うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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ロンドン五輪の男子サッカーの参加資格は、北京五輪と同じ23歳以下へ

2009年12月04日 | サッカー(年代別)
国際サッカー連盟(FIFA)は3日、南アフリカ・ケープタウン沖の当地で理事会を開き、2012年ロンドン五輪の男子サッカーを、原則23歳以下とする現行の出場資格で実施することを決めた。3人までのオーバーエージ(24歳以上)枠も維持される。
昨年の北京五輪で、所属クラブが招集された選手の派遣を拒むなどの問題が発生したため、年齢制限を21歳以下へ引き下げることが検討されていた。FIFAのバルク事務総長は、16年リオデジャネイロ五輪以降については改めて協議する可能性を示唆した。
また女子ワールドカップ(W杯)の出場チーム数を、15年大会で現行の16から24に拡大することを決めた。11年ドイツ大会は16チームで行う。

〔時事通信 2009年12月3日の記事より、写真は東アジア大会の対北朝鮮戦(日本協会のHPより)〕


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「大山鳴動して鼠一匹」とは、まさにこの事ですね。国際サッカー連盟(FIFA)、各大陸連盟、各国協会、欧州のクラブ関係者、そして国際オリンピック委員会(IOC)、ロンドン五輪関係者など、様々な思惑が絡み合った事が迷走した背景なのでしょう。それにしても、今回の男子サッカーのロンドン五輪参加資格見直しの問題は、本当にコロコロ変わり過ぎでした。



▼一連の変遷をまとめるとこんな感じでした。

・今年の3月にFIFAが21歳以下への変更とオーバーエージの廃止を検討
(=U-20W杯を五輪予選と兼ねる方式に変更)
          ↓
・6月にはIOCが参加チーム数の削減をチラつかせて圧力を掛け、大陸連盟や各国連盟の反対もあってFIFAが一旦白紙撤回
          ↓
・同月、「毎日100のアイデアを思いつくが、そのうち101がくだらない」の伝説を持つFIFAのゼップ・ブラッター会長が、ロス五輪方式(W杯本大会or予選に不参加の選手のみ参加資格付与)を突拍子もなく提唱
          ↓
・9月にはFIFAが21歳以下(オーバーエージは廃止)の改正を再び検討
          ↓
・12月3日、結局、ロンドン五輪の参加資格は北京五輪と同じ23歳以下となり、3人のオーバーエージの存続も決定
 (ただし、2016年リオデジャネイロ五輪以降の参加資格は来年2月に改めて審議)



五輪の主催者のIOCやロンドン五輪の地元の関係者からすると、参加資格がU-21だと一流選手の不在の骨抜き大会になり、切符の売り上げに大きく響きます。ましてや、開催地の英国はサッカーの母国ですから、見る目が肥えているのでスタジアムは空席だらけになるのは必至でしょう(ちなみに、聖地ウェンブリースタジアムもサッカー会場で使用します)。

しかし、オーバーエージを加えた23歳以下だと、北京五輪で連覇したアルゼンチンのようにフル代表と遜色のないメンバー構成となるので、W杯の価値を防衛したいFIFAにとっては好ましくない状況です。また、選手に高い給料を払っている欧州のクラブ関係者からしても、シーズン前に五輪の為に怪我でもされたら大迷惑です。それだけに、今回FIFAは、よくこの案を呑んだと思います。

やはり、あまりにも性急に物事を進めすぎたことが、IOCだけでなく、各大陸連盟や各国協会など身内からの反発を招いたのかもしれません。サッカー発展途上国にとっては、欧州や南米の先進国と違って、日頃から高いレベルで公式戦を戦う機会が少ないので、「23歳以下のW杯」でもある五輪は貴重な国際経験の場です。対抗措置でIOCが打ち出したチーム数の削減を実行されたら、発展途上国にとっては五輪はかなり狭き門となりました。

それに、ブラッター会長は発展途上国の支持を得てFIFAの会長選挙を当選した経緯があり、再来年には会長選挙を控えております。なので、発展途上国の意向を無視できなかったことが、今回の決定の要因なのではないのでしょうか。逆に言うと、欧州や南米の反発も予想されます。ただし、今回の決定はあくまでもロンドン五輪のみの適用なので、FIFAや欧州のクラブも妥協した可能性があります。なので、2016年リオデジャネイロ五輪以降の参加資格は、21歳以下への変更は避けられないのかもしれません。



一方、日本にとっては、今回の決定は間違いなく朗報です。というのも、日本は昨年11月にサウジで開催されたAFC U-19選手権の準々決勝で韓国に0-3で惨敗した為、今秋にエジプトで開催されたU-20W杯の出場権を逃したからです。しかも、1989年生まれの選手は、4年前にペルーで開催されたU-17世界選手権(現・U-17W杯)の出場権を逃した為、一昨年のU-20W杯と北京五輪に飛び級で参加した香川真司を除いて、世界大会の出場経験が皆無の年代です。もし、参加資格を21歳以下に変更したら、この年代の目標はW杯だけしかありませんでした。なので、今回の決定により、今の日本のU-20世代は救済され、「空白の世代」を回避できるからです。

しかし、日本にとっては、決して安穏としていられる状況ではないです。前回開催国で予選免除された中国は、今回のロンドン五輪ではアジア予選に回ります。先のU-20W杯&U-17W杯の両大会でベスト8に進出した韓国、優れた体格を持つ豪州、駆け引きに長けた中東勢、北朝鮮や中央アジア勢など、アジアのライバルが手ぐすねを引いて待ち構えており、間違いなく激戦が必至です。

過去の五輪の例から判断すると、アジアの五輪出場枠はおそらく3枠だと思われます。五輪アジア予選の方式は現時点では不明ですが、仮に前回の北京五輪アジア予選と同じ方式を踏襲した場合、日本はおそらく2次予選(4チーム×6組、H&A方式で実施し上位2位までが最終予選に進出)から参加すると思われます。そして、最終予選は4チーム×3組で振り分けられ、H&A方式で実施して首位のみが五輪出場権を獲得するルールでした。

最終予選の焦点は、どの国と一緒になるのかです。つまり、抽選会で使用されるシード分けの選定基準こそが、最も重要な要素となります。北京五輪の場合は、豪州がオセアニア連盟(OFC)からアジア連盟(AFC)に転籍してから初の五輪予選参加だったので、参考となる客観的な資料が少なかったこともあり、2次予選の成績のみでシード分けをしました。もし、ロンドン五輪アジア最終予選で、前回の北京五輪の成績をシード分けの選定基準とした場合、日本はアジア代表4チームの中で最低の成績だったので、第1シードの3チームに入れません。なので、韓国と豪州と中国が順当に最終予選に勝ち進んだ場合、この3ヶ国が第1シードになります。一方、日本は自動的に第2シードとなり、最終予選ではかなりの苦戦を強いられることが予想され、5大会連続の五輪出場も厳しくなるでしょう。



現在の日本のU-20世代は、正直イマイチ伸び悩んでます。また、期待されたU-17W杯も善戦むなしく3戦全敗で1次リーグ敗退。トルシエ監督が若手年代の選手を指導していた時代とは違い、現在の日本の若手年代の選手は世界水準から引き離され、アジアにおける優位性も失われました。なので、若手年代の育成と強化を怠ると、将来に大きな不安を残すので、現在の日本にとっては再建は急務です。

来年には、10月3~17日までAFC U-19選手権が開催されます(なお、先月の予選でU-18日本代表は豪州を3-2で下して、5戦全勝で首位で予選通過しました)。是非とも、再来年コロンビアで開催されるU-20W杯の出場権を獲得したいところです。そして、この年代と五輪代表を融合させて、“五輪予選前哨戦”となる11月12~27日に開催される広州アジア大会でアジアのライバルと腕試しをするのが、現在日本が思い描いている青写真ではないのでしょうか。また、アジア大会は豪州が不在ですが、大会の成績を五輪予選のシードの資料にする可能性もあります。ちょうど大会の開催時期がJリーグの終盤戦と重なるので、協会とクラブが連携して取り組んでほしいです。

日本は、今回思わぬ幸運を得たのですから、これをしっかりと活かして若手年代の強化を図らなければなりません。是非とも、五輪代表の監督は実績のある外国人を起用してほしいです(トルシエの時のように、フル代表と五輪代表の監督が同一人物なら最適です)。現在、U-20日本代表は、香港で開催されている東アジア大会に参戦しております。ライバルの韓国、中国、北朝鮮の陣容や大会への意気込みは正直よく分かりませんが、日本は好成績だけでなく、来るべき五輪予選に向けて実りある強化に繋がることを祈りたいです。


・日本サッカー協会のU-20代表のページ
※U-20日本代表は東アジア大会のあと、今月19日に敵地でU-20韓国代表と対戦します。
  来年1月にはカタール国際大会にも参加します。是非とも、皆さん注目して応援しましょう。


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