デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/5月18日(日)~5月24日(土)

2008-05-25 00:16:04 | Weblog
■5月18日(日)~5月24日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★駅までの道は一本麦の秋/黒谷光子
駅までゆく道は、ただ一本。日陰も木立もないだろう。太陽の光りが道を白くし、麦秋の風が通り抜ける道。麦秋の気分が深く伝わってくる。(高橋正子)

【特選/5句】
★白バラに夕陽のまじる時となり/祝恵子
白バラに夕陽が傾き、あかあかと差してくる時刻。「夕陽のまじる」が的確。夕陽に染まる花びら、奥深く染まらぬところ。これを「まじる」と言った。「まじる」がリアルで、夕陽を受ける白バラの美しさが出た。(高橋正子)

★睡蓮の葉の三つ四つと伸び出し/河野啓一
睡蓮の葉は、はじめ巻葉である。あちらに三つ、こちらに四つと艶やかな巻き葉が池水から伸び出る。水面に一度にすずしい季節の到来を知らされる。(高橋正子)

★柿の花ときにこぼるる石の上/大給圭泉
柿の木のあるところは、石垣の上だったり、なんの用か石が置かれていたりする。土の上にも落ちるが、石の上にもときには、落ちる。石の灰色と浅緑の柿の花の取り合わせに、奥ゆかしい美しさがある。(高橋正子)

★さいはてのたんぽぽの野を一輌車/おくだみのる
さいはての野をゆく一輌車。時は一面にたんぽぽの咲くころ。一人旅であろうか。「さいはて」の寂寥感を慰めてくれるたんぽぽに感銘を覚える。(高橋正子)

★一面の花たんぽぽや牛放つ/志賀たいじ
一面にたんぽぽの花が咲いている牧場。牧場に春がやってきたのだ。自由に草を食べ、遊べよと牛を放つ。生活のなかにある牧歌的風景への賛歌。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★海に向く灯台跡や麦の秋/宮本和美
長い歴史のある灯台が、その役目を全うして廃墟になった寂しさと、初夏に黄色に熟した麦との対比が素晴らしいです。(小口泰與)

★夕映えの海に傾れる植田かな/國武光雄
夕映えの海を臨む高低さのある傾いた植田。その植田には、青々とした早苗が田水の上から見える。オレンジと緑、そして海と田水の水の色。海を臨む田圃の景色とともに色彩の変化がこの句に彩りを添えている。日本の原風景を感じさせる一句です。(飯島治蝶)

★園児らの水色リボン夏帽子/小河原宏子
爽やかな夏帽子に水色の爽やかなリボンが元気そうな園児たちによく似合いますね。(大給圭泉)

★青葉雨けさより赤き車椅子/かわな ますみ
車椅子が新しくなりました。「赤」い色は安全でいいですね、{青葉雨}が効果的で好きな一句です。(吉川豊子)

★ゆったりとバラ園巡る車椅子/渋谷洋介
先日、同じような景を見て誠に微笑ましく思いました。上五の「ゆつたりと」が抜群な咲作品と存じます。共感の一句です。(宮本和美)

★観覧車青葉見下ろす空といる/竹内よよぎ
景がよく見えます。ゆっくりと回る観覧車。特に、観覧車が最高到達点にまで来たときは、至福のとき。今のこの時期はまさに、「青葉見下ろし空といる」です。共感した一句です。(飯島治蝶)

★母の忌や空飛びたがる夏帽子/篠木 睦
「空飛びたがる」が実に面白い見方だと思う。青嵐でしょうか緑の風に帽子が飛びそうだ。帽子を飛ばしそうなそんな「薫風」までが見えてくるようだ。(まえかわをとじ)

★夏大根葉を青々と買われゆく/臼井愛代
メニューは大根おろしでしょう。葉つきのままのものを求めるのは、スーパーでは難しいですが、これは産地直売のものでしょうか。新鮮な大根の葉は食欲も涼味もそそります。(多田有花)

★岩魚釣る御岳からの水澄めり/古田けいじ
岩魚のすむ渓流を成す御岳の水の清冽なさまを思います。岩魚が姿を現す澄んだ水を見つめる釣り人の、わくわくとした気持ちが伝わってきます。(臼井愛代)

★白つめ草丘の起伏をたんぽぽと/あみもとひろこ
一面に広がる白つめ草とたんぽぽが、そのまま丘の起伏の形となっているうつくしさに触れた作者の感動があります。(臼井愛代)

★蕗を剥く水張りボ-ルにたっぷりと/小川美和
「たっぷりと」に、初夏の野山からのゆたかな恵みをいただくうれしさがあります。蕗が剥かれるときの、野趣に溢れた香りも漂ってきそうです。(臼井愛代)

★武蔵野の台地一面昇り藤/小口泰與
昇り藤が台地一面に咲き乱れる見事な情景に触れたときの、作者の強い印象や感動が、武蔵野の地名を入れられたことで、よりはっきりと表現されていると感じました。(臼井愛代)

★かくれんぼ若葉青葉の隠す子ら/飯島治蝶
こんもりと茂った若葉青葉が、かくれんぼの子らの格好の隠れ場となっている楽しさがあります。自然の中で遊ぶ子供たちの元気な様子を、読者は明るい気持ちで思い浮かべます。(臼井愛代)

★はんにちは日輪白く竹の皮脱ぐ/甲斐ひさこ
「竹の皮脱ぐ」は7音の季語。半日は、太陽は白く耀いている。午後からはうす曇とでもなったのであろうか。竹が皮を脱ぐ季節は、こういった天気の日もある。そうして次第に五月も終るのだが、皮を脱いだ竹の生長が目に見えるようだ。(高橋正子)

★葉桜の先の薄紅初々し/井上治代
葉桜といっても、すぐに青々と茂るのではなく、はじめは薄紅色が葉先に残って、その薄紅色が初々しい。その初々しさにはっとさせられる。(高橋正子)

【入選Ⅱ/14句】
★自家用にじゃが芋の花咲かせける/堀佐夜子
 ずいぶん前、大阪吟行の時に佐夜子さんのお宅をお尋ねしましたが、よく手を加えられたお住まいで、充実した日々を送っておられる様子を拝見しました。家庭菜園でしょうか。清楚な花が咲いているのでしょう。(吉田 晃)

★麦秋を街へ真っ直ぐ通学路/吉田晃
 山麓から街へと広がる麦畑が黄色い絨毯を敷いたように広がる。その中を通学路が一直線に白々と舗装され、登下校の児童達が往き来します。麦の大きな農村風景と通学路という取り合わせによって、初夏の若々しさを感じさせてくれました。「まっすぐ」がいいですね。(おおにし ひろし)

★朝採りの枇杷を選りたる道の駅/柳原美知子
初夏の味覚、枇杷は保存が利かず、産地直売に限ります。「道の駅」を下五に据えた巧みな句作に教えられました。美味しそうな枇杷の形が目に浮びます。(河野啓一)

★家中を煮立てて香る苺ジャム/小西 宏
苺ジャムの甘い香りが家中に。暖かい家族の温もりが見えますね。(祝恵子)

★若竹の丸き切り口新しき/多田有花
若竹の新鮮さ,瑞々しさが切り口にまで表れている初夏の清々しさの表れた句と思いました。(小河原宏子)

★万緑やスウィッチ運転飛騨特急/かつらたろう
緑あふれる山を電車がスピードを落としジグザグに登ってゆくのでしょう。先人の知恵が万緑を更に味わい深くしてくれているようでいいですね。(吉田 晃)

★郭公の遠くに聞こゆ朝厨/丸山草子
郭公の声が遠くに聞こえる、静かな清々しい朝です。きもちよく一日が始まります。(池田多津子)

★万緑や乳母車の児眠らせり/藤田裕子
児を眠らせるのは、万緑である。万緑の季節は、風もそよそよと心地よい。少し汗ばむほどの陽気が眠気をさそう。乳母車の児をすやすやと眠らせるのもいい季節だから。(高橋正子)

★麦熟れて日ごと明るく陽を返す/池田多津子
麦が熟れはじめ、刈り取られるまでは、日ごとに明るい陽射しを返す。風に陽に、熟れた麦は揺れて、健康的な明るさを見せてくれる。(高橋正子)

★ふくいくと粒の揃いしさくらんぼ/吉川豊子
★早朝の目覚め爽やか新樹光/大山 凉
★百合の木の弾けるような青葉照り/おおにし ひろし
★夕凪や真っ直ぐ伸びる陽の光/高橋秀之
★御座船やみどりみどりの中進む/まえかわをとじ

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/9点】
★仔馬蹴るうしろの海は初夏の青/志賀たいじ
(啓一・有花・宏・美知子・愛代・治蝶・凉・ひろし・ひさこ選)

緑の草を食みながら子馬も軽快に跳ね廻っている、海の見える牧場。広々とした爽快な景を満喫させられました。「仔馬蹴る」が簡にして要を得た表現かと存じます。(河野啓一)
海はオホーツクでしょうか。海の見える牧場に放たれた仔馬、まだ母馬のすぐそばに寄り添っているのでしょう。広々とした北の大地の風を感じます。(多田有花)
牧場の背後はすぐに海だという。子馬の跳ねる姿や海の青さ。初夏の季節とともに北海道という広やかさを読者にも伝えてくれます。(小西 宏)
愛らしい仔馬が元気いっぱい跳ねる広々とした草の原。その向こうに更に広がる海の青さが夏の訪れを感じさせます。喜びに満ちた牧場の夏が始まります。(柳原美知子)
すくすくと育っている仔馬の足元には大きな大地、後ろの海は、初夏の色を見せて広がっています。元気な仔馬の躍動感が、明るい初夏の自然に相応しく思います。(臼井愛代)
長閑な中に、元気な仔馬の動き。中七からの展開が巧妙。動的で、しかも広がりのある初夏の句に仕立てられいます。仔馬の動きが、大自然の中に生き生きと伝わって来ます。(飯島治蝶)
蒼い牧草と青い海、初夏の大きな自然の営みの中での子馬の生き生きと、愛くるしい動きが伝わってきます。(大山 凉)
青々とそして、茫洋とした北の海は夏の青さ、大きさに、仔馬の愛苦しい生命が息づいて見えます。(おおにしひろし)
伸び伸びと仔馬が駆けている牧場の遥に夏の海が眩しく広がっている。憧れる風景です。(甲斐ひさこ)

【次点/5点/2句】(作者名五十音順)
★芍薬のふっくらと咲き今日の供花/黒谷光子
(たいじ・晃・睦・ひさこ・有花選)

★富士山を大きく置きて葱坊主/大給圭泉
(みのる・ひろこ・けいじ・治蝶・よよぎ選)

入賞発表/5月11日(日)~5月17日(土)

2008-05-18 00:09:03 | Weblog
■5月11日(日)~5月17日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★空っぽの缶を蹴る音初夏の雲/藤田荘二
子どものころ、缶けりという遊びをした。「空っぽ」は、大人の見方。空き缶を蹴るカーンという響きが、初夏の明るさを感じさせてくれる。(高橋正子)

【特選/5句】
★土佐路ゆく茅花流しに吹かれつつ/柳原美知子
「茅花流し」は、茅の花が穂になり、その絮が吹かれるようになる頃吹く風のこと。夏の季語。やさしく、詩情のある季語である。その風に吹かれて外光豊かな土佐路の、青い山や川そして海を見つつ行く旅の、安らかな楽しさが思える。(高橋正子)

★幾百の海鳥岬に五月来る/志賀たいじ(正子添削)
元の句は、「岬の五月」となっていたので、リアルさを重んじて添削した。岬に幾百もの海鳥の姿を見ると、まさに五月が来た印象を持った。沖へ開かれる爽やかな心。(高橋正子)

★夕暮れの青き植田に日の名残/大山 凉
「日の名残」にこの句の深さが読める。植田のさみどりと水面にある日の名残の風景に、爽やかな初夏の中にもある、じんと心の底に温もりをくれる寂しさがある。(高橋正子)

★青嵐命もらいて野を行けば/おおにしひろし
風の強い日に新緑の中をウォーキングされた時の景と思いますが、小一時間も歩けば吐く意気まで緑色になるように感じ、自分も自然の中に生きる一員であると実感しますね。緑に染まる情景が良く窺えて素敵な句です。(かつらたろう)

★行き交へる舞妓の髪や風青し/まえかわをとじ
京都ならではの風景ですね。初夏の京都の町を行く舞妓さん、その髪に吹く風は若葉も揺らしていきます。 (多田有花)

【入選Ⅰ/15句】
★背に負いし達治の詩集若葉旅/おくだみのる
三好達治の詩集を「背に負い」、旅にあるのだ。作者の思いが伝わってくる。若葉の季節に達治の詩がいい。現代詩と俳句を両立させた詩人に広島福山の木下夕爾と松山高校俳句会出身の西垣脩がいて、三好達治もその一人だ。東大仏文科在学中に辰野隆教授に絶賛された俳句「柿熟るる夜は夜もすがら水車」がある。句集に『柿の花』があり、『俳句鑑賞』を筑摩書房から出した。(高橋信之)

★逆上がり出来た笑顔や大欅/大給圭泉
子どもの「笑顔」と「大欅」は、楽しい取り合わせだ。広々として明るい風景だ。切れ字の「や」による取り合わせの多用は好まないがこの句は別だ。「大欅」は、季語ではないが、この句には若葉の頃の季感がある。(高橋信之)

★千貫の神輿の声や日本橋/小西 宏
「千貫」が効いた。「神輿」や「日本橋」に籠められた日本の歴史・文化を思えば、なおのことであるが、この句を軽く読んでも「千貫」が効いた。(高橋信之)

★晴れて来て土手の夏草絶えず揺る/甲斐ひさこ
上五の「晴れて来て」に作者の力量を見た。句を大きくしたのだ。時間的にも、空間的にも大きくしたのだ。(高橋信之)

★駆けて来し園児ら噴水囲みけり/黒谷光子(信之添削)
季節のいい風景だ。「噴水の園児ら」をテーマとし、初夏の風景を捉えたのだ。園児らの「駆けて来し」動作と噴水を「囲みけり」という動作が読み手にも見えてくる。(高橋信之)

★葉桜の影に児を追い母も入る/あみもとひろこ
青々と茂る葉桜の影へと走る幼子と若き母の笑い声が聞こえ、青葉風が吹きわたります。生命力に満ち溢れ、ほのぼのとした親子の情景です。(柳原美知子)

★野沢菜の花の明りや千曲川/小口泰與
野沢菜が黄色い菜の花を咲かせる信濃、千曲川の美しく輝く、おおらかな流れとともに、信濃ののどやかな情景を思います。冬にはおいしい野沢菜を食べることが出来るのでしょうね。(大山 凉)

★娘を送る始発電車や夏燕/篠木 睦
始発電車で帰られるお子様を送られたのですね。夏燕は今年の子燕でしょうか、親燕と一緒に飛んでいるのをよく見かけます。朝が薄明るくなる頃から、もう飛びまわっています。そんな早朝の見送りの御気持ちも、燕のように爽やかだったのかもしれません。句を拝見してからの推量ですが・・。 (おおにし ひろし)

★一服の新茶に朝の職員室/池田多津子
どう言う句意だろうと考える事もなく一読で自分も新茶で朝のひと時を過ごしたいと思いました。(堀佐夜子)

★スープにも粥にも紫蘇の香の蒼し/かわな ますみ
日本人の体力の源泉である粥と郷愁を覚える紫蘇、加えて舌と目からの季節感が溢れ、とても好きな句です。さぞ美味しく頂かれた事でしょう。(まえかわをとじ)

★空澄みて若葉耀く朝嬉し/河野啓一
気分よく迎えれた朝、しかも、若葉が輝いている。今日も一日頑張らうという気持ちの満ち溢れた佳き句と存じます。下五の「朝嬉し」に詠者の思いのこもった作品。共感を覚えます。(宮本和美)

★影踏みに子ら駆け回る若葉晴/飯島治蝶
日差しが強くなり、晴れるとくっきりと影が出ます。若葉が繁る広場で子どもたちが影踏みに歓声を上げています。もう一度そうやって遊んでみたいなという気持ちを呼び起こしていただきました。(多田有花)
  
★柿若葉朝日を透いてさみどりに/丸山草子
柿のつやつやとした若葉には独特の美しさがあります。畑や庭の一画に植えられ、人間の生活の最も身近にある若葉かもしれません。「さみどり」に若葉の美への感嘆が感じられます。(多田有花)

★闘病のきざし好転目に若葉/宮本和美
病んでいらっしゃるのは作者自身か、あるいはご家族か、闘病というのは、心身ともに消耗するものです。ようやく病に好転のきざしが見えたとき、その安堵の思いとともにみずみずしい若葉が目に飛び込んできた、その感動を詠われています。(多田有花)

★茎立の果てのすっくと風にあり/臼井愛代
茎立って、その花も終わり近づいているが、しかし、風の中にもすっくと立っている。ひとりすっくと立つ「果て」姿に共感する。(高橋正子)

【入選Ⅱ/17句】
★音の無き矢車まわる五月空/吉川豊子
よく晴れた空に鯉幟の竿が立てられています。鯉幟はまだあがっていないのかもしれません。風はやさしく、音もなく矢車をまわしています。矢車を見上げられる作者の穏やかな心境がうかがわれます。(多田有花)

★若竹や今朝も伸びたり節の白/かつらたろう
若竹の”力”を強く感じます、{節の白}で充分に表現がされていて、好きな一句です。(吉川豊子)

★平らかに枝伸ばしたり若楓/多田有花
楓の枝は「平らかに」ですね。御句からのびのびと枝を広げ、陽に耀く若楓を想像いたします。(黒谷光子)

★穂波立つ風の軽さや麦の秋/吉田 晃
最近はあまり麦畑を見かけなくなりましたが、子供の頃は田舎でもよく作っておりました。秋の稲の穂と違い、麦の穂はまっすぐ伸びていて風も軽やかですね。平明な詠みの中にも、爽やかな調べがとても素敵で、麦秋の喜びまで感じます。(かつらたろう)

★葉を透かし朝日眩き若楓/小河原宏子
一日の始まりに、目覚めるばかりに美しい若楓です。その鮮やかな緑を通す日の光も爽やかな季節そのものの明るさです。(藤田洋子)

★靴音を運ぶ風あり若葉風/堀佐夜子
青葉の梢を吹き通る風とともに、軽やかな靴音が聞こえてくるようです。新鮮で瑞々しい季節感を作者ならではの感覚で明るく捉えられていると思います。(藤田洋子)

★エコ袋サラサラ鳴らす若葉風/井上治代
日常生活の一齣が清々しく詠われていて、とても爽やかになります。「若葉風」の季語がとても合っていると思います。(藤田裕子)

★夕暮れてヨシキリ啼くよほしいまま/古田けいじ
渡って来たヨシキリが得た心地よい場所なのでしょう。「ほしいまま」に、ヨシキリのいきいきと生息する様子が窺えます。(臼井愛代)

★花みかん海へ香零る空真青/藤田裕子
花みかんが零す豊かな香りに、溢れんばかりに咲くあまたの白い花も見えるようです。その上に広がる真っ青な空とあいまって、爽やかな初夏の情景となっています。(臼井愛代)

★鳥のいて代掻くあとを付きまわる/祝 恵子
代掻きの人を追うように付いてまわる鳥がいて、田んぼに活発な動きが生まれした。これからお米が育まれる場所が整うよろこびを感じます。(臼井愛代)

★若葉風駅の待合吹き抜ける/高橋秀之
爽やかに待ち時間を過ごせそうで、若葉風に安らぎを感じます。(甲斐ひさこ)

★芍薬の落花直前巨大なり/竹内よよぎ
言われてみれば、芍薬の落花に注目したことがありませんでした。どんな落花の模様かは別として、落花前は命の最後を示すように、かがやくのでしょう。そんな一瞬を切り取ったような緊張感を感じました。(藤田荘二)

★夏蝶の消えては現る木立かな/上島笑子
夏に入り、木立の枝葉が青々と生気をみなぎらせる中、軽やかに飛び交う夏蝶の動きが鮮明に見えてきます。明るく心地よい季節の到来を感じます。 (藤田洋子)

★水ひかる植田の苗のかそけしや/小川美和
田植え直後の稲は見た目、心もとなく、色淡く、「幽けく」がぴったりの様子です。それも、日月とともに地に根を下ろしやがて、強靭な稲へと育ちます。現在を見詰め、未来に託する気持ちがよく表現された深い句です。(おおにしひろし)

★紺碧の五月の空へいざ発たん/渋谷洋介
紺碧の五月の空が明るく広やかで美しいかぎりです。出立の日の清々しく晴れやかな心情が伝わります。(藤田洋子)

★つやつやとさくらんぼある雨の中/岩本康子
萌葱色の芽、うっすら黄や紅に染まる花、ほのかな色を見慣れた晩春、今年も雨が続きました。よく見ると、芽は青葉、花は朱い実に、それぞれ色を濃くしているよう。樹々の彩りが鮮やかに変化する瞬間をつややかな「さくらんぼ」に見る、美しい場をご一緒させて頂きました。(かわな ますみ)

★筑後川雲に溶けゆく揚雲雀/國武光雄
空に向かって垂直に舞い上がる雲雀を、「雲に溶けゆく」と表現されたところに、作者の実感、感動があります。滔々と流れる筑後川の豊かさもあり、大きく気持ちの良い情景を思いました。(臼井愛代)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/5点】
★神前の箒目揃い牡丹咲く/大山 凉
(宏子・晃・たろう・治蝶・泰與選)

神前の庭がきれいに掃き清められているところに美しい牡丹が咲いている、そんな庭の前に立つと心まで清められそうな清々しい句と思います。(小河原宏子)
地が清められると空気が澄み、落ち着いたたたずまいになります。そこに咲く牡丹は気高く感じられ、作者はしばらく見入っていたのでしょう。(吉田 晃)
いずこの神社の境内でしょうか?すっかり掃き清められた社の庭に咲く牡丹の、上品な花の姿が目に浮かぶようです。牡丹の花は、日本的な環境に良く映えるようですね。「箒目揃い」の語句に、とても爽やかな情景を思い浮かべました。(かつらたろう)
箒の目が整然とそろった神聖な神前の庭。その庭に咲く牡丹。厳かな中に、華麗さのある一句です。(飯島治蝶)
芳香のある径十数センチほどの大輪の花が咲き、花の姿の豊麗なことは花王の名にそむかない牡丹。神前の綺麗に掃きあがった境内に見事に咲いている牡丹を素敵に詠っていると思います。(小口泰與)

【次点/4点/2句】(作者名五十音順)
★白目高孵化して小さき目の泳ぐ/小河原宏子
(宏・たろう・和美・けいじ選)

★逆上がり出来た笑顔や大欅/大給圭泉
(けいじ・凉・光子・秀之選)

入賞発表/5月1日(木)~5月10日(土)

2008-05-10 23:56:14 | Weblog
■5月1日(木)~5月10日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★身ほとりも八十八夜の青一色/おおにし ひろし
八十八夜は、ご存知のように、立春から数えて八十八日目。唱歌「茶摘」にも歌われて新茶の季節、若葉の季節である。身辺が青一色に染まる。感覚が捉えた世界がすがすがしい。(高橋正子)

【特選/5句】
★げんげ田の踏みあと二手に分かれおり/祝恵子(信之添削)
こういった場面こそが、俳句に詠まれて然るべき。誰も踏み込んでいない花が咲き満ちるふわふわの「げんげ田」に、踏みあとが、はっきりと二手に分かれてある。二人の子どもだろうが、それぞれに好きな方に歩いて行って花を摘んだのだろう。踏むには惜しいほどの「げんげ田」である。「蓮華」は、蓮の花のことで、夏の季語だが、「蓮華草」は、紫雲英(げんげ)のことで、春の季語。俳句では、多くが「蓮華草」とは言わずに「紫雲英(げんげ)」という。(高橋正子)

★代田はや何かいきものいる気配/宮本和美
田に水が張られ、そろそろ田植えの時期ですね。田に水が入れられた矢先、うごめく物が居る、何だろう想像する楽しみもある句です。(祝恵子)

★卯波立つ島に一村軒低く/あみもとひろこ
数多くの台風や強い海風に絶えている孤島の一にも卯の花が風になびくさまから卯波と呼ばれ、晩春から初夏にかけて海に白波が起つほど荒れている様子を素敵に描写していると思います。(小口泰與)

★花売りにほどほどの照り夏兆す/甲斐ひさこ
切花も花苗も天気の良い日はとくに綺麗に見え買いたくなるもの。夏兆す今日この頃「ほどほどの照り」とは言いえて妙な表現と感じ入りました。(河野啓一)

★折り紙兜棚に飾れば子供の日/堀佐夜子
特別なものを買わなくても、折り紙で兜を作って飾れば十分子供の日となる。いつも工夫をし、生活にメリハリをつけて楽しんでおられる作者の心意気が感じられます。(柳原美知子)

【入選Ⅰ/15句】
★湯気立てて朝日地を這う春の畑/小西 宏
「生きている畑」が目の前に浮かびます。春の大地は夜が明けるごと大きく呼吸するのでしょう。心を打つ景色です。(かわな ますみ)

★遠近の土塊(つちくれ)光り鳧(けり)が鳴く/かつらたろう
明るい日差しの中に響くケリの声。キリリ、ケリッと甲高い声でなくことからケリと名前がついたとか。のどかな田園風景を思います。 (多田有花)

★うまい水若葉深くに生まれおり/竹内よよぎ
「うまい水」という言葉が、とても新鮮で、若葉を重ねる森の奥の、湧き水を思いました。澄んで冷たい水を、手に掬い飲む感触を覚えました。(あみもとひろこ)

★夏に入る酸素の音の逞しき/かわな ますみ
透明な酸素吸入からの音にも夏を感じられた景がうかびました。酸素は命の源ですね。(小川美和)

★山羊の仔の膝折りすわる草の青/志賀たいじ
「山羊の仔の膝折る」と詠まれて、仔山羊を愛されているのが伝わってきます。背景の草の青も鮮やかで、句の中に自然の中の豊かなひと時が流れているように感じます。(竹内よよぎ)

★おちこちの田を打つ音の響きくる/丸山草子(正子添削)
農作業が忙しくなる時期にはいってきました。農家には大変なときですが、田畑に人の姿が増え、活気あふれるころです。ことに雪に閉ざされる北国では一斉に農作業という風景が見られますね。(多田有花)

★風颯々と森の若葉を磨きけり/おざきゆづる
森の若葉が風に吹かれて青さが益す如く見える心地よい季節ですね。(大給圭泉)

★山藤の短き房の瑞々し/井上治代
新鮮で力強い句。「短き房の瑞々し」と作者は見たのだ。「山藤」の深いところを見たのだ。(高橋信之)

★教会に果実実らせ聖母月/臼井愛代
聖母マリアの月とされる五月の教会。みずみずしい果実の実りに、聖母マリアへの信心が込められているようで、明るく心豊かな季節の始まりを感じさせてくれます。(藤田洋子)

★火の山の斑雪なりけり桐の花/小口泰與
火の山、まだらになった残雪、大木の桐の花、豊かな色彩に季節の推移を感じつつ、爽やかな季節を迎えた自然を大らかに捉えて詠まれていると思います。 (藤田洋子)

★田水張り水の匂いの夜を歩く/安藤かじか
田植えに備え、田水張りが盛んに行われています。その日の夜、水の匂いで満ち満ちている田園界隈をゆく作者が見えるような五月雨の日らしい光景です。(おおにし ひろし)

★屋内の鏡にさせる新樹光/多田有花
新樹の薄緑の光が部屋の鏡に差し込んで居る。如何にも初夏の風景。中七の「鏡ににもさす」が素晴らしい作品で、共感を覚えました。(宮本和美)

★軽装の男の子の列に夏近し/高橋秀之(正子添削)
幼稚園児か保育園児の列でしょう。明るい日差しの中、半袖半ズボンで歩いているのかもしれません。一足速い夏の景色を敏感に感じ取っていらっしゃる様子がうかがえます。(多田有花)

★藤房に零るる空の青さかな/柳原美知子
青空の下に咲く藤の花のたっぷりとした豊かさ。空と藤房が作者の心に繋がってみずみずしく零れるような青です。(池田加代子)

★日向田のさざなみさわと蝌蚪黒く/大給圭泉
田に水が張られ、しばらくすると蝌蚪(おたまじゃくし)が見られます。小さな動きでも小さな波となって見えます。小さな命の誕生、そして成長が感じられます。(池田多津子)

【入選Ⅱ/21句】
★玻璃を透く朝日大きく夏に入る/黒谷光子
季節の節目となる日の、玻璃越しの朝日の大きな輝きが、とりわけ希望に満ちて力強く感じます。明るい夏の到来を喜ぶお気持ちが、句に溢れているようです。 (藤田洋子)

★潮香する若葉の風の芭蕉像/池田多津子
深川の芭蕉記念館の若葉のなか、微かに川風に乗って漂う潮の香り。当日拝した芭蕉像を想起させて頂きました。(飯島治蝶)

★山に向く薫風に充つ道の駅/小川美和
薫風吹き抜けて行く中にある道の駅が上手に表現されて居り、共感を覚えます。絵画を見ている様に感じました。(宮本和美)

★踏み入りて若葉の匂い鮮やかに/大山凉
若葉燃え立つ樹林に踏み入ったのでしょうか、明らかに噎せるような若葉の匂いが、初夏の到来を思わせてくれます。(おおにし ひろし)

★紫蘭咲く風待つ形に傾いて/古田けいじ
「風待つ形」がいいですね。いい風が吹いて来そうな感じがして、気持が軽くなります。(吉田晃)

★ナイターの芝生輝き夏立ちぬ/河野啓一
ドーム球場が増え、外野の芝生もほとんど人工芝になってきましたが、ここで輝いている芝生は天然のものでしょう。人工照明の下で見る芝生の輝きにナイターシーズン到来を待った野球ファンのうれしさが混じっています。(多田有花)

★黒々と濡れて新樹のうねる幹/安藤かじか
落葉樹が芽吹き日ごとに葉を広げていくこの時期は、木々の生命が姿全体にみなぎっています。それを黒々とした幹のうねりに見ていらっしゃることがよくわかります。(多田有花)

★日時計の目盛に濃き影夏隣/飯島治蝶
太陽光線の指針の影に時刻を知る日時計。その濃き影に、おのずと戸外の明るい陽光や強い日差し、そして間近な夏の訪れを 感じることができます。(藤田洋子)

★どろんこの父子駆けまわる子供の日/藤田裕子
家族が元気なのは、嬉しいことだが、「どろんこの父子」は、「子供の日」のいい季節なので、家族の喜びだ。(高橋信之)

★くっきりと天守と空の五月来る/藤田洋子
松山城の「天守」は、小高い城山の頂にあって、街のどこからでも見える。「五月来る」季節となれば、なお「くっきりと」見える。懐かしい風景だ。(高橋信之)

★粽解く笹の葉ずれの音清か/小河原 宏子
粽と柏餅は、5月5日の端午の節句に食べるものだが、誰もが自分の育った家族との懐かしい思い出がある。それを作者は「音清か(音さやか)」と言った。季節がいいのだ。思い出がいいのだ。(高橋信之)

★五尺の身総身緑に染まりけり/まえかわをとじ(正子添削)
「五尺の身」は、身長を言うより、「五尺(いつさか)の身・・」と特攻隊員が詠んだ歌もあるように、父母よりもらった肉体やその心をも感じされる表現であろう。わが体ごと、全身が緑に染まるこの季節のさわやかさが詠まれている。(高橋正子)

★ため池や一歩下がってメダカ群れ/上島笑子
ため池にメダカの群れを見つけた。「一歩下って」は、岸から少し離れたところにメダカが群れていると解釈した。岸の間際ではなく、少し離れた距離に泳ぐメダカに面白みがある。(高橋正子)

★古道行く茂りの力に背を押され/藤田荘二
稀にしか人の通らない古道は、昼間も木下の暗がりが続く。ひとり行く道は孤独ではあるが、木々の茂る勢いに、背を押されるかのように前進できる。茂るものから力をもらった一句。(高橋正子)

★上げ潮の水面(みなも)にゆれる葉桜よ/迫田和代
「上げ潮」がいいですね。満ちてくる潮の匂いまでしそうですね。潮と葉桜の色あいがとても新鮮です。(高橋正子)

★咲き初めしあやめ一叢遊歩道/吉川豊子
遊歩道にアヤメの青さを見つけたうれしさ。一叢の中に、青く咲き始めた花と蕾がいくつか残るころの控えめな美しさがいいですね。(池田加代子)

★どこまでも広がる青空子どもの日/岩本康子
子どもの日が青空であるのはうれしいですね。どこまでも広がる青空に、子どもたちの明るい希望がひろがるようです。(池田加代子)

★母の日や富士の墓標へ白き花/おくだみのる
富士の墓標へ供える白き花の清らかさが印象的です。母の日に、亡きお母様を思っておだやかな心境がうかがえます。(池田加代子)

★ハンカチの花きらきらとゆらゆらと/渋谷洋介
ハンカチの花を先日初めて見ました。大きな白いハンカチのようなものは苞(ほう)で、花は中にあるのですが、葉陰に白く見える様子が「きらきらとゆらゆらと」の言葉にぴったりです。(池田多津子)

★さつさつと雨後の堤防蟹が散る/篠木睦
暖かくなると生き物がさまざまに動き始めます。「さつさつと」に作者の感じ方が伝わり、蟹が素早く散らばっていく様子が目に浮かびます。水の中も次第ににぎやかになっていくことでしょう。(池田多津子)

★裏木戸に潮の香初夏の芭蕉庵/吉田晃
芭蕉記念館での俳句ですね。芭蕉記念館のすぐ裏に隅田川があって潮の香りがしていました。庭の木々も辺りの木々も新緑がきれいですっかり初夏の色。落ち着いたたたずまいを思い出します。(池田多津子)

■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★吊り橋の揺れて緑の風わたる/河野啓一
(美知子・凉・ますみ・光子・和美・恵子選)

深山の蔓でつくられた橋でしょうか。橋の下の渓流の音、全山の新緑をわたる風の音が聞こえるようです。(柳原美知子)
みどりさわやかな山に囲まれ、若葉を映して流れる緑の川。つり橋を揺らしながら「みどりの風が渡る」、素敵な表現ですね。さわやかな初夏の山峡の光景が浮かびます。(大山 凉)
いつもは吊り橋が揺れると、少し恐怖を覚えます。けれど新緑の季節には、葉の色をたずさえた風が心地好く、その揺れさえも初夏の目覚めのごとく感じられるのでしょう。山中をご一緒させて頂いたような、爽快な気分を頂きました。(かわなますみ)
つり橋の下は渓流、新緑を渡る風、素晴らしい光景を見せていただきました。(黒谷光子)
初夏の頃、吊橋を渡る景が見える様な気分になります。人も風も揺られながら渡っているのでしょう。中七の「揺られて緑」が抜群に素晴らしく、共感を覚えます。(宮本和美)
下を覗いても、山並みも新緑。吊り橋を緑の風が揺らし渡っていきます。爽やかな風です。(祝 恵子)

【次点/5点/3句】 (作者五十音順)
★夏に入る酸素の音の逞しき/かわなますみ
(よよぎ・和美・泰與・美和・凉選)

★山羊の仔の膝折りすわる草の青/志賀たいじ
(草子・ひろし・豊子・よよぎ・和美選)

★かすみ草泳がす程の風が吹き /宮本和美
(圭泉・秀之・宏・裕子・宏子選)

入賞発表/4月27日(日)~4月30日(水)

2008-05-01 12:28:56 | Weblog
■4月27日(日)~4月30日(水)
□高橋正子選

【最優秀】
★蒲公英の花せめぎあい光りあい/小西 宏
蒲公英が明るい日差しの中に、びっしりの咲いている様子。一つ一つの花は可憐でありながら、せめぎあうほどの花の力。せめぐだけでなく、また、互いに光りあっている。確かな目である。(高橋正子)

【特選/5句】
★雛罌粟の茎の長きを風が責む/宮本和美
雛罌粟のすっと細く長く伸びて、風にそよぎやすい。しなやかで折れそうな茎を風がいくらでも吹いて、雛罌粟をゆらす。風が責めているようだ。その光景に風と明るい日差しを感じる。(高橋正子)

★行く春の田圃余さず土起す/甲斐ひさこ
春が行くと初夏。田圃はどこも余さず土が起こされて、はやも田植えの準備が始まったのだろう。「余さず」に作者の驚きがあって、「行く春」をそのことで深く感じとっている。(高橋正子)

★一村を包み信濃の花りんご/大山 凉
林檎といえば、信濃が思い浮かぶ。一村を包んでしまうほどの林檎の花。その光景だけだが、その光景がすっきりと抽出されて、詩になっている。(高橋正子)

★子が描きしげんげ田山の麓まで/池田多津子
子どもが描いた絵のげんげ田は、山の麓までげんげ田。故郷の原風景となって、子どもの心に沁みてゆくことだろう。子どもの心をよく汲んだ句。(高橋正子)

★蛙鳴く水新しき峡の田に/吉田 晃
蛙の鳴く峡の田は、あたらしい水が引かれて、田植えの準備が始まったのだろう。新しい水を喜ぶ蛙の声に、季節の新鮮さが伝わってくる。「水新しき」でこの句が生きた。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★若葉風路地にあおあお生まれいづ/藤田裕子
露地は風の通り道。吹き抜ける薫風の有様を上手く読まれており、共感の一句です。(宮本和美)

★芦伸びるまっすぐという美しさ/古田けいじ
水辺にまっすぐに伸びる芦の美しさにとても感動されたお気持ちが伝わってまいります。名詞止めにされていることで、とても美しさが強調されていると思います。(藤田裕子)

★鉄橋を駆けるSL風薫る/國武光雄
昔よく見かけた風景、懐かしく感じました。風薫る春のロマン溢れる作品と存じます。(宮本和美)

★ポヒー咲く飛行機雲斜めに曳れゆく/祝恵子
咲くポヒーに目をむけ、見上げると飛行機雲が飛行機の跡に曳かれて行くように流れいいく有様が浮かび上がって参ります。ポヒーと飛行機雲との取り合わせ抜群。(宮本和美)

★新しき風の道あり若楓/小河原宏子
今日の夕方散歩に出かけ、新緑の爽やかな風の通る道を歩いてきましたので本当に実感として共感する句です。「新しき風」と「若楓」の季語が絶妙で、胸の中を爽やかな風が吹き抜けるようです。(かつらたろう)

★囲いたる水位監視所若葉かな/まえかわをとじ
琵琶湖でしょうか。晴天で水位監視所には人影もなく、周囲を明るい若葉が彩っています。無骨な監視所とそれを取り囲む若葉のやわらかさとの取り合わせの妙を感じます。(多田有花)

★浚渫船底よりさらう春の河/志賀たいじ
浚渫船によって、水底の土砂や岩石をさらい水深を増す春の河。豊かに水の満ちた、ゆったりとした明るい風景の中、すべてが活気付く新たな季節の躍動感も感じます。(藤田洋子)

★沖待ちの船も長閑に日が暮れる/高橋秀之
遠くに少し霞んでみえる「沖待ちの船」と作者のいる陸地とを大きく包んで日が暮れていきます。のどかな時間と大きな景に春らしさがあります。(池田加代子)

★植え替えて蓮鉢に水満々と/黒谷光子
蓮は春に植え替えるのですね。泥の中のすっきりと根を整理したあと、鉢を満々と満たす水の新しさにうれしさを感じます。(池田加代子)

★夏近く帰路の車の窓を開け放ち/堀佐夜子
肌寒さの残るころは車の窓を開けるなんて思いもよらぬことでした。走る車の窓から入る風が心地よく感じるころとなり、体も心も軽く感じられます。もう初夏を感じる風です。(池田多津子)

【入選Ⅱ/19句】
★野薊と昼一本のバスを待つ/甲斐ひさこ
ローカルな味わいのある句です。季語と中七に、春の長閑さを感じます。(飯島治蝶)

★重ね厚く咲きて嬉しき牡丹かな/河野啓一
八重咲きの牡丹がぽってりと美しく咲いたことでしょう。丹精の喜びが初夏を思わせる光とともに伝わってきます。(小西 宏)

★眩しさの木々に溢れて四月尽/あみもとひろこ
一気に木々には緑が溢れ、夏が近づいたような日差しとなりました。木々の新しい葉が眩しく光る、この季節の躍動を感じました。(高橋秀之)

★シャガ咲いて無傷の一日(ひとひ)始まれり/井上治代
朝に見つけたしゃがの花だと思いますが、清々しさを感じる花で「無傷の一日の始まり」に共感しました。(池田多津子)

★”採らないで下さい”もっこうばら黄の垣に/かつらたろう 
29日の日お天気が良いので須磨離宮公園へ行くと柔らかいなんとも言えない黄色のもっこうばらを見ました。句に詠まれているように手折りて持って帰りたいくらいに可愛い薔薇の花でした。(小河原 宏子)

★夕映えの日のあわあわと紫雲英かな/小口康與
薄紫色の紫雲英が夕日に映えて広がり、一枚の絵のような美しい光景だったと思います。(井上治代)

★自転車の少年口笛つつじ咲く/大給圭泉
道沿いに躑躅が美しく咲いている中を口笛を吹きながら少年は何処へいくのでしょう。爽やかな気持になれる好きな句です。(甲斐ひさこ)

★陽と風をまるごと呑める鯉幟/かわなますみ
初夏の明るい光とさわやかな若葉風を思う存分吸い込んで、生あるごとく勢いよく大空を泳ぐ鯉幟。作者も童心にかえって、この季節を楽しんでおられるようで、元気をいただきました。(柳原美知子)

★サクソフォン若葉の下に吹く人も/多田有花
木々の芽も伸び、さわやかな若葉のころとなっています。心地よくサクソフォンを吹くことができそうです。(池田多津子)

★メーデーに風船配る平和かな/竹内よよぎ
風船の季語がよく効いて、昨今の子供連れ、家族ぐるみのメーデーの雰囲気がよく表現されていると思いました。(志賀たいじ)

★日が差して柿の若葉の玻璃に透く/藤田洋子
平明な表現ながら何ともいえない柿若葉の美しさ活写された御句かと存じます。大変勉強になりました。(河野啓一)

★春検診幼児元気に泣きさけぶ/おくだみのる
花鳥風月もよいが、この様な日常俳句が大好きです。 若き母親と元気な幼児の姿がありありと表現された佳き句と存じます。(宮本和美)

★実桜の仰ぐ高さに光りおり/臼井愛代
ふと見上げると、みどり濃く茂り始めた葉桜の間に見え隠れして、さみどりの瑞々しい実が輝いている。初夏へと移りかわる季節を実感し、生命力を感じます。(柳原美知子)

★すかんぽに祭太鼓の音流れ/柳原美知子
すかんぽと祭太鼓のどちらにも通じる飾らない素朴さが、読者に、親しみと、何処か懐かしい感じを与える御句と思います。(臼井愛代)

★蟇の声宅地に残る田一反/上島笑子
一反だけ残った田んぼの蟇の声が、すっかり宅地となった地域にも、昔ながらの自然を思い起こさせて長閑です。(臼井愛代)

★一年生花のアーチを潜りゆく/飯島治蝶
入学式のひとこまでしょうか。満開の桜並木の下を新入生が歩いていきます。桜は門出にふさわしい花ですね。(多田有花)

★矢車やたつた四人の分校に/宮本和美
幟竿の先端に軽快な音を立て、日に輝いて回る矢車。その明るさも嬉しく、五月幟が四人の成長を見守っているようで、季節の爽やかな明るさのあふれる分校です。
(藤田洋子)

★存分に風と戯れ片栗の花/篠木 睦
山地や林間に群落を作る片栗の花。豊かな自然の中で、心地よい風とともにある可憐な片栗の花の姿が、実に清々しく美しく感じます。(藤田洋子)

★風に揺れ都わすれの五、六本/吉川豊子
順徳院が承久の乱に荷担したとして佐渡に流されたときに、この花を見て都への思いを忘れたところから「都わすれ」の名前がついたとか。風に揺れる紫の花は心慰めるものなのでしょう。「五、六本」ゆえにいっそう心に残ります。(池田多津子)


■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★一村を包み信濃の花りんご/大山 凉
(光子・たいじ・治蝶・圭泉・泰與・啓一選)

りんごの花は写真で見るだけですが、信濃のひろびろと続く林檎園が薄紅に染まる光景を想像させていただきました。(黒谷光子)
信濃のりんごの咲く里の園、延々と続く薄紅色に染まる景を想像する丈で心が和みます。好きな句です。(志賀たいじ)
一読して、信濃の花咲くりんご畑の景を想起しました。白い可憐な林檎の花が咲き、よい香りに包まれた広々とした畑の広がり。一村を包みという表現がぴったりです。秋の収穫が楽しみです。(飯島治蝶)
良い香りの満ちて信濃の村を花りんごが覆ってる、想像しても気持ちよい景色ですね。(大給圭泉)
今の長野県の里山は桃の花と白い林檎の花とが咲き乱れて、心温まる風景をかもし出しておりますね。(小口泰與)
信州りんごの里、いいですね。山あいが遠く白く霞んで、陶然とした晩春の風情を想像しました。(河野啓一)

【次点/5点】
★野薊と昼一本のバスを待つ/甲斐ひさこ
(ひろこ・たろう・治蝶・佐夜子・泰與選)

■2008年5月伝言板■

2008-05-01 00:06:11 | 伝言板
本名でお書き込みください。匿名はご遠慮ください。
□「ネット上の議論、主張からは原則として匿名を排すべきです。匿名は身の上相談とか、ゲームとしての論争とかに限定する。/西垣通・東大教授/朝日新聞1月4日より」匿名は、俳号とは違って、自分の存在を知られたくない、という点を認識すべきでしょう。俳人や詩人は、社会的に自分の存在をはっきりしたものにしなければならないのです。(高橋信之 2000/1/9)

水煙8月号受付中/6月10日締切厳守!

ブログ句会解散!
□ブログ句会は、解散されました。従って、各自個人の俳句ブログは、各自個人の管理となります。ご了承ください。

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■今日の俳句/5/31(土)
土佐路ゆく茅花流しに吹かれつつ/柳原美知子
「茅花流し」は、茅の花が穂になり、その絮が吹かれるようになる頃吹く風のこと。夏の季語。やさしく、詩情のある季語である。その風に吹かれて外光豊かな土佐路の、青い山や川そして海を見つつ行く旅の、安らかな楽しさが思える。(高橋正子)


■<今日の俳句>の過去一覧は、下記アドレスをクリックし、ご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/npo_suien03/

■5月の花/尾崎弦撮影

※左より:しゃがの花・二輪草・楓の花・若楓。画像をクリックしますと拡大します。

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