遅蒔きながら「松柏100句選」も
ようやく最終章にたどり着いた、
番外編も含めて10編の感想文となった、
長いような短いような、、、、、
気を抜かず最後まで進めよう。
中見出しは 「南九州の旅にて」
(125) 桜島 噴煙ありや 春霞
(126) 遠望す 桜島霞み 春暮れる
晩春の霧島温泉の宿から眺めた
桜島の風景だと書いてある、
私は行った事がないので霧島温泉から
桜島が見えるとは知らなかった、
作品は俳句の表現として工夫が欲しい、
そこで
❝桜島 煙溶け込む はるがすみ❞
全部を漢字にすると見た目に味気ないので
下句をひらがな標記にしてみた、
(129) 飫肥城下 武家屋敷通り 静かなり
恥ずかしながら 飫肥 を読めなかった、
そこで作者の詞書きにあった小村寿太郎の出身藩と言う
フレーズで音声検索して おび と知った、
ついでに地図で場所を調べたところ
日南海岸の山手に位置することも分かった、
この作品もありのまま過ぎる、
その静かさが目に見えるように表現してほしい、
❝飫肥城下 土塀はみ出す 棕櫚の花❞
南国を表現するに棕櫚を持ってきたが
季節は5,6月に咲くとある、
(131) 始めての 四半的にて 心射貫く
またまた始めて目にする漢字 ❝四半的❞
調べて分かった ❝しはんまと❞と読む、
飫肥藩発祥で弓道を元にして考案された武道、
的までの距離:4間半(8.2m)
矢の長さ :4尺半(1.36m)
的の直径 :4寸半(13.6㎝)
畳に正座して矢を射るとある、
作品はどことなく散文的なので
❝初体験 心射貫きたり 四半的❞
でどうだろうか?
季語はどこ?
それはこの際問わないでほしい、
初体験で心(しん)を射貫くと言う
ビッグな体験をしたんだから、、、、、
中見出し「鵜飼いを楽しむ」
(133) たちまちに 鮎獲りたる鵜は どや顔に
鵜 と どや顔 はマッチしない気がする、
そこで
❝アユ吐きて 鵜は自慢げに 鵜匠見る❞
(134) 篝火に 鵜匠の烏帽子 光りおり
映像で見る鵜飼いの風景は幻想的である、
その古式ゆかしい幻想的な風景を演出しているのが
他ならぬ篝火である気がする、
ここはもう作者の意図を汲んでそのままに
と思ったが 光りおり ではちょっと平凡、
第六感(?)ですらすらと紡いだ言葉を
更に五感を駆使して言葉を選ぶのが文芸の本髄、
この作業に至っていない、
下句の部分にもっと具体的な言葉を探してみては如何、
それがこの句の決め手になると思う、
❝篝火に 鵜匠の烏帽子 赤光り❞
(135) この鵜たち 囚われしは 鵜の岬
これを句にするには少々無理がある、
連句でない限り句はそれぞれが独立した作品と
考えるべきであろう、
そうなると この鵜たち では説明がつかない、
詞書によると全国12か所で行われている
鵜飼いの鵜はすべて茨城県の 鵜の岬 で
捕獲されたものだと言う、
これだけの説明が この鵜たち には必要なのだから
句の題材としては不向きと言わざるを得ない、
中見出し「川柳風の戯れ」
(137) 冷房の 効きで選びし 激辛麺
川柳としておもしろ味があっていいと思うが
もう少し強めに表現すると
❝激辛麺 決め手はクーラー 効かせすぎ❞
(138) コンビニの ドア開くを待つ 夏の虫
確かにそう
面白い所を捉えている、
夏の夜のコンビニの灯りは人間だけでなく虫たちをも集める、
まるでドアーが開くのを待ってるかのように飛び回る、
❝コンビニは 魅力に満ちた 誘蛾灯❞
(144) 蜜はよせ 渡り鳥集まる 三番瀬
❝渡り鳥 密集避けよ 三番瀬❞
閉めの句はここ3年世界を恐怖のどん底に
落としたコロナ題材の川柳になった、
暗い題材は川柳で笑い飛ばして
忘れるに越したことはないが
会心の作とならなかったは心残り。
これにて最終回とします、
毎回楽しくもあり苦しくもある時間を
提供してくれたタカさんには
深く感謝しています。