のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「橋本隊員奪回作戦!」2

2017-07-13 09:53:06 | 小説
 次の朝、橋本さんは8時半にチェックアウト。まずハンバーガーショップに寄って、ハンバーガーにかぶりつきます。そしてパチンコ屋へ。今日も朝一からパチンコです。
 平日の朝のせいか、パチンコ屋の中は閑散としてます。それでもパチンコ屋独特のチンジャラチンジャラて音が響いてます。有線の音楽も聴こえてます。その中で橋本さんはパチンコを打ってます。橋本さんのパチンコの調子は一進一退て感じ。が、途中から負け始め、ついにドル箱の中の玉を使いきってしまいました。
「ちっ」
 橋本さんは立ち上がりました。どうやらトイレに行くようです。
 橋本さんがトイレに入りました。トイレの中は橋本さん1人です。いや、大のブースから今1人の男が出てきました。手を洗って拭くためでしょうか、男の右手にはハンカチが握られています。と、男が突然急旋回、橋本さんに襲いかかりました。背後からハンカチを橋本さんの鼻に当てる気のようです。どうやらハンカチには、なんらかの薬剤がしみ込まされているようです。
 が、橋本さんはそれに気づいてました。ハンカチが鼻に付く寸前、橋本さんの右肘が男の腹にヒット。
「うぐぁっ!」
 男の身体は後方に吹き飛びました。
「ちっ、マジかよ」
 橋本さんは慌ててトイレの外に出ようとしました。が、その入口からとてつもなく巨大な身体の男が入ってきました。2mを優に超える巨体です。
「おっとー、通せんぼだ!」
「おいおい、パチンコ屋にクマさんかよ? 夢でも見てるのか?」
 と、橋本さんは突然男に向かって猛ダッシュ。男は慌てて身構えます。
「くそっ、来るのか?」
 が、橋本さんの姿は突然消えました。男はびっくりです?
「え?」
 当の橋本さんは男の足下に滑り込んでました。
「オレはここだよ!」
 橋本さんはそのまま男の股間を潜り抜けました。
「けっ、巨漢すぎて足下がガラ空きなんだよ!
 バイバーイ!」
 トイレを出た橋本さんは、パチンコ屋のメインの通路を駆け抜けていきます。
「ちっ、こんなところで襲ってくるのかよ?」
 橋本さんは出入り口に辿り着きました。橋本さんは勢いのまま扉を押し開けようとしましたが、開きません。
「な、なんだ? 開かないぞ?」
 橋本さんはふと振り返りました。そこで気づきました。パチンコを打ってる客が1人もいないのです。パチンコ屋独特のチンジャラという音も聞こえてこないし、有線も聴こえてきません。ともかくシーンとしてるのです。平日の午前中とはいえ、これはいくらなんでも不自然です。
「客がいない? どーなってるんだ?」
 突然四方八方から白い煙が上がりました。橋本さんは鼻を押さえ、身を低くしました。
「くそーっ・・・」
 どうやら催眠ガスのようです。橋本さんはそのまま倒れ込んでしまいました。

 ここは中学校の教室。今は授業中です。授業を受けている生徒の中に海老名隊員の姿もあります。いつもはテレストリアルガードの隊員の海老名隊員も、教室の中では1人の中学生です。まともに授業を受けています。
 が、海老名隊員はふと強烈な何かを感じました。すぐに香川隊長に連絡しないと。で、突然手を挙げました。
「先生、すみません」
「ん、どうした? また貧血か?」
「はい」
 いや、どう見ても顔の血色はいいのですが。
「しょうがないなあ。保健室行ってこい」
 海老名隊員がドアに向かって歩き始めました。
「えびちゃん、大丈夫?」
 女生徒の1人が海老名隊員に話しかけました。えびちゃんとは海老名隊員の愛称です。
「あは、大丈夫大丈夫」
 海老名隊員はドアの外に出ていきました。ちなみに、先生は海老名隊員がテレストリアルガードの隊員だと知ってますが、生徒は誰1人知らないようです。
 廊下に出た海老名隊員はとっとっとっと走り、あるドアを開けました。保健室のドアです。保健室の中では保健室の先生が机に座って書き物をしてましたが、突然海老名隊員が入ってきてびっくりです。
「ええっ?
 だめでしょ、いきなりドア開けちゃ!」
「す、すみません。ちょっと連絡させてください!」
 海老名隊員はベッドに腰掛ました。
「しょうがないわねぇ・・・」
 保健室の先生はベッドの周りのカーテンを閉めました。実はこの先生も海老名隊員の正体を知ってます。

 ここはテレストリアルガードのサブオペレーションルーム。女神隊員が仕出しのお弁当を食べています。右手で箸を持ってるんですが、その手の右横にもう1つ箸を持った右手があります。その手は上溝隊員のものです。上溝隊員は女神隊員の真後ろから手を伸ばして箸の使い方を教えてるのです。
「そうそう、こうして・・・」
「あは、難しいですねぇ・・・」
 実は女神隊員は今、箸の使い方以上に気になってるものがあります。それは上溝隊員の胸。上溝隊員の胸が背内にビタッと張り付いてるのです。ともかく上溝隊員の胸は巨大です。これじゃ、女性である女神隊員も気になって気になって仕方がありません。
「あはは・・・」
 ちなみに、今の女神隊員の様子ですが、首から下はテレストリアルガードの隊員服ですが、頭にはヘルメットや帽子はありません。前髪のウィッグだけが特徴的な単眼を隠してます。なお、香川隊長も上溝隊員も寒川隊員も隊員服を着ています。倉見隊員はいないようです。
 香川隊長は備え付けのテレビでアニメを見てましたが、ちょっと気になり、振り返りました。
「おいおい、フォークとナイフでいいんじゃないのか?」
 女神隊員は反論しました。
「あはっ、少しでもこの国の文化に触れたいんですよ」
「ふっ、そっか。あんたも大変だなあ」
 と、隊長の左手のバンテージのような無線機が振動し始めました。隊長はその無線機を見ました。
「ん?」
 隊長は手元の固定電話の受話器を取り、電話のボタンを1つ押しました。
「はい」
 電話の向こうは保健室の海老名隊員です。
「隊長、橋本さんが拉致られました」
 隊長は何か応えようとしましたが、なかなかいい返答が思い浮かびません。取りあえず、
「そっか」
 とそっけなく言って、電話を切りました。で、おもむろに座ってるイスを回転させ、振り返りました。
「今連絡があってなあ。橋本が拉致られたらしい」
「ええ!」
 その発言を聞いて上溝隊員と寒川隊員がびっくりしました。が、女神隊員は反応しません。
「みんなの意見を聞きたいなあ。どうする?」
 隊長は寒川隊員を見て、
「お前は?」
「橋本さんは辞めてるとはいえ、もともとうちにいた隊員です。それにいろいろと機密事項を知ってます。捨て置けません!」
 隊長は次に上溝隊員を見て、
「お前は?」
「私も同じ意見です」
 隊長は今度は女神隊員を見ました。
「あんたは?」
 女神隊員は一瞬答えに窮しました。橋本、今女神隊員が地球上でもっとも逢いたくない人です。絶対かかわりあいたくない人物なのです。でも、女神隊員はテレストリアルガードの隊員の地位を失うと、何をされるのかわかりません。ここでは逆らうことができないのです。
「私も・・・ 私も同じ意見です」
「そっか」
 隊長は女神隊員の気持ちを察しました。が、隊長も救出に気が向いたようです。
「よし、行くか!」