【最優秀/2月1日】
★図書館の冬日残れる席に座す/尾 弦(信之添削)
しずかな図書館にそこだけちょうど冬日があっているところがある。そこに席を決めて座ると、ほのかな温みとくつろぎが身にひろがる。「冬日残れる席」に作者のすべての思いが詠み込まれた。(正子評)
【最優秀/2月2日】
★降る雨の明るき二月来たりけり/堀佐夜子
二月になると、確実に日が永くなっているのが実感でき、降る雨さえも明るく降ってくれる。下五の「来たりけり」の切れ字は、余計を捨てた作者の思い切りの良さがあって、早春の二月を浮かび上がらせた。(正子評)
【最優秀/2月3日】
該当作品なし
【最優秀/2月4日】
★春立つや球根花の薄むらさき/堀佐夜子
「薄むらさき」の色が、春立つ日にふさわしく、やさしさがある。球根の花の薄むらさきこそが、早春の花と言える。(正子評)
【最優秀/2月5日】
★きみどりの菜の花の束塩漬けに/ 藤田裕子
菜の花の束を買い戻り、早速塩漬けに。春を告げるものを一つ食卓に出すのも主婦としての喜び。きみどりの菜の花が目に鮮やかで、いきいきとした心が見える。(正子評)
【最優秀/2月6日】
★春立ちてポプラの空を風揺する/志賀たいじ
ポプラの枝の揺れ具合に、春立つ日の風が見える。春立つと、ポプラの背丈を渡る風がつややかに感じられる。春の気配をポプラの空に感じた目の確かさがいい。(正子評)
【最優秀/2月7日】
★この町が子の故郷に淡き雪/小川美和
移り住んだこの町は、子どもたちが育った町。淡雪が降るのを眺めながら、子どもたちが小さかったころのこと、あんな思い、こんな思いが湧いてくる。この町は子どもたちの故郷になるのである。「淡き雪」が思いをあらわしている。(正子評)
【最優秀/2月8日】
★春嵐あとの夕陽のやわらかき/多田有花
春の嵐が猛烈に吹いたあと、何事もなかったかのように、夕陽がおだやかに沈もうとしている。「夕陽のやわらかき」に、きれいな夕陽の色が見える。(正子評)
【最優秀/2月9日】
★青竹の結界太く盆梅展/黒谷光子
「結界」は、寺院の内陣と外陣を分ける柵、また、外陣中に僧俗の席を分かつための柵、お茶席で風呂先屏風の代用品としてものなどのこと。つまり、清らかな世界と俗な世界を分かつものである。太い青竹が結界に使われて、清らかな梅の展示会場が作られている。太い青竹がきっぱりと俗を断ち切っているのがよい。(正子評)
【最優秀/2月10日】
★東京の谷の多さに日脚伸ぶ/松澤龍子
東京には坂が多い、つまり、谷も多いことになる。谷の日陰っていたところにも、日差しが届くようになり、春の訪れが感じられる。「谷の多さ」は、地に着いた視点だ。(正子評)
【最優秀/2月11日】
★雪雫木々に光れる山の朝/岩本康子
雪山の朝の眩しさが、爽快。どの木にも雪雫が光り、目覚めた朝は、まさに別世界。歯切れのよい句だ。(正子評)
【最優秀/2月12日】
★風日ごと明るき二月の土手に立つ/多田有花
日毎明るくなっていくのを、もっとも感じさせてくれるのが風。二月の土手に立つとそのことが、実感できる。「土手に立つ」は、表現として平凡だが、作者の位置、姿をはっきりさせていて、俳句としては重要な点が押さえられている。(正子評)
【最優秀/2月13日】
★自生なる花菜畑に抜きん出る/池田多津子(正子添削)
飾り気のない実直な句で、自生の花菜が、畑の他のものより抜きん出ているのも、優しい姿をもちながらも、自然のもののたくましさである。(正子評)
【最優秀/2月14日】
★青ぬたをつくりて添える柚の色/丸山草子
和え物には、天盛といって器に盛り付けた上に柚子や木の芽を載せるが、その柚の黄色なのだ。青と黄の色が鮮やかで、言いたいことをはっきり言っている。心をこめて作ることへのささやかながらの充実感がいい。(正子評)
【最優秀/2月15日】
★春めくや堰に集まる水の音/長岡芳樹
「堰に集まる水」に川の景色が想像できる。雪解水を運こぶ流れが堰に集まり、堰を越えるとき水の音がする。春めく水音に、待ち焦がれた春への喜びがある。(正子評)
【最優秀/2月16日】
★野の色になじみ初めし蕗の薹/篠木睦(正子添削)
野に出たばかりの蕗の薹は、さみどりの初々しい色をしているが、しばらくすると、日光にあたり、早春の風を受けて、さみどりが濃くなり、紅を掃いたようになり、野にあるべき色となる。「野の色になじむ」の感覚がいい。(正子評)
【最優秀/2月17日】
★竹秋の風は高きをそよぎけり/大山涼
もう竹秋なのかと思わされた。地下茎に筍をはぐくみながら、竹は葉を変色させる。竹の黄葉である。黄色になった竹もやはり竹。すくすく伸びた竹は、秀先を風にそよがせている。秀先がそよぐほどの風が心地よい。 (正子評)
【最優秀/2月18日】
該当句なし
【最優秀/2月19日】
★漣のときおり白し藪椿/小西 宏
漣の白が藪椿によって、新鮮な印象になりった。「ときおり白し」には、動きがある。(正子評)
【最優秀/2月20日】
★日々雨の気侭に向ける水仙花/おおにしひろし(添削)
もとの句は、「春霖の」となっていたが、添削し、「日々雨の」とした。「水仙花」があるので、季語の扱いには注意したい。日々雨が降り、暖かくなり始めると、水仙も気ままな方向を向いて自由に咲く。春の霖雨のころの水仙を的確に捉えている。(正子評)
【最優秀/2月21日】
★球根をあまた埋めて春の土/臼井虹玉(正子添削)
冬の間囲っていたものを大小を整理して春になって植える球根である。春植え球根には、ダリア、グラジオラス、カンナ、百合などであるが、今は新しい品種の球根が増え、花の楽しみもいっそうになった。咲いたときを思う「春の土」が輝いている。(正子評)
【最優秀/2月22日】
★ヒヤシンスの白根豊かに水つかむ/池田多津子
水栽培のヒヤシンスのたくましさが詠まれている。ヒヤシンスの球根から、白い根がたくさん出て、しっかりと水を掴むような姿になっている。水の中でしっかりと根を育て、たくましい。その根があってこそ、ヒヤシンスは香り高く花を咲かせるのだ。 香りの高い花に目を向けず、根に目をむけて詠んだのは新しい。(正子評)
【最優秀/2月23日】
★青き踏む大き落暉の淀べりに/安丸てつじ
青く萌える草と大きな落暉とが触れ合うとき、そこに作者の思いがぴったりと重なって生まれた句。緩やかに燃える日と、みずみずしく萌える草のある淀の川辺が申し分のない設定である。(正子評)
【最優秀/2月24日】
★みずいろの空に万作黄を広げ/今村七栄
万作の花は、春に先駆けて細いひも状の花びらが縮れたように咲く。早春のみずいろの空をバックに、黄色の万作が、咲いていると、これから来るのびのびした季節が思われる。(正子評)
【最優秀/2月25日】
★大地より青きがそよぐ麦の列/小川美和
「大地より」は、大地の力を感じさせてくれる。大地にしっかり根を張りながら、そよいでいる青い麦の列。根を下ろす大地に支えられ、すくすくと伸びてゆこうとする青麦である。(正子評)
【最優秀/2月26日】
★自転車のかごにフリージア風を切り/臼井虹玉(正子添削)
花屋から買いもどるフリージアを自転車の前籠に入れ、さっそうと風を切って走る。風にフリージアの香りがほのかにする。明るく若々しい句。(正子評)
【最優秀/2月27日】
★遠山も巨船も包み昼霞/岩本康子(正子添削)
遠い山も、巨船もすっぽりと包んだ真昼の霞。真昼間の光りが霞を通り、静かに発光している感じだ。「巨船も包み」は、意外性があって、関門海峡らしい風景であろう。(正子評)
【最優秀/2月28日】
★スイートピー細き蔓にて昇り初む/碇 英一
上五に置かれた「スイートピー」の印象が強く、その優しい花の印象をもって一句が読み下せる。「細き蔓」が昇りはじめるときの新鮮な驚きがいい。(正子評)
★図書館の冬日残れる席に座す/尾 弦(信之添削)
しずかな図書館にそこだけちょうど冬日があっているところがある。そこに席を決めて座ると、ほのかな温みとくつろぎが身にひろがる。「冬日残れる席」に作者のすべての思いが詠み込まれた。(正子評)
【最優秀/2月2日】
★降る雨の明るき二月来たりけり/堀佐夜子
二月になると、確実に日が永くなっているのが実感でき、降る雨さえも明るく降ってくれる。下五の「来たりけり」の切れ字は、余計を捨てた作者の思い切りの良さがあって、早春の二月を浮かび上がらせた。(正子評)
【最優秀/2月3日】
該当作品なし
【最優秀/2月4日】
★春立つや球根花の薄むらさき/堀佐夜子
「薄むらさき」の色が、春立つ日にふさわしく、やさしさがある。球根の花の薄むらさきこそが、早春の花と言える。(正子評)
【最優秀/2月5日】
★きみどりの菜の花の束塩漬けに/ 藤田裕子
菜の花の束を買い戻り、早速塩漬けに。春を告げるものを一つ食卓に出すのも主婦としての喜び。きみどりの菜の花が目に鮮やかで、いきいきとした心が見える。(正子評)
【最優秀/2月6日】
★春立ちてポプラの空を風揺する/志賀たいじ
ポプラの枝の揺れ具合に、春立つ日の風が見える。春立つと、ポプラの背丈を渡る風がつややかに感じられる。春の気配をポプラの空に感じた目の確かさがいい。(正子評)
【最優秀/2月7日】
★この町が子の故郷に淡き雪/小川美和
移り住んだこの町は、子どもたちが育った町。淡雪が降るのを眺めながら、子どもたちが小さかったころのこと、あんな思い、こんな思いが湧いてくる。この町は子どもたちの故郷になるのである。「淡き雪」が思いをあらわしている。(正子評)
【最優秀/2月8日】
★春嵐あとの夕陽のやわらかき/多田有花
春の嵐が猛烈に吹いたあと、何事もなかったかのように、夕陽がおだやかに沈もうとしている。「夕陽のやわらかき」に、きれいな夕陽の色が見える。(正子評)
【最優秀/2月9日】
★青竹の結界太く盆梅展/黒谷光子
「結界」は、寺院の内陣と外陣を分ける柵、また、外陣中に僧俗の席を分かつための柵、お茶席で風呂先屏風の代用品としてものなどのこと。つまり、清らかな世界と俗な世界を分かつものである。太い青竹が結界に使われて、清らかな梅の展示会場が作られている。太い青竹がきっぱりと俗を断ち切っているのがよい。(正子評)
【最優秀/2月10日】
★東京の谷の多さに日脚伸ぶ/松澤龍子
東京には坂が多い、つまり、谷も多いことになる。谷の日陰っていたところにも、日差しが届くようになり、春の訪れが感じられる。「谷の多さ」は、地に着いた視点だ。(正子評)
【最優秀/2月11日】
★雪雫木々に光れる山の朝/岩本康子
雪山の朝の眩しさが、爽快。どの木にも雪雫が光り、目覚めた朝は、まさに別世界。歯切れのよい句だ。(正子評)
【最優秀/2月12日】
★風日ごと明るき二月の土手に立つ/多田有花
日毎明るくなっていくのを、もっとも感じさせてくれるのが風。二月の土手に立つとそのことが、実感できる。「土手に立つ」は、表現として平凡だが、作者の位置、姿をはっきりさせていて、俳句としては重要な点が押さえられている。(正子評)
【最優秀/2月13日】
★自生なる花菜畑に抜きん出る/池田多津子(正子添削)
飾り気のない実直な句で、自生の花菜が、畑の他のものより抜きん出ているのも、優しい姿をもちながらも、自然のもののたくましさである。(正子評)
【最優秀/2月14日】
★青ぬたをつくりて添える柚の色/丸山草子
和え物には、天盛といって器に盛り付けた上に柚子や木の芽を載せるが、その柚の黄色なのだ。青と黄の色が鮮やかで、言いたいことをはっきり言っている。心をこめて作ることへのささやかながらの充実感がいい。(正子評)
【最優秀/2月15日】
★春めくや堰に集まる水の音/長岡芳樹
「堰に集まる水」に川の景色が想像できる。雪解水を運こぶ流れが堰に集まり、堰を越えるとき水の音がする。春めく水音に、待ち焦がれた春への喜びがある。(正子評)
【最優秀/2月16日】
★野の色になじみ初めし蕗の薹/篠木睦(正子添削)
野に出たばかりの蕗の薹は、さみどりの初々しい色をしているが、しばらくすると、日光にあたり、早春の風を受けて、さみどりが濃くなり、紅を掃いたようになり、野にあるべき色となる。「野の色になじむ」の感覚がいい。(正子評)
【最優秀/2月17日】
★竹秋の風は高きをそよぎけり/大山涼
もう竹秋なのかと思わされた。地下茎に筍をはぐくみながら、竹は葉を変色させる。竹の黄葉である。黄色になった竹もやはり竹。すくすく伸びた竹は、秀先を風にそよがせている。秀先がそよぐほどの風が心地よい。 (正子評)
【最優秀/2月18日】
該当句なし
【最優秀/2月19日】
★漣のときおり白し藪椿/小西 宏
漣の白が藪椿によって、新鮮な印象になりった。「ときおり白し」には、動きがある。(正子評)
【最優秀/2月20日】
★日々雨の気侭に向ける水仙花/おおにしひろし(添削)
もとの句は、「春霖の」となっていたが、添削し、「日々雨の」とした。「水仙花」があるので、季語の扱いには注意したい。日々雨が降り、暖かくなり始めると、水仙も気ままな方向を向いて自由に咲く。春の霖雨のころの水仙を的確に捉えている。(正子評)
【最優秀/2月21日】
★球根をあまた埋めて春の土/臼井虹玉(正子添削)
冬の間囲っていたものを大小を整理して春になって植える球根である。春植え球根には、ダリア、グラジオラス、カンナ、百合などであるが、今は新しい品種の球根が増え、花の楽しみもいっそうになった。咲いたときを思う「春の土」が輝いている。(正子評)
【最優秀/2月22日】
★ヒヤシンスの白根豊かに水つかむ/池田多津子
水栽培のヒヤシンスのたくましさが詠まれている。ヒヤシンスの球根から、白い根がたくさん出て、しっかりと水を掴むような姿になっている。水の中でしっかりと根を育て、たくましい。その根があってこそ、ヒヤシンスは香り高く花を咲かせるのだ。 香りの高い花に目を向けず、根に目をむけて詠んだのは新しい。(正子評)
【最優秀/2月23日】
★青き踏む大き落暉の淀べりに/安丸てつじ
青く萌える草と大きな落暉とが触れ合うとき、そこに作者の思いがぴったりと重なって生まれた句。緩やかに燃える日と、みずみずしく萌える草のある淀の川辺が申し分のない設定である。(正子評)
【最優秀/2月24日】
★みずいろの空に万作黄を広げ/今村七栄
万作の花は、春に先駆けて細いひも状の花びらが縮れたように咲く。早春のみずいろの空をバックに、黄色の万作が、咲いていると、これから来るのびのびした季節が思われる。(正子評)
【最優秀/2月25日】
★大地より青きがそよぐ麦の列/小川美和
「大地より」は、大地の力を感じさせてくれる。大地にしっかり根を張りながら、そよいでいる青い麦の列。根を下ろす大地に支えられ、すくすくと伸びてゆこうとする青麦である。(正子評)
【最優秀/2月26日】
★自転車のかごにフリージア風を切り/臼井虹玉(正子添削)
花屋から買いもどるフリージアを自転車の前籠に入れ、さっそうと風を切って走る。風にフリージアの香りがほのかにする。明るく若々しい句。(正子評)
【最優秀/2月27日】
★遠山も巨船も包み昼霞/岩本康子(正子添削)
遠い山も、巨船もすっぽりと包んだ真昼の霞。真昼間の光りが霞を通り、静かに発光している感じだ。「巨船も包み」は、意外性があって、関門海峡らしい風景であろう。(正子評)
【最優秀/2月28日】
★スイートピー細き蔓にて昇り初む/碇 英一
上五に置かれた「スイートピー」の印象が強く、その優しい花の印象をもって一句が読み下せる。「細き蔓」が昇りはじめるときの新鮮な驚きがいい。(正子評)