今季から先発に回る西村健太朗。
西村が先発投手の柱になってくれることは、
彼がデビューした当時からの、当ブログにおける願いだった。
ここにきての先発転向は、少し後ろ向きな印象も残らなくはないが、
西村が公言したとおり、ローテーションの一角を掴みとってくれれば、
それで問題は晴れる。
この西村の先発転向と同時に、
今季は澤村がリリーフへ移動する。
この入れ替え、論調としては好意的に捉える意見のほうが多いだろうか。
よく言われるように、精神面や性格などからして、
どちらかといえば西村は気持ちの面でやや弱い部分が指摘される。
かたや澤村は、強気な攻めのスタイルが持ち味のピッチャー。
球種は澤村も決して少ないほうではないが、西村のほうが多彩。
奪三振率は、澤村デビューの2011年からの4年間だけで比較すると、
澤村が7.89、西村が7.36と大きな差ではないが、やや澤村が上回る。
これだけで見れば、この入れ替えも現実的な気はする。
しかし、西村にとっては、2012年シーズンで32セーブ、12ホールド、防御率1.14と、
ようやく一軍での居場所が見えてきた中での、翌年の最多セーブ(42セーブ)獲得だった。
だいたいこの流れなら、そのまま不動のストッパーに定着したってよさそうなものである。
だが、そう上手くいかないところが西村らしい。
こんな言い方は西村に失礼だが、
最多セーブを獲得したとはいえ、
一昨年シーズンの投球が完全無欠な内容だったかと蒸し返すと、
決してそうでなかったのも事実。
ともすれば、途端に追い込まれそうになるモロさも、
西村のウイークポイント。
もちろん42セーブという最多タイトルは伊達ではない。
ただ、どうしても、最後の局面での西村に危うさは拭えなかった。
2シーズン連続の実績は、きっと西村に自信をもたらしていただろう。
弱さを自覚し、敢えて攻めの気持ちを口にして望んだ2014年のシーズンだったと思う。
前年から引き続きクローザーとして開幕を迎えながら、
すでに四月中旬には中継ぎに配置転換された。
そしてそれからひと月も経たないうちに登録を抹消される。
タイトルを獲得した前年のクローザーをこの時期に見切るのである。
原監督の西村クローザー起用も、やはり半信半疑だったのだろうと、
そのときそう実感した。
西村が指摘されがちなメンタルの弱さは、
これまで当ブログでも幾度か取り上げたことがある。
もう少し太太しさがあってもいいのではと余計なお世話を焼きながら、
西村がジャイアンツ投手陣の中心にいてくれることを願っていた。
デビュー後間もない頃から時折見せる、
あの切れ味抜群のストレートに魅せられて、
彼が江川卓のような迫力のある先発投手になってくれないかと、
そんな姿をアタマに思い描いたりした。
ケガがあったとはいえ、昨年の不調でまたイチから出直しのような状態の西村だが、
7勝を挙げた2011年から最多セーブを獲得した2013年までの3年間は、
シーズンをフルに投げ続けて、どの年も防御率1点台と、
シーズントータルでの安定感は、しっかり結果として残している。
その3年間の実績が、昨シーズンの不調ですべて帳消しになるとは思えない。
だからこその、原監督による先発再転向という辞令だと理解したい。
西村も今年で三十歳になる。
十代、二十代前半の若い頃と違い、
男三十ともなれば、もう性格などにたいした変化は起きないだろう。
ゼロとは言わないが、西村が今後、
打者の胸元をグイグイえぐっていくような、
そんな強気なタイプの投手に変貌するかと考えると、
その可能性はきわめて低いように思う。
そんな可能性と、今後、持ち球の精度が上がっていく可能性、
制球力に磨きがかかっていく可能性を比べれば、
西村の年齢からして、まだまだ後者にノビシロはあるはず。
もちろん、どれも等しく困難であることに変わりはない。
だから多くの選手が一流になるのに苦労する。
実際、西村がそう。
プロ12年目、一億円プレイヤーであっても、
なかなか掴みきれないものはある。
今季で12年目を迎える西村だが、
インタビューなどを聞いていると、
口下手な感じは相変わらずだ。
人見知りと本人が公言するだけあって、
あまり目立つような行動も見受けない。
やはり、真面目な印象は強い。
真面目さと、気の強い弱いは当然イコールではないけれど、
そんな真面目な雰囲気がマウンドの西村に投影されて、
気が弱いというイメージに上乗せしているような気もする。
人もそれなりに歳を重ねれば、
多少の図々しさというのは備わってくるもの。
真面目な西村にだって、そういった図々しさくらいあるだろう。
図々しさというとあまりいいイメージではないけれど、
言い方を換えれば、度胸みたいなもん。
これまでに得た自信や実績に、
そんな図々しさが加味していけば、
そこそこのスパイスくらいにはなって、
投球にも味が出てくるんじゃないか。
そんな図々しさが、そのうち西村のピッチングを後押しするようになるかもしれない。
図々しさで乗り切れるような世界じゃないが、
意外とどんな現場でも、我を押し通そうとする図々しさには、
相手をお手上げ状態にする力がある。
「強ぇ~な~」 。
まあ、良し悪しは別だ。
以前、西村が自分の登場曲に、
なんだかのアニメの主題歌を球団に申請したらしいが、
却下されたという記事を目にしたことがある。
それはそれで、なかなかの度胸だ。
ここで言う図々しさは、あくまでも、素の、そのまんまの西村が醸すものだから、
気がどうだこうだと、外野が口を挟む余地などない。
ちょっと肩の力が抜けた感じがして、真面目な西村にはいいエッセンスかも。
どこで投げるにしても、徐々に味が増してくればいいなあ、西村健太朗。
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