うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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今でも国内球界に聳え立つ「壁」

2009年11月12日 | 野球
今から20年前の1989年11月9日に、ドイツのベルリンを東西に隔てた「ベルリンの壁」が崩壊しました。まだ壁が崩壊する前は、ベルリンの壁は、「越えられない物、決して崩れない物、地域と国民を分断する物」を意味する象徴でもありました。ただ、いくら強固な壁であっても、時代の流れや自由を求める国民の要求には逆らえず、あっけなく崩壊しました。



ただ、日本の野球界には超えられない壁というべき物があります。
それは「プロアマの壁」です。

国内球界は、柳川事件に端を発して、現在に至るまでプロとアマは冷戦状態です(奇しくも、柳川事件はベルリンの壁が建設された同じ1961年に発生)。ちなみに、ボクシングのプロアマの関係に至っては、近年雪解けしつつある国内球界よりも鋭く対立しており、もはやベルリンの壁どころか、朝鮮半島を南北に隔てる「38度線」に例えた方がよいくらいです。時代錯誤の球界のプロアマ規定は、現在では幾分緩和されましたが、低くなったとはいえプロアマの壁は今でも存在します。もしかしたら、ベルリンの壁よりも超えられない壁なのかもしれません。

たしかに、柳川事件はプロ球団(中日)が社会人野球の事情を考慮せずに、無協定状態の中で札束攻勢を仕掛けて秩序を乱したので、プロ側が犯した行為に対しては真摯に反省すべきです。しかし、アマチュア側がいつまでも意固地になってプロを蔑視し、現在に至るまで敵視政策を完全に放棄しないのは全く持って理解に苦しみます。結果的に、球界全体の発展を著しく阻害してます。

そもそも、アマチュア競技団体が金科玉条に掲げている「アマチュアリズム」とは、はたしてそれほど立派な思想なのでしょうか? スポーツによって金銭の見返りを求めないので、一見するとキレイな思想に感じますが、実態は大いに違います。アマチュアリズムとは、19世紀に貴族階級が労働者階級を競技会から排除する目的で作られた、都合の良い思想です。つまり、この思想の根底には、身分や職業に対して貴賎を求めてます。ハッキリ言えば、アマチュアリズムとは立派な差別思想なのです。

こういう、歴史的な背景をロクに考えずに、上っ面の部分(=タテマエ)のみを都合よく解釈しているのが、日本の“アマチュア”と称する競技団体の幹部なのです。ましてや、高校野球を「教育の一環」に掲げている高野連が、こんな馬鹿げた思想を拠り所にしているのは本当に笑えない冗談に感じます。まあ、脳内にカビが生えた高野連の老人幹部は、教育者の名を騙ったスポーツマフィアみたいな連中なので無理もないでしょうね(苦笑)。



それに、国内のアマチュア球界だけでなく、日本の“アマチュア”と称する競技団体の幹部は、現在の国際スポーツ界の潮流に対して理解不足を感じます。
それは、言うまでもなく「プロ化」です。

かつて、アマチュア選手だけしか参加できなかった五輪ですら、1980年代以降はプロ選手の参戦をオープンにして、事実上プロとアマの壁が無くなっています。世界的に見ても、各競技でプロ化が進んでます。1970年代までなら、日本の「企業アマ」でも十分に対抗できましたが、プロ化が進行した現在ではこのようなぬるま湯の様な環境では、到底世界に対して太刀打ちできません。バレーボールをはじめ、1980年代以降の五輪で日本のお家芸の種目は、メダルはおろか五輪出場権の獲得すら苦戦を強いられるのも納得できます。



話を野球に戻すと、やはり国内球界はプロアマの壁を乗り越えて、挙国一致の体制で臨むのが理想です。そうでないと、国際競争力で大きく遅れを取ります。野球は五輪から除外されましたが、五輪とWBCのユニフォームのデザインが違うのは、代表チームを派遣する組織が異なるのが理由です(WBCがNPB、五輪が全日本野球会議です)。つまり、同じ日の丸をつけた日本代表チームであっても、統括団体がそれぞれ異なるので、いわば内戦状態の国家の様相を呈してます。

その弊害の最たる例なのが、国際大会における代表チームの編成です。せっかくの国際大会の経験を、次の国際大会に臨む代表チームに全く継承されてないので、大舞台で同じ過ちを何度も繰り返す要因になってます。中畑清のアテネ五輪での失敗や王貞治さんが率いた第1回WBCで優勝した経験を、星野仙一&お友達内閣が全く学んでいないのがまさにそれです(アテネでは星野は解説者だったんだけどね(苦笑))。

本来なら、国内球界は、日本サッカー協会のようなプロとアマを完全に統括した国内競技団体の創設を望まれます。しかし、球界にはそんな機運は皆無です。 プロだけでなくアマチュア団体(高校、大学、社会人)にも、それぞれの団体の背後には様々な利害関係者がいるのが理由でしょう。つまり、利権が絡んで縄張り争いがある事が、更に複雑にしてます。

プロは金に物を言わせる強引な態度は今後とも改めるべきですが、アマチュアも時代に逆行した独善的かつ“ムラ社会的”な体質も改めるべきです。 それと、各団体のパトロンになってるメディアも、球界全体の問題を真剣に考えて伝えるべきです。プロもアマチュアも、互いにエゴを捨てて球界全体の利益を考慮しなければ、いつしか衰退の道は避けられないと思います。

はたして、ベルリンの壁同様に、球界に聳え立つ壁が崩壊する日は本当に来るのでしょうか?

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