うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
のんびり更新しますので、どうぞ気長にお付き合い下さい。

井岡一翔が国内最短記録で世界王座奪取

2011年02月11日 | ボクシング
◆WBC世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦(2011年2月11日 @神戸ワールド記念ホール)

井岡一翔(挑戦者同級10位・井岡) 5回1分7秒TKO オーレドン・シッサマーチャイ(王者・タイ)

※プロ7戦目で王座奪取した井岡は国内最短記録を樹立。
 一方、オーレドンは7度目の防衛に失敗。


                         *  *  *  *  *


平成生まれ初の世界王者が誕生

辰吉丈一郎と名城信男の持つ国内最短記録(8戦目)の更新を目指した井岡一翔。本来のL・フライ級から1階級下げてミニマム級での世界初挑戦となりました。対する、6度防衛中の世界王者オーレドン・シッサマーチャイは、36戦35勝(13KO)1分と無敗のキャリアを誇るサウスポーでした。大方の予想では、促成栽培のきらいを感じる21歳の井岡よりも、プロのキャリアと技巧に勝るオーレドンが優位だと思われました。

初回はお互いに様子見の展開。しかし、2回に試合は動きます。じわじわと前進した挑戦者に王者は下がりながらも迎え撃つ展開。2分過ぎ、オーレドンが連打を仕掛けたところを、井岡が左フックをカウンターで浴びせてダウンを奪います。ただ、オーレドンのダメージが浅く、井岡は深追いしせずに終了のゴング。3~4回は、反撃を試みたオーレドンの攻撃をスピードで勝る井岡が巧みにかわすも、左カウンターを警戒するあまり、パンチが単発で手数が少なく、やや消極的な展開。この時点では井岡が優勢だと思われたが、4回終了時の公開採点では2-1と別れる意外な展開に。

王者の更なる反撃が予想された5回。オーレドンが遮二無二プレッシャーを掛け、お互いに打ち合いに。そして、1分過ぎ、井岡が強烈な左のボディーブローを王者の腹にめり込ませます。オーレドンはそのまま崩れ落ち、仰向けになって悶絶。主審が王者のダメージと戦意の喪失を確認し、カウントを途中で止めて試合終了。最軽量級では珍しいド派手なKO勝利を飾った井岡は、国内最短記録となるプロ7戦目での世界王座獲得に成功。奇しくも、今から24年前に叔父の井岡弘樹氏が名伯楽エディ・タウンゼントと二人三脚で獲得した同じ王座での戴冠となりました。

やはりというか、王座を手放したオーレドンは12kgの減量がモロに響いた格好となりました。一方、井岡は、叔父が現役時代に大の苦手にしていたサウスポーを攻略したことも、勝因の一つに挙げられるでしょう。減量苦が伝えられる井岡は、今後は複数階級制覇の野望のプランがありますが、せっかく掴んだ王座を簡単に返上することなく、せめて指名試合ぐらいはクリアしてほしいものです。その上で、自分のベストパフォーマンスを発揮しやすい階級に転向して戦ってほしいものです。



それにしても、今回は井岡が鮮烈なKO勝利を飾ったことよりも、スポーツ中継では非常に悪名高いTBSが意外とまともな中継をしたことの方が、遥かに驚天動地の大事件でしたね(笑)。録画中継だったことは唯一味噌を付けましたが、試合終了後に具志堅用高さんの世界戦KO集を放映していたのは懐かしい気分になり、ボクシングファンとしては有難かったです。というか、倒れた相手を本能で殴りつける猛禽類のような具志堅さんの豪快なファイトは、井岡から主役の座を奪ってしまったような気もしない訳でもないが・・・(苦笑)。
ちなみに、今度の2月13日の日曜日の15時からに具志堅さんの特集をBS-TBSで放送します(→詳細はこちら)。

更に、映画の宣伝を兼ねて主役の某アイドルをあえてゲストに使わずに、俳優の香川照之さんを起用したのも良かったです。なにせ、長年観戦歴のある香川さんの豊富な知識は、プロの解説者ですら舌を巻くほどですから。ハッキリ言って、場末のホストみたいな格好をしたあの2人の解説者よりも遥かにマシです。WOWOWを視聴しているボクシングファンなら誰もが香川さんのことを存じてますが、俳優としてしか知らない方にとっては、今回は意外な一面を見られてもしかしたら驚いたのかもしれませんね。ちなみに、私は具志堅さんと香川さんが出演していた次の番組の「ぴったんこカンカン」まで観ました(笑)。


それにしても・・・
某一家の長男が日本人初の3階級制覇を飾ったはずなのに、映画の宣伝どころか、試合にすら呼ばれなかったのには大いに笑えましたね。せめてTBSも、兄弟2人合わせて世界戦120ラウンドを戦いながら、奪ったダウンがたった1つしかないこの一家の試合を「過去の迷勝負」として流せばよいのに(爆)。



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4 コメント

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祝!王座獲得 (まったり屋)
2011-02-12 19:18:59
猫なべさんこんばんは。

やりましたね井岡一翔!叔父の弘樹選手に続きWBC世界ミニマム級王者獲得。

以前新聞の片隅のベタ記事にに井岡一翔という名前を見て“あの井岡弘樹の甥がボクサーになったのか”と、楽しみにしていました。

が、こんなに早く世界タイトルに挑戦、しかも相手は無敵の6度防衛中のオードレンとは・・・挑戦するにしてもちょっと時期尚早なのでは?、と心配していましたが、見事なTKO勝利でしたね。

まさか最軽量のミニマム級であんなKO劇が見られるとは夢にも思っていませんでした。
ましてややってのけた相手は36戦35勝1分けで負け無しのオードレンですよ!?

私がボクシングを見るキッカケになったのが、たまたまTV中継で見た井岡弘樹のWBCストロー級初代王者決定戦でしたが、最軽量級ということもあってKOというのはなかなか見られるものではありません。

無敵の王者を5Rでマットに沈めたボディブローは何度見返してもパンチが見えない恐ろしい一撃。

この時点で叔父の井岡弘樹を超えたと井岡弘樹の大ファンだった私は認定します!

減量の関係でミニマム級は防衛せずに返上するとの報道もありますが、猫なべさんの仰るとおりせめて一試合だけでも防衛戦を見てみたいですね。

何はともあれおめでとう井岡一翔!
叔父が成し遂げられなかった三階級制覇の夢を“本物の”三階級制覇を私たちボクシングファンに見せて欲しいですね。
返信する
とりあえず よかったですね (こーじ)
2011-02-12 22:06:08
 考えてみれば選手寿命が延びているとはいえ現王者の長谷川・西岡・内山らは30代ですから
20代の生きのいい王者が出ないととは思ってました。
 
 そして次世代を担える素材だからこそ拙速な
世界挑戦には‘?’を付けてましたが、減量の悪影響があったとはいえイーグル共和に完勝して無敗のオーレドンをKOというのは凄い事ですよね。

 幸いにして何度か防衛戦を行うという話を
してますので安心です。
 即返上では勝ち逃げですから。

 井岡の戴冠で最も影響を受けるのはTBSで、
これで世界戦10試合を戦って1度もKO勝ちできない某兄弟から井岡にシフトするのではと思いますよ。

 やはり本物とまがい物の差が見事に出ましたからね。

 温故知新といいますが、早いラウンドのKO決着の場合は具志堅らのような かつての王者の戦いぶりを流して現在の視聴者にも凄さを知らしめる事も大事だと思います。

 それと後ほどネタに使いますが、香川照之の
存在がOAを大いに楽しく聞けました。
 やはり元世界王者だけでなく香川照之のようなボクシングマニアの解説が必要でしょう。
 
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2011-02-12 23:04:09
こんばんは、まったり屋さん

それにしても、井岡は21歳の若さとは思えない落ち着いたボクシングには驚きでしたね。
カウンターを合わせるのが上手いオーレドンに対し、逆にカウンターを何度も浴びせましたから。
更に、相手のパンチを外す巧みな技術など、とても7戦目の選手には思えなかったです。

叔父の井岡弘樹ですら、世界戦でのKO勝利は李敬淵とのストロー級の初防衛戦だけですから、
同じ階級での今回の鮮やかなKO勝利はポテンシャルの高さを十分に感じさせました。
まずは、防衛戦をこなしてキャリアアップを重ねた後、強い王者からベルトを奪って
本当の意味での複数階級制覇の偉業を達成してほしいですね。
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2011-02-12 23:33:40
こんばんは、こーじさん

奇しくも、井岡と具志堅は王座奪取した時の年齢が同じ21歳ですね。
まだ井岡は成長途上なので、世界戦でキャリアを重ねながらレベルアップできる利点があります。
今後は様々なタイプと戦うので、キャリアの浅さをどのようにカバーするのか見ものだと思います。

とはいえ、確かな技術と鋭い強打を併せ持つ井岡は長期政権を築き上げる可能性があるので、
まずは王者の立場として初防衛を果たしてもらいたいです。
その上で、タイミングを見計らって上の階級の強敵を倒してほしいですね。

ちなみに、「ぴったんこカンカン」で後楽園ホールを訪れた香川照之さんが、ファイティング原田が
露骨な地元判定で3階級制覇を逃したことを熱く語ってましたが、
これは某一家を支援するTBSにとっては強烈な皮肉にも聞こえましたね(笑)。
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