ここはテレストリアルガードのサブオペレーションルーム。今皿に盛られたワラビのおひたしが、上溝隊員の手によって運ばれてきました。
「はーい、ワラビのおひたしですよ~」
女神隊員は仕出のお弁当を食べてましたが、その目の前にワラビのおひたしがどーんと置かれました。
「あは、またこれですか?」
「たくさん採ってきたからねぇ、あと10日は出てくるわよ」
「あははは・・・」
女神隊員は苦笑するしかありませんでした。
この部屋には今もう1人います。海老名隊員です。海老名隊員は別のテーブルでノートパソコンでインターネットを見ています。その手元には仕出のお弁当がありますが、インターネットに夢中らしく、まったく手をつけてません。上溝隊員はその海老名隊員を見て、
「えびちゃん、あなたもワラビ、食べる?」
「あ~ いらないですよ」
「あなたが採ってきたワラビよ」
しかし、海老名隊員からの返答はありません。上溝隊員は呆れてます。
「もう~」
インターネットを見ていた海老名隊員ですが、あるページを開いた途端、はっとしました。かなりショックを受けたようです。そして首をぎーっと廻し、横目で女神隊員を見ました。海老名隊員は上溝隊員とお弁当を食べながら談笑しています。もしこの状態で自分を見たら、明らかにノートパソコンの画面を見てしまいます。海老名隊員は反射的にノートパソコンを閉じてしまいました。
ここで自動ドアが開いて隊長が現れました。
「ただいま~」
さらに橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も入ってきました。上溝隊員はこの4人を見て、
「おかえりなさい」
と、海老名隊員が隊長の前に立ちました。
「隊長、ちょっと」
海老名隊員には珍しく、かなりの真顔です。隊長は何かを感じました。海老名隊員は隣室のオペレーションルームに入りました。隊長もそれに続きました。海老名隊員が壁に付いてるボタンを押すと、自動ドアが閉じました。上溝隊員はそれに気づき、はっとしました。いや、上溝隊員だけではありません。橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も驚いてます。そのただならぬ雰囲気に、女神隊員も何かを感じたようです。
実はオペレーションルームとサブオペレーションルームの間の扉は、今の隊長の方針で常時開けっ放しになってました。この扉が閉まったということは、何か重大事項が発生したということ。5人の視線は扉に集中しました。
しばらくしてその扉が開きました。そこにはかなりきつい眼の隊長がいました。
「あ、みんな、落ち着いて聞いてくれ。特に女神隊員」
女神隊員ははっとしました。隊長は女神隊員を強い視線を送りました。
「あんたには耐えがたいほどのひどい写真になると思うが、一テレストリアルガードの隊員として見てくれ」
その怖い顔に女神隊員も覚悟を決めたようです。
隊長は後ろに立っていた海老名隊員を呼びました。
「おい、みんなに見せてやれ」
「はい」
海老名隊員は閉じていたノートパソコンを開きました。その画面には1つ眼の男の死体が映ってました。明らかに女神隊員と同じ人種です。それを見て5人の隊員が驚きました。特に女神隊員の驚きは、驚きと言うより、嘆きでした。かなりショックを受けてるようです。橋本隊員の発言です。
「これは?」
「インターネットに貼られてた。どうやらいろんなところに拡散してるらしい」
今度は寒川隊員の発言です。
「これって、女神さんの・・・」
「ああ、仲間だろうなあ・・・ たぶんあの墜落事故の写真だな」
「いったいどこから流出したんですか?」
「遺体搬出作業は警察や消防は断った。もちろん地元の消防団員も参加してないはずだ」
今度は橋本隊員です。
「じゃ、自衛隊から?」
「まあ、そうだろうなあ・・・」
と、ここで自動ドアが開きました。上溝隊員がそっちの方向に振り向くと、女神隊員が部屋を出て行くところでした。上溝隊員は慌てて女神隊員を追いかけました。
廊下に出ると女神隊員は右手を壁に付けました。ひじから小指の外側にかけて壁に押しつけてるって状態です。そしてその手に顔を押し付けました。
「う、うう・・・」
女神隊員は泣いてます。それを見て上溝隊員は何か声をかけようと思いましたが、何もできません。女神隊員が泣くのは今日2回目です。2回目とも上溝隊員の眼の前でした。1回目では心の中で笑ってましたが、今回は女神隊員に同情してます。けど、何も声をかけることはできません。上溝隊員まで自己嫌悪に陥ってしまいました。
しかし、これは女神隊員にはかなりひどい仕打ちです。女神隊員はテレストリアルガードの一員です。地球を守る組織のメンバーの1人なのです。ま、女神隊員にその自覚はあまりないようですが。
もちろん女神隊員の正体はなんなのか、テレストリアルガードはいまだに発表してません。写真を流出させたブサメンが知るよしもないのです。それでも香川隊長の怒りはかなりなものです。すぐに警視庁に通報。1時間もしないうちに流出元のブサメンの正体がバレ、即刻逮捕になりました。
しかし、流出した写真はインターネットを駆け巡り、いろんなところに貼られてます。しかも添えてある文章は嘲笑の雨あられ。これは完全に弱いものイジメ、単なる差別です。日本人はここまで劣化してしまったのでしょうか?
女神隊員は自室で小さくなってました。壁を背に体育座りです。両ひざの間から巨大な一つ眼が見えてます。ウィッグは珍しくつけてないようです。彼女は思い出してました。
彼女は5000もの同胞とともに母星を退避しました。5000の同胞は仮死状態でカプセルに入れられましたが、彼女は数百万人に1人の女神です。宇宙船の操縦を任されました。しかし、地球の側を通ったとき、テレストリアルガードスペースステーションJ1から攻撃を受け、この地球に墜落。そのとき彼女は5000の命とともに殉死する覚悟を決めました。けど、地球に激突した瞬間、彼女の本能が働いてしまい、ショートテレポーテーションとともに巨大化して難を逃れてしまいました。さらに地球上のテレストリアルガードの猛攻撃を受け、拉致られてしまい、いつのまにかその組織の一員になってました。
なんで自分はテレストリアルガードの1人になってる? 意志が弱いから? 宇宙船が地球に激突したとき、そのまま死んでしまえばよかったのに・・・ テレストリアルガードに拉致られたとき、巨大化して再び暴れればよかったのに・・・ たとえまたストーク号やヘロン号に攻撃され、身体がズタボロになっても、それはそれで本望だったはず・・・
私はどっちもできなかった。私は私の命がかわいかったのだ。5000もの同胞の命よりたった1個の自分の命を大事にしてしまったのだ。私はなんて情けないんだ・・・
せめてあの日散ってしまった5000の命を復権させたい。彼らは死んでるのに、地球人に嘲笑されてる。単眼が気持ち悪いという理由だけで差別されてる・・・ なら、私がこの顔を人前にさらせば・・・
私はヘルメットレディという名で、スーパーヒロインとしてこの星に迎えられた。私がこの顔をさらせば、みんな、少しはわかってくれるはずだ。そうだ、思い切って顔をさらそう!
じゃ、どこで顔をさらす? 今すぐ外に駆けて行って、巨大化する? いや、それじゃだめ。もっともっと印象的な場面で顔をさらさないと。それなら・・・
女神隊員は立ち上がり、廊下に飛び出ました。そして廊下を駆け抜け、サブオペレーションルームに入りした。中では海老名隊員がインターネットをやってました。海老名隊員は誰が入ってきたのか興味がないようです。いや、気づいてないのかも。が、
「海老名さん!」
女神隊員のその一言で、海老名隊員はマウスを握る手を止めました。
「海老名さん、巨大化する宇宙人を捜してください!」
海老名隊員はここでやっと振り返りました。すると女神隊員は珍しく単眼をさらしてました。海老名隊員はそれを見て思わず苦笑してしまいました。その状態での発言です。
「ム、ムリですよ、そんな・・・」
「海老名さんは遠くで起きてることや、未来で起きることが見えてますよね。なら、巨大化できる宇宙人が今どこにいるのか、わかるはずですよね!」
海老名隊員はそれを聞いて、「えっ?」という顔を見せました。そう、海老名隊員は千里眼の持ち主なのです。これを知ってる人は隊長だけでした。でも、女神隊員はいつしか気づいてしまったようです。ま、ほかの4人のテレストリアルガードの隊員も、なんとなく気づいてるようですが。
「はーい、ワラビのおひたしですよ~」
女神隊員は仕出のお弁当を食べてましたが、その目の前にワラビのおひたしがどーんと置かれました。
「あは、またこれですか?」
「たくさん採ってきたからねぇ、あと10日は出てくるわよ」
「あははは・・・」
女神隊員は苦笑するしかありませんでした。
この部屋には今もう1人います。海老名隊員です。海老名隊員は別のテーブルでノートパソコンでインターネットを見ています。その手元には仕出のお弁当がありますが、インターネットに夢中らしく、まったく手をつけてません。上溝隊員はその海老名隊員を見て、
「えびちゃん、あなたもワラビ、食べる?」
「あ~ いらないですよ」
「あなたが採ってきたワラビよ」
しかし、海老名隊員からの返答はありません。上溝隊員は呆れてます。
「もう~」
インターネットを見ていた海老名隊員ですが、あるページを開いた途端、はっとしました。かなりショックを受けたようです。そして首をぎーっと廻し、横目で女神隊員を見ました。海老名隊員は上溝隊員とお弁当を食べながら談笑しています。もしこの状態で自分を見たら、明らかにノートパソコンの画面を見てしまいます。海老名隊員は反射的にノートパソコンを閉じてしまいました。
ここで自動ドアが開いて隊長が現れました。
「ただいま~」
さらに橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も入ってきました。上溝隊員はこの4人を見て、
「おかえりなさい」
と、海老名隊員が隊長の前に立ちました。
「隊長、ちょっと」
海老名隊員には珍しく、かなりの真顔です。隊長は何かを感じました。海老名隊員は隣室のオペレーションルームに入りました。隊長もそれに続きました。海老名隊員が壁に付いてるボタンを押すと、自動ドアが閉じました。上溝隊員はそれに気づき、はっとしました。いや、上溝隊員だけではありません。橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も驚いてます。そのただならぬ雰囲気に、女神隊員も何かを感じたようです。
実はオペレーションルームとサブオペレーションルームの間の扉は、今の隊長の方針で常時開けっ放しになってました。この扉が閉まったということは、何か重大事項が発生したということ。5人の視線は扉に集中しました。
しばらくしてその扉が開きました。そこにはかなりきつい眼の隊長がいました。
「あ、みんな、落ち着いて聞いてくれ。特に女神隊員」
女神隊員ははっとしました。隊長は女神隊員を強い視線を送りました。
「あんたには耐えがたいほどのひどい写真になると思うが、一テレストリアルガードの隊員として見てくれ」
その怖い顔に女神隊員も覚悟を決めたようです。
隊長は後ろに立っていた海老名隊員を呼びました。
「おい、みんなに見せてやれ」
「はい」
海老名隊員は閉じていたノートパソコンを開きました。その画面には1つ眼の男の死体が映ってました。明らかに女神隊員と同じ人種です。それを見て5人の隊員が驚きました。特に女神隊員の驚きは、驚きと言うより、嘆きでした。かなりショックを受けてるようです。橋本隊員の発言です。
「これは?」
「インターネットに貼られてた。どうやらいろんなところに拡散してるらしい」
今度は寒川隊員の発言です。
「これって、女神さんの・・・」
「ああ、仲間だろうなあ・・・ たぶんあの墜落事故の写真だな」
「いったいどこから流出したんですか?」
「遺体搬出作業は警察や消防は断った。もちろん地元の消防団員も参加してないはずだ」
今度は橋本隊員です。
「じゃ、自衛隊から?」
「まあ、そうだろうなあ・・・」
と、ここで自動ドアが開きました。上溝隊員がそっちの方向に振り向くと、女神隊員が部屋を出て行くところでした。上溝隊員は慌てて女神隊員を追いかけました。
廊下に出ると女神隊員は右手を壁に付けました。ひじから小指の外側にかけて壁に押しつけてるって状態です。そしてその手に顔を押し付けました。
「う、うう・・・」
女神隊員は泣いてます。それを見て上溝隊員は何か声をかけようと思いましたが、何もできません。女神隊員が泣くのは今日2回目です。2回目とも上溝隊員の眼の前でした。1回目では心の中で笑ってましたが、今回は女神隊員に同情してます。けど、何も声をかけることはできません。上溝隊員まで自己嫌悪に陥ってしまいました。
しかし、これは女神隊員にはかなりひどい仕打ちです。女神隊員はテレストリアルガードの一員です。地球を守る組織のメンバーの1人なのです。ま、女神隊員にその自覚はあまりないようですが。
もちろん女神隊員の正体はなんなのか、テレストリアルガードはいまだに発表してません。写真を流出させたブサメンが知るよしもないのです。それでも香川隊長の怒りはかなりなものです。すぐに警視庁に通報。1時間もしないうちに流出元のブサメンの正体がバレ、即刻逮捕になりました。
しかし、流出した写真はインターネットを駆け巡り、いろんなところに貼られてます。しかも添えてある文章は嘲笑の雨あられ。これは完全に弱いものイジメ、単なる差別です。日本人はここまで劣化してしまったのでしょうか?
女神隊員は自室で小さくなってました。壁を背に体育座りです。両ひざの間から巨大な一つ眼が見えてます。ウィッグは珍しくつけてないようです。彼女は思い出してました。
彼女は5000もの同胞とともに母星を退避しました。5000の同胞は仮死状態でカプセルに入れられましたが、彼女は数百万人に1人の女神です。宇宙船の操縦を任されました。しかし、地球の側を通ったとき、テレストリアルガードスペースステーションJ1から攻撃を受け、この地球に墜落。そのとき彼女は5000の命とともに殉死する覚悟を決めました。けど、地球に激突した瞬間、彼女の本能が働いてしまい、ショートテレポーテーションとともに巨大化して難を逃れてしまいました。さらに地球上のテレストリアルガードの猛攻撃を受け、拉致られてしまい、いつのまにかその組織の一員になってました。
なんで自分はテレストリアルガードの1人になってる? 意志が弱いから? 宇宙船が地球に激突したとき、そのまま死んでしまえばよかったのに・・・ テレストリアルガードに拉致られたとき、巨大化して再び暴れればよかったのに・・・ たとえまたストーク号やヘロン号に攻撃され、身体がズタボロになっても、それはそれで本望だったはず・・・
私はどっちもできなかった。私は私の命がかわいかったのだ。5000もの同胞の命よりたった1個の自分の命を大事にしてしまったのだ。私はなんて情けないんだ・・・
せめてあの日散ってしまった5000の命を復権させたい。彼らは死んでるのに、地球人に嘲笑されてる。単眼が気持ち悪いという理由だけで差別されてる・・・ なら、私がこの顔を人前にさらせば・・・
私はヘルメットレディという名で、スーパーヒロインとしてこの星に迎えられた。私がこの顔をさらせば、みんな、少しはわかってくれるはずだ。そうだ、思い切って顔をさらそう!
じゃ、どこで顔をさらす? 今すぐ外に駆けて行って、巨大化する? いや、それじゃだめ。もっともっと印象的な場面で顔をさらさないと。それなら・・・
女神隊員は立ち上がり、廊下に飛び出ました。そして廊下を駆け抜け、サブオペレーションルームに入りした。中では海老名隊員がインターネットをやってました。海老名隊員は誰が入ってきたのか興味がないようです。いや、気づいてないのかも。が、
「海老名さん!」
女神隊員のその一言で、海老名隊員はマウスを握る手を止めました。
「海老名さん、巨大化する宇宙人を捜してください!」
海老名隊員はここでやっと振り返りました。すると女神隊員は珍しく単眼をさらしてました。海老名隊員はそれを見て思わず苦笑してしまいました。その状態での発言です。
「ム、ムリですよ、そんな・・・」
「海老名さんは遠くで起きてることや、未来で起きることが見えてますよね。なら、巨大化できる宇宙人が今どこにいるのか、わかるはずですよね!」
海老名隊員はそれを聞いて、「えっ?」という顔を見せました。そう、海老名隊員は千里眼の持ち主なのです。これを知ってる人は隊長だけでした。でも、女神隊員はいつしか気づいてしまったようです。ま、ほかの4人のテレストリアルガードの隊員も、なんとなく気づいてるようですが。