のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「橋本隊員奪回作戦!」3

2017-07-15 11:31:12 | 小説
 外はまだまだ青空です。今カマボコ型の格納庫からストーク号が出てきました。
 そのストーク号のコックピット。香川隊長と寒川隊員が並んで座ってます。その背後には前回までなかった補助席があります。今そのイスには女神隊員が座ってます。今の女神隊員はフルフェイスのヘルメットを被ってます。巷で噂されてるヘルメットレディになってました。
 フルフェイスのヘルメットで顔色は見えないのですが、女神隊員は何か複雑なことを考えてるようです。乗りたくもなかったストーク号に今こうして乗っている。そして地球上で一番嫌いな人物、橋本元隊員を救出しようとしている。嫌だ。とても嫌だ。でも、拒否できない。拒否したらテレストリアルガードクビ。クビになったら警察に連行され、どんなひどいことをされるのか?
 すべてを放棄して今ここで巨大化してしまおうか? いや、そんなことしたら、香川隊長まで殺してしまいます。私が生きながらえてるのは隊長のおかげ。そんなことはとてもとても。
「そーいや、倉見は?」
 その隊長の質問に寒川隊員が応えました。
「今日もお休みです」
「ふふ、そうか。あいつも辞める気だな。
 よし、離陸!」
 隊長の声のトーンが変わりました。命令モードです。
「了解!」
 ストーク号が垂直離陸しました。
 隊長が再び命令します。
「水平停止!」
「水平停止します!」
「認識ステルス機能作動」
「了解!」
 ストーク号の外壁に薄い光の膜が現れました。隊長は今度はオペレーションルームの上溝隊員を呼びました。
「どうだ? レーダーに映ってるか?」
 オペレーションルーム、上溝隊員がモニターを見ながら、
「隊長、ストーク号の機影が消えました!」
 再びストーク号のコックピット。
「よし! 出発だ!」
 今度はストーク号そのものがふっと消えてしまいました。

 別の上空です。ストーク号がふっと出現しました。真下にはプライベートジェット機が飛んでいます。ストーク号はプライベートジェット機の2倍以上の大きさがあるのですが、プライベートジェット機はストーク号の存在にまったく気づいてません。これは認識ステルスのせいです。認識ステルス機能を作動させると、レーダーでも肉眼でも認識できなくなってしまうのです。これもヴィーヴルのから供与された技術の1つです。
 ストーク号のコックピット。隊長は真下に見える機影を見て、
「あれに橋本が乗ってるのか?」
「100%とは言えませんが、運行記録から99%乗ってるのは確かなようです。どうしましょう? アームで掴まえますか?」
「いや、掴まえた瞬間自爆されると、こっちも墜落するぞ。それに99%乗ってるてことは、1%は乗ってないてこと。万一乗ってないと、国際的な問題になるな。さーて、どうするか・・・」
 隊長はちょっと考えました。そしてそのまま横目で後方を見ました。
「女神隊員!」
 突然呼びかけられ、女神隊員はびっくりです。
「あ、はい!」
「テレポーテーションであの飛行機に乗り移ること、できるか?」
「で、できますけど、テレポーテーションすると、どうしても向こうで大きな音が出てしまいます」
「じゃ、行ってくれないか?」
 その発言を聞いて女神隊員はびっくりです。
「ええ?」
 寒川隊員はこの隊長の命令に懐疑的です。
「隊長、向こうに行ったら女神さんはハチの巣になってしまいますよ!」
「ふっ、テレストリアルガードの隊員服は完全防弾服だ。アサルトライフルを何十発喰らっても十分防げるはずだ。それに女神隊員はバリアを張れるだろ」
 隊長さん、確かに女神隊員はバリアを張れますが、それは一方向だけ。同時に多方向に張ることはできませんよ。あなたは女神隊員と初遭遇したとき、それを見てますよね。
 敵のど真ん中に入っていくってことは、どこから銃弾が飛んでくるのかわからないってこと。テレポーテーションした瞬間、女神隊員はハチの巣になってしまう可能性があるのです。アサルトライフルを数十発も喰らったら、隊員服は無事でも、その中の人が無事であるはずがありません。
 女神隊員は著しい嫌悪感を感じました。この命令はほんとうに嫌です。死んでこいと言ってるようなものです。けど、女神隊員は命令を拒否できません。行くしかないのです。
 隊長は懐に手を伸ばし、レーザーガンを取り出しました。そしてその銃を女神隊員の目の前に突き出しました。
「もってけ」
「いや、いいです!」
 女神隊員は珍しく反抗的な言動を発しました。
「そっか」
 隊長はレーザーガンを懐に戻しました。
「じゃ、行ってくれ」
 女神隊員は5点式シートベルトを外し、立ち上がりました。次の瞬間、女神隊員の姿はふっと消えました。女神隊員が消えると、寒川隊員が隊長に喰ってかかりました。
「隊長、いくらなんでもひどいですよ! あれじゃ、女神さんに死んでこいと言ってるようなものです!」
「お前なあ、ジェット機の中で銃撃てると思ってるのか?」
「え?」
「ま、はねっ返りが2・3人いて拳銃を撃つかもしれないが、その程度ならなんとかなるだろ。
 あいつならなんとかしてくれるはずだ。オレが雇ったくらいだからな。もし失敗したら、オレ、この仕事、辞めていいよ!」
 大胆な発言に寒川隊員は言葉を失ってしまいました。

 ここはプライベートジェット機のキャビンです。電気イスのようなものものしいイスがあり、今そこに橋本さんが縛りつけられています。橋本さんは上半身裸です。かなり息が荒いようです。全身汗でびっしょりです。橋本さんの前には初老の男がいます。昨日中華料理屋で橋本さんに話しかけてきた男です。パチンコ屋で遭遇した巨大な男もいます。その他数人の男がいます。まず、初老の男の発言。
「ふー、なかなかしゃべってくれませんねぇ」
 初老の男は近くにいた別の男に命令しました。
「もうちょっと追加してやれ」
「はい!」
 男は注射器を手にし、橋本さんの左手に注射針を刺しました。
「や、やめろ・・・」
 男は注射器の押子を押しました。橋本さんの身体に衝撃が走りました。
「ぐぁーっ!」
「苦しいですか? 素直にしゃべればこんなことにならずにすむのに、あなたはほんとうにおバカさんですねぇ」
 橋本さんは泡を吹き、白目をむいて、がくっと首を垂れました。それを見て初老の男は慌てました。
「お、おい、死んだんじゃないだろうなあ?」
 注射を打った男が橋本さんの胸に聴診器を当てました。
「心臓は動いてます。気を失っただけです」
「ふーっ、焦らせおって・・・ どうもこのクスリはこいつの体質に合わないような。本国に帰ったら、別のクスリを使いますか」
 それに巨大な男が応えました。
「クスリなんかまどろっこしいや。オレのこの腕力で吐かせてやりますよ」