そんな先のことまで思わせてくれる句。(正子評)
【最優秀/12月22日】
★子らの声道に弾むよ雪降れば/堀佐夜子
雪が降ると、子どもたちは大喜び。道に出てきて、声を弾ませて、元気いっぱいに遊んでいる。いつもと違う雪の世界に、子どもは命を弾ませている。(正子評)
【最優秀/12月23日】
★列車来る前に飛び舞う風花は/除門喜柊
駅のホームで列車を待っているのは、寒いせいもあって、長く感じる。。列車がまだ来ないかと線路のはるか向こうの方を見たりしていると、架線や線路ばかりが目立つ空間に風花は、いっそう飛び舞うのである。(正子評)
【最優秀/12月24日】
★いっそうに岩荒々し渓涸るる/大給圭泉
渓流の水が涸れてくると、岩が水から現れるところが多くなる。水がゆたかなときに見た渓流の岩と違って、ごつごつと、岩肌も荒々しく、乾いてきている。涸れの、すざましいところである。(正子評)
【最優秀/12月25日】
★柚子の香の朝の窓から青空へ/渋谷洋介
柚子の香は、ある場所を満たすほど、よく香る。柚子湯などすると、浴室は柚子の匂いに満たされる。朝、換気のために窓をあけ、柚子の香を青空へ逃がしてやる、といった状景が浮かぶ。夕べのいい柚子湯の余韻も残って、朝の青空と柚子の香りがすがすがしい。(正子評)
【最優秀/12月26日-28日】
★一湾に藍の潮すじ注連飾る/篠木睦
作者は、湾を詠んで、佳句を残しているが、この句もいい。焦点が絞られていて、風景に拡がりがある。(高橋信之)
【最優秀/12月29日-31日】
★麦の芽の黒き土割り青々と/大山 凉
くろぐろとした土に麦の芽があおあおとして、そのコントラストが美しい。ただそれだけでなく、寒さのなか、土を割り芽をだすものの勢いに、心が広く、伸びやかになるような気がする。(高橋正子)