漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

○地獄を見て蘇る その④

2010年12月14日 | Weblog
きのうの続き。

閻魔の庁に引き据えられ、
暴言の罪を糾弾された浅原新之丞、必死の抗弁ですが閻魔大王の判断は如何に。
  
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 ○地獄を見て蘇る その④

大王聞きてのたまわく、

「この理よこしまならず。
 述べるところまことなり、みだりに罪をくわえがたし。

 このそしりある事は、
 孫平が仏事祈祷に
 金銀おおく散したる故に、
 二たび婆婆に帰されたりと沙汰せし故なり。

 いそぎ孫平を召し来たれ」とのたまう。

しばらくの間に孫平を召し来たる。

「手枷(てかせ)・首枷をいれて直ちに地獄につかわし、
 浅原をば婆婆におくり帰せ」とあり。

二人の官吏、座を立ちて浅原をつれて庭を出ずる。

浅原云うよう、

「われ人間(じんかん)にありて儒学をつとめ、
 仏教に説くぢごくの事を聞きながら信をおこさず。

 今すでにここに来たる。
 願わくば地獄のありさまを見せて、我にいよいよ信をおこさし給えかし」と云う。

冥土の官吏これを聞きて、
「さらば司録神(しろくじん)に問うべし」とて、

西のかた廊下を過ぎて一つの殿舎に行く。

善悪二道の記録、山のごとくにつ積みたり。
冥官しかじかと云うに、司録神 名簿(みょうぶ)を出したり。

冥官(めいかん)これをとり持ち、
浅原をつれて北のかた半里ばかり行きけるに、
銅(あかがね)の築地たかく、黒鉄の門きびしき城にいたる。

黒けむり天をおおい、叫ぶこえ地をひびかす。
赤・黒・青の鬼あまた、鉄棒・鉄刃をたずさえ門の左右に立ちたり。

二人の冥官さきの簿(ふだ)を渡し、浅原をつれて内に入りて見せしむ。

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