ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

「ジャスミン」を聴いてチャーリー・ヘイデンはきっといい人だと思った。

2010年06月14日 | 音楽
 キース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンによるデュオ・アルバム「ジャスミン」がいい。バッハのゴールドベルクだとかクラシックの楽曲に挑戦したりする姿勢があまり好きではなく、「ケルンコンサート」とマイルスに捧げたデジョネット、ピーコックとのトリオの演奏くらいしか聴いていないから、どちらかといえば好きではないミュージシャンのひとりだったキース・ジャレット。でも、このアルバムのキース・ジャレットは、もっぱらチャーリー・ヘイデンのおかげなのだろう、「さあ、俺の音楽を聴け」みたいな思いあがりが消えて、月並みだけれど実はこんなシンプルなフレーズでバラードが弾きたかったんだよ、といっているようなのだ。いつもと違うじゃないと、キース嫌いを聴く気にさせたのは、チャーリー・ヘイデンの人徳じゃないだろうか。ただし、キース本人がながながとライナーノーツを書き、「愛する人と二人で聴いてね」みたいなことを言っているのは大きなお世話だ。

 チャーリー・ヘイデンという人は、きっと相手の心を和ませるとか素直にさせる名人、たとえると香炉みたいな人なのだろう。その人の前にいくと落ち着く、普段いえないこともいえちゃうような人なのだ。決して多くの言葉を語るわけではないが、ぼそぼそと穏やかに語ることばに温かみや深みがあるというか、そんな人に違いない。パット・メセニーとのデュオも懐かしさと憧れが美しく同居していたけれど、「ジャスミン」も来し方とこれからの人生への憧憬がシンプルに溶け合っている。齢と共に演奏する側の音楽だって変わっていく。昔のようにはできないから違う方法論が必要だ。聴く方も歳をとり、違う音を求める。そこがシンクロすると音楽と幸福な出会いをすることになる。「ジャスミン」もそんな音楽だ。

 それにしても、昔やんちゃをやっていたミュージシャンが、みんないい人風になるのはどうかと思う。エコとか低成長時代のミュージシャンのひとつの姿なのだろうか。ジャズの進化を担ってきた世代が、どうジャズと共に人生を終えたらいいかそれぞれが回答を求めているように思える。死ぬまで音楽のやんちゃだったマイルスは、やっぱりスゴイ!


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