読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

最近の朝日新聞から

2008-09-15 01:05:53 | Weblog
 8月28日(木) 「論壇時評」松原隆一郎 「医療危機」「『歳出削減』にかすむ安心」より
 舛添要一「“観客型民主主義”が医療を破壊する」(中央公論9月号)についての論評。
 
 医療水準が上がり、機器・薬品・手術が高額になって、一人で毎月1500万円もの医療費を使う人がいる、皆保険を守るには現役世代の合意こそ重要で、高齢者が1割、残りを税と現役で負担する仕組みは合理的である、と語っている。
 舛添は「『観客型民主主義』を改めよ」と国民を叱っているが、それはマスコミの尻馬に乗って安易な政権批判をしないのみならず、自身が病気にならないよう努力したり、不急の診療を求めないよう心がけることを指す。新制度ではメタボ検診や「かかりつけ医」を求めているが、病院での無駄な診療をなくす予防医療と理解できる。

 ははあ、今日の「たかじん」で勝谷さんが言っていたのはこれのことか。「柏原病院の小児科を守る会」(伊関友伸のブログより)
 つづき
 だが、厚労省が財務省に歩調を合わせて医療費の急増を言い立てるのには、絶対額はともかく外国との相対比較にかんし疑問がある。そもそも我が国の医療費の対GDP比は約8%、欧州平均は9.2%で05年時点ではOECD30カ国中22位、先進国では最低である。25年には75歳以上が2千万人を超えるが、「小さすぎる福祉国家」のまま乗り切れるとは思えない。
 元財務官僚の村上正泰が告発するように(村上正泰「医療費削減の戦犯はだれだ」文芸春秋9月号)、「小泉改革以降、あたかも『歳出削減』が何よりも優先すべき至上命題であるかのように捉えられ」、財務省は医療に代表される必要な行政サービスをも削らせるべく各省に圧力を加えた。竹中平蔵元大臣らは「国民負担率(租税+社会保障が国民に占める比率)が増えると経済成長にマイナス」と喧伝したが、国民負担率が高いイギリスやスウェーデンの成長率が高いことからしても、この因果律は嘘である。

 しかも97年の橋本財政構造改革以降、歳出の削減を進めるほど逆に赤字は危機的な水準まで累積した。むしろ、必要な行政サービスの削減こそが財政赤字の原因だと考えたくなる、社会科学で言う「意図せざる帰結」である。村上は社会保障は「弱者保護のためだけではなく、長期的な社会の安定性を保障するもの」とするが、そうした安定性が揺らいだために投資や消費といった内需が伸びず、成長率が低迷しているのではないか。介護を家庭に押し戻されても、生活も安定しないままではやっていけるはずもなかろう。


 9月11日(木) 「オピニオン」 小野善康 大阪大社会経済研究所教授(マクロ経済学)
 「自民党の経済政策」 「お金を渡すだけではだめ」

 自民党総裁選挙では、経済、財政政策が対立軸になっている。候補者は財政再建派、上げ潮派、積極財政派に色分けされ、それぞれまったく違って見える。だが3派の本質は実は同じで、お金を渡すか渡さないかという発想しかない。お金を倹約するだけ、右から左に渡すだけでは、日本の富は増えも減りもせず、経済はよくならない。
 与謝野経済政相は財政再建派とされている。歳出削減と増税で財政健全化を優先する立場は国庫だけを見て国全体を見ていない。国債は負債であると同時に立派な資産であり、返せば資産も減るから純資産額は変わらない。
 そのために財政支出を抑えれば、失業が増え、地方も疲弊して経済が冷え込む。税収も減って財政健全化も遠のく。小泉政権時代の緊縮財政で、かえって国債を過去最大幅で積み上げたのがよい例だ。
 経済成長を重視するという上げ潮派はどうか。小池元防衛相や石原元政調会長がこの立場だとされる。小泉改革路線の堅持を訴える上げ潮派は、法人減税や投資減税、規制の撤廃を掲げ、企業など供給側にお金を渡すことを主張する。
 しかし、供給不足の現状で供給側を優遇しても、物が売れない以上、総所得は増えない。それどころか、優遇される強い企業が弱い企業のシェアを奪い、失業と格差が拡大して景気はさらに悪化する。
 では、財政出動を主張する麻生幹事長ら積極財政派がいいのか。彼らは。定額減税や公共事業で民間にお金を渡せば、消費が増えると思っている。
 だが、定額減税なら、その分の支出削減か赤字国債の発行、あるいは別の増税が必要で、同規模のマイナス効果を生むことを忘れている。地域振興券の失敗を繰り返すだけだ。

 うーん、なんだかすごくむずかしいゲームみたいだ。むかし「シムシティ」というゲームをやったが、私はどんくさいのでいつも橋とか道路とかつくるのが遅れ、その間に人口が増えすぎてトラブルが続出し、財源確保のために税金を上げると暴動が起き、怪獣も暴れてめちゃめちゃになっていた。ゲームならリセットすればいいが、国政ではそうはいかない。
 つづき
 公共事業はどうか。穴を掘って埋めるような事業なら、経済への波及効果はゼロだ。見かけ上は国内総生産(GDP)が増えるので政府はその効果を強調しがちだが、実体はお金を渡すだけの失業手当と同じだ。
 公共事業で重要なのは、払うお金の額ではなく、どれだけ雇用が増え、どれだけ価値が生まれるかだ。労働者を失業状態のまま放置したり、無意味な仕事をさせたりするほどの無駄はない。同じお金を使うなら、少しでも役に立つ仕事をさせて、給与で支払った方がよい。
 公共事業というと従来型が思い浮かぶが、環境や介護・医療なども考えられる。
 環境分野では、省エネルギー技術や代替エネルギーの開発、産業廃棄物処理など多くの仕事がある。またリサイクル可能な製品の規格化や環境規制の整備によって、税金を使わずに投資や雇用の機会を生み出せる。たとえば世界的な景気後退の中で省エネ車が好調なのは、環境意識の高まりと原油高が原因だが、環境規制はこの種の需要を確実なものにするから、企業は安心して投資し、素材・機械産業も潤う。それで収益を得た個人や企業から税収も見込めるから。税制健全化にもつながる。
 また、需要の大きな介護産業や医療分野の育成も有効で、そのために診療や介護の自由度を増やすことも考えられる。
 こうした政策が実現に向かわないのは、政治家や国民が目先で誰にお金を渡すかしか考えないからだ。政権が短期で崩壊する袋小路にいる今こそ、従来の発想から抜け出し、何が価値を生むかを考える本物の景気対策を競い合う好機だろう。

 もういっこ似たようなの。9月12日(金)「経済気象台」「バラマキ減税をやめよ」
 バラマキ政策は、これまで一般に歳出面でとられてきた。民主党が公約に掲げる農家の個別所得補償、高速道路の無料化など、選挙目当ての人気取り政策がその典型である。
 しかしながら景気後退とともに、減税により景気浮揚を図ろうとするバラマキの動きも最近顕在化してきた。
 このバラマキ減税の代表が、公明党の主張する定額減税であろう。これは所得税・住民税から所得水準に関係なく一定の金額を減税の対象にするというもので、低所得層により恩恵がいくとされている。
 問題は1年限りの時限的な減税で、どれだけ個人消費が喚起されるかである。この減税は、バブル崩壊後細川、橋本、小渕内閣の経済対策に盛り込まれ、さしたる景気回復に資することもなく財政赤字増大に一役をかった。時限が来て廃止しようとしても、増税と受け取られるのでその廃止が政治的に難しい。
 もう一つの例が、株価対策の観点からの証券税制の緩和である。有力な総裁候補の一人である麻生氏は景気回復優先策の一環として、1人当たり年300万円の株式投資からの配当を非課税にするという証券税制見直しを主張している。
 このような株価対策もバブル後、しばしば用いられてきた。どれだけ政策として効果があるかわからないのに、税制をゆがめ、かつ高所得層に減税の恩典がいく金持ち優遇となる欠陥がある。
 このように税制上短期的な視点でかつ政策的にあまり有効でないこの種のバラマキ減税を取るべきでない。もっと中長期的な視点から少子高齢化の元、社会保障の財源を公平に確保できるような税制改革を抜本的に行うべきである。(安曇野)

 簡潔に言うと、
 9月7日(日)「耕論」「混迷の政治」から劇作家・評論家 山崎 正和さん 「虚のテーマで偽の対決」「劇場型でなく調整型を」
 「もっとも重要なのは『高福祉・高負担』か『低福祉・低負担』かを選択すること。これを正面から国民に問いかけた政府は世界にありません。相当しんどいことになるから。しかし避けられない。日本社会の根本の問題だ」
 「今の日本人は身の丈に合わない生活、過剰な生活をしている。全員で生活水準を少し、たとえば1割ほど下げたらどうか。株による荒稼ぎを少し制限したり、物作りに専念できるようにしたり、あるいは地産地消を広げ意図的にグローバル化を一部ストップさせたり。これこそ本当の『保守主義』なのだが。でも実際に打ち出したら、その政党は勝てないでしょうね。」

早稲田大教授 榊原 英資さん 「抜本改革には政権交代」「党と政府二重構造崩せ」
 「与党を入れ替えるだけではなく、システムそのものを変える必要がある。小泉構造改革は偽物だった。世の中、特に公的セクターの仕組みを抜本的に変えないと、永田町と霞が関の関係、中央と地方の関係を変えねばならない」
 「小沢さんがやろうとしてるのは革命ですよ。自民党とはまったく違う。民主党は、それを国民にわかるように訴える必要がある。今度は本物の構造改革をやるというメッセージを発信すれば、国内だけでなく世界からも注目される」


 私としては、だれでもいいけど、とりあえずこの文章を理解できる人というのを最低ラインにもって来ておきたいんで、麻生さんは「新聞は読まない。見るだけ」とか言ってたからパス!