のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「女神の一番長い日」1

2017-07-02 14:06:32 | 小説
 8年前宇宙人が攻めてきました。攻めてきた宇宙人はユミル星系出身なので、ユミル星人と名付けられました。
 ユミル星人はまず十数発の核融合弾を地球に落としました。放射能が出ない水爆です。突然そんなものが降ってきたので、地球は大混乱となりました。
 その直後、今度はユミル星人の軍隊そのものが舞い降りてきました。彼らは主にアメリカとヨーロッパに降りてきました。地球人たちも残った兵器で迎撃を試みましたが、まったく歯がたたず、防戦一方となりました。
 が、2日も経つと、形勢が逆転しました。ユミル星人たちが次々と病気で倒れて行ったのです。実は彼らは数年前から十数人の偵察隊を地球に送り込んでました。彼らの目的の1つが、ユミル星人に害をもたらす病原菌の調査でした。そこで集められたデータを元にユミル星人はワクチンや抗生物質を作り、地球侵略の日に備えてました。が、見落としたウイルスがあったのです。それは地球上の動植物にはまったく無害なウイルスなのですが、ユミル星人から見たら発病から数時間で死に至る恐ろしいウイルスでした。これが原因でユミル星人は一度撤退しました。地球人はこのウイルスをキラーユミル星人ウイルスと名付けました。
 それから3年後、再びユミル星人が攻めてきました。今度はまず50発以上の核融合弾を地球に降らせました。地球側は今度は待ち構えていてそれら核融合弾を迎撃しましたが、それでも地上で数発の核融合弾がさく裂しました。続いてユミル星人の軍隊が降下してきました。今回は欧米だけではなく、地球上のほとんどの国に降りてきたのです。もちろん、日本にも。
 ユミル星人の武器は地球の武器をはるかに超えていて、しかもこのとき襲ってきたユミル星人はユミル星人本体ではなく、ユミル星人の植民地になっていた星の人々によって結成された軍隊でした。当然ユミル星人キラーウイルスが効くわけがなく、地球の敗北は決定的とみられました。が、日米両政府が宇宙の傭兵部隊ヴィーヴルと密かに交渉していて、ユミル星人第二次襲来とともに急遽契約。ヴィーヴルの介入によりユミル星人の軍隊はあっという間に駆逐されてしまいました。
 その後日米両政府は、ヴィーヴルからいくつかの技術供与を受けました。それはヴィーヴルから見たら10%も満たない技術でしたが、地球の既存の技術をはるかに凌駕する軍事技術だったのです。
 しかし、このことで日米両政府は世界的非難を受けました。この技術があれば世界征服が簡単に成し得てしまうからです。そこで日本政府は自衛隊等、他の組織から完全に切り離された地球防衛組織、テレストリアルガードを創設。ヴィーヴルから供与された軍事技術は、テレストリアルガード以外では絶対使わないと宣言しました。
 テレストリアルガード本部は東京近郊に設置。また宇宙空間にはテレストリアルガード宇宙支部であるスペースステーションJ1を設置。再びのユミル星人の襲来に備えました。

 そしてここはテレストリアルガード本部。現在は真夜中のせいか、しーんと静まり返ってます。が、それを破壊するように、けたたましいアラームが鳴り響きました。
「緊急通信! 緊急通信! スペースステーションJ1より入電! スペースヘロンが未確認飛行物体1機と交戦。現在未確認飛行物体はコントロールを失い、地球に落下中!」
 これを聞いて1人の男が目を醒ましました。彼の名は香川洋和。テレストリアルガードの隊長です。
「ふっ、やっと来たか」
 隊長はさっとベッドから下りました。なんと彼はテレストリアルガードの隊員服を着たまま寝てました。群青色にオレンジ色いラインが入った独特のデザインのユニホームです。
 ここはオペレーションルームです。奥には巨大なモニターやコンソールが設置されており、その前に座ってる女性隊員がヘッドホンで通信を聴いてます。今自動ドアが開き、香川隊長が入ってきました。まずは女性隊員に質問です。
「今どういう状況だ?」
「未確認飛行物体が地球に落下中です。もう少しで大気圏に突入します。現状だと日本に墜ちてくる可能性が高いです。迎撃ミサイルで撃ち落としますか?」
「いや、核融合弾じゃないなら、その必要はないだろ」
 でも、女性隊員はちょっと懐疑的なようで、心の中でつぶやきました。
「東京や大阪に墜ちてこなきゃいいけど」
 再び自動ドアが開き、3人の男性隊員が入ってきました。
「隊長!」
 隊長は3人の隊員を見て、
「宇宙から未確認飛行物体が墜ちてくるようだ。全員、出動だ!」
「はい!」

 遠くの空が青くなってきました。未明から夜明けに移る時間です。ここは空港のようです。はるか向こうまでアスファルトが伸びてます。アスファルトの脇には3つのカマボコ型の格納庫が見えます。
 今1つの格納庫のシャッターが開き、巨大な軍用機が出てきました。さらに隣の格納庫からは、F-35戦闘機より2廻り大きな軍用機が現れました。巨大な飛行機はストーク号、戦闘機型の飛行機はヘロン号と呼ばれてるテレストリアルガード専用の機体です。もちろんたくさんのオーバーテクノロジーが搭載されてます。
 ストーク号のコックピットは横に2座席。今その1つに香川隊長が、もう1つには一般の隊員が座ってます。2人ともヘルメットをしてますが、フルフェイス(ヘッドアップディスプレイ)ではありません。隊長はヘルメットと一体になったヘッドセットに話しかけました。
「落下箇所は判明したか?」
 マイクの向こうは、さきほどの女性隊員です。
「それが・・・ 未確認飛行物体は多少コントロールされてるようです。落下箇所はまだ判断できません」
「だいたいでいい。教えてくれ!」
「はい!」
 少し時間が開き、
「鵜取町です! 詳しい経度・緯度の情報を送ります!」
 隊長は隣のシートの隊員に声をかけました。
「よし、離陸!」
「離陸します!」
 ストーク号が垂直に離陸を開始。ヘロン号も垂直離陸を開始しました。
 隊長は再びヘッドセットのマイクに向かってしゃべりました、
「ヘロン号、位置情報を入力したか?」
 ヘロン号は縦に2座席の軍用機で、今2座席ともテレストリアルガードの隊員が座ってます。こちらは2人ともヘッドアップディスプレイにマスクを装着しています。
「はい、いつでもジャンプできます!」
「よし、ジャンプ!」
 すると、なんとストーク号もヘロン号もぱっと消滅してしまいました。