日経ビジネス有料会員記事より🔻
下村さん 有料なのに 申し訳ないですねぇ〜
お金が無いので 『御礼』 の 文字だけで お赦し下さい＾ω＾；
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新型コロナ危機に見舞われ、航空業界は深刻な状況にある。
加えて、CO2削減も待ったなしだ。
EUは、サステナブル燃料の最低使用量制限を設ける動きを示す。ただし同燃料は生産量が十分でなく、価格も高い。 政府などの支援を求める声が上がっている。
試練は新型コロナ危機にとどまらない
新型コロナ危機が世界を揺るがす中、航空券を売るのは容易なことではない。
ましてや、燃料費の一部を負担してほしいと乗客に依頼するのは至難の業だ。
だがスカンジナビア航空（SAS）などの航空会社はまさにこれに取り組んでいる。二酸化炭素（CO2）の排出量を減らすためだ。サステナブル燃料を使用するコストを負担することで飛行に伴うCO2排出を相殺する選択肢を乗客に提供する。サステナブル燃料は、ライフサイクル全体で見れば、伝統的なケロシン（ジェット燃料油）よりも環境に優しい。ただし、ずっと高価だ。
SASの乗客は、1ブロック（20分間のフライトに相当）分のバイオ燃料を10ドル（約1060円）で購入できる。
他方、独航空大手ルフトハンザは、利用する航空会社を問わずCO2排出量を計算できるようにした。
乗客は、自分がこれまでに利用したフライトが排出したCO2を相殺すべく、自らが利用するルフトハンザ便にグリーン燃料を使用するための費用を支払う。
だが、サステナブル燃料を使用するためにより高い運賃を支払うという贅沢な選択は直に許されなくなるかもしれない。欧州委員会は8月半ば、同燃料の最低使用量について義務を課すことを検討していると示唆した。今年1月にはノルウェーが、同燃料を0.5％含む航空燃料を使用するよう義務付けた。この比率を2030年までに30％に引き上げる計画だ。他の国も同様の措置を検討している。
SASは含有量を25年までに10％、30年までに17％に引き上げる目標を定める。同社のラーズ・アンデルセン・レサーレ氏は「コストは極めて高い」と語る。サステナブル燃料のコストは従来燃料より最大で4倍ほど高い。「結局は、これらのコストをフライト料金に上乗せするしかない」
CO2削減目標の達成は困難
サステナブル燃料の使用を促す圧力が高まる背景には、新型コロナ危機により乗客が大幅に減っているにもかかわらず、目標に全く届かないとの認識がある。50年までに、CO2の排出量を05年の半分にするとの目標だ。
航空業界は現在、世界のCO2排出量の2〜3％を占める。だが建設や自動車製造などの産業が脱炭素化を進めるにつれ、航空業界の比率は上昇する見込みだ。経営戦略コンサルタントの独ローランド・ベルガーの最新の予測によれば、航空業界の比率は25％まで高まる可能性がある。
さらに、科学者らでつくる非政府組織（NGO）「クライメート・アクション・トラッカー」は航空業界のCO2排出量が15〜50年に220〜290％増加すると予測する。
英独立行政機関「気候変動委員会（CCC）」のクリス・スタークCEO（最高経営責任者）は「航空業界は脱炭素化を容易に進められる業界ではない。航空燃料はエネルギー密度が高いうえ、長距離飛行には大量の燃料が必要だ」と話す。「理論的には、サステナブル燃料がこの問題を解決する切り札となる」
同氏は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするネットゼロ目標を達成するには、サステナブル燃料の利用だけでは不十分だと指摘する。CCCはグリーン燃料の含有量について、50年までに実現できる現実的な目標は約10％だとみる。生産拡大が難しいうえ、原料を巡る他の産業との競争激化が避けられないからだ。ネットゼロ目標を達成するには、運航の改善から乗客の需要の伸び抑制まで、様々な措置が必要だとCCCは強調する。それでも足元では、グリーン燃料がCO2の排出を削減する切り札であることに変わりはない。
サステナブル燃料は現在、家庭ゴミや都市ゴミ、産業廃棄物を主な原料にしている。この第2世代バイオ燃料は、燃焼時に排出されるCO2の量はケロシンとほぼ同じだが、ライフサイクル全体で見れば最大80％少ない。
問題は、生産量がまだ少ないことだ。国際路線を運航する世界の航空会社が集まるIATA（国際航空運送協会）は、サステナブル燃料の年間生産量は5000万リットルにとどまると試算している。
英ロールスロイスのウォーレン・イーストCEOは、生産量を現行の1000倍に拡大する必要があるとみる。「ネットゼロの未来を実現するには、航空業界向けに50年時点で5億トンのサステナブル燃料が必要だ」
コロナ禍で世界の航空業界が危機に陥るなか、
「投資家はこの産業に投資したいと思うだろうか」
との疑問が浮上している。
ある航空会社の幹部によれば危機前から、航空機の利用を政府が後押ししなければ、
投資家は航空業界への投資に消極的だった。
国際エネルギー機関（IEA）は、20カ所の新しい製油施設を造るのに約100億ドル（約1兆600億円）かかると推定する。
それでもジェット燃料需要のわずか2％を賄うにすぎない。
しかしながら、米ランザテックのジェニファー・ホルムグレンCEOは、一部の投資家がより長い視点でサステナブル燃料の将来を見るようになった兆しがあると話す。同社は、産業汚染物質を微生物を使ってエタノール（ジェット燃料の素）に転換する研究に取り組んでいる。
同CEOによれば、同社はカナダのサンコーおよび日本の三井物産とともに合弁会社LanzaJetを設立した。ランザテックは米ジョージア州に実証プラントを建設中。3つの工場を建設し、それぞれ2億リットルのジェット燃料を25年から生産し始める計画だ。英ヴァージン・アトランティックと日本の全日本空輸などが、同社から燃料を購入することで合意している。
英オックスフォード大学発ベンチャーのベロシスは、英ブリティッシュ・エアウェイズ（BA）と英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの支援を得て、都市のゴミからサステナブル航空燃料を生産する取り組みを進める。政府の助成の下、英国に工場を建設中だ。25年までに年間5万トンの生産を目指す。同社のヘンリック・ウェアボーンCEOは「これは大西洋を年に1000回横断するのに十分な量。BAの1年分の世界需要の1〜2％に相当する」と語る。
ただし業界幹部は、投資家や航空会社にインセンティブを与えるにはさらなる方策が必要だと指摘する。
ロールスロイスのイースト氏は、サステナブル燃料に対する航空業界のニーズを満たすのは「一大事業であり、必要な資本は1兆ドルを超える。達成するには産業、政府、各種規制機関による幅広い協力が必要だ」と指摘する。
グリーン燃料の最低使用量を決めるのはその第一歩だ。業界幹部はその他の支援として、プラント建設を対象とする融資保証や、従来型燃料との価格差を埋めるための補助金（再生可能エネルギーに与えられたのと同様のもの）の導入などを挙げる。
ランザテックのホルムグレン氏は「1バレル35ドル（約3700円）の石油と、どうやって競争するのか」と問いかける。同氏はジョージア州のプラントでの生産を石油換算で80ドル（約8500円）とする目標を立てている。
ベロシスのウェアボーン氏は次のように話す。「税金で賄う補助金は必要ない。だが、CO2の排出を避けるための施策を提供する際の価格を競争的な水準にとどめるための政策は必要だ」
ヴァージンのシャイ・ワイスCEOは、航空業界は化石燃料の真のコストについて説明を始める必要があるとみる。新たなカーボンオフセット・ルールが来年導入されれば、このことが理解されるだろう。
ワイス氏はこう語る。「化石燃料の真の価格は単にケロシンの価格だけを指すのではない。ケロシンそのものの価格と、ケロシンを使用することで排出されるCO2を相殺するのにかかるコストの合計が真の価格となる。これは航空会社だけが負担すべきものではない。政府が様々な奨励策を駆使して、サステナブル燃料を企業に製造させる必要がある。そうすれば価格も下がる」
英国の航空業界ではロンドン・ヒースロー空港のジョン・ホランド・ケイCEOをはじめとする多くの関係者が、サステナブル燃料の生産を拡大すべく5億ポンド（約690億円）の支援を政府に要求している。ケイ氏は、世界第3位の巨大な航空網を擁する英国は、世界的に極めて重要な産業において優位な立場に立つだろうと話す。
「これは航空機の利用を持続可能とするための、最も早く訪れた機会だ。加えて、経済的な機会でもある。政府にとって重要なのは、どれだけ多くの雇用を生み出すことができるかだ」
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