IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

「マンハンター」を探せ!

2006-02-22 15:06:41 | テロリズム
ずいぶんと前に劇場で見た「レッド・ドラゴン」というミステリー映画。「羊たちの沈黙」と「ハンニバル」に続いて、アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士がまたまた登場しており、個人的には1作目と同じくらい気に入ってる(凝り過ぎた観のある2作目は、全体的にクラッピーな内容だった)。最近になって、実は3作目が1986年公開の「マンハンター」のリメイクだと知り、オリジナル版をビデオレンタル店や大型書店で探してるんだけど、なかなか見つからない。レクター博士をブライアン・コックスが演じ、「ヒート」や「インサイダー」でブレイクする以前のマイケル・マンが監督をつとめている。映画好きの友人によると、オリジナル版もかなり面白いそうで、なんとか見つけ出したいんだけど…。さて、今日もUAE政府系企業によるアメリカ国内の港の管理をめぐって巻き起こった論争についてのニュースを。イギリスやUAEだからとかではなく、これだけ「国土安全保障」という言葉をお経のように唱えてきたアメリカが、港の管理・運営を外国企業に委託していたという事実に僕は驚きを隠せない(イギリスの場合は、民間企業だったとはいえ…)。

アメリカ国内にある6ヶ所の港で港湾事業がアラブ首長国連邦(UAE)政府系企業に委託される可能性が高まっているが、各自治体や連邦議会では安全面での懸念を表明する関係者が少なくなく、UAE政府系企業の事業参入を承認したブッシュ政権に対して各方面から激しい非難が巻き起こっている。6ヶ所の港(ボルチモア、マイアミ、ニュージャージー、ニューオーリンズ、ニューヨーク、フィラデルフィア)ではこれまでイギリスの民間企業に運営が委託されてきたが、この会社が今月初めにUAE政府系企業「ドバイ・ポーツ・ワールド(DPW社)」に買収されたため、今後の運営引継ぎをめぐって議論が繰り返されてきた。UAEを対テロ戦争の「同盟国」と呼ぶブッシュ政権は、DPW社のアメリカにおける港湾事業参入をすでに承認しているが、911テロ事件の容疑者の多くがUAE国内の支持者らから資金援助を受けていた事実などもあり、それぞれの州政府では前出の英民間企業と結んだ契約を破棄しようとする動きも出始めている。

外国政府の傘下にある企業がアメリカ国内の港湾事業に参加するのを禁止する法案がすでに民主党のロバート・メネンデス上院議員によって提出されているが、ブッシュ大統領は21日、こういった法案に大統領として拒否権を発動する可能性を示唆している。「イギリス企業がアメリカでの港湾事業に参入できて、すでに安全面でも問題無しとされた中東の企業が参入できないのは理解に苦しみます」、ブッシュ大統領は記者団に対してそう語っている。ブッシュ発言の数時間前、ワシントンではビル・フリスト上院院内総務が「議会がDPW社の調査を行うまで、大統領には同社の参入承認を保留していただきたい」と語っている。フリスト議員は再調査委員会の設置も求めており、議会でDPW社について細かな調査を実施したい構えだ。フリスト議員の提案には同じく共和党のデニス・ハスタート下院議長や民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務も賛同する姿勢を見せており、両方の政党がブッシュ政権の決断に疑問を抱いている。

911テロ事件では、実行犯2名がUAEの出身であり、実行犯のほとんどがUAE国内の銀行口座に活動資金を蓄えていたため、UAEの政府系企業にアメリカの主要な港の運営を任せるのは不適切ではないかという声が挙がっている。DPW社は3月2日から各地の港で運営を開始する予定で、同社の参入は財務省、国土安全保障省、商務省、ペンタゴン、FBIの代表者で構成された連邦委員会によって承認されている。しかし、フリスト議員らを中心とする連邦議会からは承認までのプロセスを透明化させるべきだとの批判が出ており、議会も参加して再調査が行われるべきとの意見が根強い。アメリカ各地の港で実施される貨物検査には人員的な限界があり、全貨物のわずか5パーセントしか実際に検査されていないとの指摘もある。そういった中で、イランや北朝鮮への核開発部品輸出の中継地と批判されてきたUAEの港湾事業参入を危惧する声も少なくない。しかし、英民間企業が承認され、UAE政府系企業が承認されないのはダブルスタンダードだという意見もあり、問題の解決にはしばらく時間を要しそうだ。

農務省で監査をやっている友人らと、いつものスポーツバーで夕食をとりながら欧州チャンピオンズリーグのリバプール対ベンフィカ・リスボンの試合をテレビ観戦。ハーフタイムになって、この友人とブラジルの話をすることになった。数年前の夏、彼は仕事で日本に1週間ほど滞在し、ちょうど同じ時期に帰国していた僕は六本木と三宮の両方で彼と飲みに出かけた。六本木と三宮ではそれぞれブラジル人の女の子達と話す機会があり、ブラジル好きの2人は精一杯のブロークンなポルトガル語で彼女達を飲みに誘った。それから数年が経ったわけだけど、友人は今でもブラジルへの思いが強く、数週間後にリオを訪れる予定だ。三日坊主である僕のポルトガル語は相変わらず情けないレベルだけど、彼はすでにポルトガル語での基本会話が困らないまでに上達している。「犯罪にだけは気をつけろよ」、横にいたジェームズが友人に向かって一言。ジェームズは昨年春に旅行でメキシコを訪れた際、地元警察官にカツアゲされていて(実話)、その時のトラウマが今でも残っている。リオはメキシコシティよりも危険なイメージがあるけど、今は友人の土産話を楽しみに待っていようと思う。


写真:21日にマイアミ港でパトロールを行う地元警察 (ロイター通信より)