IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ボストン、ブエノスアイレス、ローマ、アウグスブルグ…

2006-07-10 13:58:22 | 犯罪
ついに終了の日を迎えたワールドカップ・ドイツ大会。フランスは98年以来の優勝を飾れず、最近のワールドカップでは常にPK戦で悲劇を繰り返したイタリアが(90年、94年、そしてフランスに準々決勝で敗れた98年)ようやく「呪い」から開放されている。それにしても、ドラマの多い決勝戦だった。大会前から大きく報じられてきた国内リーグのスキャンダルや(明日にも最終的な発表が下されると聞いてるんだけど)、代表メンバーの中にも友人が多い元ユベントスのジャンルカ・ペッソット氏が大会中にトリノで起こした自殺未遂に直面しながらも、イタリア代表は24年ぶりにトロフィーを手にした。そして、フランス代表のジネディーヌ・ジダンはどうしちゃったんだろう。延長前半開始早々に、相手ディフェンダーの胸に頭突きを食らわせて退場に。8年前の決勝戦では同じような体制からゴールを決めているけれど、今回はボールではなく人間の体。本当に何があったんだろうか?さて、今日は米軍内部にネオナチ活動家が増加しているというニュースを。

アラバマ州モントゴメリーにある民間団体は7日、長引くイラク戦争の影響で新兵獲得に悩む米軍が採用基準を大幅に緩め、結果として米軍内部にネオナチ活動家やスキンヘッドが増加していると発表した。発表を行った「南部貧困問題・法律センター(SPLC)」は最近の傾向がネオナチ活動家を採用しないと決めた軍規に反していると主張し、ラムズフェルド国防長官に対して断固たる対応を要求している。しかし、ペンタゴンは以前から米軍内の極右活動家を排除するよう努めてきたと主張し、ポール・ボイス陸軍広報官もAP通信の取材に対し、「深刻な問題ではあるが、最近になって増加傾向が見られたというものではない」とコメントしている。SPLCがウェブサイト上で行った発表では、過去数年にわたって新兵のリクルート活動で満足の行かない結果に直面している米軍が、苦肉の策として白人至上主義社の入隊を認め始めたと結論付けられている。

SPLCのマーク・ポトック氏は実際に何人のネオナチ活動からが米軍内にいるのかは把握できていない事を認めながらも、これまでの調査から、その規模は数千人に達する可能性もあると語っている。すでに複数のネオナチ系ウェブサイトでは、米軍内で周囲に悟られないように極右主義者としての活動を行う方法が紹介されたりしている。また、ポトック氏は米軍のリクルーター達から直接聞いた話として、上層部から新兵獲得に関する厳しいノルマを課せられたリクルーターたちが、ノルマ達成のために現場レベルで採用基準を緩めているのだと指摘した。SPLCのリチャード・コーエン代表はラムズフェルド国防長官に送った手紙の中で、「米軍内部における極右勢力の台頭は、第2のティモシー・マクベイを生み出しかねない」と警告している。オクラホマ・シティの連邦政府ビル爆破事件の主犯として知られるマクベイ(2001年6月に死刑が執行されている)は陸軍時代に極右思想に目覚めたと言われており、1996年には当時のウイリアム・ペリー国防長官が軍内部におけるネオナチ活動家の排除を実施している。

前出のコーエン代表はペリー元国防長官の行動に一定の評価を示しながらも、ネオナチ活動が明らかになった兵士が現在も米軍内に留まっているケースが少なくないと警告し、ラムズフェルド国防長官への手紙のなかでも同様の指摘を行っている。「米軍では以前からこういったネオナチ活動家を追放する事に消極的でした。理由として、新兵の獲得が年々難しくなっているからです」、ポトック氏もCBSニュースの取材にそう答えている。ペンタゴンのエレン・クレンケ広報官は、国防総省内の規定で軍人は白人至上主義グループのような人種や性別、宗教の違いで他者を差別する組織への関与を禁じていると語った。これまで軍隊への入隊を希望する者に対しては、必ず犯罪歴などのチェックが実施されてきたが、最近では入隊志願者の体に彫られたタトゥーがネオナチなどの組織と関係していないかどうかを調べる地域も増えてきている。

おそらく、ミラノからシチリア島のカターニャまで、そしてボストンからブエノスアイレスまで、数え切れないイタリア人とイタリア代表ファンが今日の勝利を祝っているのだろう。ワシントン周辺のスポーツバーは地元消防局からの要請もあって、今日も入店制限を行い、ワールドカップ決勝戦が行われる2時間前からすでに中に入れない店がいくつもあったらしい。ボストンでは市庁舎前の広場にイタリア代表とフランス代表のユニフォームを着た大勢のファンが集まり、広場は文字通り人で埋め尽くされた状態となっていた(この様子は決勝戦を放送したABCでもハーフタイムなどに取り上げられていた。そういえば、4年前の決勝戦でも同じくボストンにあるブラジル人コミュニティの様子が放送されていた)。公式な資料によると、この広場の収容人数は5万人だそうで、今日は何人がそこにいたのだろうか?個人的にはフランスに勝ってほしかった今日の試合だけど、ドイツのアウグスブルグでレストランを経営するシチリア人の友人に祝福の電話をかけてみた。家にも携帯にもつながらず、しばらくして「イタリアが優勝したら、近所の人全てにご馳走する」という彼の言葉を思い出した。破産しなければいいけど…。


写真:ボストンのノース・エンド地区でイタリア代表の勝利を祝うファン (AP通信より)