以前、日教組の先生たちによる
「君が代・日の丸反対運動」がかなり過激に盛り上がっていたころ、
トラブルをおそれた現場の先生方が国歌を教えたがらないので、
日本人なのに、「君が代」を知らぬまま大人になった、と云う人がゾロゾロいると云う、不思議な時代があった。
オリンピックで金メダルをとっても、
「なぜこんな歌が流れるのか」と思う人がいたわけだ。
先日、「米朝らくごの舞台裏」と云う本を読んでいたら、
「君が代をうたえない若い人」と云う、ちょっと面白い記述があった。
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これは狂言の茂山千之丞先生からうかがった話だが、
昔の能楽師はみんな「君が代」をまともに歌えなかったという。
「君が代」は国歌ではあるが西洋音階である。
能楽は西洋音階以前の日本古来の音階なので、オタマジャクシ通りの音程では歌えなかったわけだ。
「最近は学校で西洋音階を叩き込んで、邦楽を教えてへんもんやから、若い能楽師も昔どおりのフシで謡えんようになってきてます。
これは由々しき事態でっせ」と茂山先生は嘆いておられた。
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「君が代」は明治の初めに国歌として制定されたが、
「君が代」の歌詞そのものは、平安末期の歌集にすでにあるそうだ。
能楽の盛んになったのが室町時代、
そのころの「君が代」はお祝いの歌として謡われていたらしい。
つまり、明治以後の君が代は西洋音階だが、
それ以前の謡(うたい)は日本古来の音階、と云う分けである。
ちなみに、君が代は短歌形式で出来上がっている。
もっとも、「五・七・“六”・七・七」、の字余りではあるが。
なお、、「米朝らくごの舞台裏」は、
落語ファンなら、泣いて喜ぶようなおもしろい本です。
もちろん、ファンでなくてもお奨め。