北朝鮮の新型ミサイルは、スピードが早く撃墜は難しい 防御の確率は?
AbemaTIMES 5/21(日) 13:41配信
ほぼ垂直に驚異的な速度で上昇していく北朝鮮の新型中距離弾道ミサイル「火星12」は威力の強い大型核弾頭を装着可能だとされている。実験を見守った金正恩委員長は「アメリカがつまらない軽挙妄動で先制攻撃すれば、史上最大の災難を免れない。アメリカ本土は我々の攻撃圏内に入っている」と述べたという。
稲田防衛大臣は14日、「高度は2000kmを超えるものであったと推定されることを踏まえれば、新型の弾道ミサイルであった可能性がある」と述べた。またミサイル迎撃のための地上配備型システム「イージス・アショア」導入に向け、最終調整に入った。
「火星12」はロフテッド軌道と言われる宇宙ステーションの5倍もの高さで打ち上げられ、最高高度2111km、落下速度が非常に速く迎撃が困難だとされている。通常の軌道で発射すると射程距離が4000kmから4500kmと見られ、グアムの米軍基地やアラスカも射程圏内だ。
米朝極秘協議が行われるなど対話路線も垣間見せていた北朝鮮。北朝鮮の崔善姫米州局長は「条件が熟せばトランプ政権と対話する用意がある」と述べている。また韓国の文在寅大統領は「環境が整えば平壌にも行く」と発言した。一方、アメリカのヘイリー国連大使は「金委員長は被害妄想に駆られている。ミサイル実験をして大統領と対話できると思ったら大間違い」とテレビのインタビューで語った。
ミサイルは中国の習近平主席肝いりの130カ国以上が参加する一帯一路サミットの直前に発射された。
北京の池在竜北朝鮮大使は異例の記者会見を開き、「我が国のミサイル発射実験は最高首脳部(金正恩氏)が決心すれば、任意の時間、任意の場所で行われるだろう」と発言した。
自民党・参議院議員の青山繁晴氏は「(北朝鮮のミサイルには)備えないといけないと思う。予算に反映させないといけない」と述べた。さらに「北朝鮮は中国と裏で話しあって、核実験はやらない。少なくとも当面は。その代わりにこれ(ミサイル実験)をやっている」との見方を示した。
コリア・レポート編集長の辺真一氏は「北朝鮮のこの流れ(ミサイル実験の進み方)は分かりきっている。なのに常に対策が後手後手で、あれよあれよとこうなった。今やICBMを手に入れようとしている」と述べ、北朝鮮対策の遅れを指摘した。さらに6回目の核実験が行われる場合は、総仕上げになるとの見方を示した。その(核弾頭が搭載可能なミサイルの)対象としては、アメリカ本土が想定されているという。
軍事アナリストの黒井文太郎氏は「今まで北朝鮮はミサイルに核弾頭を積めなかった。しかし去年くらいからどうやら積めるらしいという話が出てきた」と述べ、北朝鮮がミサイル・核技術を高めているとの認識を示した。さらに「北朝鮮が核ミサイルを持つというのは、子どもがピストルを持ってしまうようなことなので、周りの国も対策をしないといけないことになった」と情勢の変化を解説した。
黒井氏によると、「火星12」は米軍の基地があるグアムまで届き、アラスカの一部にも到達するという。今回、高度を重視して打ち上げたのは、距離を伸ばすとアメリカを刺激するからだという。黒井氏は「よく挑発という言葉を使うがむしろ逆で、アメリカが空母を出してきたりしたので、北朝鮮は怖がっている」との見方を示した。アメリカを刺激せずに核技術を向上させようとしているという。
青山氏はこのタイミングで北朝鮮がミサイル発射実験を行ったのは「アメリカと交渉しているから」だと解説する。さらに「(実験が行われた)5月14日が後で振り返って分岐点になるかもしれない。アメリカの軍内部の反応を見ていると、レッドゾーンを超えた。北朝鮮は交渉のためにやっているが、(暗礁に)乗り上げてしまった」と述べ、現状に懸念を示した。
辺氏も関連して「日本列島を超えて、太平洋にミサイルを落とすかどうかがアメリカにとって最後のレッドライン」との認識を示した。また韓国の新大統領誕生の影響については、「北朝鮮は韓国ではなく、アメリカを見ている」と説明する。辺氏によると、誰が韓国の大統領になっても、太陽政策が行われても、北朝鮮のミサイル・核開発への姿勢は変わらなかったという。青山氏も辺氏と同じ意見だとし、「文大統領は北朝鮮から相手にされていない」と述べた。
辺氏は「アメリカはできれば対話で、交渉で平和的にやろうとしている。ただし条件がある。6回目の核実験は止めろと。ICBMの発射も止めろと。ならば会ってもいいと。しかし、これが北朝鮮からすると気に食わない。先に米韓合同軍事演習止めろと。さらに制裁を解除しろと。ならば対話の交渉に出ていってもいいと」と述べ、米朝の主張は平行線をたどると分析する。
黒井氏によると、北朝鮮の新しいミサイルはスピードが早いので撃ち落とすのは難しいという。しかしこのミサイルはグアムなどを対象としているので、日本はノドンなどのミサイルへの対応が必要だという。防御の確率については「やってみないと分からない。テスト上は大丈夫だが、いっぺんに撃たれたりとか、機械がやることなのでエラーが起こったりとかがある」と述べた。
辺氏は「本来、北朝鮮は日本にとって、脅威の対象ではない。なぜならば日本と北朝鮮は交戦状態にない。領土問題も資源紛争もない。北朝鮮と米韓は国際法上も交戦状態におかれている。日本は北朝鮮から核やミサイルで狙わるおぼえは何一つない」と述べた。しかし「日米安保条約があるため、北朝鮮は『我々とアメリカとのケンカに首を突っ込んで来るのか』と思う」とし、日本も北朝鮮の攻撃対象であるとの認識を示した。
新型ミサイルの発射実験で新たな局面に入ったとの見方もある北朝鮮情勢に今後も注目することが必要だ。