IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

バットマンの次なる敵はアルカイダ?

2006-02-15 13:45:24 | エンターテーメント・カルチャー
狩猟中の誤射とその対応の遅さを国中のメディアから非難されているチェイニー副大統領。14日には共和党の議員連中からも情報公開の遅さを指摘され、ワシントン・ポストによるとホワイトハウス関係者からは何らかの形で記者会見をすべきと迫られているらしい。軍の最高司令官(ここではアメリカ合衆国大統領も意味する)という意味の英語に「Commander-in-Chief」というのがあるけれど、一部の議員はチェイニー副大統領に「Shooter-in-Chief」と新しい肩書きを与えている。14日の昼前には誤射で負傷したハリー・ホイッティントン氏が軽い心臓発作を起したと報じられていて、これは体内に残る散弾の破片が原因ではないかといわれている。はたして、副大統領は記者会見を開くのだろうか?さて、今日はアメリカン・コミックで取り上げられるテーマに変化が出始めたというABCニュースのレポートを。

アメリカン・コミックのヒーローとして、これまで様々な敵と戦ってきたバットマンだが、次なる相手はオサマ・ビン・ラディンとアルカイダになりそうだ。先週末にサンフランシスコで開かれた「2006年コミックブック会議」の中で、有名コミック作家のフランク・ミラーは、2007年に発表が予定されているバットマン・シリーズの新作本でバットマンがビン・ラディン氏を追跡する事になるだろうと語っている。14日のABCニュースが報じたところによると、DCコミックスから発売予定の新作「ホーリー・テラー、バットマン!」ではテロリストに攻撃されるゴッサムシティが描かれる模様で、ストーリーはやがてバットマンによるビン・ラディン一味の追跡に発展していく模様だ。1939年に登場したバットマンは、1986年にミラーによって再びシリーズ化されてきたが(1989年から始まったバットマン・シリーズの映画化も、ミラー作品の人気が大きく影響したためだと言われている)、ミラー本人は911テロ事件に対する怒りから新作のアイデアを生み出したのだと語っている。

ミラーは執筆中の新作について、「バットマンがアルカイダを徹底的にやっつけるというプロパガンダの一種ですね」と語っている。子供の読み物として考えられることが多かったコミック本では、これまで政治やテロといったテーマが取り上げられる事は少なかったが、ミラーはバットマンの新作で愛国心溢れるヒーロー像を描こうとしている。「ある時代にはスーパーマンやキャプテン・アメリカがヒトラーを殴りつけています。現実世界でアメリカがアルカイダから狙われているのに、バットマンがリドラー(バットマンの有名な悪役キャラクター)と戦うのもおかしいでしょう」、ミラーはそう語っている。ミラーが指摘したように、スーパーマン(1930年代後半)とキャプテン・アメリカ(1941年)が発表された時代には、ナチスという大きな脅威がアメリカの前にあったのも事実だ。キャプテン・アメリカの最初の2巻では、それぞれ主人公がヒトラーの顔面にパンチを食らわす絵が表紙に使われている。

愛国心がコミックの中で語られなくなって半世紀以上になるが、こういったテーマが再び取り上げられる背景には、読者層の変化が存在するようだ。コミック業界の関係者がABCニュースに語ったところでは、最近の読者層の大半が20~40代に集中しているため、子供には受け入れられないようなテーマも頻繁に描かれているとの事。アイアンマンはアルコール中毒に悩まされており、スパイダーマンは親友が麻薬中毒者だった事実を受け入れ、ハルクの主人公ブルース・バナーは少年時代に受けた虐待の記憶と戦い続けている。テロリズムや愛国心だけではなく、これまで語られることの無かったテーマ(幼児虐待、ドラッグ、人種差別、エイズ、ギャング抗争、同性愛...)が続々と紹介されており、アメリカン・コミックが新たな時代に突入しそうな気配だ。ミラー氏の最新作だが、全200ページのうち、すでに120ページ分が完成したのだという。

昨日の夜中、ラジオのレポートを終えてすぐ、また懲りずに新しいホラー映画を1人で見てしまった。僕のホラー映画嫌いは年季が入ってて、(厳密に言えば、ホラー映画ではないけど)小学校1年の頃に阪神パークか宝塚ファミリーランドで行われた仮面ライダーのショーの最中、目の前に現れた怪人(バイトの方、ゴメンナサイ)を本気で蹴った思い出がある。もう二十数年前のことだけど。それだけホラーが苦手なのに、時々思い出したように1人でホラー映画を見てしまう学習能力のなさ…。ただ、昨日見た映画は半年ほど前にこのブログでも紹介した「ソウ」の続編で、1作目で感動すら覚えた斬新なアイデアを続編でも期待してしまったのだ。映画の続編ってガッカリするものが少なくないだろうし(3作目以降のロッキー・シリーズしかり)、基本的には期待せずに見るほうがいいんだろうけど、「ソウ2」は中々でしたぞ。オチは1作目と変わらないものの、作品の売りでもあるネチネチ度は健在。機会があれば、ぜひどうぞ。


写真:2002年11月、サウスダコタ州で狩りを楽しむチェイニー副大統領 (ロイター通信より)

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