■4月20日(日)~4月26日(土)
□高橋正子選
【最優秀】
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
桜の咲く峡の旅。風景に詩があって、それだけでよい句となる。旅鞄に作者の思いが詰められて、ふっくらと抒情のある句になった。(高橋正子)
【特選5句】
★遠足の列伸びきつて帰校せり/宮本和美
行くときは意気揚々とまっすぐに並んでいる子どもたちですが、帰り道は途中で花を摘んだり、疲れて歩く速さが遅れたりと、まさに「列伸びきって」です。春の遠足はいいものです。(池田多津子)
★病みし身の路地に七色シャボン玉/大給圭泉
病の身に、夢に満ちた七色に輝くシャボン玉は明日へ生きる希望を与えてくれます。作者の思いと七色シャボン玉とが重なって、伝わってきます。(飯島治蝶)
★青麦の丈不揃いに風起こす/柳原美知子
青麦は本当に不揃いに伸びて、不揃いの風を起こしますね。緑のそよそよとした風がうまく表現されて好きです。(竹内よよぎ)
★春筍掘られて遺す穴ひとつ/多田有花
筍が掘られた場所に遺された穴は、その筍が、春の大地からのうれしい恵みであることを物語っています。(臼井愛代)
★なだらかに水の辺までを草若葉/臼井愛代
川の岸辺か池の辺か、春の水際ぎりぎりまでを被う若草の緑が、斜面のなだらかさと相まって、なおさらやさしい景色を見せてくれます。(池田加代子)
【入選Ⅰ/10句】
★紋白蝶吹かれて高き棕櫚を越ゆ/甲斐ひさこ
棕櫚の高ささえも越えるほどの勢いで空に舞い上がった紋白蝶の、いきいきとした姿に触れた作者の驚き、感動が伝わってきます。(臼井愛代)
★風が鳴るげんげ田に吾一人居る/祝恵子
なんと静かな田園風景でしょう。風の音が聞こえて来そうな心地がしています。(甲斐ひさこ)
★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)
★遅日かなかくれんぼうの声きけば/かつらたろう
日暮れがおそくなり、子ども達にはうれしい季節。かくれんぼうをする子らの声を聞きながら改めて遅日を実感されている作者です。(小川美和)
★大壺に山つつじ入れ陶器市/黒谷光子
この大壺も売り物なのでしょうか。青空の下での陶器市、つつじの花も鮮やかに楽しそうな活気に満ちた陶器市の様子が浮かんできます。(多田有花)
★日が差して柿の若葉の玻璃に透く/藤田洋子
外光が眩しく、若葉の照り返しが室内にも明るさをもたらす季節です。そんな季節の様子を的確にとらえられた句です。(多田有花)
★境内に三角ベース柿若葉/國武光雄
子どもの野球でも近頃は立派な用具とユニフォームをそろえるのが当たり前になっています。しかし、これは近所の社寺の境内に作られた三角ベース、その素朴さが柿若葉のみずみずしさとマッチして印象に残ります。(多田有花)
★朝風と共に香れるフリージア/迫田和代
朝風にフリージアの香る 、爽やかな明るい春の朝です。一日の始まりに、フリージアの嬉しい芳しさです。(藤田洋子)
★花水木まぶしき街に苗木売/かわなますみ
街を華やかに彩り、目を楽しませてくれる花水木。見かける苗木売も心楽しく、明るさとみずみずしい季節感が溢れます。(藤田洋子)
★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之
青空にも大きく開くチューリップにも、明るさと開放感があり、読者が元気をいただくような御句と思います。(臼井愛代)
【入選Ⅱ/20句】
★ルオ-展外は明るき春の空/おくだみのる
ルオ-の絵画を楽しまれて美術館の外にでれば、そこには春の空がまぶしいほど。照明をおとしている館内で絵画を鑑賞されたあとの満足感が明るく伝わってきます。(小川美和)
★善峰に茜の雲や茄子の苗/まえかわをとじ
善峰山あたりはまだ畑が見られる静かな所でしょう。ずい分前にてくてくと歩いたことがあります。道沿いの畑に茄子苗の植えられている景が思い浮かびます。(甲斐ひさこ)
★春風に触る懐かしき潮の香よ/志賀たいじ
ご退院、心からおめでとうございます。北海道はここの所、本州と変わらぬ暖かさだったそうですが、退院して春風に触れ、潮の香を聞けば「ああ生きている・・」との心からの実感であったと思います。ご無理にならないよう充分ご静養下さいませ。(かつらたろう)
★デザートの皿は白磁や春いちご/小河原 宏子
ご馳走の後のデザートでしょうか。そっと出されたお皿は、雲のように優しい白磁、そこへ、夏はもうすぐと声を掛けるような、瑞々しい苺が載っています。幸せな瞬間です。(かわな ますみ )
★月おぼろ遠き記憶に立ち止る/藤田裕子
詩の情緒に魅せられます。(おくだみのる)
★春の雨繰り返し読む絵本かな/上島笑子
暖かいのに外で遊べない、春の雨の日、子ども達の愉しみは、やはり絵本なのでしょう。お母さまに読んで貰い、時には、自分でめくってみたり。幾度も繰られ、くたくたになってゆく絵本が、微笑ましく浮かびます。(かわな ますみ)
★ハリハリの音に甘みの木の芽和え/吉田 晃
耳と舌の感覚を上手く調和させた心地よい調子の句。好きな句。(まえかわをとじ)
★やわらかき豌豆の花莢成して/小川美和
近所でも豆の花が盛りです。句全体に豆の花をいとうしむのが出ていて好きな句です。(上島笑子)
★窓越しに歌聞こえ来る鯉幟/河野啓一
鯉幟が目を引く今日この頃です。窓越しに歌声を聞いている鯉幟も人も幸せですね。(竹内よよぎ)
★長堤を越し行く蝶の九十九折/飯島治蝶
風に流されるように蝶が堤を越えていこうとしています。ひらひらと行きかけてはまた戻り、その姿をまるで空間に曲がりくねった道があるように九十九折と表現されました。(多田有花)
★出揃いし麦の穂穀雨に波立てり/おおにしひろし
穂をはらんですくすくと伸び揃う青麦が清々しいかぎりです。穀雨に潤された麦の穂波に、いっそうみずみずしい麦の生長を感じます。(藤田洋子)
★朝よりの雨はげしかりけり葱の花/堀佐夜子
朝から降り続く雨の激しさの中、真っ直ぐに立つ葱の花茎。生長した葱の逞しさと細かく白い葱の花に向けられた優しさも感じます。(藤田洋子)
★菜の花や水面ゆつたり信濃川/小口泰與
川の近くに咲き続く菜の花の黄色がやさしく揺れます。信濃川の大きな流れにも映っているのかもしれません。 暖かい日差しも感じ、気持ちのいい春の一日です。(池田多津子)
★海の色明け暮れ変えて夏近し/篠木 睦
海の色は本当に不思議です。四季を通じて周りの変化とともにさまざまな表情を見せます。海とともに暮らしている作者ゆえ、そのわずかな変化を感じることができるのだと思います。 (池田多津子)
★囀りと坂を登れば海開け/竹内よよぎ
囀りを聞きながら坂を登ると眼下には真っ青な海が広がります。囀りがあれば坂道も軽やかに登れそうです。海を見下ろす爽快感もあり、心が広がります。(池田多津子)
★落日へメタセコイアの芽吹く色/古田けいじ
高々とそびえるメタセコイアの芽吹きの緑が、落日の輝きに、いっそう鮮やかに映えています。(臼井愛代)
★ふくらめる紫雲英田までの一本道/池田多津子
「ふくらめる」から、たくさんの紫雲英の花がのびのびと咲いている田んぼであることがわかります。その田んぼまで続く一本道を置いた田園風景が、春らしく、のどかです。(臼井愛代)
★図書館の窓にけやきの若葉映え/吉川豊子
図書館の窓には、木々の緑がよく似合いますね。枝を広げる欅の若葉が、読書の目を生き返られてくれるようです。(池田加代子)
★対岸の山頂上の躑躅かな/井上治代
対岸、山、頂上のツツジへと、しぼられていく視点のリズムが楽しいですね。赤いツツジにアクセントがあって、水の向こうの緑の遠景が引き締まります。(池田加代子)
★楓の芽ほどけて赤味増し揺れる/丸山草子
楓の芽はまさにほどけるように開きますね。赤い芽がほどけて楓の葉形になり、はじめて風に触れて揺れる様子に、繊細な魅力があります。(池田加代子)
■互選高点句
□集計/臼井愛代
【最高点/5点/3句】 (作者名五十音順)
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
(宏子・恵子・凉・有花・豊子選)
旅の途中にあって電車を待つ間に鞄を横に置き、ふと見ると峡谷には美しい桜が咲いていて感激している作者、また早く皆に会いたい気持ちをも伝わってくる句と思いました。(小河原宏子)
この駅は無人なのかなと思ったりしています。静かで旅人を見守っている桜なのでしょうね。いい旅をなさったことでしょう。(祝 恵子)
長旅を終えて降り立った駅、重い鞄を置いてふと辺りを見回すと、渓谷には桜が満開の春爛漫の景色にほっと安らぎを感じられた気持ちが伝わってきます。(大山 凉)
小さな単線の駅という印象を受けます。満開の桜か、花吹雪か、いずれにせよこの時期の旅の楽しさがあふれています。(多田有花)
渓谷に桜が満開、駅はその美しい風景の中にある。{桜の駅に置く}列車を待つひととき、旅鞄を置いて桜に見入っている、作者も又、その美しい風景に溶け込んでいる。この上ない旅をなさいました。(吉川豊子)
★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
(ひろこ・光子・泰與・ひさこ・裕子選)
それぞれの穂先をしっかり空にむけて、麦畑の青一色が、美しく捉えられていると思います。(あみもとひろこ)
穂先をまっすぐ空に向け、青々とした麦畑の情景が素敵に詠まれています。(黒谷光子)
春暖と共に大きく伸びた麦の若葉が、青々と畑を覆っている様子が、リズムよく詠われています。特に畑一枚が良いですね。(小口泰與)
青々と育った麦に一斉に穂が出て触れればちくちくと鋭い穂先ですね。麦の生き生きとした景がよく伝わる好きな句です。(甲斐ひさこ)
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)
★風吹けば風に色あり若楓/宮本和美
(光子・光雄・啓一・よよぎ・治蝶選)
お天気のよい日の若楓の美しさ、風が吹けば風も若楓の色に染まって空を覆うようです。(黒谷光子)
緑と赤の若々しい楓を見かける季節となりました。若楓には生命の息吹を感じます。「風に色あり」が素敵です。(國武光雄)
風にその色がうつるかと思わせるような、若楓の透き通った色。格調の高い大好きな句です。(河野啓一)
若楓が日を透かし透き通った緑の風になった光景が目に浮かびます。きれいな句ですね。(竹内よよぎ)
吹く風が変わり行く季節をやさしく教えてくれます。透明感のあるさわやかな句です。(飯島治蝶)
□高橋正子選
【最優秀】
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
桜の咲く峡の旅。風景に詩があって、それだけでよい句となる。旅鞄に作者の思いが詰められて、ふっくらと抒情のある句になった。(高橋正子)
【特選5句】
★遠足の列伸びきつて帰校せり/宮本和美
行くときは意気揚々とまっすぐに並んでいる子どもたちですが、帰り道は途中で花を摘んだり、疲れて歩く速さが遅れたりと、まさに「列伸びきって」です。春の遠足はいいものです。(池田多津子)
★病みし身の路地に七色シャボン玉/大給圭泉
病の身に、夢に満ちた七色に輝くシャボン玉は明日へ生きる希望を与えてくれます。作者の思いと七色シャボン玉とが重なって、伝わってきます。(飯島治蝶)
★青麦の丈不揃いに風起こす/柳原美知子
青麦は本当に不揃いに伸びて、不揃いの風を起こしますね。緑のそよそよとした風がうまく表現されて好きです。(竹内よよぎ)
★春筍掘られて遺す穴ひとつ/多田有花
筍が掘られた場所に遺された穴は、その筍が、春の大地からのうれしい恵みであることを物語っています。(臼井愛代)
★なだらかに水の辺までを草若葉/臼井愛代
川の岸辺か池の辺か、春の水際ぎりぎりまでを被う若草の緑が、斜面のなだらかさと相まって、なおさらやさしい景色を見せてくれます。(池田加代子)
【入選Ⅰ/10句】
★紋白蝶吹かれて高き棕櫚を越ゆ/甲斐ひさこ
棕櫚の高ささえも越えるほどの勢いで空に舞い上がった紋白蝶の、いきいきとした姿に触れた作者の驚き、感動が伝わってきます。(臼井愛代)
★風が鳴るげんげ田に吾一人居る/祝恵子
なんと静かな田園風景でしょう。風の音が聞こえて来そうな心地がしています。(甲斐ひさこ)
★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)
★遅日かなかくれんぼうの声きけば/かつらたろう
日暮れがおそくなり、子ども達にはうれしい季節。かくれんぼうをする子らの声を聞きながら改めて遅日を実感されている作者です。(小川美和)
★大壺に山つつじ入れ陶器市/黒谷光子
この大壺も売り物なのでしょうか。青空の下での陶器市、つつじの花も鮮やかに楽しそうな活気に満ちた陶器市の様子が浮かんできます。(多田有花)
★日が差して柿の若葉の玻璃に透く/藤田洋子
外光が眩しく、若葉の照り返しが室内にも明るさをもたらす季節です。そんな季節の様子を的確にとらえられた句です。(多田有花)
★境内に三角ベース柿若葉/國武光雄
子どもの野球でも近頃は立派な用具とユニフォームをそろえるのが当たり前になっています。しかし、これは近所の社寺の境内に作られた三角ベース、その素朴さが柿若葉のみずみずしさとマッチして印象に残ります。(多田有花)
★朝風と共に香れるフリージア/迫田和代
朝風にフリージアの香る 、爽やかな明るい春の朝です。一日の始まりに、フリージアの嬉しい芳しさです。(藤田洋子)
★花水木まぶしき街に苗木売/かわなますみ
街を華やかに彩り、目を楽しませてくれる花水木。見かける苗木売も心楽しく、明るさとみずみずしい季節感が溢れます。(藤田洋子)
★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之
青空にも大きく開くチューリップにも、明るさと開放感があり、読者が元気をいただくような御句と思います。(臼井愛代)
【入選Ⅱ/20句】
★ルオ-展外は明るき春の空/おくだみのる
ルオ-の絵画を楽しまれて美術館の外にでれば、そこには春の空がまぶしいほど。照明をおとしている館内で絵画を鑑賞されたあとの満足感が明るく伝わってきます。(小川美和)
★善峰に茜の雲や茄子の苗/まえかわをとじ
善峰山あたりはまだ畑が見られる静かな所でしょう。ずい分前にてくてくと歩いたことがあります。道沿いの畑に茄子苗の植えられている景が思い浮かびます。(甲斐ひさこ)
★春風に触る懐かしき潮の香よ/志賀たいじ
ご退院、心からおめでとうございます。北海道はここの所、本州と変わらぬ暖かさだったそうですが、退院して春風に触れ、潮の香を聞けば「ああ生きている・・」との心からの実感であったと思います。ご無理にならないよう充分ご静養下さいませ。(かつらたろう)
★デザートの皿は白磁や春いちご/小河原 宏子
ご馳走の後のデザートでしょうか。そっと出されたお皿は、雲のように優しい白磁、そこへ、夏はもうすぐと声を掛けるような、瑞々しい苺が載っています。幸せな瞬間です。(かわな ますみ )
★月おぼろ遠き記憶に立ち止る/藤田裕子
詩の情緒に魅せられます。(おくだみのる)
★春の雨繰り返し読む絵本かな/上島笑子
暖かいのに外で遊べない、春の雨の日、子ども達の愉しみは、やはり絵本なのでしょう。お母さまに読んで貰い、時には、自分でめくってみたり。幾度も繰られ、くたくたになってゆく絵本が、微笑ましく浮かびます。(かわな ますみ)
★ハリハリの音に甘みの木の芽和え/吉田 晃
耳と舌の感覚を上手く調和させた心地よい調子の句。好きな句。(まえかわをとじ)
★やわらかき豌豆の花莢成して/小川美和
近所でも豆の花が盛りです。句全体に豆の花をいとうしむのが出ていて好きな句です。(上島笑子)
★窓越しに歌聞こえ来る鯉幟/河野啓一
鯉幟が目を引く今日この頃です。窓越しに歌声を聞いている鯉幟も人も幸せですね。(竹内よよぎ)
★長堤を越し行く蝶の九十九折/飯島治蝶
風に流されるように蝶が堤を越えていこうとしています。ひらひらと行きかけてはまた戻り、その姿をまるで空間に曲がりくねった道があるように九十九折と表現されました。(多田有花)
★出揃いし麦の穂穀雨に波立てり/おおにしひろし
穂をはらんですくすくと伸び揃う青麦が清々しいかぎりです。穀雨に潤された麦の穂波に、いっそうみずみずしい麦の生長を感じます。(藤田洋子)
★朝よりの雨はげしかりけり葱の花/堀佐夜子
朝から降り続く雨の激しさの中、真っ直ぐに立つ葱の花茎。生長した葱の逞しさと細かく白い葱の花に向けられた優しさも感じます。(藤田洋子)
★菜の花や水面ゆつたり信濃川/小口泰與
川の近くに咲き続く菜の花の黄色がやさしく揺れます。信濃川の大きな流れにも映っているのかもしれません。 暖かい日差しも感じ、気持ちのいい春の一日です。(池田多津子)
★海の色明け暮れ変えて夏近し/篠木 睦
海の色は本当に不思議です。四季を通じて周りの変化とともにさまざまな表情を見せます。海とともに暮らしている作者ゆえ、そのわずかな変化を感じることができるのだと思います。 (池田多津子)
★囀りと坂を登れば海開け/竹内よよぎ
囀りを聞きながら坂を登ると眼下には真っ青な海が広がります。囀りがあれば坂道も軽やかに登れそうです。海を見下ろす爽快感もあり、心が広がります。(池田多津子)
★落日へメタセコイアの芽吹く色/古田けいじ
高々とそびえるメタセコイアの芽吹きの緑が、落日の輝きに、いっそう鮮やかに映えています。(臼井愛代)
★ふくらめる紫雲英田までの一本道/池田多津子
「ふくらめる」から、たくさんの紫雲英の花がのびのびと咲いている田んぼであることがわかります。その田んぼまで続く一本道を置いた田園風景が、春らしく、のどかです。(臼井愛代)
★図書館の窓にけやきの若葉映え/吉川豊子
図書館の窓には、木々の緑がよく似合いますね。枝を広げる欅の若葉が、読書の目を生き返られてくれるようです。(池田加代子)
★対岸の山頂上の躑躅かな/井上治代
対岸、山、頂上のツツジへと、しぼられていく視点のリズムが楽しいですね。赤いツツジにアクセントがあって、水の向こうの緑の遠景が引き締まります。(池田加代子)
★楓の芽ほどけて赤味増し揺れる/丸山草子
楓の芽はまさにほどけるように開きますね。赤い芽がほどけて楓の葉形になり、はじめて風に触れて揺れる様子に、繊細な魅力があります。(池田加代子)
■互選高点句
□集計/臼井愛代
【最高点/5点/3句】 (作者名五十音順)
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
(宏子・恵子・凉・有花・豊子選)
旅の途中にあって電車を待つ間に鞄を横に置き、ふと見ると峡谷には美しい桜が咲いていて感激している作者、また早く皆に会いたい気持ちをも伝わってくる句と思いました。(小河原宏子)
この駅は無人なのかなと思ったりしています。静かで旅人を見守っている桜なのでしょうね。いい旅をなさったことでしょう。(祝 恵子)
長旅を終えて降り立った駅、重い鞄を置いてふと辺りを見回すと、渓谷には桜が満開の春爛漫の景色にほっと安らぎを感じられた気持ちが伝わってきます。(大山 凉)
小さな単線の駅という印象を受けます。満開の桜か、花吹雪か、いずれにせよこの時期の旅の楽しさがあふれています。(多田有花)
渓谷に桜が満開、駅はその美しい風景の中にある。{桜の駅に置く}列車を待つひととき、旅鞄を置いて桜に見入っている、作者も又、その美しい風景に溶け込んでいる。この上ない旅をなさいました。(吉川豊子)
★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
(ひろこ・光子・泰與・ひさこ・裕子選)
それぞれの穂先をしっかり空にむけて、麦畑の青一色が、美しく捉えられていると思います。(あみもとひろこ)
穂先をまっすぐ空に向け、青々とした麦畑の情景が素敵に詠まれています。(黒谷光子)
春暖と共に大きく伸びた麦の若葉が、青々と畑を覆っている様子が、リズムよく詠われています。特に畑一枚が良いですね。(小口泰與)
青々と育った麦に一斉に穂が出て触れればちくちくと鋭い穂先ですね。麦の生き生きとした景がよく伝わる好きな句です。(甲斐ひさこ)
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)
★風吹けば風に色あり若楓/宮本和美
(光子・光雄・啓一・よよぎ・治蝶選)
お天気のよい日の若楓の美しさ、風が吹けば風も若楓の色に染まって空を覆うようです。(黒谷光子)
緑と赤の若々しい楓を見かける季節となりました。若楓には生命の息吹を感じます。「風に色あり」が素敵です。(國武光雄)
風にその色がうつるかと思わせるような、若楓の透き通った色。格調の高い大好きな句です。(河野啓一)
若楓が日を透かし透き通った緑の風になった光景が目に浮かびます。きれいな句ですね。(竹内よよぎ)
吹く風が変わり行く季節をやさしく教えてくれます。透明感のあるさわやかな句です。(飯島治蝶)