デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/4月20日(日)~4月26日(土)

2008-04-27 18:53:09 | Weblog
■4月20日(日)~4月26日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
桜の咲く峡の旅。風景に詩があって、それだけでよい句となる。旅鞄に作者の思いが詰められて、ふっくらと抒情のある句になった。(高橋正子)

【特選5句】
★遠足の列伸びきつて帰校せり/宮本和美
 行くときは意気揚々とまっすぐに並んでいる子どもたちですが、帰り道は途中で花を摘んだり、疲れて歩く速さが遅れたりと、まさに「列伸びきって」です。春の遠足はいいものです。(池田多津子)

★病みし身の路地に七色シャボン玉/大給圭泉
病の身に、夢に満ちた七色に輝くシャボン玉は明日へ生きる希望を与えてくれます。作者の思いと七色シャボン玉とが重なって、伝わってきます。(飯島治蝶)

★青麦の丈不揃いに風起こす/柳原美知子
青麦は本当に不揃いに伸びて、不揃いの風を起こしますね。緑のそよそよとした風がうまく表現されて好きです。(竹内よよぎ)

★春筍掘られて遺す穴ひとつ/多田有花
筍が掘られた場所に遺された穴は、その筍が、春の大地からのうれしい恵みであることを物語っています。(臼井愛代)

★なだらかに水の辺までを草若葉/臼井愛代
川の岸辺か池の辺か、春の水際ぎりぎりまでを被う若草の緑が、斜面のなだらかさと相まって、なおさらやさしい景色を見せてくれます。(池田加代子)

【入選Ⅰ/10句】
★紋白蝶吹かれて高き棕櫚を越ゆ/甲斐ひさこ
棕櫚の高ささえも越えるほどの勢いで空に舞い上がった紋白蝶の、いきいきとした姿に触れた作者の驚き、感動が伝わってきます。(臼井愛代)

★風が鳴るげんげ田に吾一人居る/祝恵子
なんと静かな田園風景でしょう。風の音が聞こえて来そうな心地がしています。(甲斐ひさこ)

★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)

★遅日かなかくれんぼうの声きけば/かつらたろう
日暮れがおそくなり、子ども達にはうれしい季節。かくれんぼうをする子らの声を聞きながら改めて遅日を実感されている作者です。(小川美和)

★大壺に山つつじ入れ陶器市/黒谷光子
この大壺も売り物なのでしょうか。青空の下での陶器市、つつじの花も鮮やかに楽しそうな活気に満ちた陶器市の様子が浮かんできます。(多田有花)

★日が差して柿の若葉の玻璃に透く/藤田洋子
外光が眩しく、若葉の照り返しが室内にも明るさをもたらす季節です。そんな季節の様子を的確にとらえられた句です。(多田有花)

★境内に三角ベース柿若葉/國武光雄
子どもの野球でも近頃は立派な用具とユニフォームをそろえるのが当たり前になっています。しかし、これは近所の社寺の境内に作られた三角ベース、その素朴さが柿若葉のみずみずしさとマッチして印象に残ります。(多田有花)

★朝風と共に香れるフリージア/迫田和代
朝風にフリージアの香る 、爽やかな明るい春の朝です。一日の始まりに、フリージアの嬉しい芳しさです。(藤田洋子)

★花水木まぶしき街に苗木売/かわなますみ
街を華やかに彩り、目を楽しませてくれる花水木。見かける苗木売も心楽しく、明るさとみずみずしい季節感が溢れます。(藤田洋子)

★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之
青空にも大きく開くチューリップにも、明るさと開放感があり、読者が元気をいただくような御句と思います。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/20句】
★ルオ-展外は明るき春の空/おくだみのる
ルオ-の絵画を楽しまれて美術館の外にでれば、そこには春の空がまぶしいほど。照明をおとしている館内で絵画を鑑賞されたあとの満足感が明るく伝わってきます。(小川美和)

★善峰に茜の雲や茄子の苗/まえかわをとじ
善峰山あたりはまだ畑が見られる静かな所でしょう。ずい分前にてくてくと歩いたことがあります。道沿いの畑に茄子苗の植えられている景が思い浮かびます。(甲斐ひさこ)

★春風に触る懐かしき潮の香よ/志賀たいじ
ご退院、心からおめでとうございます。北海道はここの所、本州と変わらぬ暖かさだったそうですが、退院して春風に触れ、潮の香を聞けば「ああ生きている・・」との心からの実感であったと思います。ご無理にならないよう充分ご静養下さいませ。(かつらたろう)

★デザートの皿は白磁や春いちご/小河原 宏子
ご馳走の後のデザートでしょうか。そっと出されたお皿は、雲のように優しい白磁、そこへ、夏はもうすぐと声を掛けるような、瑞々しい苺が載っています。幸せな瞬間です。(かわな ますみ )

★月おぼろ遠き記憶に立ち止る/藤田裕子
詩の情緒に魅せられます。(おくだみのる)

★春の雨繰り返し読む絵本かな/上島笑子
暖かいのに外で遊べない、春の雨の日、子ども達の愉しみは、やはり絵本なのでしょう。お母さまに読んで貰い、時には、自分でめくってみたり。幾度も繰られ、くたくたになってゆく絵本が、微笑ましく浮かびます。(かわな ますみ)

★ハリハリの音に甘みの木の芽和え/吉田 晃
耳と舌の感覚を上手く調和させた心地よい調子の句。好きな句。(まえかわをとじ)

★やわらかき豌豆の花莢成して/小川美和
近所でも豆の花が盛りです。句全体に豆の花をいとうしむのが出ていて好きな句です。(上島笑子)

★窓越しに歌聞こえ来る鯉幟/河野啓一
鯉幟が目を引く今日この頃です。窓越しに歌声を聞いている鯉幟も人も幸せですね。(竹内よよぎ)

★長堤を越し行く蝶の九十九折/飯島治蝶
風に流されるように蝶が堤を越えていこうとしています。ひらひらと行きかけてはまた戻り、その姿をまるで空間に曲がりくねった道があるように九十九折と表現されました。(多田有花)

★出揃いし麦の穂穀雨に波立てり/おおにしひろし
穂をはらんですくすくと伸び揃う青麦が清々しいかぎりです。穀雨に潤された麦の穂波に、いっそうみずみずしい麦の生長を感じます。(藤田洋子)

★朝よりの雨はげしかりけり葱の花/堀佐夜子
朝から降り続く雨の激しさの中、真っ直ぐに立つ葱の花茎。生長した葱の逞しさと細かく白い葱の花に向けられた優しさも感じます。(藤田洋子)

★菜の花や水面ゆつたり信濃川/小口泰與
川の近くに咲き続く菜の花の黄色がやさしく揺れます。信濃川の大きな流れにも映っているのかもしれません。 暖かい日差しも感じ、気持ちのいい春の一日です。(池田多津子)

★海の色明け暮れ変えて夏近し/篠木 睦
海の色は本当に不思議です。四季を通じて周りの変化とともにさまざまな表情を見せます。海とともに暮らしている作者ゆえ、そのわずかな変化を感じることができるのだと思います。 (池田多津子)

★囀りと坂を登れば海開け/竹内よよぎ
囀りを聞きながら坂を登ると眼下には真っ青な海が広がります。囀りがあれば坂道も軽やかに登れそうです。海を見下ろす爽快感もあり、心が広がります。(池田多津子)

★落日へメタセコイアの芽吹く色/古田けいじ
高々とそびえるメタセコイアの芽吹きの緑が、落日の輝きに、いっそう鮮やかに映えています。(臼井愛代)

★ふくらめる紫雲英田までの一本道/池田多津子
「ふくらめる」から、たくさんの紫雲英の花がのびのびと咲いている田んぼであることがわかります。その田んぼまで続く一本道を置いた田園風景が、春らしく、のどかです。(臼井愛代)

★図書館の窓にけやきの若葉映え/吉川豊子
図書館の窓には、木々の緑がよく似合いますね。枝を広げる欅の若葉が、読書の目を生き返られてくれるようです。(池田加代子)

★対岸の山頂上の躑躅かな/井上治代
対岸、山、頂上のツツジへと、しぼられていく視点のリズムが楽しいですね。赤いツツジにアクセントがあって、水の向こうの緑の遠景が引き締まります。(池田加代子)

★楓の芽ほどけて赤味増し揺れる/丸山草子
楓の芽はまさにほどけるように開きますね。赤い芽がほどけて楓の葉形になり、はじめて風に触れて揺れる様子に、繊細な魅力があります。(池田加代子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/5点/3句】 (作者名五十音順)
★旅鞄峡の桜の駅に置く/あみもとひろこ
(宏子・恵子・凉・有花・豊子選)

旅の途中にあって電車を待つ間に鞄を横に置き、ふと見ると峡谷には美しい桜が咲いていて感激している作者、また早く皆に会いたい気持ちをも伝わってくる句と思いました。(小河原宏子)
この駅は無人なのかなと思ったりしています。静かで旅人を見守っている桜なのでしょうね。いい旅をなさったことでしょう。(祝 恵子)
長旅を終えて降り立った駅、重い鞄を置いてふと辺りを見回すと、渓谷には桜が満開の春爛漫の景色にほっと安らぎを感じられた気持ちが伝わってきます。(大山 凉)
小さな単線の駅という印象を受けます。満開の桜か、花吹雪か、いずれにせよこの時期の旅の楽しさがあふれています。(多田有花)
渓谷に桜が満開、駅はその美しい風景の中にある。{桜の駅に置く}列車を待つひととき、旅鞄を置いて桜に見入っている、作者も又、その美しい風景に溶け込んでいる。この上ない旅をなさいました。(吉川豊子)

★畑一枚穂先鋭く麦青む/大山 凉
(ひろこ・光子・泰與・ひさこ・裕子選)

それぞれの穂先をしっかり空にむけて、麦畑の青一色が、美しく捉えられていると思います。(あみもとひろこ)
穂先をまっすぐ空に向け、青々とした麦畑の情景が素敵に詠まれています。(黒谷光子)
春暖と共に大きく伸びた麦の若葉が、青々と畑を覆っている様子が、リズムよく詠われています。特に畑一枚が良いですね。(小口泰與)
青々と育った麦に一斉に穂が出て触れればちくちくと鋭い穂先ですね。麦の生き生きとした景がよく伝わる好きな句です。(甲斐ひさこ)
畑一面麦が青々とし、麦の穂先が空へ向かって鋭く伸びています。生き生きとした青麦の光景が元気を与えてくれるようです。(藤田裕子)

★風吹けば風に色あり若楓/宮本和美
(光子・光雄・啓一・よよぎ・治蝶選)

お天気のよい日の若楓の美しさ、風が吹けば風も若楓の色に染まって空を覆うようです。(黒谷光子)
緑と赤の若々しい楓を見かける季節となりました。若楓には生命の息吹を感じます。「風に色あり」が素敵です。(國武光雄)
風にその色がうつるかと思わせるような、若楓の透き通った色。格調の高い大好きな句です。(河野啓一)
若楓が日を透かし透き通った緑の風になった光景が目に浮かびます。きれいな句ですね。(竹内よよぎ)
吹く風が変わり行く季節をやさしく教えてくれます。透明感のあるさわやかな句です。(飯島治蝶)

入賞発表/4月13日(日)~4月19日(土)

2008-04-20 18:40:11 | Weblog
■4月13日(日)~4月19日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★桜咲く島へと長き水脈を曳き/柳原美知子
島に桜が咲くこと自体に抒情がある。その島まで船が長い水脈を曳いて、穏やかなみどり深き海が想像できる。島へゆくのは生活の船であろう。一景の画だ。(高橋正子)

【特選5句】
★起こされし田に次々と水の音/池田多津子
素人目にはごつごつと掘り返された田んぼに水が通され、行きわたる。その背後には堰からの力強い水音が聞こえてくるのでしょう。晩春の広々とした田園の風景が目に浮かびます。(小西 宏)

★春愁や紅茶のレモン厚く切り/宮本和美
 春愁を感じる夜は、レモンを厚く切って少しすっぱい紅茶をいただきたくなる心境ですね。多くの人に身近な共感を呼びそうな句と思いました。(竹内よよぎ)

★花筏組み直しては橋くぐる/黒谷光子
「組み直しては」がいいですね。花びらが寄ったり離れたりししながら流れていくさまを見事に表現されています。(多田有花)

★野遊びをする子一日すぐ暮れる/高橋秀之
元気なこどもたちの遊ぶ時間は短く感じもっと遊びたいのにすぐ一日は暮れるのでしょうね。(大給圭泉)

★影もたず白蝶光のみを撒く/かわな ますみ
美しく可憐な白蝶でありながらも、自ら発する光のありように、力強い生命力を感じます。鮮やかで眩しいほどの存在感です。(藤田洋子)

【入選Ⅰ/10句】
★囀りの影行き交いて朝眩し/丸山草子
すばやく往き来する鳥の影と、その高らかな囀り、眼に耳にまばゆい朝ですね。明るい春の一日が始まりそうです。(かわな ますみ)

★土筆ん坊ヨーヨーつく子ら草原に/飯島治蝶
 土筆が出てきて、蒲公英も,ヨーヨーも等々春の野原で楽しく遊ぶ子供達の姿が目に見えるようです。絵本の一ぺージのようにも思えます。「つくしん坊」とするところ素晴らしいです。(小河原 宏子)

★園児らの青いベレーに花の舞う/小河原宏子
桜の花も終わりかけ、いよいよ入園式が始まり新しい生活が始まりますね、男の子も女の子も青いベレー帽の制服に、桜の花びらが舞い散り祝っているようです。(かつらたろう)

★蓬摘み話のとどくほどにいて/大給圭泉
うららかな野の光と風の中で、蓬の香をまといながらの楽しいひと時。話相手との良き関係もしのばれて、心温まる句です。(柳原美知子)

★蓮華咲く一行詩書く明け暮れに/おおにしひろし
蓮華畑を見かけることも少なくなりました。しかし、一面の蓮華畑は詩情を誘うものです。野にある花の代表である蓮華草だからでしょうか。「一行詩」との呼応が見事です。(多田有花)

★抜きん出て茎立揺れを大きくす/臼井愛代
何の菜でしょうか。家の近所では葉牡丹が立ち上がっています。野菜では味が落ちてしまうため食べられなくなりますが、菜自身としては強い生命力の現れです。抜きん出るその力強さを愛でられているさまが浮かびます。(多田有花)

★校庭に太き影ある八重桜/小西 宏
八重桜は桜と名がついても、ソメイヨシノや山桜とは全く異なる印象の花です。「太き影」はまさにその印象を伝えられる言葉で、少し暑ささえ感じるようになったころにぼってりと重そうな花をつける八重桜の雰囲気を的確にとらえられています。(多田有花)

★永き日をお疲れさまと声交わす/藤田裕子
お互いに掛け合う一日のねぎらいの言葉。あたたかな心の交流に、永き日のほのぼのとした情感が漂っているようです。 (藤田洋子)

★山吹の黄金色まで坂登る/多田有花
坂登るほどに、山吹の華やかな色彩が目に入ってくるようです。鮮やかな黄金色が春まっ盛りの明るさです。(藤田洋子)

★馬酔木咲き日本庭園日のひかり/堀佐夜子
ひっそりとしていた日本庭園にも馬酔木が咲き、光を集めている様子に春らしいおだやかさがあります。(池田加代子)

【入選Ⅱ/17句】
★ふうわりと暮らし和ませ花みずき/大山涼
やさしいいろの花みずきと日々の暮らしを大切に楽しまれておられる作者の気持ちが伝わって優しい気持ちになりました。(丸山草子)

★たんぽぽや牧を揺るがす牛の声/小口泰與
たんぽぽの咲く草原に、放牧された牛。静かな牧場に、牛の声が牧場を揺るがすかのような大きな鳴き声。昼前の静かな春の牧場の様子を想像します。(飯島治蝶)

★お絵かきはチューリップから始まるよ/竹内よよぎ
「始まるよ」と、誰かに話しかけたいような嬉しさ・・・子供の国にいるような無邪気さが、楽しく感じられます。 (おおにしひろし)

★花の風来ているホーム深呼吸/吉田晃
のどかな駅のホームに立ち、自然の空気で胸いっぱいにしたくなる。そんな雰囲気がよく伝わってきます。(高橋秀之)

★棘かくしカラタチの花咲き誇る/古田けいじ
刺を隠して可憐な花を見せているからたちの花の姿を、うまく表現してると思います。(小河原宏子)

★げんげ田の一枚なれど天を突く/あみもとひろこ
周りに広がる田畑のなかに、げんげ(蓮華草)田はたった一枚だけ。たが、紅紫色の蝶の形の花をつけたげんげ(蓮華草)が咲いている田は、ひと際目立って存在する。下五の強調が、作者の感動の様を伝えています。(飯島治蝶)

★ひこばえや身に余りたるランドセル/かつらたろう
ランドセルが歩いているような一年生の颯爽とした、少しユーモアのある姿を見かけると声をかけたくなります。季語がとても似合います。(大山 凉)

★春の海揺れ桟橋に船を待つ/岩本康子
船が着く先に何か楽しいことが待っている予感をさせる句。 (古田けいじ)

★ランドセル背中隠れる一年生/國武光雄
我が家にも1年生がいますが、ランドセルを背中に余らせています。かわわいい盛りをうまく映し出しています。(高橋秀之)

★久しぶりミットを手にし花菜晴れ/祝恵子
お孫さんとキャッチボールをされたのでしょうか。すてきですね。 気持ちのいい春の日のひととき、楽しそうな様子が目に浮かび、読み手まで心うきうきしてきます。(池田多津子)

★こいのぼり自由に泳ぐ風となり/篠木 睦
桜の花から葉桜となり、早いもので山々にも新緑が見え始めるころとなりました。風の変化を「こいのぼりが自由に泳ぐ風」ととらえられたことに心惹かれます。 (池田多津子)

★花冷の筑波の旅籠(やど)に泊まりけり/おくだみのる
「旅籠」から風情のある建物と部屋を想像し、きっとゆったりとすてきな時間を過ごされたのだろうと思いました。筑波でのしっとりとした夜を思わせる「花冷」の季語が生きていると感じました。 (池田多津子)

★真っ直ぐに伸び筍の若さかな/河野啓一
すくすくと真直ぐに伸び続ける筍に、若さのもつ力、清々しさを実感された作者の感動が伝わってきます。(臼井愛代)

★この町を忘れず戻り燕鳴く/甲斐ひさこ
今年も姿を見かけるようになった燕の声を、この町を忘れずに戻って来てくれたのかと、親しい思いで聞いておられる作者のうれしさ、燕への温かい眼差しがあります。(臼井愛代)

★奥揖斐や桜吹雪の中に立つ/吉川豊子
うつくしい桜吹雪の中に立つという感動に、奥揖斐という土地への感慨も重ねられて、思い出深い春の一日を得られた作者の印象が強く伝わってきます。(臼井愛代)

★どっと揺れ菜の花一面黄の世界/小川美和
風が吹いて、群れ咲く菜の花がどっと揺れたとき、個々の花が渾然となってみせてくれる一面の黄の世界。花の香と相まって圧倒されるようです。(池田加代子)

★ひらひらと都の真中蚊喰鳥/まえかわをとじ
コウモリは一日に何百匹も蚊を食べてくれるそうですね。ひらひらと都の真中にあらわれた蚊喰鳥に物語性があって、興味がそそられます。(池田加代子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★蓬摘み話のとどくほどにいて/大給圭泉
(をとじ・ひろこ・光子・たろう・美知子・和美選)

お天気の良い日中の楽しい蓬を摘む情景がよく伝わってきます。「話のとどくほど」の表現が面白く楽しい句。(まえかわをとじ)
おしゃべりも楽しい、野に出ての蓬摘みに、春のあたたかい日ざしを感じました。(あみもとひろこ)
二三人での蓬摘みでしょうか、つかず離れずに話しながらの蓬摘み、春の野の長閑な懐かしい情景です。(黒谷光子)
小さい頃春休みに田の畦に、蓬摘みやせり摘みに行った懐かしい想い出があります。大人になってからでもやはり話相手がいて、世間話をしながらなのでしょうね。「話のとどくほど」との距離感に長閑さを感じて素敵です。(かつらたろう)
うららかな野の光と風の中で、蓬の香をまといながらの楽しいひと時。話相手との良き関係もしのばれて、心温まる句です。(柳原美知子)
余り距離が離れるとお喋りが出来ず、又、近いと窮屈、いずれにしても、ほどほどがよい。春の野の長閑な情景です。「ほどにいて」が抜群。(宮本和美)

【次点/4点2句】 (作者名五十音順)
★花筏組み直しては橋くぐる/黒谷光子
(康子・宏子・有花・草子選)

★球体の海ある空に春の虹/篠木 睦
(有花・宏・治蝶・凉選)

※「好きな句のコメントは1日1句」」という、デイリー句会のルールに則っていない選は割愛しました。

入賞発表/4月6日(日)~4月12日(土)

2008-04-13 11:23:29 | Weblog
■4月6日(日)~4月12日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★穏やかに潮の満ちきて入学式/池田多津子
入学式の句としては、めずらしい。海辺の学校の入学式。穏やかに潮が満ちてきて、いよいよに入学式が始まる。入学をする子らを迎えるゆたかな高揚感と緊張が伝わる。多津子さんは、今年度より校長となられた。(高橋正子)

【特選5句】
★花冷えの青梅ここより単線に/大給圭泉
複線から単線に変わりますと、景色も鄙びて、豊かな自然の景色が楽しめます、{ここより単線に}花冷えのひの旅の楽しさがよく伝わってきて好きな句です。(吉川豊子)

★茣蓙の上いろんな摘み草並べられ/祝恵子
子供達が積み草をして遊んでいるのでしょうか。小さな花を付けた草を摘んでは茣蓙の上に並べている可愛らしい様子、その子供達を見ている優しい眼差しの作者をも思います。(小河原 宏子)

★春の田の傍に積まれしもの多し/かわな ますみ
私の最近見た田んぼは、まだ何も植えられず、荒れた風情でした。しかし、所によっては、もう、少しずつ田植えの準備にかかっているところもあるのかもしれませんね。 そんなところでは田を整え、水を張り、あるいは田植えのために必要な機材や道具が傍に積まれているのかもしれません。(小西 宏)

★チューリップひとつ開いて今朝の色/臼井愛代
ひとつ・今朝・色と焦点化、限定化することで季語が、十分に効いています。春らしい夢のある句です。(飯島治蝶)

★春泥のバケツを覗く子見知らぬ子/飯島治蝶
掬い上げた泥の中に何がいるのかな、と見知らぬ子どもたちが寄ってくる。自然と子どもとの触れ合いが感じられて好きな句です。小さいころはごく当たり前のようににあった光景ですが、最近の都会では見かけなくなりました。(高橋秀之)

【入選Ⅰ/10句】
★落ちてくる雲雀にひろき野のみどり/おおにしひろし
鳴くのを止め、雲雀が降りてくる。そこは緑溢れる広い野原。なんという春の自然でしようか。牧歌的雰囲気が好きです。(宮本和美)

★三日月は桜の中に沈みけり/多田有花
見上げた桜の花の中に見え隠れする三日月が花の中に沈んでいる様にみえてきます。夜桜の景が美しく思い浮かびます。(甲斐ひさこ)

★花吹雪両手でうける子らの声/おくだみのる
柔らかな風に誘われて飛び散る花びらに歓声を上げて両手で花びらを追いかける子等の姿を見事に捉えていると思います。(小口泰與)

★囀りの日ごと膨らむ大樹より/小西 宏
大樹なれば集まってくる鳥も多いことでしょう。日ごとに増える鳥の声がにぎやかに聞こえてくるようです。(池田多津子)

★花韮のうすむらさきや庭に立つ/河野啓一
庭の片隅に咲くひそやかな花でありがら、際立つ六枚の花弁に、はっとするような「うすむらさき」の色。さりげない描写に花韮の魅力を言い切った、すてきな御句と感じます。(かわなますみ)

★正直に咲いて明るきチューリップ/大山 凉
チューリップの、見る人の心を和ませる佇まい、雰囲気が、「正直に咲いて明るき」に的確に表現されていると感じました。かわいらしく、皆に愛される明るさをまとった花ですね。(臼井愛代)

★花冷えの朝のこーひー香り立つ/吉川豊子
花冷えの朝の凛とした空気が、コーヒーの香をよりいっそう豊かなものとして伝えているようです。(臼井愛代)

★榛名湖へ道真っ直ぐやつくつくし/小口泰與
風光明媚な榛名湖へと続く真っ直ぐな道が清々しい限りです。その道々に見つけたつくつくし、湖畔の春の到来を告げてくれる嬉しい明るさです。 (藤田洋子)

★青麦を添えて花束子に作る/柳原美知子
青麦の添えられた花束、豊かな春の色彩と明るい季節感が溢れています。素敵な花束を貰った子どもたちの明るい笑顔も目に浮かぶようです。 (藤田洋子)

★届かぬと知りつつ草矢を打ちにけり/宮本和美(信之添削)
「届かぬと知りつつ」も飛ばす草矢の軽さ。子どもの心を持ちつつも、大人の余裕のようなものを感じさせてくれます。(池田加代子)

【入選Ⅱ/14句】
★鈴鹿嶺の風切って来るつばくらめ/古田けいじ
鈴鹿嶺の風が、この句を大きく清々しい想いに、句のリズムが好きです。(篠木 睦)

★紙風船空へ撞く子の声弾む/藤田裕子
春の日の中で紙風船をポンポンと撞いて遊ぶ子ども達の景が、楽しそうに軽やかに伝わってくる好きな句です。(小川美和)

★一村はダム湖の底や山つつじ/まえかわをとじ
ダム建設により水没の憂き目にあつたのは何年前か。今年も山つつじが咲く季節になつた。詠者の思いがこもった佳き作品。(宮本和美)

★紅椿ときおり見ては玻璃を拭く/黒谷光子
毎年咲くお庭の椿を愛でながら玻璃を拭かれる作者の生活の中に季節を楽しまれる様子がみえ好きな句です。(丸山草子)

★花吹雪遊ぶ子供らは風になる/篠木 睦
子供たちの元気に走り回る様子と花吹雪が幸せな気持ちにしてくれます。(丸山草子)

★鋤洗う川にひとひら桜ゆく/竹内よよぎ
農作業の仕舞いに流れてゆく花びらが目にとまった。良い景であり、農作業の喜びの伝わる句。(まえかわをとじ)

★青空を舞い来て川瀬の花筏/甲斐ひさこ
青空を舞い降りてきて集まった花筏、川瀬の花々に触れそうな身近さにかんじます。(祝恵子)

★花の香を包みて風の走りゆく/小河原宏子
花の中を吹いて来る風も花の香を包んでいるようで、お花見の豊かな気持ちが伝わります。(黒谷光子)

★横切りし潮目の白き瀬戸の春/吉田 晃
季節の変わり目にはよく潮流が行き会うのでしょうか。内海を白く横切る広い潮目に、春のゆったりとした気分が伝わってきます。(小西 宏)

★花びらをつれて落ち行く春の雨/上島笑子
春の雨のなかを花びらが散る様子を、雨がつれて落ちて行くと詠まれたところに、作者の感動があります。(臼井愛代)

★街路樹の芽吹き確かに浅みどり/小川美和
目に映る街路樹の生命感溢れる芽吹きです。木の芽立ちの美しさ、確かな春の到来の喜びを「浅みどり」に込められているようです。(藤田洋子)

★一本の桜見上げる人多く/高橋秀之
一本の桜は、特に見事なのだろう。通る人はみな見上げ、感嘆して通る。花の時季の桜の堂々とした存在感とそれを楽しむ多くの人の心。(高橋正子)

★れんぎょうの眩しき朝の厨かな/丸山草子
厨に生けられているのか、窓の外に咲いているのか。連翹が眩しい厨には、朝の活力が生まれてくるようです。(池田加代子)

★雨ふりて車窓目で追う散る桜/堀佐夜子
車窓のガラスを斜めに流れる雨の水玉と、薄紅色に散る桜とが重なり合って、雨の日の美しい景を成しています。車内に深く座り、窓から目で追う作者の心の静かけさが感じられます。(池田加代子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点2句】 (作者名五十音順)
★穏やかに潮の満ちきて入学式/池田多津子
(けいじ・宏子・ますみ・有花・啓一・豊子選)

感情が満ちてきたのは、子供の心へ、それを見守る親の心へ、子供たちを迎える先生たちの心へであろう。この穏やかさがいつまでも続いて欲しいと思う。(古田けいじ)
穏やかに潮が満ちて来るとゆう自然現象を上手く句に取り入れ、素晴らしい式が行われた事が良く表現されている句と思い選びました。(小河原宏子)
海辺の大らかな学校が浮かびます。自然からも祝福され、希望に満ちた入学の日。これから海とともに学んでゆくのでしょう。心強いですね。(かわなますみ)
海のそばにある学校なのでしょうね。すぐそこに海が見え、潮騒の音も聞こえるのでしょう。満ちくる潮が新入生の明日を象徴しているようでもあり、気持ちのよいおおらかな句です。(多田有花)
上5中7が健やかに成長してきた子供たちを思わせ、入学式との取り合わせが素晴らしいと感じました。(河野啓一)
海が近い学校でしょうか、{穏やかに潮の満ちきて}素晴らしい入学式、おめでとうございます。健やかに成長されますように、明るい明日を連想しまして、好きな一句です。(吉川豊子)

★花冷えの青梅ここより単線に/大給圭泉
(秀之・宏・よよぎ・凉・裕子・豊子選)

複線から単線への明快な分岐点が花冷えと春の暖かさの境目と重なって、スッキリとした感じがしました。(高橋秀之)
青梅とは、古い宿場町が少しずつ山間へと移り変わっていく、といった響きを感じさせるところです。そんな響きに「花冷え」と「単線に」がゆったりとした取り合わせを与えています。(小西 宏)
複線から単線への風景と青梅という地名が一体になって、花冷えを特別な花冷えにして、多くの人が心惹かれる句となっていると思います。(竹内よよぎ)
複線から単線に変わると周りの景色の鄙びた、豊かな自然の景色はさわやかですね。花冷えの小さな旅の楽しさを思います。(大山 凉)
地名の青梅が、花冷えの頃によく合っています。そして「ここより単線に」で素朴な趣きが深まっていくように感じました。(藤田裕子)
複線から単線に変わりますと、景色も鄙びて、豊かな自然の景色が楽しめます、{ここより単線に}花冷えの日の旅の楽しさがよく伝わってきて好きな句です。(吉川豊子)

入賞発表/4月1日(火)~4月5日(土)

2008-04-06 03:13:01 | Weblog
■4月1日(火)~4月5日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★堰落ちるまで一枚の花筏/大給圭泉
堰を落ちるまで桜の花びらを浮かせた水は平らに流れる。花びらがつながり、組み合ったのを花筏というが、堰を落ちるとたん、崩れる。美しく、はなかく、かわいらしさがある日本の美のひとつ。(高橋正子)

【特選5句】
★菜種梅雨夜はどこかで水響き/おおにしひろし
菜の花が咲く頃には、しとしとと雨が降り続く。それを菜種梅雨というが、昼間は、物音に紛れる水音も、静かな夜になると、溝川や樋など、どこかに小さな水音が響いて聞こえる。菜種梅雨の雨の降りようと、それに心を向ける作者との一つのものがある。(高橋正子)

★はくれんの日を恐れざる白さかな/小口泰與
辛夷とはちがう、はくれんのはっきりと空へ向って咲く白さを「日を恐れざる白さ」と言った。はくれんから見ると、日をも恐れないのであるが、作者の目は、白さに眩まんばかりで、恐れないものへの恐れがある。(高橋正子)

★青き踏む昨日と同じ影連れて/宮本和美
影はいつもと変わらずにあるけれど、作者の気持ちには春の喜びが満ちていると感じます。(池田多津子)

★たんぽぽの前通るたび光りけり/小河原宏子
春の日ざしを受けて明るく咲くたんぽぽ、通るたびに目を楽しませてくれますね。好きな句です。(小川美和)

★山荘の玻璃戸全面藪椿/柳原美知子
山荘の中から外を見ると、玻璃戸の全面を埋めるような勢いで咲く数多の藪椿。そんなうつくしい情景に触れた作者の感動があります。(臼井愛代)

【入選Ⅰ/10句】
★万博の太陽の塔春空に/堀佐夜子
太陽の塔は、大阪万博のときに作られた。岡本太郎独特のスタイルの表情、形があって、今も万博当時を思い出す方も多いだろう。のどかな春の空と結びついて、そんな思い出と重なっているのかもしれない。(高橋正子)

★対岸もふくらむ花の列をなす/池田多津子
作者のいる岸も対岸も全開の桜並木という壮観が、挟まれる冷たい川水の流れを通して見えます。両岸の花と水の対比に惹かれました。(おおにしひろし)

★磨崖仏多数おわして花の雨/祝恵子
景がよく見えます。普段は殺風景で、そこから離れなれない磨崖仏にも春が来ました。季語が効いて、やさしい温かみのある句になりました。4月8日の灌仏会を連想しました。作者の心根が伝わる一句です。(飯島治蝶)

★枝揺らし吹くとき激し花吹雪/臼井愛代
満開の桜も美しいが、花の散る様に桜の本質を感じるこの頃です。中七の「吹く時激しい」が素晴らしいと存じます。共感を覚えます。私も桜といえば、散る桜ばかり読んで居ます。(宮本和美)

★幾万の楓の芽ぶき水音に/黒谷光子
「幾万」と形容された楓の芽ぶきに、あふれるような生命感があります。そこに水音も聞こえ、春らしい明るさがあります。(臼井愛代)

★道ひろく春山絶えず正面に/かわな ますみ
中七り「春山絶えず」がよく効いた佳き句と存じます。共感を覚えます。(宮本和美)

★散る花に各駅停車ゆるやかに/小西 宏
古き日本映画の一場面を見るようです。散る花には各駅停車が似合いますね。 (竹内よよぎ)

★囀りがいずこも先にいる山路/多田有花
いろいろな鳥の囀りを聞きながらの楽しい山歩きが想像できます。(黒谷光子)

★花の下砂山高くつくる子ら/飯島治蝶
「花の下」に優しさがあって、「子ら」を見守る視線がいい。「砂山高く」に作者の主情を読んだ。(高橋信之)

★前籠に菜の花ゆらし橋渡る/甲斐ひさこ
自転車の前籠に菜の花をいっぱい入れて、橋を渡るときのたのしさ。川風や春川の流れが作者をさらに喜ばせるだろう。明るく開放的な句。(高橋正子)

【入選Ⅱ/14句】
★花冷えの部屋に立ちたる置時計/吉田 晃
庭に面したしずやかな畳の部屋でしょう。花の色と外気が直接伝わってくる。そこに据えられた置時計は、古式を守りながらも季節のうつろいを見守る時の流れでしょうか。(小西 宏)

★髪に背に花に降られて山下りる/小川美和
桜の散るなか山を下りられた様子に、花を降らせるうつくしい春の日を思い描きました。散ってしまう桜の花を惜しむ気持ちも伝わってきます。(臼井愛代)

★鳥あまた容れし桜の巨木かな/おくだみのる
巨木という言葉に、その樹の樹齢の長さを思いました。長い年月をそこに立つ、まるで魂を持つかのような桜の樹が、見る人にも鳥たちにも与えている安らぎがあります。「鳥あまた容れし」が温かく、好きな句です。(臼井愛代)

★旅立ちの空は桜の色に染む/大山 凉
お子さんかお孫さんの旅立ちの景でしょうか。門出を祝うかのように、満開の桜が空一面を薄ピンクに染めている景が目に浮かびます。(國武光雄)

★善峰へ抜ける道なり竹の秋/まえかわをとじ
善峰寺の辺りは竹林の多いところ、少し黄ばみはじめた竹林のそよぎを思います。(黒谷光子)

★花曇くもりて満つる花のいろ/かつらたろう
青天の下で見る花はよく映えていますが、花曇りは、かすんで見えるのでしょう。今日も、花曇の中、花の下を車で通ってきました。「くもりて満つる花のいろ」は、よく表現がされていると思いました。好きな句です。(吉川豊子)

★チューリップ花の数だけ喜びを/竹内よよぎ
かわいいチューリップの花を見ておりますと、花の数ほどたくさん喜びをいただいたようにとても幸せな気持ちになります。(藤田裕子)

★風光る子羊生まる昼餉時/丸山草子
昼餉時という日常の生活リズムの中に、子羊が生まれる感動が織り込まれて、新鮮な驚きがあります。風光るの季語がよくあっていますね。(池田加代子)

★花見かな空より青き茣蓙を敷き/吉川豊子
満開の花の下に、空より青い敷物が色鮮やかで、楽しげな雰囲気ですね。お花見を満喫されたことでしょう。(池田加代子)

★さくら咲くその満開の花の下/河野啓一
ひとつひとつの桜の花が咲いて、満開の花となる感動。花の下から見上げる感動は、年を追うごとにしみじみと深まるように思います。(池田加代子)

★池の面影ふくらませ花静か/藤田裕子
水辺に爛漫と咲き盛った花の美しさ、池に映る花影も豊かに心落ち着く情景です。しばし佇んでいたいような花の静けさです。(藤田洋子)

★黄水仙陽の差す方へ同じ向き/古田けいじ
春の陽光降り注ぐ中、向きを同じに咲き揃う黄水仙が一際鮮やかです。おのずと心明るくなれる春らしさです。(藤田洋子)

★さくらももあんずの花咲く田舎道/岩本康子
さくらにももにあんず、心に喜色をもたらすような花々の華やかな色彩です。田舎道なれば、より嬉しい春爛漫の明るさです。(藤田洋子)

★爛漫の桜並木を初登庁/國武光雄
4月は、入社、転勤、転任などによって、気持も新たに出発という方も多い。爛漫の桜並木に祝福されて、さっそうと登庁されたに違いない。初登庁に気持が籠められている。(高橋正子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/4点】
★降るよ降る飛鳥の山は花吹雪/小川美和
(宏子・光子・恵子・治蝶選)

飛鳥の山々が桜の吹雪に包まれてその中にいるのか、又は眺めているのか・とにかく幸せいっぱいの作者が思われます。(小河原宏子)
飛鳥の山は花吹雪のまっさかり、風に舞う桜の情景が見事に詠まれています。(黒谷光子)
飛鳥山での花吹雪の体験、至福のときでしょう。(祝 恵子)
古くからの歴史を持つ飛鳥の山の花吹雪。歴史ロマンを感じさせてくるような一句です。 (飯島治蝶)

【次点/3点5句】 (作者名五十音順)
★磨崖仏多数おわして花の雨/祝 恵子
(治蝶・凉・ひさこ選)
★枝揺らし吹くとき激し花吹雪/臼井愛代
(をとじ・治蝶・和美選)
★大根の花の冷たさ手折りけり/おおにしひろし
(ひさこ・よよぎ・泰與選)
★鳥あまた容れし桜の巨木かな/おくだみのる
(愛代・ますみ・凉選)
★堰落ちるまで一枚の花筏/大給圭泉
(宏子・宏・恵子選)

※「好きな句のコメントは1日1句」」という、この句会のルールに則っていない選は割愛しました。

■2008年4月伝言板/毎日更新■

2008-04-01 18:53:31 | 伝言板
■デイリー句会 <4月20日(日)~4月26日(土)> の入賞発表と互選結果は下方をご覧ください。

水煙6月号/校正中!
小石川植物園吟行記/池田加代子

デイリー句会投句箱
インターネット俳句センター/毎日更新!

■今日の俳句/5/1(木)
チューリップひとつ開いて今朝の色/臼井愛代
かわいいチューリップが明るい朝を象徴するかのようにひとつ開いて、いい一日が始まりそうです。(井上治代)

■<今日の俳句>の過去一覧は、下記アドレスをクリックし、ご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/npo_suien03/

■4月の花/尾崎弦撮影

※左より桜・桜・蒲公英・菜の花。画像をクリックしますと拡大します。

■伝言は、下記の<コメント>にお書きください。

入賞発表/3月23日(日)~3月31日(月)

2008-04-01 00:11:25 | Weblog
■3月23日(日)~3月31日(月)
□高橋正子選

【最優秀】
★山水に浮かせて洗う蕗の薹/松本和代
作為ない句。山水と蕗の薹の早春の出会いそのままが、そっくり作者の気持となっている。濁りない、すずやかな気持。(高橋正子)

【特選5句】
★咲きみちて花は電車を弾ませり/大給圭泉
「電車を弾ませり」は、作者の心の弾みでもあって、妙。咲き満ちた桜を見ながら電車で行過ぎる。その美しさに電車も作者の心も弾むのである。(高橋正子)

★さえずりや和紙に包まる五色豆/小口泰與
「さえずり」「和紙」「五色豆」と重なると、春のうららかさに、「みやび」な雰囲気が重なって、気持が優しくなる句。(高橋正子)

★草萌えを白き靴履き軽々と/竹内よよぎ
萌える草と、白い靴の取り合わせがさわやかで、「軽々と」の気持がすっと読み手に伝わる。(高橋正子)

★放たれし水に蕨の青深き/池田多津子
蕨は、芽生えでありながらも深い緑。水に放つとそれが「青深く」と静謐な色となる。(高橋正子)

★横浜に汽笛の曳ける花の昼/臼井愛代
横浜の港には、時折汽笛が響く。桜が咲く昼に、「ぼおー」っと曳き鳴る汽笛に、長閑な、横浜らしい花の昼がある。「曳ける」が的確で、この句を生かしている。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★白木蓮大き青空受け止めて/黒谷光子
大きい木蓮の木を見上げると青空に張り付いているような錯覚をすることがあります。澄んだ空と白い木蓮の美しい色取りが上手く表現されていて、好きな句です。(甲斐ひさこ)

★初音聞くひょうたん池の森の方/祝恵子
ひょうたん池の向こうの森から聞こえてくる鶯の声。初めて聴くのどかな声に春を実感しておられる喜びが伝わってきます。(大山 凉)

★活けてより少女の笑みを桃の花/藤田裕子
素直な句で共感を感じます。梅の花を上手に活けることが出来たと、にんまり微笑む少女の姿が見えるようです。(宮本和美)

★便りには雲の白さと初桜/かわな ますみ
お便りに記された春の喜びと明るさが伝わってきます。好きな句。(まえかわをとじ)

★たんぽぽの花の内より満ちて咲く/安藤かじか
たくさんの花びらが重なり合っているたんぽぽの花。よく見ていると、花の中心よりゆっくり開いて咲いていくことに気づき、その感動を一句にされたのだと思いました。「満ちて咲く」という表現により、命の豊かさを賞賛している作者の心情が伝わってきました。(井上治代)

★初音聞く朝の冷気のその中に/河野啓一
浅春の頃は、朝はまだ冷たく、空気も澄み切っています。そのような空気の中の初音は、作者の心の奥底まで清々しく沁みていったことと思います。(井上治代)

★紫の花ほつほつと山つつじ/小河原宏子
山つつじの素朴な美しさ。その花の咲いている様子を「ほつほつと」と表現されたことが、山つつじの花の姿によく合っていると思いました。また、のどかな春の山の風景が印象的に詠まれた句だと思いました。(井上治代)

★茎立てるもの共々に鋤きにけり/まえかわをとじ
思い思いに伸びていた茎立ちも、土といっしょに鋤きこんで、いよいよ畑仕事も本始動の勢いにあります。(池田加代子)

★わつと来てわつと散り去るげんげ摘み/宮本和美
レンゲ畑を見つけた子ども達でしょうか。わっと輝く笑顔で来て、手に手にレンゲの束を握りしめて畑から引き揚げてゆく、にぎやかで楽しい経過が見て取れるようです。(池田加代子)

★日を浴びて湖畔に若木の桜咲く/飯島治蝶
若木の桜が、湖畔の澄んだ光の中に、みずみずしく花をつけました。日を浴びた桜の若さが凛々しく感じられます。(池田加代子)

【入選Ⅱ/13句】
★花辛夷少年どつと駆けてくる/あみもとひろこ
ある日を境に一気に花開く辛夷の花の勢いと純白の花の清清しさが、どっと駆けてくる少年の勢いや元気な様子と重なり、読者を何か明るい気持ちにさせる御句と存じます。(臼井愛代)

★降り立てば春満月の終着駅/尾崎 弦
終着駅を照らす春満月が、駅に降り立った人々をあたたかく迎えているようです。疲れた人をもほっとさせるような優しさがあります。(臼井愛代)

★祖母植えし椿の赤の満開に/丸山草子
お祖母様が植えられた椿の満開を眼にされ、植えた方を想う作者の心に宿った、しみじみとした温かさを思います。(臼井愛代)

★春蘭は撮る時昼の陽を抱けり/古田けいじ
カメラのファインダーを覗き、春蘭に焦点を絞り込んだとき、春のやさしい陽光に包まれた命ある春蘭を作者が発見した。蘭にある上品な品格が浮き彫りにされた一句です。季語が効いた春らしい句です。(飯島治蝶)

★富士山に一本桜毅然たり/おくだみのる
大きく美しい富士山に、一本桜が強く美しく咲く姿を見つめられました。命あふれる一本桜への温かさを感じます。(藤田裕子)

★初桜最後の式辞開きけり/吉田 晃
初桜が咲いた喜びと共に、退職される日に開かれた式辞、たくさんの思い出が過ぎり淋しさがこみ上げてきて万感の思いだったことと存じます。(藤田裕子)

★爛漫と桃の咲きいる鉄工所/おおにし ひろし
眩いばかりに咲き満ちた桃の花、索漠とした鉄工所と対照的な花の明るさがいっそう鮮やかで、心和む愛らしさと優しさです。(藤田洋子)

★澄み渡る田舎の空よ連翹忌/井上治代
光太郎の忌日、仰ぐ空の美しさにおのずと心も澄んでくるようです。「田舎の空よ」の詠嘆に、自然に向き合う作者の真っ直ぐな心も感じます。(藤田洋子)

★晴れ渡る陽射しを浴びて卒園式/高橋秀之
降り注ぐ明るい春日が、慶事に相応しい晴れやかさを感じさせてくれます。健やかなお子さまの成長を見る喜びがあふれているようです。(藤田洋子)

★花豌豆莢膨らませ空に伸び/大山 凉
 野山も里も花盛りです。畑では豌豆の紫色の花が目だちます。蝶も飛び交い、明るい空へ豌豆が伸びていきます。(多田有花)

★舞う花の全きままに地に届く/小川美和
 美しいまま花びらとなって散っていくのが桜の魅力のひとつです。「散ればこそいとど桜はめでたけれ」、桜を見ていると本当にそう思います。(多田有花)

★連翹の枝垂る明かりや白き塀/かつらたろう
 連翹の黄色が白い塀に映え、春らしい色彩です。柔らかな風が連翹を揺らせば、その影もまた揺れるのでしょう。(多田有花)

★花の昼はないちもんめ子らが遊ぶ/堀佐夜子
桜の花が咲き、辺りは明るく華やいでいます。子どもたちがはないちもんめをして遊んでいる姿が楽しそうで、桜の開花を心から喜んでいるようです。読み手の心もうきうきしてきます。(池田多津子)

★蒼天の青竹匂う春日傘/篠木 睦
暖かい日が続くようになり、日差しも少しずつ強くなってきました。日傘の人が竹林を歩いているのでしょう。真っ青な空に真っ青な竹がすがすがしく、日傘をさして歩くのもうれしくなります。(池田多津子)

★一斉に桜満開にしひがし/岩本康子
ちょっと遠くから幾本もの桜を遠望しているのでしょう。多くの桜が同時に咲き誇ることへの感動を感じました。「にしひがし」で景色の広がりを感じることができます。(藤田荘二)

★遊歩道タンポポ路肩に日の溢れ/吉川豊子
タンポポの花は、太陽のようでもあり、太陽の光をタンポポの色に変えて反射します。「路肩に日の溢れ」が素敵な表現ですね。春のあたたかみを感じました。(藤田荘二)

★行く雲も大空の中桜咲く/甲斐ひさこ
桜が見ごろの時期、大きくて明るい景色の中を、春の風にのって白く雄大に流れる雲が目に浮かびます。同時にそんな大空へ、桜がのびのびと大きく咲いている景色でしょう。雲と桜の対比が大空を背景に生きていると思いました。(藤田荘二)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/5点】
★咲きみちて花は電車を弾ませり/大給圭泉
(秀之・和美・凉・ひろし・よよぎ選)

電車の行く野原が花に満ちている様子に春の明るい雰囲気が感じられます。(高橋秀之)
下五の「弾ませり」に詠者の心情の表現された佳き作品と存じます。夢を感じさせる好きな句です。(宮本和美)
桜が咲き満ちる中を走る電車の弾みは、圭泉様の嬉しい弾む心そのままですね。(大山 凉)
作者自身の気持ちが大胆に表現され素晴らしい色彩感と動感のある句になりました。(おおにしひろし)
満開の桜の下を電車が通り過ぎてゆく。作者の心の弾みそのままの電車ですね。咲き満ちた桜の喜びが動く電車でいっそうふさわしく詠まれていると思いました。(竹内よよぎ)

【次点/4点2句】
★光曳き翔びたつ鳥や初桜/大山 凉
(ひろこ・光子・よよぎ・睦選)

★ぶらんこを鳴らし続ける六年生/池田多津子
(泰與・睦・光子・ますみ選)