木下昌輝『秀吉の活』(幻冬舎)を読む。
秀吉の生涯を「活」というキーワードで整理し、
「就活」「婚活」「転活」「妊活」「終活」など十章で構成しています。
新聞連載に「朝活」を加筆して単行本化したものです。
基本は、藤吉郎の出世物語。
藤吉郎をめぐる「いい話」にするためには、
天下統一までの壮年期をメインにする必要があり、
司馬遼太郎の『新史太閤記』や吉川英治の『新書太閤記』と似た構成になります。
利休や秀次の切腹など、天下人になってからのダークな面はほとんど描かれず、
人間味あふれるサクセスストーリーとなっています。
都合の悪い史実をスキップすることで、
テンポの良さと藤吉郎のキャラの一貫性を保つのは巧妙なテクニック。
他の秀吉モノとの差別化のために、独自のキャラ設定も行われています。
嫌味な人物として描かれることの多い義父・竹阿弥とのエピソードは、
けっこう「泣かせる」内容に仕上げています。
策を弄してライバルを蹴落とす光秀の最期は、伏線をきちんと回収したものになっています。
秀吉の生涯を、いささかキレイに描きすぎたかな、と思いますが、
いま流行りの「○活」というキーワードでまとめた「現代版出世太閤記」。
『宇喜多の捨て嫁』のような救いのなさとは違った、
木下昌輝の「泣かせる」ストーリーテリング(意図が見えてしまうのが難)が
十二分に発揮された作品でした。
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