燃料電池車が試験走行
600m区間を最高時速32キロ
鉄道総研は9月29日、東京都国分寺市の国立研究所で燃料電池車両の試験走行を報道陣に公開した。今年4月下旬から研究所内の試験線で本格的な走行試験を行っていたが、公開したのはこの日が初めて。約20人を乗せ、600㍍の区間を最高時速32㌔で走行した。
実用化視野にハイブリッド化検討も
燃料電池車両の開発は2001年度(平成13年度)から始まった。それ以前にも燃料電池を鉄道車両に利用できないかという検討が行われていたが、同年度から国土交通省の補助金とJRからの負担金による予算を付けた研究開発テーマになった。2003年度までの3ヵ年は基礎的な研究期間の「フェーズ1」と位置付け、30㌔ワット級の燃料電池システムを試作して台車のみによる駆動試験を実施した。
その後、燃料電池自体の開発も進むと判断、2004年度から2006年度のフェーズ2では実際の鉄道車両への適用を想定したシステムの試作を計画。100㌔ワット級のシステムを作ることができ、試験車両に搭載して今年4月26日から試験走行に入った。
車両はJRの通勤車両をベースに製作。高圧水素タンクと燃料電池システムなどを搭載し、2つの台車のうちの1つを駆動させるもので、これまでの走行試験では最大出力約90㌔ワット、650㍍の試験線で最高時速40㌔を記録している。
燃料電池を鉄道車両に応用している例としてカナダで鉱山用機関車の試作車両があるというが、「営業用の旅客車両を想定した試験車両での走行は初めてではないか」(山本貴光鉄道総研車両制御技術研究部動力システム主任研究員)という。
2007年度から2008年度までのフェーズ3では実用化を視野に入れ、試験車両と燃料電池システムをさらに深度化していく考え。車両を増やすことや、回生ブレーキを活用するためブレーキ時に発生するエネルギーを蓄積するシステムを新たに開発し、燃料電池システムとのハイブリッド化を検討していく。
ハイブリッド化では両システムの出力分担などが課題。さらに実用レベルでは最大300㌔ワット級規模の出力が必要になるが、規模の大小は燃料電池自体の開発の進捗に伴うため、現在は主に自動車向けが盛んな開発の動きが、今回の試験走行を機に鉄道分野にも向けられるのを期待したいところ。山本主任研究員は「自動車は(道路などの)インフラまでメーカーが整備しないが、鉄道は1つの事業者が車両からインフラまですべてを管理する。(燃料電池システムを)導入しやすい環境にあるのでは」と話す。
鉄道事業者では排ガスなどの問題を解消できる燃料電池車両を、主に非電化区間を走るディーゼルカーに置き換わるものとしてみている。
山本主任研究員は、「これまでの研究開発が1つの形になり節目といえるが、電車と同等のコストで実用化できれば、架線レスでメンテナンスフリーの鉄道システムなど、燃料電池が採用される機会はもっと多くなるのでは」とし、今後の研究開発に力を入れていくという。
実用化になれば地球に優しく、将来的にはコストも抑えれる夢の電車だよね。でも、まだまだ開発に期間が掛かるみたいね。これからもいろんな諸問題を克服してはたく実用化のめどが立てばいいですね。