ブログ de なんで屋 @東京

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リンパ系って何?

2008-04-12 13:54:57 | なんでや劇場
「なんでや劇場」では、新しいシリーズとして「免疫機能」について追求していますね。私たちの体を守る驚くべきシステム。次回も楽しみです。
そこで、今回は、その予備知識もしくはよりイメージを深めるために私たちの体の「リンパ系」について紹介します。ちょっと専門的な話になりますが、なんでや劇場に参加されている方ならば全然大丈夫。そうでない方にもたぶん、理解頂ける内容と思います。

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さて、
私たちの体の血管には、血液が流れています。血液は、生命を維持するために欠かせないもの。大怪我などをして血がたくさん出ると命にかかわることがあります。これは皆さん知っていますよね。
ところが実は、もう一つ大切なものが流れているんです。それがリンパ液。リンパ液は、「リンパ系(Lymphoid system)」と呼ばれるシステムの構成要素。前回のなんでや劇場で勉強した「ヘルパーT細胞」や「キラーT細胞」は、「リンパ球系」と呼ばれています。
「リンパという言葉はよく聞くけど、なんだか良くわからない」という人多いですよね。ここでちょっと勉強してみましょう。

【リンパ系とは?】
●全身にはりめぐらされたリンパ管

人体にはリンパ管という細い管がくまなくはりめぐらされています。リンパ管は細くて透明な管で、その中にはリンパ液という無色透明の液体が流れています。リンパ管は合流しながら、次第に太くなっていきます。首や脇の下、もものつけ根などリンパ管が合流する要所要所にリンパ節(腺)があります。
リンパ管は、最後には一本になって上大静脈が鎖骨下静脈と分岐する部分で血管と合流します。血管に流れ込んだリンパ液は心臓・動脈を通って全身に送られます。リンパ系とは、このようなリンパ管のネットワークのこと。第2の循環系です。
第2の循環系ということなので、リンパ系は「循環器系」に分類されています。(循環器系には血管系(The arterial system)とリンパ系の二つがあります)


【リンパ液のしくみ】
●リンパ管を流れるリンパ液
リンパ液とは、毛細血管からしみ出した血漿がリンパ管に入り込んだもので、古い細胞や血球のかけらなどの老廃物や、腸管で吸収された脂肪を運ぶ役割をにないます。リンパ液は、リンパ管の中を流れた後、血管に入り、心臓・動脈を流れた後に毛細血管からしみ出し、再びリンパ管に入り込むというコースで循環しています。
リンパ液は、非常にゆっくりと流れています。心臓から出て行った血液が体の中を1周してまた戻ってくるのにかかる時間が40秒なのに、リンパ液が心臓までたどり着くまでにかかる時間は12時間から24時間とも言われています。
これは、リンパ液の循環には、心臓のようなポンプが介在しないためです。リンパ液の循環は、リンパ管の蠕動運動と骨格筋の収縮が主たる駆動源となっています。
また、リンパ液には毛細血管からリンパ球も流れ込み、リンパ球は人体に害を及ぼす微生物が進入してきた場合、それを識別して抗体をつくり、撃退する能力を持っています


【リンパ節のはたらき】
●リンパ節はリンパ液のろ過装置

リンパ腺とも呼ばれるリンパ節は、リンパ管が合流する部分にある球状の構造物です。豆粒大からソラマメ大のものまで大きさは色々で、形も場所によってまちまちです。
全身に約800個あり、主に頸部(けいぶ:耳の周り、顎の下、首の付け根)、液窩部(えきかぶ:脇の下)、鼠けい部(そけいぶ:もものつけ根)の周辺に多く分布しています。
リンパ節には、リンパ管を流れる病原体や毒素、老廃物を取り除き、リンパ液をろ過する作用があるほか、骨髄で作られたリンパ球を一時蓄え、成熟させる働きもあります
リンパ液には、白血球によって処理された老廃物や処理できなかった癌細胞(上記:毒素)などが取り込まれているので、ろ過装置であるリンパ節にはそれらを完全処理するためにリンパ球やマクロファージなど白血球が多数存在します


【リンパ節が腫れるわけ】
●腫れるのは病原菌と戦っている証拠
細菌やウイルスが体内に侵入すると、リンパ球や白血球がすばやく反応して撃退してくれます。しかし、病原菌の勢いの方が強い場合は、この防御システムをかいくぐって病原菌がリンパ管内に侵入し、やがてリンパ節にまで到達することになります。
腕や足などのリンパ管が赤い筋となって見えたり、耳の下あたりにグリグリを感じそこが腫れて痛んだりしたら、これはリンパ節が病原菌と戦っている証拠です。
この戦いに敗れると病原菌は全身に回り、敗血症などの病気を引き起こします。リンパ節とは、いわば、人体を守る最後の砦と言えるでしょう


【リンパ器官】(←ウィキペディア「リンパ系」 より引用です)
リンパ器官を構成する付随的なリンパ組織には胸腺、脾臓、リンパ節、パイエル板、扁桃、虫垂、赤色骨髄がある。これらの器官を足場にして、B細胞やT細胞、及びマクロファージ、樹状細胞など他の免疫細胞が体を循環する。他にも、細網内皮系と呼ばれるものがある。
病原体が体内に侵入したり、体が抗原に晒されたりすると、抗原がリンパ液に移動し、リンパ液はリンパ管を通って近傍のリンパ節に運ばれる。リンパ液の中の細菌、癌細胞といった異物はリンパ節で除去される。マクロファージおよび樹状細胞が病原体を貪食・処理し、リンパ球に対して抗原提示を行う。病原体を認識するとリンパ節は腫大し、産生された免疫細胞が新たに加わって生体防御にあたることになる。


【胸腺】
解剖学上では、免疫系は独立して、リンパ系は循環器系の一種として別々に分類されているようですが、実際は密接につながっています。その一例が、「胸腺(Thymus)」という器官です。
大昔、胸腺は謎に包まれていました。胸腺の中に白血球の一種であるリンパ球が詰まっていることは知られていましたが、働きについては誰も知りませんでした。それが解明され非常に興味深いことがわかったのです。
●リンパ球の教育係:胸腺

胸腺は心臓の上にかぶさるようにしてある器官です。ヒトではうまれる直前に体重に比して最大となり、思春期には最大の大きさ(30~40g)までなりますが、その後は急速に退縮して脂肪細胞に置き変わっていきます。
哺乳類において胸腺は、T細胞系列のリンパ球が増殖、成熟し、抗原レセプターのレパートリーをつくりだし、免疫寛容となるように教育する環境を提供しています
ヘルパーT細胞やキラーT細胞の「T」の字は、胸腺の英語「Thymus」の頭文字をとったもの。どのリンパ球系細胞にも分化する可能性のあるリンパ球系前駆細胞(幹細胞)が、胸腺で分化・増殖すると同時に勉強をして成熟し、T細胞(ペルパーT、キラーT、サプレッサーT)になります。

リンパ系器官の胸腺が、免疫系の白血球に深く関わっている。人体を知るために解剖学は有用だと思いますが、その分類だけを見ていると各々の系が独立して働いているように勘違いしてしまうことがあります。人体器官は、密接にかかわりあっているという一例ですね。


【まとめ】
リンパ系は、私たちの体中にはりめぐらされた血管と同じように、体中に存在している循環系のシステムであることがわかりましたね。
リンパ系には、いくつかの役割がありますが、そのうちの一つが免疫。免疫の側面から見たリンパ系は、白血球たちにとって基地のようなもの。病原体などの敵と戦う戦場(リンパ節)でもあります。ここが破られると、重篤な状態に陥ることから、人体にとっては最終防衛ライン。それを死守するために、白血球たちはがんばっているのです。

リンパ系は、同じ循環系の血液とは違って勢いよく流れているわけではないし、真っ赤な色をしているわけではないため、意外と注目されない系です。でも、実は日々地道に働いて、私たちの体を支えてくれているんですね。


ということで、またまた非常に長くなってしまいましたが、いかがだったでしょう。「リンパ系」について概要はわかったでしょうか。
前回、それから次回のなんでや劇場の足しになれば嬉しいです。
それじゃぁ、また。

たしょう

<参考資料>
「からだのしくみ事典」 浅野伍朗 監修 成美堂出版
リンパ系(ウィキペディア) 
リンパ節(ウィキペディア) 
リンパの特徴 
免疫系(各論) 
解剖学(Anatomy)  

など

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (みつこ)
2008-04-12 17:16:41
ちょうど前回のなんでや劇場で「リンパ系って何?」って思っていたんです!すごーい
よくわかりました☆ ありがとうございます

Unknown (カネキン)
2008-04-12 17:42:49
僕はリンパ系という言葉しかしらなくて、実際どういった役割をしているのか、よくわかりませんでしたし、正直、ここまで重要な役割をしているとは思っていませんでした。

今この瞬間でも、体に進入してくる病原菌をリンパ系の中の白血球たちが闘って、私たちの体を守ってくれてるんですね。
Unknown (bunchan)
2008-04-12 19:20:37

白血球たちが体内のどんなところで闘っている、
とか、
体がこんな風になってる時って頑張ってくれてる時なんだ、
ってことがすごく良く分かりました☆

すごいですねっ☆感動です 
Unknown (タニザキ)
2008-04-12 20:33:25
空腹時の方が免疫力高いらしいんですけど、ホントでしょうか?

あと、笑うと免疫力が高まるらしいですよ。
Unknown (こうくん)
2008-04-12 20:40:32
笑うとなんで免疫力が高まるんですかね~???

Unknown (ミサイルマン)
2008-04-13 01:38:08
改めて自分の身体のことを客観的に見てみるとすごいしくみだと感動します。

リンパ系の仕組みは哺乳類で共通なのか?進化のいつの過程で獲得したシステムなのか?気になります。
コメントありがとうございます (たしょう)
2008-04-18 00:30:27
コメントをありがとうございます。

みつこ さん
>ちょうど前回のなんでや劇場で「リンパ系って何?」って思っていたんです

やっぱり。白血球たちの役割はすごくよくわかったのですが、彼らの居場所がイマイチ鮮明ではない感じがしたんですよね。
少しはお役に立てたようで、うれしいです。


カネキン さん
>正直、ここまで重要な役割をしているとは思っていませんでした。

そうなんです。とても重要なんですよね。
私たちの身体は、色々な役割を分担して担うことで一生命体として成り立っている。そして、集団となってヒトという種を存続させているわけです。これだけ広いと追求は尽きませんね。


bunchan さん
>体がこんな風になってる時って頑張ってくれてる時なんだ、ってことがすごく良く分かりました

ありがとうございます。
身体に異変を感じたときの多くは、リンパ系ががんばっている時なんだと思います。
風邪の発熱など、自覚される症状は辛いものですが、ちゃんと意味のある反応なんですよね。
また、リンパ系は、自覚されないときにもがんばってくれています。特に、がん細胞とは日常的に闘っているそうです。
免疫の事を理解すると、いつもよりもっと身体に感謝したくなりますよね。


タニザキ さん
>空腹時の方が免疫力高いらしいんですけど、ホントでしょうか?

一般にそういわれていますね。
私たちの進化は常に飢餓と隣り合わせであったことから察すると、納得できそう。つまり、高い外圧状況があってこそ、白血球も活性化するという概略理解です。


こうくん さん
>笑うとなんで免疫力が高まるんですかね~???

最近、医療機関でとり入れられている療法ですね。
落語なんかを病院でやった事例で、笑いが免疫機能の活性化に効果的であったと報告されています。

笑いは、脳でいうと、共認機能に関わる大脳新皮質が生み出しているといわれています。
ですから、概ね、共認充足が得られると免疫機能にも良い影響があるということになりそうですが、それがなんでかというと難しいですね。
私たちは、本能を超えた共認機能を頼りに数百万年を生き残ってきました。その間に、身体機能と共認機能とが結びついた、ということは言えそうですね。
「病気は気から」と言われるように、私たちの身体は、気の持ち様(充足状況)に大きな影響を受けますからね。
ちなみに、冒頭の病院の報告で面白いのは、同じ笑いでも、人をこけ落としたりするブラックな笑いでは、免疫機能の活性化に対してあまり効果がないという点。ブラックな笑いは、共認充足という点では足りない、とも言えそうです。


ミサイルマン さん

>リンパ系の仕組みは哺乳類で共通なのか?進化のいつの過程で獲得したシステムなのか?気になります。

確かに、仰るとおりですね。
が、申し訳ありません。調べていません。知りません。
調べてみたいと思います。良ければ、ご一緒にどうでしょうか。
テスト (中学生)
2009-06-18 11:50:48
保健で循環機能の発達をテストででるのですが 胸腺って何だろう?役割は?思春期との関係って?ちんぷんかんぷんで。。。心臓や胃だったら イメージつくんですけど。このサイト見て なんとなく 少しですが、入り口がみえました。絵で解りやすく解説したらいいなーと。熱が出た場合、わき下や太ももの付け根 首を冷やす、これって戦争(?)してて 熱くなって腫れてるからからなんですね。