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ノイバラ山荘

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「高尾薬王院唱」

2013-01-21 10:13:27 | 短歌
北原白秋『橡(つるばみ)』より17首


「高尾山薬王院唱」

       昭和十二年八月十六日より三日間に亘り、我が多磨の第
       二回全日本大会を武州高尾薬王院にて催す、予はその前
       日より先行その参集を待つ。

   精進のともがら六十九人なり

我が精進(さうじ)こもる高尾は夏雲の下谷うづみ雲となづさふ

   薬王院前 十六日

高尾やま蒼きは杉の群立(むらだち)の五百重(いほへ)が鉾の霧にぬれつつ

雲にして蒼きはさぶき神杉の老おのづから千歳養ふ

   茶亭にて 十七日

小鳥たつ高山岸の舞い昧爽(あけぐれ)は声多(さは)にしてすがしかりけり

日あし未だ雲ゆ立ち来(こ)ね高尾嶺(ね)や五百重神杉木膚(こはだ)明れり

子らと在り杉の木のまを射し来たる朝日の光頭(づ)に感じつつ

   実作指導のため見晴台へ吟行す、その道にて 十七日

この山の榧(かや)の木群(こむら)の榧の果のここだかなしきこれや我が子ら

君が杖石にひびくを汗あえて足病ましむな山路近きに  足を病む庄司正史に

岨(そば)の土塩しろくふく夏今やひたぶるに歌は思ひていくべし

こぼれ日に落ちたる蟬の腹見れば粉(こ)のしろくうきて翅(はね)は乾(から)びぬ

叢咲(むらざ)きて粗(あら)き臭木(くさぎ)の花ながら奥山谿(おくやまだに)の照りがしづけさ

鳩笛や子らを連れゆく山路にぞほろこと吹きて我はありける

   講堂にて 十七日 清浄心と書ける大額の下にて

薬王院反(かへ)しはげしき外(と)の照りを見つめて痛し我らこもらふ

日の光はげしくしろき石の上(へ)に息はずまする蝶ぞ闌(た)けゆく

   下山の前夜 十八日

月あかり後(のち)や来たりしくろぐろと杉の葉むらを見つつ我が寝つ

笛ながら仏法僧の音(ね)は吹きて誰か梢の月に覚めゐる

この夜聴く杉のしづくは我が子らも聴きつつぞあらむ枕しつつも





    

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