デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/4月1日(火)~4月5日(土)

2008-04-06 03:13:01 | Weblog
■4月1日(火)~4月5日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★堰落ちるまで一枚の花筏/大給圭泉
堰を落ちるまで桜の花びらを浮かせた水は平らに流れる。花びらがつながり、組み合ったのを花筏というが、堰を落ちるとたん、崩れる。美しく、はなかく、かわいらしさがある日本の美のひとつ。(高橋正子)

【特選5句】
★菜種梅雨夜はどこかで水響き/おおにしひろし
菜の花が咲く頃には、しとしとと雨が降り続く。それを菜種梅雨というが、昼間は、物音に紛れる水音も、静かな夜になると、溝川や樋など、どこかに小さな水音が響いて聞こえる。菜種梅雨の雨の降りようと、それに心を向ける作者との一つのものがある。(高橋正子)

★はくれんの日を恐れざる白さかな/小口泰與
辛夷とはちがう、はくれんのはっきりと空へ向って咲く白さを「日を恐れざる白さ」と言った。はくれんから見ると、日をも恐れないのであるが、作者の目は、白さに眩まんばかりで、恐れないものへの恐れがある。(高橋正子)

★青き踏む昨日と同じ影連れて/宮本和美
影はいつもと変わらずにあるけれど、作者の気持ちには春の喜びが満ちていると感じます。(池田多津子)

★たんぽぽの前通るたび光りけり/小河原宏子
春の日ざしを受けて明るく咲くたんぽぽ、通るたびに目を楽しませてくれますね。好きな句です。(小川美和)

★山荘の玻璃戸全面藪椿/柳原美知子
山荘の中から外を見ると、玻璃戸の全面を埋めるような勢いで咲く数多の藪椿。そんなうつくしい情景に触れた作者の感動があります。(臼井愛代)

【入選Ⅰ/10句】
★万博の太陽の塔春空に/堀佐夜子
太陽の塔は、大阪万博のときに作られた。岡本太郎独特のスタイルの表情、形があって、今も万博当時を思い出す方も多いだろう。のどかな春の空と結びついて、そんな思い出と重なっているのかもしれない。(高橋正子)

★対岸もふくらむ花の列をなす/池田多津子
作者のいる岸も対岸も全開の桜並木という壮観が、挟まれる冷たい川水の流れを通して見えます。両岸の花と水の対比に惹かれました。(おおにしひろし)

★磨崖仏多数おわして花の雨/祝恵子
景がよく見えます。普段は殺風景で、そこから離れなれない磨崖仏にも春が来ました。季語が効いて、やさしい温かみのある句になりました。4月8日の灌仏会を連想しました。作者の心根が伝わる一句です。(飯島治蝶)

★枝揺らし吹くとき激し花吹雪/臼井愛代
満開の桜も美しいが、花の散る様に桜の本質を感じるこの頃です。中七の「吹く時激しい」が素晴らしいと存じます。共感を覚えます。私も桜といえば、散る桜ばかり読んで居ます。(宮本和美)

★幾万の楓の芽ぶき水音に/黒谷光子
「幾万」と形容された楓の芽ぶきに、あふれるような生命感があります。そこに水音も聞こえ、春らしい明るさがあります。(臼井愛代)

★道ひろく春山絶えず正面に/かわな ますみ
中七り「春山絶えず」がよく効いた佳き句と存じます。共感を覚えます。(宮本和美)

★散る花に各駅停車ゆるやかに/小西 宏
古き日本映画の一場面を見るようです。散る花には各駅停車が似合いますね。 (竹内よよぎ)

★囀りがいずこも先にいる山路/多田有花
いろいろな鳥の囀りを聞きながらの楽しい山歩きが想像できます。(黒谷光子)

★花の下砂山高くつくる子ら/飯島治蝶
「花の下」に優しさがあって、「子ら」を見守る視線がいい。「砂山高く」に作者の主情を読んだ。(高橋信之)

★前籠に菜の花ゆらし橋渡る/甲斐ひさこ
自転車の前籠に菜の花をいっぱい入れて、橋を渡るときのたのしさ。川風や春川の流れが作者をさらに喜ばせるだろう。明るく開放的な句。(高橋正子)

【入選Ⅱ/14句】
★花冷えの部屋に立ちたる置時計/吉田 晃
庭に面したしずやかな畳の部屋でしょう。花の色と外気が直接伝わってくる。そこに据えられた置時計は、古式を守りながらも季節のうつろいを見守る時の流れでしょうか。(小西 宏)

★髪に背に花に降られて山下りる/小川美和
桜の散るなか山を下りられた様子に、花を降らせるうつくしい春の日を思い描きました。散ってしまう桜の花を惜しむ気持ちも伝わってきます。(臼井愛代)

★鳥あまた容れし桜の巨木かな/おくだみのる
巨木という言葉に、その樹の樹齢の長さを思いました。長い年月をそこに立つ、まるで魂を持つかのような桜の樹が、見る人にも鳥たちにも与えている安らぎがあります。「鳥あまた容れし」が温かく、好きな句です。(臼井愛代)

★旅立ちの空は桜の色に染む/大山 凉
お子さんかお孫さんの旅立ちの景でしょうか。門出を祝うかのように、満開の桜が空一面を薄ピンクに染めている景が目に浮かびます。(國武光雄)

★善峰へ抜ける道なり竹の秋/まえかわをとじ
善峰寺の辺りは竹林の多いところ、少し黄ばみはじめた竹林のそよぎを思います。(黒谷光子)

★花曇くもりて満つる花のいろ/かつらたろう
青天の下で見る花はよく映えていますが、花曇りは、かすんで見えるのでしょう。今日も、花曇の中、花の下を車で通ってきました。「くもりて満つる花のいろ」は、よく表現がされていると思いました。好きな句です。(吉川豊子)

★チューリップ花の数だけ喜びを/竹内よよぎ
かわいいチューリップの花を見ておりますと、花の数ほどたくさん喜びをいただいたようにとても幸せな気持ちになります。(藤田裕子)

★風光る子羊生まる昼餉時/丸山草子
昼餉時という日常の生活リズムの中に、子羊が生まれる感動が織り込まれて、新鮮な驚きがあります。風光るの季語がよくあっていますね。(池田加代子)

★花見かな空より青き茣蓙を敷き/吉川豊子
満開の花の下に、空より青い敷物が色鮮やかで、楽しげな雰囲気ですね。お花見を満喫されたことでしょう。(池田加代子)

★さくら咲くその満開の花の下/河野啓一
ひとつひとつの桜の花が咲いて、満開の花となる感動。花の下から見上げる感動は、年を追うごとにしみじみと深まるように思います。(池田加代子)

★池の面影ふくらませ花静か/藤田裕子
水辺に爛漫と咲き盛った花の美しさ、池に映る花影も豊かに心落ち着く情景です。しばし佇んでいたいような花の静けさです。(藤田洋子)

★黄水仙陽の差す方へ同じ向き/古田けいじ
春の陽光降り注ぐ中、向きを同じに咲き揃う黄水仙が一際鮮やかです。おのずと心明るくなれる春らしさです。(藤田洋子)

★さくらももあんずの花咲く田舎道/岩本康子
さくらにももにあんず、心に喜色をもたらすような花々の華やかな色彩です。田舎道なれば、より嬉しい春爛漫の明るさです。(藤田洋子)

★爛漫の桜並木を初登庁/國武光雄
4月は、入社、転勤、転任などによって、気持も新たに出発という方も多い。爛漫の桜並木に祝福されて、さっそうと登庁されたに違いない。初登庁に気持が籠められている。(高橋正子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/4点】
★降るよ降る飛鳥の山は花吹雪/小川美和
(宏子・光子・恵子・治蝶選)

飛鳥の山々が桜の吹雪に包まれてその中にいるのか、又は眺めているのか・とにかく幸せいっぱいの作者が思われます。(小河原宏子)
飛鳥の山は花吹雪のまっさかり、風に舞う桜の情景が見事に詠まれています。(黒谷光子)
飛鳥山での花吹雪の体験、至福のときでしょう。(祝 恵子)
古くからの歴史を持つ飛鳥の山の花吹雪。歴史ロマンを感じさせてくるような一句です。 (飯島治蝶)

【次点/3点5句】 (作者名五十音順)
★磨崖仏多数おわして花の雨/祝 恵子
(治蝶・凉・ひさこ選)
★枝揺らし吹くとき激し花吹雪/臼井愛代
(をとじ・治蝶・和美選)
★大根の花の冷たさ手折りけり/おおにしひろし
(ひさこ・よよぎ・泰與選)
★鳥あまた容れし桜の巨木かな/おくだみのる
(愛代・ますみ・凉選)
★堰落ちるまで一枚の花筏/大給圭泉
(宏子・宏・恵子選)

※「好きな句のコメントは1日1句」」という、この句会のルールに則っていない選は割愛しました。

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25 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (飯島治蝶)
2008-04-06 07:13:41
正子先生、「花の下砂山高くつくる子ら」の句を入選Ⅰに御選頂き、誠にありがとうございます。また、信之先生には、貴重な御句評を頂き、誠にありがとうございます。
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お礼 (丸山草子)
2008-04-06 08:45:17
正子先生
「風光る」の句を入選Ⅱにお加え下さりありがとうございます。
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お礼 (大給圭泉)
2008-04-06 09:50:11
正子先生 「花筏」の句を最優秀句にお選びいただき
有難うございます。貴重な句評も添えてくださり重ねてお礼申し上げます。
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お礼 (祝恵子)
2008-04-06 10:41:41
正子先生、入選Ⅰに「花の雨」の句をお取り頂きましてありがとうございました。
飯島治蝶様、素敵なコメントを頂きありがとうございました。
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お礼 (小河原宏子)
2008-04-06 14:35:05
正子先生
 「蒲公英」の句を特選にお選び頂き有難うございました。大変嬉しく思っております。小川美和様には素晴らしいコメントを添えて下さり有難うございました。
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お礼 (臼井愛代)
2008-04-06 14:48:33
正子先生、「花吹雪」を入選Ⅰにお選びいただきまして、ありがとうございました。和美様、うれしいコメントをいただき、ありがとうございました。
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お礼 (吉川豊子)
2008-04-06 16:05:52
 正子先生

 花見かな空より青き茣蓙を敷き を 入選Ⅱにお加えいただき
まして、有り難うございました。

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お礼 (藤田裕子)
2008-04-06 16:50:53
正子先生、「花」の句を入選Ⅱにお選びいただきまして有難うございます。
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御礼 (大山 凉)
2008-04-06 17:12:21
正子先生
「桜色」の句を入選Ⅱにお選びいただきまして有難うございました。
国武様には嬉しいコメントを頂きまして有難うございました。
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お礼 (黒谷光子)
2008-04-06 18:00:56
正子先生、「芽吹き」の句を入選Ⅰにお選びいただきまして有難うございました。
愛代様、うれしいコメントをいただきましてありがとうございました。
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