漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

【桃太郎の縁談】 その⑤

2015年02月10日 | ものがたり
【桃太郎の縁談】 その⑤

きのうの続き。

あくる日起きるとすぐ、桃太郎は親父のところへ行き、
「残念だが、妹娘とも結婚できない」とことわりました。

「どうしてかね、わけをおしえてくれ」

「どうしてかも言えないし、分けも言えない」、

親父さんは不満でしたが、
結婚の約束をしたわけではないのでそれ以上は黙ってました。

でも、振られたかたちの娘たちは腹がおさまりません。

「ひどい男よね」
姉妹ふたりで相談して、町のお奉行所へ訴え出ることにしました。

「私の宿の客が結婚してもいいと、
私たちと一緒に一つ布団でひと晩寝ておきながら、
あくる日になると、やっぱりお前たちとは結婚しない」と言うんです」。

お奉行さまは、その客を連れてくるように役人に命じました。

お白州に出てきた桃太郎に、お奉行さまは聞きました。

「お前は、結婚の約束をして同衾しながらその約束を反故にしたと云う訴えがあったが、その訴えに相違ないか」

桃太郎も平伏して答えます。

「たしかに私は、同衾したあとに約束を反故にしましたが、
それにはそれなりの分けがございます」

「ふむ、ならその分けを申してみよ」

桃太郎は平伏したまま申し上げました。

「それを話すにつきましては、
 私と姉と二人だけにしていただきとうございます、

それさえ叶えば事情を申し上げます」

「フム、あい分かった、ほかの者どもは座をはずせ」。







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