デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/2月24日~29日/高橋信之選

2008-02-28 13:22:46 | 入賞発表
【2月29日】
★ものの芽のすべて包まれ雨の朝/丸山草子
雪ではなく、雨です。自然界の息吹が聞こえ始め、春ですね。中七の「すべて包まれ」に作者の思いがある。(高橋信之)

【2月28日】
★大凧の榛名を背負い舞いにけり/小口泰與
背景に榛名山を置き、春空高く大凧が舞う情景には、胸のすくような風景の広がりと明るさがあります。(臼井愛代)

【2月27日/2句】
★薄氷の日を返しては溶けにけり/宮本和美
春とは言え、まだ寒い中にうすうすと張る氷がやわらかな太陽の日を浴びて、溶けている様子を的確に表現していると思います。(小口泰與)

★淡雪の濡れて光るや暁けの道/かつらたろう
勤めの行き来の道であろうか。「暁け」に作者の強い思いがある。「淡雪の濡れて光る」であれば、いつもとは、違った「暁けの道」である。(高橋信之)

【2月26日】
★風光る上り電車は地を揺らし/小川美和
早春の快い勢いがある。まさに「風光る上り電車」である。(高橋信之)

【2月25日/2句】
★ものの芽のうえに一歩の子を立たす/甲斐ひさこ
「ものの芽のうえ」であれば、「一歩の子」が確りと立つのである。周りの喜びが見えてくる。(高橋信之)

★ひさびさの明り眩しき雛人形/おくだみのる
納戸の奥深くにしまわれていたお雛様、久しぶりに明るい春日に中に取り出され、少し眩しげな雛人形に寄せる愛しみと思い出が溢れています。(大山 凉)

【2月24日/2句】
★枯れ色のなかに畦火の焔立つ/飯島治蝶
「畦火の焔」に焦点が絞られ、色の対比が鮮明だ。背景の「枯れ色」がいい。(高橋信之)

★春の雪嬉しく珈琲豆を挽く/河野啓一
「春の雪」を詠んで、「嬉しく」は、作者の率直で正直な言葉だ。「春の雪」と「珈琲豆」との取り合わせがいい。(高橋信之)

入賞発表/2月17日~23日/高橋信之選

2008-02-22 16:24:07 | 入賞発表
【2月23日】
★春水の月もろともに掬いけり/まえかわをとじ
水鏡の中の月は両の手で掬えるほどの丸さ、そっと手を入れてみた水はもう春の水の感触です。ときめきのある好きな句です。(甲斐ひさこ)

【2月22日/2句】
★耕さる土白々と風光る/かつらたろう
「土黒々と」であれば、並みであろうが、作者は、「土白々と」見たのだ。季語「風光る」があって、言葉が真実のものとなった。(高橋信之)

★竹林をさらさら越ゆる春夕陽/かわな ますみ
私の自宅からも夕日を受ける竹林が見えています。しかしなかなか詠めませんでした。「さらさら越ゆる」とすらすら詠まれる所に感じ入ります。(まえかわをとじ)

【2月21日/2句】
★真直ぐな石の参道風光る/飯島治蝶
うらうらと晴れた春の日に、やわらかな風が吹き、まっすぐに伸びた参道の木々が風にゆらぎまばゆいような明るさを感じさせてくれますね。明るい明日を約束されているようです。(小口泰與)

★春月の届く畳に座りけり/黒谷光子
この時期のお月様はまだまだ冴えた感じが残っており、そのお月様を眺めるべく、また、月の光が届く座敷で、ゆつたりと家族で話し合っている様子がとても素敵だと思います。(小口泰與)

【2月20日】
★該当作なし

【2月19日】
★水溢れほうれん草を洗いけり/宮本和美
「水溢れ」いて、ほうれん草の鮮やかな緑だ。二月、冬から春にかけて収穫するのは、秋蒔きの在来種で、立春過ぎの寒さが厳しい頃のほうれん草だが、生きいきとして鮮やかな緑だ。(高橋信之)

【2月18日】
★信号を待つ間も春光子らにふる/小川美和
子ども達への眼差しも春光のように温かです。(黒谷光子)

【2月17日/2句】
★春めきて少し明るい紅を買う/大山 凉
少しずつ春めいて来ました。心も温かくなってまいります。作者が街で何を買ったか知る由もありませんが、「少し明るい紅を買う」遠慮がちな作者の、浮き立つような心の弾みがよく表現され、御婦人らしい春の句になりました。(おおにし ひろし)

★芽吹くもの深く覆いて雪積もる/黒谷光子
立春を過ぎての「冬」本番が芽吹くものを深く覆うという様子に表れています。(高橋秀之)

入賞発表/2月10日~16日/高橋信之選

2008-02-10 12:12:16 | 入賞発表
【2月16日】
★光りては雫となりて春の雪/黒谷光子
春の日に雪が解けて、明るい日差しを受け光りながら粒の雫がだんだん大きくなり、自身の重みに耐え切れずに大きくなった雫がポツンポツンと落ちてゆく。春の雪らしい一句です。(飯島治蝶)

【2月15日】
★土荒く鋤かれいる田の畦青む/あみもとひろこ(信之添削)
今の時季は、田植えに備えて土の荒起こしをし、寒風に曝す事により病中害を押さえてますね。田んぼは荒々しい情景でも、畦は日毎に草の芽が萌えだしていて、嬉しいさみどりになっています。早春の景がよく捉えられて好きな句です。(かつらたろう)

【2月14日】
★朝日射し薄氷軽く動き出し/平田 弘
春先にうすうすと張る氷が朝日と春の穏やかな風に吹かれて、ゆったりと動く様子を確りと写生しておりますね。なんとものどかな風景で、素晴らしい句だと思います。(小口泰與)

【2月13日】
★冬日射し影ゆるやかに樹々の揺れ/丸山草子
「冬日」、「影」に春近しを見た。冬の過ぎ行く安堵が「ゆるやかに揺れ」にある。暑さ寒さとは別に、春は、光りにある。(橋信之)

【2月12日】
★一つずつ日を受けとめて犬ふぐり/黒谷光子
あんなに小さい犬ふぐりの花も、まだ寒い中、それぞれ一生懸命光を求めて可憐な瑠璃色の花を咲かせていますね。早春の春めく兆しが素敵で共感します。(かつらたろう)

【2月11日/3句】
★のどけしや金平糖のつのまるし/小口泰與
「金平糖」は、子供の頃の思い出がいっぱい詰まった駄菓子だ。「つのまるし」がうれしい。春が来た「のどけし」の詩情が「つのまるし」でよりリアルなものとなった。(橋信之)

★歩行器の母足取りも春立てり/國武光雄
「歩行器の母」の喜び、作者の嬉しさ、それらを「春立てり」が受け止めている。読み手の心を「春立てり」の言葉が明るくさせてくれる。(橋信之)

★せつせつと田に積む春雪見える駅/あみもとひろこ
駅から見える風景です。常は何気無しに見てても雪の田は又違う風景に見えますね。(堀佐夜子)

【2月10日/3句】
★せめぎ合う流氷隆起海のいろ/志賀たいじ
「海のいろ」は、無理のない言葉で、訴えてくる力が強い。下五は難しいが、力まずに成功した。(橋信之)

★早春の青菜溢るる流し台/宮本和美
身近な生活の一隅にも、早春の初々しさ、新鮮さ、新しい春への息吹や希望が見られます。(おおにしひろし)

★ぼたん雪口に入れと児が走る/堀佐夜子
児らの姿が生き生きと表現され、動きのある楽しい句だと思います。(まえかわをとじ)

入賞発表/2月1日-9日/高橋信之選

2008-02-08 16:50:51 | 入賞発表
■高橋信之選

【2月9日】
★淡雪の中に水路の音生まる/まえかわをとじ
「淡雪」の静かな世界の中だからこそ、「水路の音」は、心に明るく強く響く。「水路の音」が心に届けば、「淡雪」の世界は、より静寂となる。明るくて深い世界だ。(橋信之)

【2月8日】
★該当作なし

【2月7日/2句】
★春に入るひかりは花屋の店先に/小川美和
花屋にはさまざまな花が並び始めました。差し込む2月の陽光を受けて色とりどりに咲く花に早々と春を感じ、心華やぎます。(池田多津子)

★早春というそれだけで弾むもの/宮本和美
これから本格的な春がはじまる早春ならではの、わくわくするような明るい気持ちが伝わってきます。(臼井愛代)

【2月6日】
★該当作なし

【2月5日/3句】
★春光に起伏明るく信貴連山/あみもとひろこ
中七が、季語の春光に呼応して、春らしい明るい句に仕立てています。(飯島治蝶)

★しら梅の明日咲く蕾ゆるやかに/甲斐ひさこ
「明日咲く」という思い切った表現に着目してみました。今にもほころびそうな、丸みを帯びた蕾が、「ゆるやかに」という表現とぴったりとしているように感じました。咲いてほしいという期待感も伝わります。蕾が大きくクローズアップされた写真を思い浮かべました。語の流れにリズム感も感じました。(藤田荘二)

★正座して立春の花活けにけり/まえかわをとじ
生け花の花材には春のものが多くなってきました。春への期待が大きくなる「立春」には特別の思いがあり、「正座して」活けようとする気持ちがよく分かります。(池田多津子)

【2月4日/3句】
★立春の朝刊すとんと音立てり/甲斐ひさこ
二月四日この日から、暦の上ではようやく春になったという気持ちの安堵と日脚も伸び、木々は芽ぶいて、気持ちも浮き立ってくる様子を「朝刊すとんと音たてり」で現していると思います。(小口泰與)

★降る雪のなかより生まれ来る電車/飯島治蝶
雪の珍しい土地では、視界が真っ白になる雪暗に、なかなか眼が慣れません。その中から「生まれ来る」かのように現れた電車。自然の大きさと、日常の力と、ともに頼もしく感じます。(かわな ますみ)

★立春の水たっぷりと花鉢に/黒谷光子
立春の日を迎える喜びに、花への慈しみがあふれているようで、新しい季節の始まりの明るさを感じます。(藤田洋子)

【2月3日】
★該当作なし

【2月2日/2句】
★街路樹の冬芽ふくらみ始めけり/大山 凉
街路樹の冬芽も目に見えてふっくらとしてきました。見たままを素直に表現された一句です。(飯島治蝶)

★鋤き返す土の輝き春隣/宮本和美
鋤き返されてくろぐろと輝くような土には、植物が芽を出し、生き物が活発に動き出す春の準備が整ったかのような頼もしさがあります。(臼井愛代)

【2月1日】
★さくさくと畦を踏み込む冬の朝/小口泰與
寒さのいっそう身にしみる冬の朝ではありますが、「さくさく」と畦道を歩む心地よい響きに、寒気の中にも作者の軽やかな心を窺えるようです。(藤田洋子)