理研セミナーで、D-wave (初の実用的な量子コンピュータを出した会社) のワークショップがあったので
参加してきた。D-waveというととかく嘘くさいイメージがあるが(失礼)、意外とまじめだった。
こういう荒野としか思えないところを切り開き突き進む企業は大好きなんで個人的には大プッシュなのだが...
ちなみに僕はquantum computerを使っても量子化学の問題が本質的には速く解けないことを直感し、
この荒野からは撤退してしまった(もしそうならSpin glass or Max-cut problemがQCで効率的に解けるはずで、しかし
すべての状態が縮退した試行状態から波束を収縮させたとすると、相関が無い故どの固有状態も等確率で出てしまって、
基底状態を優先的に出すことができないのである。でも理論的には証明できなかった。アホだからw)。
実際コレは後ほど証明されちゃって、QMA-completeなどという新しい問題の複雑さのクラスまで生み出してしまった。要するに
NP-hardのquantum computer版である。でも2005年に
Asupru-Gruzikはこの荒野に乗り込んで、量子化学ならばHartree-Fockがよい近似解として得られる(ことが多い)ので、QCをつかうと
基底状態の問題が解けるとした。講演はハワイの学会でHead-Gordonがやってた。で、質問したら「我々NP-hardの問題を
解いたとは一言もいってない」と返された。やっぱ騙されてたw と思ったけど興味津々なのである。
時間的にキツかったため全部には参加せず以下の二つだけ。
> Title: Performance Benchmarking
> Title: Applications for Adiabatic Quantum Computing
結論から言うと、まだかなり実用的には遠いと思った。
まずqubitの実装だが、8qubitがunit cellをなっておりそこはfull entangleしている。
それをタイルにして並べ、128qubit実装したといっていた。
タイル同士は2qubit分だけつながっている(connectivity)だけで、128qubitといえども128qubitがフルにあるかというとそうではなかった。
今後512qubitのマシンを作るとのことだったが、connectivityは上がらないとのこと。
タイルをまたいだqubit同士のentangleは弱い、つまり無いところもある訳だが、
quantum turing machineの資格はあるとおもわれ、とりあえず問題実装はできるようだ。
ただ問題によっては必要なqubitがexponentialなオーダーでふえるかもしれないのだが、ここはわからなかった。
今のところ、量子計算機への入出力は古典的で普通にbitを読み書きしているとのこと。
次に、古典的にはNP-hardな問題をプログラミングし解いているスライドもあった。ただし、
connectivityのなさもあるので、ある程度reduceされている問題。
まず、この手の問題に量子的なアルゴリズムが有効かというと、原理的には有効ではない
と知られているので、prefactorが圧倒的に小さくなるという言い方をしていた。
古典と違うのは何回も走らせて、波束を収縮させ確率を見るところ。
問題の規模が大きくなると、分散が増えてくるのが見えた。512bitになったときどうなるか楽しみ。
pythonライクな開発キットで書いていた。
画像認識の問題への応用では、実際に古典の計算機より速い結果が出ている
とのこと。
量子化学へ応用できるかだけど今のままではちょっと難しい。connectivityがなさすぎるし確保したら
qubitがスケールしなさそう。
素因数分解は3000位までができると言ってた。ここは全然話に成らない。
(ここでqubit同士のconnectivityが気になった。スケールしないかもしれない)
楽しかったし、今後の発展が気になるところ。とにかくデカい問題を解いてほしいなぁ~とても惹かれる。