■3月1日(土)~3月8日(土)
□高橋正子選
【最優秀】
★張りのある声を一つに卒業歌/まえかわをとじ
「張りのある声」に、青春が力が象徴されている。卒業後はさまざまな道を歩むであろう生徒たちが、卒業の歌を歌うときこそは、声を一つ、心を一つにする思いは、いつの世も変わらないであろう。(高橋正子)
【特選5句】
★春の瀬の軽々鴨を流しけり/あみもとひろこ(正子添削)
主題は「春の瀬」である。浅い流れに浮かぶ鴨たちも、かろやかに瀬水に流されて行く。その軽やかさや快さが春である。(高橋正子)
★にぎわいを芽木に残して目白飛ぶ/藤田裕子
目白の季語は、その繁殖期である夏とする歳時記、また秋とする歳時記がある。実際に人里でよく見られるようになるのは秋の終わりごろから。椿のころはよく庭に来る。芽木のころも丁度このころ。チリチリという小さな声ににぎわう芽木は、早春のあかるさに満ちている。(高橋正子)
★土筆摘む野原一杯の日の匂い/宮本和美
平易な句。その平易さ故に、土筆の生えている日当たりのよい野原が、懐かしく、のどかに思い起こされる。春の野の原風景。(高橋正子)
★雲の来て藍を濃くする春の川/かわな ますみ
「雲の来て藍を濃くする」と「春の川」の組み合わせは、意表をついている。しかし、巡って読み返すと、雲の影が春の川に映って水の色が濃くなるのだとう説明。説明でありながら、それが美しいものの発見と驚きになっている。(高橋正子)
★食卓を彩る一輪挿しの梅/高橋秀之
毎日の食事が並び、家族の団欒がある食卓。食卓の一輪挿しの一枝の梅が今日という日を清々しく、ことに季節の新しさを知らせてくれる。さりげなく梅の花がある生活がそのまま句となった。(高橋正子)
【入選Ⅰ/10句】
★水音の溢れて森に三月来る/小川美和
春の景が日毎に増えて来るのは、やはり、水の音からですね。木々の芽が一斉に萌え出る森の光景がとてもよく思い浮かびます。(かつらたろう)
★東風吹くや女子大生の紺袴/國武光雄
卒業式なのでしょうか、季節感の溢れる上手い詠みだと思います。(まえかわをとじ)
★下萌えを踏みて高炉仰ぎたり/岩本康子
旧八幡製鉄の高炉を仰ぎみての句、共感を覚えました。上五の季語「草萌え」が非常によく効いた佳き句と存じます。新旧の妙が渾然となりて、素的です。(宮本和美)
★三月となりて歩幅を大きくす/池田多津子
陽春の三月、思わず歩幅を大きくした詠者の姿が目に浮かびます。これも、詠者の気分の表れと思われ、素的な句と存じます。素的な句です。(宮本和美)
★囀りやゆるりと上る女坂/黒谷光子
何処の神社、仏閣でしょうか?鳥が鳴き穏やかな春日和の中を、勾配のゆるい女坂を選んで訪れられている景が目に浮かぶようです。「ゆるりと上る」の語句に長閑さを感じます。(かつらたろう)
★春光へ飛び立つ機首の遠くなり/祝恵子
春の日差しが降り注ぐ中を飛び立った飛行機が遠ざかってゆきます。春空を行く飛機の旅を明るく見送る作者の姿があります。(臼井愛代)
★剪定の薔薇園すっきり空青し/甲斐ひさこ
剪定を施され、すっきりと整った薔薇園が、青空の下で春の日を浴び、花の時期を待つ様子がさわやかです。(臼井愛代)
★いぬふぐり紫ちらす散歩道/吉川豊子
いぬふぐりは小さい花ですが、かたちも色も可愛らしく、地を彩ってくれますね。「紫ちらす」に、普段のお散歩道も、春のひろがりの最中にあることが感じられます。(池田加代子)
★銀翼に菜の花の風惜しみなく/竹内よよぎ
飛行機の翼が銀色に輝いて、菜の花をゆらす豊かな風を受け、まさに離陸せんとする勢いの中にあるようです。黄色の輝きの中の銀翼が、きらりと印象的です。(池田加代子)
★桜芽の紅をうっすら空透かす/丸山草子
桜芽に紅がうっすらと帯びてきて、開花の間近いことを思わせます。今はまだ透けて見える空も、咲くに従って花に埋もれていくのだと思うと、感慨がありますね。(池田加代子)
【入選Ⅱ/11句】
★藍色の切子硝子や風光る/篠木 睦
藍色の切込み細工を施したクリスタル硝子の穏やかな輝きと、うらうらと晴れた春の日に、やわらかな風が吹き、風にゆらぐ風景のまばゆいばかりの明るさの対比がとても素敵だと思います。(小口泰與)
★さらさらと樹液の流れ幹の春/おくだみのる
芽吹きだけでなく、春の命は、木の幹にも確かな流れとなってあることに、強くひかれました。(あみもとひろこ)
★囀りを聞き竹矢来の続く道/飯島治蝶
竹矢来が続いているだけでも心落ち着くすてきな道だと思います。その上に囀りが聞こえると、よりすてきな道となりそうです。いよいよ春ですね。(池田多津子)
★春きざすスキップする子の坊主刈/かつらたろう
春の気配を感じる季、おそらく皆が、スキップしたい気分を胸に抱いていることでしょう。でも、多くは胸に留めたまま。「坊主刈」の男子が、誰に憚ることもなくスキップする姿は、春の色をより強めるようです。(かわな ますみ)
★転んでも青き踏む子の赤い靴/堀佐夜子
萌え始めた春の野山に広がる元気な子供の様子が赤と青のコントラストで鮮やかに見えてくるようです。(高橋秀之)
★青空にひときは高き斑雪山/小口泰與
晴れ渡ると、日差しがかなり強くなってきているのがわかります。本格的な山の雪解けはこれからですが、仰ぐ山々に進む春を感じていらっしゃる様子が伝わってきます。(多田有花)
★湖静か比良山雪を頂きて/小河原宏子
「比良の暮雪」は近江八景として名高いところ。穏やかな琵琶湖の向こうに残雪をいただく比良山が見えます。美しい情景をさらりと詠まれています。(多田有花)
★園児輪に白梅大樹の香る下/大給圭泉
香り豊かな白梅の大樹を囲む園児たちの明るい光景に心和みます。年輪を重ねた古木が幼い子らを優しく見守っているようです。(藤田洋子)
★カルピスを暖め供うひな祭り/河野啓一
白酒と見立てて供えられたカルピスでしょうか。丁寧に暖められたカルピスの白さに、雛の節句行事を大切にされている様子が窺えます。(藤田洋子)
★墨東の大路に立てり春真昼/臼井愛代
隅田川の東の区域「墨東」。朝夕はまだ気温が低いものの日中は随分暖かくなりました。暖かい日射しに包まれて歩む大路はすっかり春の装いです。(池田多津子)
★啓蟄やスラリと伸びた少女の脚/大山 凉
いよいよ虫たちの活動が始まるころ。少女たちはさっそうと街を歩き始めます。スラリと伸びた「少女の脚」に活動的な春を感じます。(池田多津子)
■互選高点句
□集計/臼井愛代
【最高点/6点】
★土筆摘むお地蔵さんに会釈して/宮本和美
(光雄・ひさこ・秀之・治蝶・啓一・佐夜子選)
読者の心をほのぼのとさせてくれる素敵な句だ。「会釈して」がいいですね。(國武光雄)
微笑ましくて、たのしくて、きっと野道のお地蔵さまでしょう。お傍の土筆を積みたくて会釈でお許しを願われたのでしょう。その気持が伝わり、好きな句です。 (甲斐ひさこ)
土筆のある野原を見守るお地蔵様でしょうか。土筆を積む前にお地蔵様にあいさつするほのぼのとした気持ちが伝わります。(高橋秀之)
頭を丸くして立っている土筆とお地蔵様の取り合わせがいいですね。微笑ましい春の句です。 (飯島治蝶)
平易な表現で鄙びた春の情景を詠んでおられ、大変参考になりました。(河野啓一)
きっとお地蔵さんも微笑んで居られたのでしょうね。土筆をみつけると嬉しいものです。つい、にっこりした時お地蔵さんも微笑んで居られたので会釈をしたそんな感じではないでしょうか。(堀佐夜子)
【次点/4点/3句】
★堰落ちる春水光の束となり/あみもとひろこ
(をとじ・光子・たろう・佐夜子選)
★ブランコに少年ふたり揺りもせず/臼井愛代
(秀之・たろう・をとじ・治蝶選)
★春きざす日毎に伸びる万歩計/かつらたろう
(治蝶・光雄・凉・光子選)
□高橋正子選
【最優秀】
★張りのある声を一つに卒業歌/まえかわをとじ
「張りのある声」に、青春が力が象徴されている。卒業後はさまざまな道を歩むであろう生徒たちが、卒業の歌を歌うときこそは、声を一つ、心を一つにする思いは、いつの世も変わらないであろう。(高橋正子)
【特選5句】
★春の瀬の軽々鴨を流しけり/あみもとひろこ(正子添削)
主題は「春の瀬」である。浅い流れに浮かぶ鴨たちも、かろやかに瀬水に流されて行く。その軽やかさや快さが春である。(高橋正子)
★にぎわいを芽木に残して目白飛ぶ/藤田裕子
目白の季語は、その繁殖期である夏とする歳時記、また秋とする歳時記がある。実際に人里でよく見られるようになるのは秋の終わりごろから。椿のころはよく庭に来る。芽木のころも丁度このころ。チリチリという小さな声ににぎわう芽木は、早春のあかるさに満ちている。(高橋正子)
★土筆摘む野原一杯の日の匂い/宮本和美
平易な句。その平易さ故に、土筆の生えている日当たりのよい野原が、懐かしく、のどかに思い起こされる。春の野の原風景。(高橋正子)
★雲の来て藍を濃くする春の川/かわな ますみ
「雲の来て藍を濃くする」と「春の川」の組み合わせは、意表をついている。しかし、巡って読み返すと、雲の影が春の川に映って水の色が濃くなるのだとう説明。説明でありながら、それが美しいものの発見と驚きになっている。(高橋正子)
★食卓を彩る一輪挿しの梅/高橋秀之
毎日の食事が並び、家族の団欒がある食卓。食卓の一輪挿しの一枝の梅が今日という日を清々しく、ことに季節の新しさを知らせてくれる。さりげなく梅の花がある生活がそのまま句となった。(高橋正子)
【入選Ⅰ/10句】
★水音の溢れて森に三月来る/小川美和
春の景が日毎に増えて来るのは、やはり、水の音からですね。木々の芽が一斉に萌え出る森の光景がとてもよく思い浮かびます。(かつらたろう)
★東風吹くや女子大生の紺袴/國武光雄
卒業式なのでしょうか、季節感の溢れる上手い詠みだと思います。(まえかわをとじ)
★下萌えを踏みて高炉仰ぎたり/岩本康子
旧八幡製鉄の高炉を仰ぎみての句、共感を覚えました。上五の季語「草萌え」が非常によく効いた佳き句と存じます。新旧の妙が渾然となりて、素的です。(宮本和美)
★三月となりて歩幅を大きくす/池田多津子
陽春の三月、思わず歩幅を大きくした詠者の姿が目に浮かびます。これも、詠者の気分の表れと思われ、素的な句と存じます。素的な句です。(宮本和美)
★囀りやゆるりと上る女坂/黒谷光子
何処の神社、仏閣でしょうか?鳥が鳴き穏やかな春日和の中を、勾配のゆるい女坂を選んで訪れられている景が目に浮かぶようです。「ゆるりと上る」の語句に長閑さを感じます。(かつらたろう)
★春光へ飛び立つ機首の遠くなり/祝恵子
春の日差しが降り注ぐ中を飛び立った飛行機が遠ざかってゆきます。春空を行く飛機の旅を明るく見送る作者の姿があります。(臼井愛代)
★剪定の薔薇園すっきり空青し/甲斐ひさこ
剪定を施され、すっきりと整った薔薇園が、青空の下で春の日を浴び、花の時期を待つ様子がさわやかです。(臼井愛代)
★いぬふぐり紫ちらす散歩道/吉川豊子
いぬふぐりは小さい花ですが、かたちも色も可愛らしく、地を彩ってくれますね。「紫ちらす」に、普段のお散歩道も、春のひろがりの最中にあることが感じられます。(池田加代子)
★銀翼に菜の花の風惜しみなく/竹内よよぎ
飛行機の翼が銀色に輝いて、菜の花をゆらす豊かな風を受け、まさに離陸せんとする勢いの中にあるようです。黄色の輝きの中の銀翼が、きらりと印象的です。(池田加代子)
★桜芽の紅をうっすら空透かす/丸山草子
桜芽に紅がうっすらと帯びてきて、開花の間近いことを思わせます。今はまだ透けて見える空も、咲くに従って花に埋もれていくのだと思うと、感慨がありますね。(池田加代子)
【入選Ⅱ/11句】
★藍色の切子硝子や風光る/篠木 睦
藍色の切込み細工を施したクリスタル硝子の穏やかな輝きと、うらうらと晴れた春の日に、やわらかな風が吹き、風にゆらぐ風景のまばゆいばかりの明るさの対比がとても素敵だと思います。(小口泰與)
★さらさらと樹液の流れ幹の春/おくだみのる
芽吹きだけでなく、春の命は、木の幹にも確かな流れとなってあることに、強くひかれました。(あみもとひろこ)
★囀りを聞き竹矢来の続く道/飯島治蝶
竹矢来が続いているだけでも心落ち着くすてきな道だと思います。その上に囀りが聞こえると、よりすてきな道となりそうです。いよいよ春ですね。(池田多津子)
★春きざすスキップする子の坊主刈/かつらたろう
春の気配を感じる季、おそらく皆が、スキップしたい気分を胸に抱いていることでしょう。でも、多くは胸に留めたまま。「坊主刈」の男子が、誰に憚ることもなくスキップする姿は、春の色をより強めるようです。(かわな ますみ)
★転んでも青き踏む子の赤い靴/堀佐夜子
萌え始めた春の野山に広がる元気な子供の様子が赤と青のコントラストで鮮やかに見えてくるようです。(高橋秀之)
★青空にひときは高き斑雪山/小口泰與
晴れ渡ると、日差しがかなり強くなってきているのがわかります。本格的な山の雪解けはこれからですが、仰ぐ山々に進む春を感じていらっしゃる様子が伝わってきます。(多田有花)
★湖静か比良山雪を頂きて/小河原宏子
「比良の暮雪」は近江八景として名高いところ。穏やかな琵琶湖の向こうに残雪をいただく比良山が見えます。美しい情景をさらりと詠まれています。(多田有花)
★園児輪に白梅大樹の香る下/大給圭泉
香り豊かな白梅の大樹を囲む園児たちの明るい光景に心和みます。年輪を重ねた古木が幼い子らを優しく見守っているようです。(藤田洋子)
★カルピスを暖め供うひな祭り/河野啓一
白酒と見立てて供えられたカルピスでしょうか。丁寧に暖められたカルピスの白さに、雛の節句行事を大切にされている様子が窺えます。(藤田洋子)
★墨東の大路に立てり春真昼/臼井愛代
隅田川の東の区域「墨東」。朝夕はまだ気温が低いものの日中は随分暖かくなりました。暖かい日射しに包まれて歩む大路はすっかり春の装いです。(池田多津子)
★啓蟄やスラリと伸びた少女の脚/大山 凉
いよいよ虫たちの活動が始まるころ。少女たちはさっそうと街を歩き始めます。スラリと伸びた「少女の脚」に活動的な春を感じます。(池田多津子)
■互選高点句
□集計/臼井愛代
【最高点/6点】
★土筆摘むお地蔵さんに会釈して/宮本和美
(光雄・ひさこ・秀之・治蝶・啓一・佐夜子選)
読者の心をほのぼのとさせてくれる素敵な句だ。「会釈して」がいいですね。(國武光雄)
微笑ましくて、たのしくて、きっと野道のお地蔵さまでしょう。お傍の土筆を積みたくて会釈でお許しを願われたのでしょう。その気持が伝わり、好きな句です。 (甲斐ひさこ)
土筆のある野原を見守るお地蔵様でしょうか。土筆を積む前にお地蔵様にあいさつするほのぼのとした気持ちが伝わります。(高橋秀之)
頭を丸くして立っている土筆とお地蔵様の取り合わせがいいですね。微笑ましい春の句です。 (飯島治蝶)
平易な表現で鄙びた春の情景を詠んでおられ、大変参考になりました。(河野啓一)
きっとお地蔵さんも微笑んで居られたのでしょうね。土筆をみつけると嬉しいものです。つい、にっこりした時お地蔵さんも微笑んで居られたので会釈をしたそんな感じではないでしょうか。(堀佐夜子)
【次点/4点/3句】
★堰落ちる春水光の束となり/あみもとひろこ
(をとじ・光子・たろう・佐夜子選)
★ブランコに少年ふたり揺りもせず/臼井愛代
(秀之・たろう・をとじ・治蝶選)
★春きざす日毎に伸びる万歩計/かつらたろう
(治蝶・光雄・凉・光子選)