うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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リオデジャネイロ五輪の男子サッカーの参加資格も現行方式と同じに

2010年03月23日 | サッカー(年代別)
国際サッカー連盟(FIFA)は19日の理事会で、2016年リオデジャネイロ五輪男子サッカーの参加資格について、原則23歳以下にオーバーエージ(24歳以上)を最大3人起用できる現行方式とする方針を決めた。

 6月の総会に諮り、正式決定する。

 12年ロンドン五輪は、一度は21歳以下の大会とすることを決定したが、スター選手の出場を望む国際オリンピック委員会の意向もあって、従来通りの形で決着した経緯がある。

 このほか、アジアサッカー連盟のハマム会長が、FIFA会長の任期を2期8年を限度とする案を提出したが、反対多数で否決。また、政府介入のため資格停止となっていたイラク協会への処分を解除した。

〔読売新聞 2010年3月20日の記事より〕


                              *  *  *  *  *

 
正直言って意外な決定でしたね。というのも、2012年ロンドン五輪の男子サッカーの参加資格を巡っては、様々な立場の人たちが丁々発止のやり取りをし、中身もコロコロ変わり過ぎた経緯がありましたから。国際オリンピック委員会(IOC)も国際サッカー連盟(FIFA)が参加資格をU-21に変更した場合、本大会の出場チーム数を削減する意向を示すなど強い関心を寄せてました。

ロンドン五輪に関しては、FIFAが性急に物事を進めようとした事が迷走の原因でした。ただし、今回は6年後の2016年リオデジャネイロ五輪の参加資格を巡る議論です。ロンドン五輪はゴタゴタ騒ぎを回避する為に、一旦FIFAが矛を収めた感じです。なので、リオデジャネイロ五輪からいよいよ現行の23歳以下から21歳以下に見直されるのかと思いました。それだけに、リオデジャネイロ五輪も現行方式と全く同じなのには驚かされました。

おそらく、サッカー王国ブラジルでの五輪開催なので、年齢を引き下げると集客に不安があるのが目に見えているから、IOCがFIFAに譲歩するつもりはないと見込んだのでしょうか。五輪の主催者であるIOCにとってはサッカーはドル箱なので、今回のFIFAの決定は「満額回答」と言えるでしょう。しかもオーバーエージまで存続ですから、スター選手の参戦機会も確保できます。FIFAのゼップ・ブラッター会長にとっても、来年は選挙(当選すれば4期目)を控えているので、支持基盤である発展途上国を刺激したくないはずです。今回の決定は妥協の産物なのでしょうか。



だけど、サッカー界にとっては、今回の決定は立場によっては受け止められ方が様々だと思います。おそらく、ブラッター会長と対立する欧州は反発をする気がします。近年は各国とも日程が過密になってます。それにスター選手の低年齢化も進んでます。また、1995年のボスマン判決の影響もあって、欧州のビッグクラブは高額年俸と引き換えに選手と長期契約を結びがちです。クラブからすれば選手は立派な“商品”なので、怪我や移動&時差に伴う体調不良を恐れて、代表に供出するのを渋りたいのが本音です。しかもFIFAは、次回ロンドン五輪ではサッカーは公式行事とする意向です。ロンドン五輪もリオ五輪も8月に開催します。欧州のリーグ開幕直前なので、「協会vsクラブ」の対立が勃発するのは目に見えてます。

一方、発展途上国の日本にとっては、今回の決定はありがたかったのかもしれません。というのも、日本の育成システムには大きな欠陥があるからです。日本のユース年代のチームは1歳刻みの欧米諸国と違い、3歳刻みの編成です。なので、どうしても体力に劣る年下の選手は十分な試合経験を積めません。しかも日本はトーナメント方式の大会が主流なのも追い討ちを掛けてます。さらに、中3の高校受験のブランクも影響が大きいです。なので、参加資格を2歳引き下げると経験不足の年代の選手が主体となり、同年代の世界の選手とのレベル差を痛感すると思います。日本は歴史、体格、地理と3つのハンディがあるので、不利な材料を余計に抱えずに済んだのは良かったといえるのでしょう。とはいえ、リオデジャネイロ五輪の該当年代である今年のU-16代表の強化は重要です。

ただ、今回の決定は、一歩間違えればFIFAは自分の首を絞める可能性があります。それは、W杯の価値が下落するからです。北京五輪で優勝したアルゼンチンは、リオネル・メッシやセルヒオ・アグエロに加えてオーバーエージでファン・ロマン・リケルメ、ハビエル・マスケラーノを起用するなど、フル代表と遜色の無いメンバーが揃いました。五輪と差別化を図りたいFIFAにとっては、各国が豪華メンバーを揃えるのはあまり好ましくない状況です。ただでさえ、世界のスター選手が低年齢化しているのでなおさらですね。



いちサッカーファンとしての私見ですが、男子サッカーの五輪参加資格に関しては、W杯の価値防衛と過密日程などを理由に、今以上に参加資格に制限を加えるのが妥当のような気がします。ましてや、若手の国際大会にオーバーエージなんて不要だと思います。あくまでも極論ですが、プロ競技として長い歴史があり、世界的にも発達している男子サッカーとテニスは五輪に不要という気持ちすらあります(ただし、競技として歴史の浅い女子サッカーは必要です)。

だけど、日本サッカーを応援している立場としては、既述の通りにユース年代の育成に不安があるので、現行制度の存続にホッとしている気持ちもあります。まるで、普段は「貿易の自由化」を主張している政治家が、選挙で地元に帰ると「農産物の輸入を断固阻止!」と声高に叫ぶのと同じぐらい矛盾した気持ちですね(笑)。


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