漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

【桃太郎の縁談】 その④

2015年02月09日 | ものがたり
【桃太郎の縁談】 その④

きのうの続き。

娘は、そっけないようすの桃太郎に、
まず驚き、続いて腹を立てましたが、

振られたからと怒って帰るのも恥だしと、
ぐずぐずとあれこれ思案をしているうちに、眠ってしまいました。

娘が寝た気配をみた桃太郎は、
そっと布団をはね、娘の襦袢のすそをまくり上げて顔を突っ込むと、こう言った。

「さあ、おれの可愛いニャン子ちゃん、正直に話してくれ、
君をだれかが乱暴にしなかったかい」

すると、娘のまたぐらから声がしました。

「そのことなら、 私はいっぱい相手したけど、みんなやさしかったわよ、
でも、見損なわないでね、
相手はサムライばかり、町人なんか相手にしないんだから」

桃太郎はそれだけ聞くと、
「そうか分かった分かった、もういいよ」。

すそをなおし、布団をかけて、
また娘に背を向けてそのままぐっすりと眠りました。

あくる日起きるとすぐ、桃太郎は親父のところへ行き、
「考えたが、あの娘さんとは一緒になれない」

「どうしてかね、わけをおしえてくれ」

「どうしてかも言えないし、わけも言えない」

親父さんは不服でしたが、
娘から桃太郎が金持ちだと聞いているので、

このままでは惜しい気がして言いました。

「それではどうだい、
 私にはもうひとり娘がいるんだが、こんどは、その妹娘とひと晩過ごしてみては」。

顔を見せた妹のほうは、姉よりもっと美しい、
それを見て、桃太郎も もうひと晩泊まることにしました。

その夜も、桃太郎が寝ようとするころ、
妹娘が部屋に入ってきて、桃太郎の布団の中に忍び込んできました。

今夜も桃太郎は妹娘に背中を向けたままです。
妹は姉から夕べのことを聞いていたので、そんなに驚きはしませんでしたが、

自分の方が姉より美人だと云う自信があったので、いたく誇りを傷つけられた気がして、なかなか眠れません。

それでも、やっぱり昼の疲れからか、眠ってしまいました。

それまで妹の寝息をうかがっていた桃太郎が
むっくりと起き直ると、布団をはね、妹娘の襦袢のすそをまくり、前を広げてこう言いました。

「さあ、おれの可愛い妹ニャン子ちゃん、正直に話してくれ、
君をだれかが乱暴にしなかったかい」

「そのことなら、私にも姉さんに負けないほど、相手が一杯いるわよ、
でも、見損なわないでね、
相手は貧乏なサムライなんかでなく、金持ちの跡取り息子たちばっかりだから」

「そうか分かった分かった、もういいよ」
桃太郎はそれだけ聞くと、
また娘に背を向けてそのままぐっすりと眠りました。








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