IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

Duck! It's Dick

2006-02-14 14:00:28 | 犯罪
今日はタイトルを「Duck! It's Dick」にしてみたけれど、これはニューヨークのタブロイド紙が13日に1面に掲載したヘッドラインで、今日はそれを使わせてもらうことに。訳すと、「身をかがめて!ディック(チェイニー)がいるから!」みたいな意味になる。DuckとDickをかけたのもあるけど、ハンティング中に発生した誤射がニュースとなっているので、Duckは本当にピッタリの言葉だなぁと思ったのだ。似たようなタイトルは14日のシドニー・モーニング・ヘラルド紙でも使われていたようで、「Cheney Hunts Quail and Everyone Else Ducks (チェイニーがウズラ狩りを始めれば、他のみんなは地に伏せる)」というシャレのきいたものだった。でもシャレですまされるのは新聞記事のタイトルだけで、誤射事件が発生してからのお粗末な対応をめぐって、アメリカ国内のメディアからは批判が噴出している。今日は昨日に続いて、チェイニー副大統領の誤射事件に関する続報を。

チェイニー副大統領による誤射事件が12日夕方になって全国ニュースとして報じられたが、13日にホワイトハウスで記者会見を行ったスコット・マクレラン報道官は、事件の発生から発表まで24時間もかかった理由について記者団から激しく追求されている。チェイニー副大統領は11日、テキサス州南部の農場で行われた狩猟に参加したが、その際に誤って一緒に狩りを楽しんでいた78歳の男性弁護士に向かって散弾銃を発射し、散弾の一部が顔や胸を直撃した男性は同州コパス・クリスティ市の病院に運ばれた。病院関係者の話によると、負傷したハリー・ホイッティントン氏の容体は安定しており、同氏は今週中にも退院する見通しだ。マクレラン報道官は13日の記者会見で、誤射事件がホワイトハウス関係者からではなく民間人(狩猟場所として使われた農場の所有者でもあるキャサリーン・アームストロング女史)によってメディアに明かされた事実を認め、さらに現場にいたチェイニー副大統領や関係者が「負傷したホイッティントン氏の容体安定に気をとられていた」とも語り、情報公開の遅れが故意のものではなかったと強調している。

マクレラン報道官によると、ブッシュ大統領は11日の午後7時30分にアンドリュー・カード大統領首席補佐官からの電話で誤射に関する説明を受けており、発生からわずかに1時間後の事だった。カード補佐官からの電話ではチェイニー副大統領本人による誤射とは説明されておらず、それから約30分後にかかってきたカール・ローブ大統領副首席補佐官からの電話で、ようやくチェイニー副大統領がホイッティントン氏を負傷させた事実を知らされている。マクレラン報道官自身も12日午前6時まで誤射の詳細を聞かされていなかったと語っているが、政権関係者が誤射を正式に認めるまで、さらに12時間を要している。前出のアームストロング女史はホイッティントン氏が負傷した直後は誰もメディアへの発表について考える者はいなかったと語っているが、翌朝になって地元紙に連絡を入れようとチェイニー副大統領に相談した際、副大統領は「好きにしてくれて構わない」と語ったとの事だ。誤射事件はコープ・クリスティの地元紙によって12日朝に報じられ、同じ日の午後3時過ぎから全国メディアも一斉に報じ始めている。

13日にホワイトハウスで行われた記者会見では、38分間の会見のほとんどがチェイニー副大統領の誤射事件に関する質問となり、記者団からは叫び声にも似た質問が次々に報道官に浴びせられた。会見が始まってすぐ、マクレラン報道官は経済に関するコメントを発表しているが、記者団から経済についての質問は全くでなかった。「アメリカ合衆国の副大統領が誰かを撃った際に、それを国民に伝えるのが一般市民というは果たして適切なのでしょうか?」、NBCの記者は報道官にそう質問した。「そういった情報公開のやり方もあるでしょうね」、マクレラン報道官はそう答えるのみだった。ブッシュ大統領は13日にホワイトハウスでアナン国連事務総長と会談を行ったが、会談後に記者団から相次いだ誤射に関する質問には全く答えなかった。アナン事務総長との会談にはチェイニー副大統領も出席していたが、会談後の記者会見が始まる前にホワイトハウスの執務室を離れている。

チェイニーの誤射事件もそうだし、少し前にこのブログで紹介したCIA職員による下着泥棒事件もそうなんだけど、最近はこういった政府職員が絡んだ不祥事が目立っているのでは?今日もヒューストン在住の航空保安官2人が麻薬密輸に関与していたというニュースが報じられていて、2人はヒューストンからラスベガスに搭乗する旅客機を利用してコカインを運んでいた疑いがあり、ヒューストンの連邦検事局が本格的な捜査に乗り出している。13日のCNNによると、911同時多発テロ事件前には僅かに33人しかいなかった航空保安官も、現在は数千人にまで増やされたようで、これまでに20万人近い応募者がいたそうだ。でも、採用する前に行われるバックグラウンド・チェックがいい加減だとの指摘も以前からある。こういった不祥事は昔からあったんだろうけど、チェイニーの話を聞いてから、妙に気になってしまった。

写真:2004年4月にピッツバーグで開かれた全米ライフル協会(NRA)の総会で、ライフル銃を受け取るチェイニー副大統領 (AP通信より)