9月26日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
真剣に取り組む
大相撲は相変わらずの人気
である。私はその勝負が一瞬の間に決まるというところが好きである。力士の人たちは、その一瞬の勝負のために、毎日朝早くから夜おそくまで文字通り血のに
じむような鍛練をし、稽古にはげんでいる。そしてその成果を土俵の上で一瞬の間に出し尽そうというわけだ。
われわれも、いま自分の担当している仕事を本業として、これに打ち込んでいるだろうか。大相撲の人気というものの裏には、日夜稽古にはげむ力士の姿があることを思って、われわれもまた、自分の人生、自分の本業というものに対して日々真剣に取り組んでゆきたいものである。
筆洗
2013年9月25日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼ジャンプすると見せ掛けて、遅れて跳び上がる-。世界をあっと驚かせ、ミュンヘン五輪でバレーボール日本男子代表が金メダルを獲得する武器となった「一人時間差攻撃」は、松平康隆監督が松本清張さんの小説『点と線』から着想した
▼東京駅十三番線の横須賀線ホームから十五番線の博多行き夜行列車「あさかぜ」を見通せる四分間が犯罪トリックの焦点だった。時間の「ずれ」を応用できないか、と松平さんは考えた
▼発着時刻の遅れが少ない日本の鉄道ならではの秘話だが、信頼を裏切る不祥事が発覚した。JR北海道が線路の「ずれ」を把握しながら、放置していた問題である
▼きっかけは今月十九日の貨物列車の脱線事故だった。昨年の定期検査でレール幅の異常を把握していたのに放置していたことが判明。過去の整備記録を点検した結果、放置していたのは計九十七カ所に
▼乗客の命を預かる鉄道会社としては、絶対にあってはならないことだ。特急列車の出火などのトラブルが相次ぎ、JR北海道は秋の観光シーズンの乗客離れが予想されていた。怖くて乗れないという声が出るのも当然だ
▼尼崎JR脱線事故のように、人命が失われる大惨事が起きても不思議ではなかった。社外の目も取り入れ、企業の体質自体に切り込まなくては出直すことは不可能だ。修正が必要なのは、社会常識とのずれである。
2013年9月26日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼がっつり」食べる、という言い方が広がっている。かつてなら、しっかりとか、がつがつとか言ったものだろう。本紙の過去の記事を調べると108回登場している。最初は02年で、驚いたことに「がっつり化粧して……」とあった
▼若い人のまねをして使いたいとは思わないが、日本国語大辞典によれば、この言葉自体は新しくない。以前はがっくりという意味で使われていたらしい。九州の方言では、ぴったりとか、ちょうど、である
▼文化庁の国語世論調査がおととい発表された。新しい言い回しの広がりも調べている。「ざっくり」とした説明、は7割が聞いたことがあり、4割弱が使ったことがあった。「衣服などを無造作に着ているさま」との語釈もあるから、まったく見当外れの応用ともいいにくい
▼パソコンが「さくさく」動く、は認知度が低かったが、使う人は使う。大辞典いわく「水などが滞りなく軽快に流れるさま」。やはり原義の範囲内か。この二つの副詞の用法、言葉の乱れとして目くじらを立てるほどのものなのかどうか
▼言葉は世につれ。伝統は守りたいが、あらがえない変化もある。小言をいう人がいて、取りなす人がいる。そのへんの立ち位置が絶妙なのが、エッセイスト山口文憲(やまぐちふみのり)さんの『若干ちょっと、気になるニホン語』だ
▼若い人がよく使う合いの手「ほんとですか」について。目上に対する一種の丁寧語なのになぜか気に障る。〈小声で抑揚もつけずにボソッと〉言うからだ、と。確かに。